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 みんなの登山記2010−21
 投稿者:I.Kさん

■2010年8月3日(火)〜8月4日(水) 須走口

「富士山の頂上に立ちたい」と思ってからはや2年、仕事の都合などでなかなか実行の機会に恵まれず、その間本サイトでバーチャル登山の日々、大変お世話になりました。ようやく今年実行することができましたので、お礼方々ご報告させて頂きます。

日時:8月3日(火)〜4日(水)
ルート:須走ルート往復
登山者:父(39歳)・息子(小学6年生)

ごく一般的なメタボ予備軍の中年親父、登山経験はなく近所の里山を歩く程度。息子は幼少から空手を習っているので基礎体力はバッチリですが登山経験はなしという2人組です。 本サイトで学んだ結果、ルートは須走・宿泊は大陽館・ご来光は山小屋でという計画で、勇んで新松田9時半発の直行バスに乗り込みました。11時少し前に新五合目に到着、雲の中で少し肌寒いくらいの天候でした。菊屋さんで昼食をとり、トイレとストレッチを済ませ12時前に出発。木立に囲まれた心地よい登山道をゆっくりと歩きはじめてすぐ、私は汗びっしょり、息子も肩で息をする始末、「こりゃまずいかも」と少々不安に。でも辛いのは最初の30分、体が慣れれば大丈夫なんですね、その後は息があがることもなく順調に歩くことができ、また雲を抜けて景色が開けたこともあって気持ちも晴々、13時半過ぎに長田山荘に到着。息子は冷凍バナナに大満足。
その後もゆっくり歩くことを意識して、「抜かれても抜かない」ペースを守り、時々雲の切れ間から垣間見える山中湖を眺めながら15時半過ぎに本日の宿、大陽館に無事到着しました。 計画する際に見晴館とさんざん迷ったのですが、高山病対策として少しでも低いところで長時間過ごすということで、大陽館にしました。17時前には夕飯も終わり、テレビもゲームもない時間は息子にとって退屈だったようですが、それでも日暮前には頂上を眺めたり、影富士も見ることができ、日没後は下界の夜景と星空に感動、結果的にご満悦でした。

翌朝3時頃目が覚めると、何やら吐き気が…。寝るまでは何ともなかったのですが、寝ている間の浅い呼吸と満員の小屋の薄い空気が災いしたようです。寝床を抜けて外に出ると、満天の星空の下、遠く東京方面まで見渡せることができて、とてもキレイな夜景でした。また、頂上まで光の筋がずーっと続いているのがとても印象的でした。4時に朝食、その後ご来光を小屋の前で見ました。大陽館では夜間登山・頂上でのご来光を推奨していないせいでしょうか、大勢の宿泊客が小屋の前でご来光を迎え、その後頂上へ向けて出発します。私たちも5時半に出発、頂上を目指しました。寝起き&高山病の体を慣らすことを念頭に、自分の足の大きさ(27cm)以上の歩幅にならないようにゆっくり歩き、6時20分頃に見晴館に到着。体を動かしたことが良かったのか、気が付くと吐き気は治まっていました。天気も良く青空の下に映える頂上を目指して一歩一歩ゆっくりと歩きながら、少し動くと息が上がること、少し休むとすぐ回復することが何だか自分の体ではないような気がして面白かったです。この辺りから息子は息が上がるペースが急激に速くなり、酸素缶の出番となりました。息子はこれを吸うととても楽になると言っていましたが、私が試しても効果は感じられませんでした。

八合目の下江戸屋に来てびっくり、大勢の下山者が途切れる事無く江戸屋の前を通るため、須走口から登っていた登山者が先へ進めずに滞留していました。誰も登山者に道は譲ってくれず、仕方なく「登りまーす!」と大声を上げながら下山者の波をすり抜けて江戸屋前を抜けると、下山道が急に狭くなるせいでしょうか、大量の下山者が詰まって渋滞になっていました。そこかしこで座り込んで休む人、「吉田口はこっち!間違えないで!」と叫ぶガイド、急に別世界に来たような感じでした。結局ここでは休めずに先へ進み、上江戸屋へ。ここから御来光館、九合目の鳥居、そして山頂がはっきりと、しかもかなり近くに見えるのですが、いやいや、ここからが本当にしんどかったです。特に九合目から先は本当に「10歩歩いて1分休む」くらいの超スローペースでした。息子もかなりしんどそうでしたが、ここまで来たら絶対頂上まで行ける、と2人で信じてゆっくり頂上を目指しました。この辺りまで来るともう周りの人はみんな同士で、「あと少し、頑張って」「息を吐いて、吐かないと吸えないよ」「もうすぐもうすぐ」などと抜いていく人休んでいる人、必ず声をかけてくれました。今時そんな場面、なかなかお目にかかれません。思わずジーンときました。そして遂に9時15分、頂上に到着しました。空は快晴で下は八合目あたりまで雲が上がってきていて、とても幻想的な景色でした。

2人に残っている体力ではお鉢めぐりは無理と判断、火口縁に立って剣が峰を眺めながら「来年はあそこだな」と。その後お土産を買って軽く食事をして10時20分に下山開始。ブル道は思いの外歩きにくいことを実感、コケたり滑ったりしながらもあっという間に頂上が遠くなることに改めて驚かされました。八合目でとうとう雲の中、小雨が下から降るような状態になったので、レインスーツとザックカバー装着、ようやく須走口下山道となり人が激減したことで私はほっとしたのですが、息子は急に人がいなくなり、しかも視界が5mくらいしかなかったので、不安になったそうです。11時半に大陽館に到着、身支度を整えていよいよ砂走りへ。大きめの石も多く、しかも視界が悪いので注意しながらでしたが、ペースをつかむと規則的に足が出てザッ、ザッと順調に下りていくことができました。ですが、中年メタボ予備軍の膝にはあまりよろしくなく、息子も砂走りに来てからしきりに「足が痛い」と言うようになり、「富士山は下山が大変」ということを身をもって体験しました。それでもペース的には順調だったようで、13時に無事新五合目に帰り着きました。菊屋のソフトクリームが格別においしく感じられました。

ひとつ気になったことですが、下江戸屋と上江戸屋の間、登山道を下りてくる下山者、特にツアーが非常に多かったです。しかも先頭のガイドさんは登山者に道を譲ることもなく、挨拶することもなく、何だかなぁという感じでした。また、下江戸屋ですれ違う下山者の多くが、よける事も止まる事もできないくらい疲労困憊していたのには驚きました。両手で金剛杖を握りながらヨロヨロと下りてくる人もいて、頂上まで行くとそんな状態になるのかと少しビビりました(結果的に私たちはそうならずに済みましたが)。

今回初めての富士登山でしたが、このサイトで色々と勉強させて頂いたことがとても役に立ちました。特に色々と悩んで決めた「山小屋で御来光の須走コース」は大正解でした。夜中の寒い気温の中、ヘッドライトだけで足場の悪い登山道を歩くのは初心者には大変だと思いました。その上雨でも降ろうものなら、きっと気力が削がれてしまうでしょう。樹林帯あり岩場あり砂走りありの変化に富んだ須走コースは、初心者が日中に楽しむコースとして最適だと思います。本当は前の週に登山予定だったのですが、運悪く気圧の谷の影響で悪天候が予想されたので、急遽予定を変更しました。その時大陽館さんにとても親身になって対応して頂き、本当に助かりました。あと、新松田からの直行バスは空いていてお勧めです。人気が出て混むようになったらイヤですが、利用者が少なくて廃止になってしまってはもっとイヤなので(往復とも乗客は数人でした)少しだけ宣伝しておきます。来年はどのコースで登ろうか、今からわくわくしています。 ありがとうございました。


(管理人)
山頂での御来光にこだわらなければ富士登山は格段に快適になります。 青空に向かって登っていくのは気分が良さそうですね。



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(10/8/13)