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 みんなの登山記2009−1
 投稿者:M.Hさん

■2009年7月17日(金)〜7月18日(土) 吉田口

昨年(2008年)はスケジュールの調整がつかず一度も登れなかったのですが、今年は 7月17・18両日で吉田口馬返〜山頂久須志神社を往復することができましたので、レ ポートします。

7月17日(金)

馬返の駐車スペースに6時30分着、他に数台の車がありました。雨が断続的に降って おり、中部電力の雷情報サイトでは比較的近い富士宮市北西部に「中雷雲」の情報が 出ていたため、しばらく模様眺め。

6時50分、雨が小降りになったのと、「雷雲はありません」の情報に切り替わったの をみて、歩き始めました。猿像や禊所跡などを撮りながらですので、馬返しを抜ける までに少々時間をとりましたが、その先は一合目鈴原社までスピードアップ。鈴原社 でも撮影を兼ねて小休止しましたが、2〜3分ほどで次の二合目富士御室浅間神社を 目指しました。この一合目から二合目までが長い道程で、杖があった方が歩きやすい かと思います。

雨が止んだため、御室浅間神社でレインコートを脱ぎました。しかし今度は霧が出て います。いよいよ雲の中に入ったか、と思いつつも、一昨年の「下界は雨でも雲海の 上は快晴」というケースもあるので、それを心の支えに歩を進めました。ただ気にな るのは、携帯ラジオから時々聞こえるノイズ。

三合目で小休止している間にランナーに抜かれました。富士登山競走の練習のようで す。この後もランナーをしばしば見かけました。まだ標高2000m未満とはいえ、勾配 のきつい道を軽々と走り抜けていくのは到底真似できません。

四合目大黒天あたりから霧がかなり濃くなってきました。そのうち再び雨です。今度 は粒が大きく、急いでザックからレインコートを取り出して着用しました。程なく四 合五勺御座石井上小屋にたどり着いたので、軒下を借りて雨宿りです。とりあえず一 安心、と思ったところへピカ!ゴロゴロゴロ……。中断して馬返に戻るにも大粒の 雨、小御岳からバスで富士吉田に戻り、タクシーで馬返へ車を取りに戻る、としても ここから小御岳までまだ距離がある、というわけで足止めを食らう格好になりまし た。そのうちランナーの方が下から上がってきて、私同様に軒下で雨宿り。やはり足 止めを食らいました。

20分ほどで小降りになったため、歩き始めましたが、先ほどからの土砂降りは道幅一 杯の水溜りができるほどで、手すりにつかまりながら道の端を水を避けながら通り抜 けました。この先も雨に降られますが、この時ほどひどい降りはありませんでした。

ここから五合目佐藤小屋までは、登山道横に広いスペースの取られているところや、 法面に石垣が組まれたところ、さらに廃屋の残っているところが散見されるところで す。全てスバルライン開通まで山小屋だったところで、往年の賑わいを想像しながら 歩くのも良いと思います。天気さえよければです。

滝沢林道に出たとたん、新たな試練が襲い掛かってきました。風です。雨粒が風に のって容赦なく叩きつけてきます。ここでこの天気では、「雲海の上は晴れ」は期待 できそうにありません。

佐藤小屋に到着すると、十数名の方々が雨をやり過ごすべく中で待機していました。 私もここでホットコーヒーを注文。エスプレッソ・コーヒーを飲みながら20分ほど様 子をみました。雨の降り方自体はさほどではないのですが、風を伴っているので横な ぐりの激しい雨に見えます。

とりあえず小御岳からの合流点である登山指導センターまで行き、次の機会に小御岳 まで車で上がってリベンジ、そうすれば吉田口・河口湖口の非車道区間の踏破はでき る、と計算をめぐらせました。小御岳からバスで富士吉田まで降り、タクシーで馬返 まで車の回収に行く、ということになりますが、馬返から登山指導センターまでは歩 いているわけですから、これで十分だと。

しかしせっかく来たのだから、と金剛杖を買いに入った星観荘で「午後は『紫外線に 注意』という予報が出ている」と聞き、小賢しい計算が吹っ飛ぶことに。予約を入れ てある八合目トモエ館まで4時間、焼印を押しながら行くと5時間、とのこと。濡れ た衣類も歩いているうちに乾くことだろう、今は金剛杖が濡れても、七合目あたりに 達する頃には乾くだろう、と踏んで、当初の予定通り決行することとしました。もち ろん、「雷だけは気をつけて。鳴り出したら近くの山小屋に飛び込むように。」と付 け加えられましたが。

経ヶ岳の日蓮上人像を撮りながら、つづら折りの道を歩いて潅木帯を抜けると、登山 指導センター横。登山者の数が一気に増えました。とはいえこの天気ですから、一昨 年の須走口より1〜2割くらい多いかな、といったところ。それでも同じように風雨 をついて登っている方々がいる、というのは心強い限り。

花小屋は昼食の営業を行っていないため、次の日の出館でウドンを注文。昼食を兼ね て休憩です。レインコートを脱ぐと一気に体が冷えます。しかし食うものをしっかり 食いさえすれば、後は動かせば体が発熱しますので、休憩後しばらく寒い思いをしま したが、岩につかまりながら登っているうちに体が暖まってきました。

この辺りになると雨粒はだいぶ小さくなり、下の山中湖、富士吉田市街、河口湖まで きれいに見渡せて、とってもいい気持ちでした。さらに薄日が差すようになって、今 度は水分の心配をすることに。3本持参したペットボトルは三合目と六合目で口をつ けただけで、まだ1本目が少し残っている状況ですが、下山道のことも考えてこれら はキープしておき、太子館でポカリスウェットを買って飲みました。

午後2時過ぎ、富士山ホテルと今夜の宿・本八合目トモエ館が見えてきましたが、も うこの辺になるとスイスイ歩くなんて夢のまた夢、ゼイゼイいいながら足を運んでい ました。それでも一旦山頂を目指すことに。ただ困ったことにまた雨です。今度も濃 霧のおまけ付き。はじめはくっきり見えていた九合目の鳥居も隠れてしまい、目安が わからないのでペースの計算もできません。

午後3時20分過ぎ、霧の中に鳥居御橋が浮かび上がりました。ダッシュ!といきた いところで、下界と同じペースで歩いていったら鳥居で息切れ。息を整えて久須志神 社に入り、金明水を買いましたが、レインコートから湯気がもうもうと立っていまし た。一昨年泊まった頂上山口屋でホットココアを飲み、頂人Tシャツ(1着\2,500) を買い、霧と風を恨みつつお鉢巡りは断念して、下山にかかりました。憎たらしいこ とには、八合五勺辺りまで下ってきたら青空が見えました。御来光館、江戸屋、トモ エ館の屋根も陽光に照らされて明るくみえます。

トモエ館にチェックインした時には辺りは良い天気となっており、これでは本当に紫 外線に要注意です。恒例の夕食前のビールを飲んでいたら、よほど美味そうに見えた らしく、私同様の単独登山の方もビールを頼んでいました。夕食は交代制で、順番に 名前が呼ばれます。メニューはハンバーグカレー。この時に翌朝のお弁当が配られま す。ツアーのお客さんも泊まっていましたが、添乗員さんの説明が面白く、しかもそ のツアーも3〜4交替で夕食をとっていましたので、説明もその都度繰り返されたた め耳に残っています。「(前略)今配られたお弁当は、決してここ(八合目)から下 へは持ち出さないでください。たまに記念に持って帰ろうとする方がいらっしゃいま すが、このお弁当は五合目を出発して30分以内に必ず発酵するというハイテク弁当で す(後略)」考えてみればハイテクでも魔法でもなく、五合目から下は夏です、前夜 に調整した弁当ともなれば当然発酵するわけです。要は添乗員さんの名調子というわ けですね。

7月18日(土)

前の日の晴れ間からすると、もう一度頂上を目指したほうがよかったかな、とも 思ったのですが、用足しにトイレへ向かえば外は風と雨。朝食の弁当はトモエ館の中 で食べさせてもらい、ついでにトン汁を頼んで体を温めました。このトン汁がなかな か良い盛りで、ちょっとびっくりです。山小屋で大盛りメニューというのは多分無い と思います(お代わり自由はあります)が、体が暖まり胃袋も満足して4時20分、 下山にかかりました。

ご来光はまず無理だろうな、と思いつつ、須走口と共用の下山道を歩いていると、東 の雲が赤く、その上が黄金色に輝きました。こういうのは御来光とは呼ばないので しょうが、霧の間に見え隠れする幻想的な光景にしばらく見とれていました。

下江戸屋分岐を間違えずに吉田口下山道に進み、獅子岩までのジグザグの道を下りま す。風は相変わらずですが、雨はやや小降りになっていました。この雨のおかげで、 砂埃は全くたっていません。所により急勾配はありますが、至って快適な下山道でし た。ツアーの団体さんを3つほど追い抜かせていただき、一気にという言葉を使って いいほど快調に六合目へ下りました。ただ、登山指導センターから経ヶ岳までの間、 風と雨が強く吹きつけてきたのは辛かったところです。

星観荘でポカリスウェットを飲んで、この山頂までの往復を報告申し上げ、人通りの 少なそうな吉田口を馬返目指して最後の一踏ん張りです。ただ、樹林帯に入ると自然 の雨除けがあるため、前日のような土砂降りもなかったこともあいまって、雨を気に せず写真など撮りながら快適に下れました。ただ前日と違うのは、登ってくる人の数 が多いということ。富士登山駅伝競走の練習の方々はもちろんのこと、私同様に単独 登山の方、さらには家族連れまで歩いていました。馬返を出ると佐藤小屋まで営業し ている山小屋がないので、家族連れというのはちょっと心配です。3合目で持参の麦 茶(500ml)を一気に飲み干しましたが、今回持参した水・麦茶・ウーロン茶のうち まだウーロン茶が残っています。雨のため、水分補給は前回までより少なくなってし まいました。

3合目でこれから登る単独の方と情報交換。山ではこれが大事なんですね。

馬返に戻ると、駐車車両は前日の4倍以上。もう余裕はなく、仮設トイレ横にまで1 台駐車している状況です。ネットなどでこの吉田口も知名度が上がっているのでしょ う。そんなことを考えながら車の中で着替えていたら、マイクロバスで団体さん御到 着。ついに吉田口ツアーまで登場したか、と感心し、山小屋再開の日も近いんじゃな いか?と甘い期待を抱きました。ただ、土曜日の8時半とまだ早い時間のため、大文 字屋跡でのボランティアさんによる接待は行われていませんでした。

総括 @富士山の「酸い」を知った登山でした。

   Aそれだけに、予定通りに事が進むことの有難さが身に沁みました。

付記 @今回焼印はどこでも×。星観荘で購入した金剛杖には予め馬返し・一合目・ 二合目・三合目・四合目・星観荘の焼印が押されてありました。四合目と星観荘の間 を空けてあり、下山時に佐藤小屋で押せるようにとの配慮ですが、残念ながら雨のた めこれも×。

   A水分補給が少なかったのは本文で述べたとおりですが、今回酸素缶を持参し ましたが使うことはありませんでした。標高1450mの馬返から歩いたことで、高度順 応が上手くいったのだと思います。

   B靴は奮発してゴアテックスのものを買いましたが、レインコートとの境目に なる「くるぶしから上」の部分は靴下が濡れたものの、靴に隠れる部分は湿ることが なく、大変快適でした。おすすめです。

   C「みんなの登山記」06-8、06-9、07-5の時は110kg超級の巨漢だった私が 30kg以上の減量に成功した結果、登下山ともかなり負担が軽くなりました。曲がりな りにも雨と霧の中山頂の久須志神社まで往復できた理由として、この「身軽になった こと」も挙げて筆を置きます。


(管理人)
あいにくの悪天候の中を山麓から一気に登頂。お疲れ様でした。土曜日の早朝は馬返しの駐車場も満車になるとのこと。吉田口からの登山を考えている方は要注意です。

M.HさんのHP。写真付きの登山レポートあり→ 西伊豆工芸のWeb Site



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(09/7/18)