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私の富士登山記・13


 2000年8月29日(火)・富士宮口

 今シーズンの最後の登り納めということで、富士宮口を登ってきました。以前なら会社が終わってそのまま出かけ、一気に山頂をめざしていたものですが、40才代半ば近くともなりますと、そういう無茶は体力的にできなくなります。また、山頂で御来光を見ることにこだわって徹夜登山をするのもつらい。今回は、弟の車で28日深夜に横浜を出発。五合目に1:45に到着(平日なので空いていました)。そこで、1時間半ほどの仮眠をとって、3:17に登り始めました。13回目ともなりますと、あまり山頂で御来光を、という気持ちは薄れてきています。それよりも、いかに快適に登るか、という気持ちが強くなり、そこで、朝の涼しい内に出発というスケジュールを選びました。

 最初のうちは当然、真っ暗ですが、1時間もすると、だんだんと空が明るくなってきました。ちょっと厚着をしてしまい、ジャケットが荷物になったのが失敗。御来光はわずかに山の陰になって見えませんでしたが、やがて稜線から太陽が姿を見せました。雲のせいで、木星のように横に縞模様があるように見えました。
富士宮口7合目のご来光富士宮口七合目のご来光

 新七合目は営業していましたが、元祖七合目はすでに店じまいをしていました。富士登山のシーズンは、7〜8月と書いてありますが、もっと厳密にいうと、8月27日の「お山じまい」までなのです。ですから、その日で閉店する山小屋が非常に多いのです。そもそも、昔流にいえば、お山開きからお山じまいまでが、「登山が許される期間」なのです。

 富士宮口を登ったのは、これで4回目ですが、明るい時間帯に登るのは実は初めてなのです。いつも御来光をめざしての徹夜登山でしたが、いざ、明るい時に登ってみると非常に新鮮な感じがしました。そして結構岩場が多いルートだと思いました。

 八合目の山小屋がしまっているのを見て、私はちょっと困ってしまいました。なぜなら、まだ山小屋は開いていると思って、水を750ccしか持ってきていないのです。これでは、登頂して下山するには少なすぎます。これは途中で登山を止めるしかないかな、と思っていたら、なんと弟が「こういうこともあろうかと」私の分として1リットル余計に持ってきてくれていました。それも、冷凍庫で凍らせていたのがうれしい。弟はかなり健脚でして、例えば須走口を4時間ぐらいで登ってしまいます。その後も、私の荷物の一部を持ってもらったりしました。ありがたいことです。

 九合目の万年雪山荘はまだ開いていました。やれやれと、なにか飲料はないかと尋ねたところ、ペットボトル入りの清涼飲料や水はもう売り切れとのこと。コーヒーやスープなどお湯を使ったものならあるということでした。店じまい直前なのでもう清涼飲料を運びあげていないのです。仕方なく熱いスープを飲みました。次の九合五尺の山小屋は閉店。弟が水を余計に持ってきてくれなかったら、すでにギブアップしていたでしょう。
九号五勺からの眺め九号五勺からの眺め

 8:34に頂上にたどり着きました。所要時間は5時間17分。私にしては、まあまあの時間ですが、弟だけなら3時間ぐらいで登っていたことでしょう。富士登山は非常に個人差が大きいです。ですから、登るのが早い人は遅い人を待っていなければなりません。彼は待っている間、i-modeを取り出してメールチェックや、いろいろなサイトのコンテンツを見ていました。アンテナ感度はは常時3本立ちで良好。本来の連絡のみならず、遅い人を待っている間の暇つぶしにもドコモの携帯は便利です。

 奥宮はすでに閉鎖。山小屋も郵便局も閉まっていました。登山客は20名ほどでした。天気は穏やかで、体力も十分だったので、ひさしぶりにお鉢巡りをすることにしました。お鉢めぐりは、本来は右回りなのだそうですが、最近は馬の背の急斜面を避けるために、左回りを勧める人が増えてきました。また、過去2回のお鉢巡りは右回りだったので、逆に行ってみました。
閉鎖された奥宮閉鎖された奥宮

 御殿場口をすぎ、NTTの山頂基地までいくと、ある男性が「三宅島が見えるよ」と指さします。そちらを見ると、はるかかなたに噴煙が上がっていました。そういえば、途中の山小屋のラジオで、早朝に三宅島が噴火したというニュースを聴いていました。
三宅島の噴煙三宅島の噴煙

 奥宮から35分ほどで、河口湖口の山小屋群に到着しました。4軒ある山小屋のうち、東京屋だけが営業していました。ここも、ペットボトルの飲料は売り切れでした、飲み物は、お湯を使った飲料だけでした。すでに店じまいの準備をしていました。翌日、店を閉めて下山するそうです。山小屋が一軒開いていたせいか、トイレはまだ利用できました。おそらく山小屋が閉まると、トイレも閉まるはずです。
河口湖口側の山小屋群河口湖口側の山小屋群

 白山岳には、ロープが張ってあり、登れなくなっていました。今年、最初の7月上旬の登山では、そんなものはありませんでした。2回目の8月上旬には、簡単なパイプ柵が埋められていました。そして、今回はロープで、さらに通らないように、という注意を喚起しています。もともと白山岳はお鉢巡りの外輪コースとして設定されていましたが、反対側の崖が崩壊していて通行禁止なのです。ただ、それを知らない人が、白山岳に登ったからには、と無理矢理その崖を下りる可能性があります。そこで、通行できないようにしているのでしょう。
 10:21に、測候所のある最高地点へ到着。山頂レーダーの稼働は終了しましたが、測候所には数人が駐在していました。測候所自体が閉鎖になるわけではないようです。当日の午前9時の気圧が、652.7ヘクトパスカル。数字で見ると、改めて気圧の低さを実感します。測候所横の展望台へも行けました。穏やかな天気。おもわず、ごろんと横になってしまいました。

 富士宮口へ戻る急坂「馬の背」は、砂がいれられたのか、自然とそうなったのかわかりませんが、かなり砂があってふかふかでした。去年は完全に砂がなくなって固い地盤だったのですが、おかげで、砂走りのようで下りやすかったです。逆にいうと、登りはずるずる滑って大変でしょう。「お鉢巡り左回り有利説」は、馬の背を登る苦労がないので、やはり確かなようです。のんびり一周したせいで、お鉢巡りに2時間以上かかりました。富士宮口山頂のトイレは閉鎖されていました。シーズンが過ぎると、トイレの問題が出てきます。男性なら立ち小便できますから、問題ないですが、女性は大変だと思います。特に富士山の上部は木が生えていないので、隠れて用を足せるような場所がありません。

 10:50下山開始。御殿場口から下山することにしました。御殿場口の山頂付近は岩がせり出すように積み重なっていて、なかなかの迫力です。それだけに落石にも十分注意する必要があります。30分ほどで、赤岩八合館に到着。まだ営業していました。また飲料も冷えてはなかったですが、十分においてありました。赤岩八合館のホームページで、8月末まで営業とあったので、ここで飲料が入手できることは予想していましたが、実際に営業していてほっとしました。すでに、店じまいの準備の真っ最中でした。お鉢めぐりで、ちょっと無駄に使いすぎて、残り少なくなっていたフィルムも新たに購入できてまたまた一安心。

 御殿場口の山小屋は、他に3軒ありますが、すでに閉まっていました。基本的にあまり長期はやっていないようです。七合目を過ぎると、下山道の砂が深くなり、楽に下りられるようになります。そのまま大砂走りに行きたい気持ちになりますが、富士宮口へ戻らなければならないので、宝永火口へ進みます。ちょっと雲がかかっていたのが残念ですが、それでも火口の雄大さは十分に楽しめました。

 下山道は砂が深くなっていて、ここも楽に砂を踏み込んで下りていくことができました。逆に登ってくる人たちにとってはかなりしんどいようです。火口の下から向かって左側に比較的路面が固い、登山道があるのです。登るのであれば、そちらを通った方が多少なりとも楽でしょう。しかし、ここの火口を登り切るのはなかなか大変な感じがしました。

 富士宮口から登って、御殿場口経由で富士宮口へ戻ってくるのは、私が最初に富士登山をした時のルートです。あの時は、足が痛くなって何度も地面に腰を下ろしてしまっていましたが、今回は、問題なく歩けました。年をとって体力はもちろん落ちていますが、やはり登り方や下り方が多少はうまくなったのでしょう。というより、マイペースで登ることがなにより大切なことに気づいたということです。

 いったん火口の底まで下りるので、最後に50mほどの標高を登らなければなりません。六合目は霧がかかっていました。天気は下り坂。良いタイミングで登れたと思いました。そして13:30に五合目着。下山に要した時間は、2時間40分。富士宮口の段差を下りるよりは、はるかに快適に早く下りられました。今回は、お鉢めぐりをしっかり堪能できて良かったです。今回の登山では、登山のシーズンは8月末まで、ではなくて、「お山じまい」までなのだということを再認識できました。私は9月の富士登山は経験がありませんが、これだけ山小屋が閉鎖されてしまうと、水の補給、トイレの問題が大変だと再認識した次第です。

★教訓:お山じまい後は水の確保が難しいことを知る。
(2000/9/5)


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