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  私の富士登山記・19


 2002年9月16日(月)・須走口

 今年はまだ2回しか登っておらず、なんとなく物足りなかったので登ってきました。(別に毎年3回の富士登山をノルマとしているわけではないのですが) 今回は9月16日という、かなり遅い時期になりました。9月の富士登山の様子を見てくるという目的もありました。数日前の週間天気予報では当日は「曇り時々晴れ」になっており期待していましたが、結局天気は崩れてしまいました。特に前日15日の深夜の富士山頂は霧雨で風速30m/sという最悪のコンディション。これではとても登頂は無理だと思いつつ、まあ行けるところまで、ということで弟の車で須走口へ。

 またまた須走口になりました。自分の登山記の目次は須走口ばっかり。河口湖口が少ないので、今回はそうしたいとも思ったのですが、弟が「三連休の最終日だから、高速道路の渋滞を避けるために早めに帰宅した方が良い」とアドバイス。すると必然的に深夜登山。しかし富士スバルラインは9月は19時から3時まで通行できないので、結局また須走口になってしまったのでした。個人的にこのルートが好きだということもあります。

 須走口へ至るふじあざみラインでは深夜、ローリング族が集まってきます。今回は、ふじあざみラインの下の方のカーブで道路をはみ出してしまった事故車がいました。こりゃカーブで暴走車にぶつけられてはかなわんということで、カーブでは対向車のライトが見えるたびに減速しながら慎重に進んでいきました。ふじあざみラインは直線的なのでついついスピードが出てしまいますが、急カーブで道路をはみ出したり横転する事故が多いと聞きます。ご注意を。

 須走口新五合目の駐車場には10台ほど停まっていました。こんな時期でも休日とあって登山者が多いです。あたりには薄く霧が立ちこめていましたが、雨は降っていなかったので、車中で30分ほど休憩してから登山開始。ヘッドランプを頭に着けていると、霧のせいで目の前に光のカーテンができて鬱陶しいので手に持ちました。前回、あまりに時間がかかったので、やや早足気味で本五合目をめざしました。1時間ちょっとで到着。

 樹林帯を抜けて低灌木のあたりに来ると、登山者の懐中電灯の明かりが点のように揺れています。他には3組ほどが登っているようでした。山頂方向に向かって左の方では風で木々が揺れてうなるような音がしていました。強い西風が吹いているようでしたが、ちょうど須走口は富士山が風を遮ってくれるおかげで、七合目あたりまでは特に風の影響はありませんでした。途中で霧が弱い霧雨になってきたので、薄手の雨具のズボンを着ました。夜間は下半身の防寒にもなります。

 七合目の大陽館は営業していました。ここは10月中旬まで営業しています。だんだん風の影響が強くなってきました。八合目へ向かう途中で、下山してくる若い男性三人組に会いました。強風なので登頂を断念したとのこと。若くて健脚そうな彼らが無理ということは相当きびしい状態のようです。今回は八合目で終わりになりそうだな、と思いました。途中の登山道に堂々とツェルト(小型テント)で寝ている人が。

 霧雨のせいで軍手がすっかり濡れてしまい、指先が冷たくなってしまいました。そういうこともあろうかと替えの手袋を持参していたのですが、これが全く防水機能がなく(表面は化繊でそれっぽい感じだったのですが)すぐにびしょびしょ。弟はスキー用グローブを持参していて万全。

 本八合目に到着。本八合トモエ館はまだ営業していました。すっかり濡れてしまった軍手の替えを買うために中に入ると、かなり混雑していました。軍手は300円。けっこう、外人さんが多い。それもカップルが。3割近くいたような印象でした。

 まだ風がさほどでもないので山頂をめざすことにしました。おそらくこれからどんどん強風になっていくのでしょう。危険を感じたらいつでも引き返すつもりで。途中、下山して来る人たちとすれ違いました。山頂まで20人ぐらいいたでしょうか。どうやらみなさんは登頂したようです。確かに山頂の風はものすごいが登れないほどではないとのこと。若い女性の方が「風は強いです。吹き飛ばされて尻餅をつきました」と答えてくれたのですが、その時のレインスーツのフードの中に見える彼女の目が、キラキラ輝いてとてもきれいでした。こんな悪天候の中を登頂したんだよ!という達成感に満ちた目だったような。

 すでに夜は明けていますが、もちろん霧の中なので日が射し込むわけではない。それでも、わずかでも太陽の暖かさが伝わってくるようでさほど寒くはない。しかし強風、霧雨、視界不良。これまでの登山で一番悪いコンディション。今回は特に「登頂したい!」と強く思いましたねえ。とにかく問題は風だけなので、これ以上強くならないことを祈るのみでした。

 いつものように、高地ゆえの空気不足にあえぎながら我慢の登山を続けました。そのうち下山して来た人に「もうすぐですよ」と笑顔で声をかけられました。本当にもうすぐでした。弟が霧の中に山頂の狛犬を発見。最後の右ターン、そして最後のストレートを登ってとうとう山頂へ到着。久々に「やった〜!」という感じでした。山頂は深い霧。強風。登山客は他に10人ぐらいいました。もちろん山小屋は閉まっていました。山小屋群を過ぎると火口からものすごい風が直撃。それでも大日岳方面へ向かっている人が二名いました。大丈夫だったのでしょうか。


 景色が楽しめるわけでもないので、山頂滞在時間8分ほどでさっさと下山することに。今回は、登山道を下りてくる人が多いので、下山道が閉鎖されているのではと思ったのですが、そんなことはありませんでした。ただ、「下山道」の立て札が登山道の方に向いていました。9月はブル道を下山してはいけないのかも。それに下山道方向は霧の中。地理を知らないとなかなか下山道の方向へは進めないでしょう。下山道は地表が濡れていて砂塵が舞うこともなく、すこぶる快適に早足で下りていけました。ちょっと風が弱そうなところで、弟が持参のコンロでお湯を沸かしてコーヒーを飲みました。強風でも火が消えないというすぐれもの。こういう状況で飲むと、普通のインスタントコーヒーがすこぶる美味なのです。


高山植物も色付き始めていました。

 私は前日にたっぷり昼寝をしていたこともあって体調は良く、快調に下山していきました。途中、どこかの山小屋から飛んできたらしいマットレスが落ちていました。大陽館の上部あたりの下山道が変わっていました。このあたりはよく道が付け替えられます。砂走りはちょっと砂が重たかったのですが、それでも快調なペースでどんどん下山。途中の大きな岩まで数分でたどり着いてしまいました。やはり砂走りはいいですね。どんどん下っていけます。

 砂払五合目・吉野屋はわずかな骨組み以外はすっかり撤去されていました。今回は通常の樹林帯の下山路を通らずにブルドーザー道を下りました。はっきり言って段差がないので下りやすいですし、駐車場の上部にたどり着くので登り返す必要がありません。ただ、正規の下山道ではありませんし、シーズン中は車やブルドーザーが通行しますから注意が必要です。それでも足を痛めた時などに緊急避難的に利用するのは効果大だとは思います。

 新五合目に近づくにつれて雨がだんだん強くなってきました。結局、約20分間のコーヒーブレイク込みで新五合目まで2時間15分でたどり着きました。車に乗り込んだ頃にはさらに一段と雨足が強くなってきました。濡れることを想定して、着替えをしっかり用意しておいて良かったです。ただしこれもマイカーで五合目まで行けるからであり、バスなどで行く場合は着替えも持って登らなければならないのでちょっと大変です。(河口湖口五合目にはコインロッカーがあります)

 これまでは、「雨なら登らない」という軟弱さゆえに、雨中登山はあまりなかったのですが、今回ばかりはずぶ濡れになりました。私は本格的なレインスーツは持っておらず、防水加工のウインドブレーカーと薄手のレインパンツを持参していますが、さすがに今回は登山用のレインスーツが欲しいなと思いました。それ以上にザックが中までずぶ濡れ。やはりザックカバーは用意しておかないとダメですね。ようやく私も「強風+霧雨」というかなりの悪天候を体験できたので、当サイトの雨対策などの記述にも、より一層の深みが出るのではないかと思います。

 帰宅してから、観測データを見ると、午前7時頃の山頂は風速21m/sでした。午前5時には26m/sの数値が記録されていました。少し遅れて登ったので、多少は楽だったようです。明けて9月17日は午前11時に、なんと風速35m/s!が観測されています。

0:48 登山開始
1:52 本五合目
2:33 六合目 2:40
3:03 本六合跡
3:37 七合目 3:50
4:32 本七合目 4:52
5:53 八合目 6:02
6:15 八合五勺
6:41 九合目
7:10 山頂
登山所用時間
6時間22分
7:18 下山開始
コーヒー休憩20分ほど
8:31 七合目
8:41 砂走り
9:33 五合目
下山所用時間
2時間15分
富士山 09/16
0306091215182124
気温(℃) 3.2 3.5 4.0 4.4 4.3 1.6 -0.6 2.5
風向
風速(m/s) 20.024.612.815.415.915.920.024.1
天気 霧雨霧雨霧雨
↑当日の山頂の気象。山と渓谷社のHPより。

★教訓:雨中登山のきびしさを知る。
(2002/9/17)


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