[登山記の目次に戻る]

  私の富士登山記・20


 2003年7月9日(水)・河口湖口

 河口湖口から弟と一緒に登ってきました。前日の山頂の天気は風速20mの霧雨。梅雨時なのである程度は雨に降られても仕方がないと覚悟していたのですが、前日の夕方から山頂の湿度が急に下がったので、これは晴れるのでは、という期待が急に高まりました。そして実際に四合目の大沢駐車場まで行って、車を止めて空をみると満天の星。天の川がくっきり。午前2時に五合目の駐車場に到着。平日なので駐車率は1割程度。五合目のレストハウスは全て閉まっていました。

 しばらく河口湖口から登っておらず、特に七合目あたりの岩場の記憶が曖昧になってきたので、そのあたりを重点的に撮影するのが今回の登山の主たる目的です。そこで七合目あたりで御来光になるようにと、しばらく車の中で高所順応をしてから午前2時53分に五合目を出発。最初のうちは横方向の道。途中からどんどん下っていくので、位置エネルギーがもったいないなあと思っているうちに泉カ滝に到着。そこから登りになります。

 五合目から約40分で六合目の富士山安全指導センターに到着。係員が徹夜で待機していました。ここに掲示されていた天気予報では「曇りか霧ときどき雨」。しかし、どうやらありがたい方に予報が外れてくれたようです。

 六合目で吉田口登山道と合流します。このあたりの標高がだいたい2400m。富士宮口のスタート地点であり、須走口なら五合目から1時間ほどの場所にある最初の山小屋(本五合目)がある高さ。ということは、富士宮口は別格として、河口湖口から登るのと須走口から登るのでは2400mの地点に到達する時間は20分ほどの差しかないというわけです。もちろん五合目の標高が違うため、須走口から登ると河口湖口からの場合より300mも余計に登ることになるので、当然、その分疲れるわけです。でも、時間的にはそれほど大差がないのですね。

 六合目の山小屋は廃業してしまいました。ここにあった雲海荘が火事で焼失し、2002年に建て替える際、保健所への届けよりも深く地面を掘ってしまい法律違反を指摘され結局廃業に。昨年は営業していた穴小屋も雲海荘の別館なので一緒に廃業することに。こんなことになるのなら、なぜ最初から深く掘るように申請しなかったのかという疑問が残ります。あるいは十分な強度にするために深く掘ろうとすると建築許可が下りなかったのか、詳細はわかりませんが、いずれにしても六合目から山小屋がなくなるのは特に下山者にとっては飲料を購入できないので非常に不便なことです。せめて安全指導センターに自動販売機を設置すれば良いと思います。なお、今年から六合目の山小屋として星観荘が営業していますが、こちらは吉田口への下山道を標高100mほど下った場所にあるので、河口湖口へ戻る人には利用しづらいです。

 六合目から七合目まではジグザグの整備された道。ダブルステッキで登っていきました。そして4時半に七合目の花小屋に到着。これは思ったよりペースが速い。そこから少し上のトモエ館あたりで御来光を見ました。

 七合目付近の岩場では、さすがにステッキが邪魔になるのでザックにしまいました。岩場を登るのはなかなか楽しいですね。段差があるのでちょっとしんどいのですが、山小屋が密集しているので、気分的に楽な感じがします。「次の山小屋で休もう」と思っていても、すぐに到着してしまうため、「それならもう一つ先の山小屋にしよう」というのを繰り返している内に、いつのまにかどんどん登ってしまいます。蓬莱館から砂礫の道にかわります。

 午前7時6分に本八合目に到着。4時間ちょっと。これは私にしてはかなり良いペースです。事前にヘム鉄の錠剤をしばらく飲んでいたのでヘモグロビンが増え、酸素摂取能力が増えたせいかもしれません。あるいは、河口湖口はジグザグ部分が多いので全般的な斜度が緩く、それで疲れにくいのかもしれません。さらには雨を覚悟していたのに晴天になったことで俄然やる気になったこともあるのかも。いずれにしても順調な登山です。結局、そのペースは山頂まで続き、午前8時11分に登頂。所要時間は5時間18分でした。

 山頂も快晴でしたが、下界はほとんどが雲がかかっていて見えませんでした。それが逆に幻想的な感じでした。まだ七月上旬なので雪がたくさん残っています。まだまだ山小屋などは準備中の時期です。公衆電話はまだ設置されておらず、ドコモの山頂アンテナも未設置なので富士宮口の奥宮前あたりでは圏外でした。山頂郵便局もまだ営業していません。

 馬の背の急斜面をようやく登って測候所へ。あいかわらずの光景ですが、それでも無事に到達できてうれしい感じがします。三角点の石碑が新品になっていました。それから電波三角点なるものが設置されていました。

 お鉢巡りをして河口湖口側へ戻ってきたのが午前10時。まだ空腹感がないので、さっさと下山することにしました。前日まで霧雨だったので、下山道は砂ぼこりがあまり立たず、地面も比較的柔らかで好都合でした。須走口との分岐点の八合目まで30分となかなか良いペース。しかし、途中で一回バランスを崩して、でんぐり返りました。長袖、軍手だったので問題ありませんでしたが、特に軍手をしていないと細かい砂礫が手のひらに食い込んでたいそう痛い思いをします。

 そしていよいよつづら折りの部分へ突入。それにしても暑い。てっきり雨だと思っていたので日焼け止めを持ってこなかったのが大失敗です。ところがうれしいことに霧が出てきました。といってもすっぽり太陽を遮ってくれるほどではなかったのですが、時々、霧の中に入っていくと顔がひんやりしてとても気持ちが良かったです。

 結局、下山に要した時間は2時間9分でした。これまたかなり順調なペースでした。同行した弟は河口湖口は初めてだったのですが、この下山道については「単調でつまらない」という感想でした。私もまったく同感です。永遠に続くようなジグザグ道を下っていると、須走口の砂走りとは違って「うんざり感」がわいてきます。以前のように吉田大沢を砂走りとして下山できれば良いのでしょうが、落石の危険がある以上、通行できないのは仕方ありません。ただ、現在の下山道も、上部の亀岩(亀裂がいっぱい!)が崩壊したらやはり大事故になりかねず、ある登山家さんの著書に「亀岩が崩れるのが怖いので登山道から降りた」という記述があったりします。

 六合目から五合目までは結構距離があります。霧がかかってきて五合目の場所がよくわかりませんが、ある時、息を吸い込もうとすると強烈な馬糞のにおいが! おもわずむせてしまいましたが、それで五合目が近いことがわかりました。五合目は霧で雲海を眺めることができず、多くの観光客には残念な状況でした。

 山頂は午後から霧になったようです。梅雨時にもかかわらずちょうど山頂が晴れている最高のタイミングで登ることができました。なお、今回一番興味深かったのが「軍手の値段」。八合目だと300円、山頂ではなんと500円! これは高い。そういえば昨年、500円分のテレフォンカードが山頂では1400円だったし。必要そうなものは下界で購入しておくに限ります。

2:53 登山開始
3:37 六合目
4:26 七合目
7:06 本八合目
8:11 山頂
登山所用時間
5時間18分
10:06 下山開始
10:30 八合目
10:56 緊急避難所
11:18 トイレ
11:44 六合目
12:15 五合目
下山所用時間
2時間9分
富士山 07/09
0306091215182124
気温(℃) 3.3 3.5 4.0 4.8 5.4 2.1 2.5
風向 NWNWNNWNWNWNWNWN
風速(m/s) 11.310.8 6.7 6.1 8.711.813.8
天気 晴れ
↑当日の山頂の気象。山と渓谷社のWEBページ(各地の天気・富士山実況)より。

★教訓:あらゆる天候を想定した準備が必要なことを知る。
(2003/7/10)


BACK  TOP  NEXT