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 みんなの登山記2007−10
 投稿者:ブドリさん

■2007年7月23日(月)〜24日(火) 御殿場口

こんにちわ、ブドリと申します。神奈川県西部在住の39歳、男性です。
7/23〜24に1泊2日、単独、御殿場口往復にて無事登頂を果たしました。
今回が7回目の登頂となりますが、御殿場口は下るばかりで登りは初めて。「あっぱれ!富士登山」の情報を活用させていただきました。

★7/24〜ひたすら雲の中〜
08:15 御殿場口新五合目 発
 着いてみると雲中、霧雨の新五合目。準備を整えてゆっくり、ゆっくり登り出す。15分ほどで大石茶屋に到着、持参した金剛杖に焼印を頼むと「冷えてるからちょっと時間かかるけど、いいかい?」…ってことは、今日はまだ押した人がいないの?今日この道を登るのは私だけだったりして…(笑)08:40、「いってらっしゃーい!」と大石茶屋のお孫さんに見送られて出発。しばらく歩いていて…風景に違和感。あ、そっか。下りの風景と違うからか。次郎坊〜新五合目は下山道は直線的で遠くまで見通せるせいもあり、なだらかに感じていました。すぐ隣にあるけれど、登山道はつづら折れでかなり傾斜があるように感じる道。時々隣に覗く下山道も「実はけっこう傾斜あるんだなあ」と改めて実感。どおりで下りにいつもここで足が悲鳴を上げるわけだ。

09:55 次郎坊
 霧雨が大粒の雨に変わってきた。雨具着用。ここでトレーニング中の富士登山駅伝ランナー達に遭遇。30人位が旧二合八勺まで登ったり降りたりを繰り返す。脇に避けつつ登る登山道は、より距離の長いつづら折れの繰り返し、砂も深くなり登りづらい。雨でもう少ししまっているかと思ったけれど、ザクザク状態。ランナー達の踏跡に足を載せ、歩幅をより狭めて歩く。  旧二合八勺で時計を見ると約40分。お、「健脚者用コースタイム表示の看板」どおりでここまで来れた。このまま調子よく行けるかな?…なんて考えたけどメチャメチャ甘かった(笑)ここからが御殿場口登山道のきついところでした…。先へ踏み込むと、傾斜がきつくなり足場もさらにザックザク。加えて視界10mくらいの白い闇。その中を独りであえぎながら休み休み登る。他の人影は全くなし。ずーっと続く白い闇と同じような道に、ホントに進んでるんだろかと気が滅入ってきてだんだんペースが落ちていく…。旧四合目の少し手 前、ブルドーザー道との交差点で時計を見ると11:44。ま、まだここか〜。

12:30までとにかく進み、バナナとサラミの簡単な昼食。ここまで来てようやく白い闇が薄れ出す…斜面を見上げると小屋が見えた。地図を出し確認。あれ、「あっぱれ!富士登山」に載っていた2600m付近の小屋だ!小屋の直下から道が少し登りやすくなる。

13:00 旧五合目(標高2,600m付近)  視界が広がると同時に雨も止み、明るさが増す。寂れた旧五合目小屋脇で長めに休む。…地面が乾いているところを見ると、ここから上はずっと降っていないようだ。13:30出発。少し上でブルドーザー道を再び横切ると、距離は短いが砂走りを登り返すような登りづらい箇所あり。環境省避難小屋(というより難破小屋という感じ)を通過し、順調に高度を稼ぐ。視界があるとないとでは大違い。なにより気分的に楽です。
 14:25、崩れた旧六合目小屋に着いたところで携帯(Docomo)が鳴った。実家の兄からのメールで「今、どこにおる?」正直に場所を書いて返事を出す…数分後、電話着信。聞こえてきたのは笑声でした。兄も昔この道を登ったことがあるだけに、状況がわかるらしい(笑)「そこから先もまだ長いからな」…やなこと言ってくれる。用事のやりとりに移動して携帯がつながらなくなるのはまずいので、30分ほど滞在。用事が済んで登り始めると上から人が降りてきた。二合八勺以来初めて人に出会った(笑)八合目から先は雲の上で、特に山頂は快晴との話!良い話を聞いたせいか、ここから七合目までの道はそれほどきつさを感じずに順調に進みました(笑)

15:45 七合目 日の出館  ようやく七合目にたどり着くと、日の出館は小屋開け作業の真っ最中。下山道と合流したここからは何度か通っている道。でも日の出館とわらじ館の間の登りはしんどいよな…。実際、壁に見えました。閉まっているわらじ館を通過、砂走館へ。一昨年…17年ぶりの富士登山でここを下った際、砂走館で休んだにもかかわらず焼印を押し損ねていた私。…8月末の最終土日で小屋閉めの準備をしていたから、焼印できなかったのかもしれない。今回は忘れずにと立ち寄る。ここでも「コテが冷えているのでしばらくお待ち下さいね」と言われ入り口先でぼーっと待っていると「あ、疲れてるでしょうから荷物おろしてどうぞ中で座ってお待ち下さい。」の言葉。おお、ここは親切だなあ。雑談しながらしばし待ち、あざやかな焼印をもらって16:17出発。ここからの岩混じりの道を約30分と読んでいたけれど、そろそろ高度障害が出始める頃。ペースを押さえて進みます。

17:00 七合九勺 赤岩八合館 着  今晩お世話になる赤岩八合館に着くと、平日なのに意外に混んでいる。ありゃ、団体さんか。念のために前日予約の連絡を入れておいて正解だったかな。予約の際に御殿場口から、と告げると「遠いですよ〜」と念を押されたことを思い出す(笑)よく調べずに予約を入れる人もいるからなんだろうな。ちなみにこの日御殿場口を上がってきたのはどうやら私独りの模様(笑)荷物を下ろして外に出ると、雲が切れて山頂へ続く稜線が見え始めた。頭上の雲も消えていき、晴れ間と雲海が広がっていく。景色を眺めて小屋の周りを散歩しつつ体調を確かめる。高度障害は出ていない。調子がいいので夕食のカレーライスはもちろんおかわり(笑)また泊まり合わせた団体さんは統制が取れていたため、夜中に騒ぐこともなく…20:00には泊まりの皆さんほとんど就寝。赤岩八合館の奥さんが「まだ8時だよ、いいの?うちの消灯は9時なんだけど…」と話す声に思わず笑いがこみあげた。

★7/25〜宇宙へ続く蒼空〜
02:15 赤岩八合館 発
 01:45起床。山頂ご来光を狙ってこの時間に起きたのは私独り。周りを起こさないように準備して外へ出ると、下は雲海。見上げれば息をのむほどの一面の星空!ちょうど頭の上に天の川が差しかかり、思わず見とれてしまう。よく「プラネタリウムのような星空」と表現されるけれど、それはちょっと悲しい逆の例え方だと思う。星空を模したものがプラネタリウムだから。例えようがあまり無いのはわかるし、街灯りの影響がない本物の星空が見えるところも少なくなったけど…。登りつつ時々立ち止まってはヘッドランプを消して星空を眺めているうちに、明るい流星がひとつ…いるか座の上から南西に飛んだ。ラッキー!
 下るときに膝をやられてしまいそうな岩とゴロ石のつづら折れを、じわじわと山頂に向かいます。小屋の残骸があるところまで約50分。夜明けまで後1時間と少し、東の空が明るくなり始める。深呼吸を繰り返し、最後の登りにかかる。下を見るとヘッドランプの灯りが2つ、ゆっくり追いかけてくる。上には灯りが見あたらない。以前登った須走口や吉田口での夜明け前大混雑は、ここには全くありません。時々立ち休みしつつ登り、04:10、頂上の鳥居が見えるところまで来た。その西側に人が何人も並んでご来光を待っているのがわかる。いつか登ってみたいと思っていた御殿場口の、長い道のりのゴール…鳥居の前で立ち止まり、青い空を背景に写真を1枚。

04:30 御殿場口山頂 銀明水 到着。
 ご来光を拝むべく、右手の東安河原へ急ぎます。さすがに少し頭痛が出たものの、深呼吸を繰り返すと復活。「上がった!」と声が聞こえる。さらに進むと、ちょうど雲海から太陽が姿を現した。間に合った!
ちょっと訳ありでザックの中に背負ってきたオコジョのぬいぐるみを出し、ご来光をバックに記念撮影(笑)風も5mあるかないか程度。雲海がぐるりと広がり、そこから上は青空と太陽だけ。1時間ほどまどろんでから剣ヶ峰に向かって行動開始。浅間神社奥宮で杖に刻印を打ってもらい、山頂郵便局で登山証明書を購入、投函して外へ出ると…誰かが「君が代」を歌っているのが聞こえる…見回せば奥宮のポールにちょうど国旗掲揚中。神主見習いさんかな、ちょっと恥ずかしげに1人で「君が代」を歌いながら国旗を揚げていました。珍しいシーンに出くわしたなあ。一緒に歌ってあげたらよかったかな(笑)
 剣ヶ峰に行くのは20年振り。馬の背の斜面は3分の2程度登ったところに岩が露出していてそこで皆滑る滑る。這い上がるようにそこをクリア、ようやく剣ヶ峰に到着。ここでもまたオコジョのぬいぐるみを出して記念撮影(笑)すいません、剣ヶ峰でオコジョのぬいぐるみを持ってうろうろしていた怪しいオッサンは私です(自爆)お鉢巡りの北側半分はまだ規制中で回れなかったけれど、ちょうど静岡県警の山岳救助隊を始めとするルート調査が行われていた模様。2日後に登った一昨年の同行者が「巡れたよ〜」と連絡をくれました(こちらは表口から登って無事登頂、河口湖口を下ったそうな)。

07:35 銀明水 出発
 さて、赤岩八合館で朝食を頼んであるためいいかげん降りないと…名残惜しいけど山頂を後に御殿場口を下り出す。高度障害が出なかったせいで快調に下り、08:15頃到着。遅い朝食をいただき、外のベンチでラジオ聞きつつ雲海と圧倒的な立体感の風景を眺めて1時間程のんびり…凄く贅沢な時間。赤岩八合館の奥さんともお話しさせていただきました。「なんといっても、達成感と充実感があるでしょ、この道は!」よーくわかります!

09:50 赤岩八合館 発
 装備を整えてあいさつし、出発。砂走館まで一気に降りると、赤岩八合館のオーナーのお爺ちゃんに声をかけられました。杖を手にとって「結構登ってるねえ」あ、それは今年用の杖なんです…「お!それじゃあまた来てよ。登りがいがあるでしょ、この道は!」ニカッと良い笑顔。こういう人がいてくれると、また来たくなるんだよなあ(笑)日の出館を通過して大砂走り上部へ突入。さすがに下りは人がいるなあ(笑)昨日、新五合目〜次郎坊間で見た下りの傾斜に、あそこで耐えるには前半セーブしたほうがいいかもと考えて押さえ気味に下ります。それでも表口への分岐点まであっという間に下れてしまう。さらにもう少し進んだ先で、道の脇に寄り休憩。振り仰ぐと富士山頂から御殿場口登山道旧五合目の下まで、青空を背に蒼い稜線が圧倒的な立体感で見えている。私が御殿場口をよく下山に使う理由が、この大きな大きな景色を見られるから。表現しきれないけれど…写真に収めて、思わず山頂に向かってつぶやいた。

「素敵な、大きな風景をありがとう!」



 宝永火口を過ぎて一段と傾斜がきつくなり、大砂走りの中核部へと差しかかると…また雲の中。それでも、砂走りを下るのは富士登山の楽しみのひとつ。今回は途中で1度転倒…しかも止まりきれずのダイビングヘッド(苦笑)当たり前のようにあちこちに転がっている大きめの石には幸い当たらず、擦り傷と砂だらけになっただけで済んで良かった。11:05に次郎坊を通過し、ようやくホッと一息。最後の難関を今回傾斜を意識してペース押さえ気味で下り、大石茶屋に11:30到着。砂を払い落とし、少しのんびりしてから新五合目駐車場へ。御殿場口往復の目標を無事達成できました。

★今回のまとめ
 歩く距離の長さや小屋の少なさ、炎天下や悪天候を考えると確かに条件がきついですが、御殿場口を登り切った達成感は大きいですね。一度登ると道がわかるだけに自信がつきます。今度はもっと視界の利く時に登ってみたいと考え始めています(笑)水をどれくらい持っていくかで悩みそうですが…。普通の山にも登っているので、水筒はもっぱらキャメルバック(3L用)を愛用しています。コンビニで売っているロックアイスを目一杯に入れ、それから冷たい水を入れると結構長いこと冷たい水を飲みつつ歩けます。今回はさらにスポーツドリンクを1.5L凍らせて持っていきましたが、余りました。
 私の場合いつもなら本七合から上あたりで障害が出始めますが、2週間前に須走口を本八合目まで往復(2時間近く滞在)し、高度順化を済ませていたことと、前日によく眠ったことで高度障害の影響はほとんど出ませんでした。食べる酸素は活躍の場が無かったですね(笑)またふくらはぎの足つり対策に薄手のふくらはぎ用サポーターを初めて使ってみました。昔の脚絆(きゃはん)に代わるものですね。これは有効で、足つりも起きませんでした。
 「あっぱれ!富士登山」で管理人様や皆さんの体験記を読ませていただき、ルート上の目標物や赤岩八合館のカレー(笑)など地図に載っていない情報がとても参考になりました。ありがとうございました。

Code-B  「山とブドリ」のコーナーに2005年の富士登山記。


(管理人)
赤岩八合館を出発するあたりの記述が詩的で良いですね。雄大な感じが伝わってきます。雄大さを味わいたかったら御殿場口です。




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(07/8/1)