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  私の富士登山記・24

 2005年8月6日(土)〜7日(日)・河口湖口

 8月6日の夜に河口湖口から徹夜で登ってきました。飲み会の仲間と会社の同僚の混成グループで男ばかりの総勢9名。そのうち富士登山が初めての人が6名いるので、「山頂でご来光」を目的としたスケジュールを組みました。夜間登山は楽ではないのですが、たった1回だけ富士山に登るとしたら、山頂でのご来光というオプションを希望する人が多いのです。週末で山小屋は猛烈に混んでいるのは必至なので徹夜登山にしました。


 4台の車に分乗して18時にドギーパーク横のシルバンズに集合。私はこれまで何度も一緒に登っているAさんの車に乗せてもらいました。全員が集合すると、会社の先輩のHさん(富士登山経験豊富)が4台のトランシーバーを取り出しました。受け取った時は荷物になるのでは?と思ったりしたのですが、これが後で連絡用に猛烈に役に立 ちました。Hさんは他にもGPSやザック内蔵給水システムを装備。マラソンの前にはパスタを食べるのにあやかって、みんなでシルバンズでパスタの夕食(一人だけピザ)。その後、マイカー規制の臨時駐車場である北麓公園に移動してシャトルバスに乗り込みました。運賃は1600円。当初は片道料金だと思っていたので高いなあと感じましたが、実は往復料金だと知ってちょっと得した気分になりました。19時に北麓公園を出発して約50分で五合目に到着。

 一番大きな五合園レストハウスでのんびり高所順応をしようと思っていたのですが、なんと週末なのにそこは20時すぎに閉店。そこで、富士急雲上閣で準備。問い合わせの多いコインロッカーを調査しに3階へ。混雑した週末ですが設置されている70個ほどのコインロッカーのうち半数ぐらいは空いていました。けっこう余裕があるみたいです。予定では21時に出発予定でしたが、みんな待ちきれなくなったようなので20時半に登山開始。


 天気は晴れで星空がきれい。ほぼ無風。気温も穏やか。絶好のコンディションです。あまり寒くない分、うっすら靄がかかっていて、下界の夜景がやや見づらいのがちょっと残念。最初は下り坂。どうしても初めての人は早足になりがちなので、意識してだらだらとゆっくり歩こうとしたのですが、みんな気持ちが高揚しているせいか、ついつい速くなってしまいます。今回は私がリーダー格なのでここで厳格にペースを落とさせるべきだったのですが、結局、ちょっとうかれた感じで泉ケ滝へ。ここから登り坂。急にみんなが無口になりました。やがて六合目の登山センターに到着。そこから見上げると、七合目からの山小屋群の照明がずっと続いています。「明るいなあ」と改めて感心しました。

 整備されたジグザグ道を1時間ほどで七合目の花小屋。そこから岩場の登りになりますが、早くも混んできました。そこからは、ペースが上がらないUさんをフォローしていたので、他の人たちとさっそく離れてしまいました。ここで役にたったのがトランシーバー。上の山小屋で待っているメンバーに先に行くように連絡ができました。それにしても、すごい混雑です。ちょうどバスツアーのみなさんが山小屋を出発する時間帯に直撃してしまったようです。七合目の途中でHさんと合流し、そこからは疲労困憊気味のUさんをHさんに託して、私は先に進みました。結局、Uさんは八合目の太子館でリタイア。そこまで登れば下山道へバイパス道を使って移動できるというHさんの判断です。さすがに登山道の地理を良く把握されています。私は初心者には河口湖口を推奨していますが、確かに七合目の花小屋から八合目の太子館までの間にリタイアすると、自力では結局、登山者のひんしゅくを買いながら岩場の登山道を逆に下りていくことになります。(山小屋に泊まっていれば、ブルドーザー道などへ案内してもらえますが)他の登山道ならどこからでも簡単に引き返せるので、この点だけは河口湖口(吉田口)登山道の難点と言えましょう。

 他のメンバーは、何度も富士登山経験のあるAさんが率いているはずなので、特に心配はしていませんでしたが、ちょっとグループがばらけすぎの感は否めませんねえ。Hさんはスリムで登るのが速いので途中で追い抜かれてしまいました。相変わらず混雑度は猛烈。こんなに混んだ状態は初めてです。でも、だからこそ、バスツアーの実態を感じることができて、富士登山情報サイトの管理人としては、まことに貴重な体験だなあと思いながら登っていました。本当なら山小屋での布団1枚3人という超詰め込み状態も経験するべきでしょうけど。

 富士山ホテルの下50mあたりから動きが止まってしまいました。登山道に6列ぐらいでぎっしり詰まってしまいました。原因は富士山ホテルへの入り口が人間一人がやっと通れるほどの幅しかないせいです。つまり、6車線が1車線になるのですから、大渋滞はあたりまえなのです。

 その時「らくー!!!」という男性の叫び声。落石が発生したのです。しかし暗くて落石が確認できません。とにかくみんな一斉にしゃがみこみました。パニックというのはこういうことを言うのでしょう。とにかく落石が確認できないので、「もしかしたら自分に当たるのかなあ」という恐怖心がわき起こりました。落石は途中で止まったらしく10秒後にはみんな安堵して立ち上がりました。先に進んでいたHさんは落石が落ちてくるのを見ていたそうです。30センチ大の大きさだったとか。あとで「こわかったよー」と苦笑していました。おそらく、誰かが蹴り落としたのだと思いますが、登山道からあふれるほどに渋滞していてはそういうことが起こる危険度は当然大きいわけです。事故が発生する前にもっと人が流れるように改善するべきでしょう。ようやく富士山ホテルに到着すると、かなり混雑していて人の流れが悪く、それでますます下で渋滞していたようです。

 ここで急に風が強くなり寒くなってきました。河口湖口(吉田口)登山道側はちょうど風の陰に隠れていたようです。この夜は須走口から登った人はけっこう寒風に苦しんでいたのかもしれません。「こんなに暖かいのなら防寒具が無駄になるなあ」と思いながら登っていたのですが、とんでもありません。持参している防寒具を全部着込みました。この時点で私はグループの一番後ろを登っていました。富士山ホテルにはとてもきれいなトイレが完成していました。あとでいただいたメールによると「トイレ内の休憩5000円」と張り紙が張られていたそうです。確かに内部はきれいで広く、これなら悪天候の時などはついついこの中で休憩しようとする登山者は多そうです。でも、それでは高いお金をかけた富士山ホテルは丸損ですからねえ。注意されて気まずい思いをしないように。夜間に休憩したいのなら、山小屋に素泊まり料金を払って休みましょう。

 すでに時間は午前3時半。渋滞と疲労で、ご来光までに山頂へ行くことは無理そうです。下山道の方を見ると、暗闇の中に懐中電灯が連なったグループが5つほど。ツアーのグループが、なんとかご来光までに山頂へ行こうと逆に登っているのです。この「禁断の下山道登り」は、話には聞いていましたが、本当にやっているのですね。ずるずる滑りやすい砂礫の下山道を登り返すのは大変ですが、ガイドさんは今日の混雑では登山道を登っていては間に合わないと判断したのでしょう。混雑した狭い岩場の登山道を登らせると数十人の参加者を把握しきれなくなるという理由もあったかもしれません。

 やがて、少しずつ夜が明け始めました。するともはや山頂でのご来光はあきらめて、良い場所で見ようという人が次々に登山道の脇に腰掛け始めました。私はこの間に少しでも登っておこうと思い、登り続けました。どうやらこの間にメンバー数人を追い抜いてしまっていたらしい。薄暗い内に追い越してしまったのかもしれませんし、少し明るくなった時も、私は黄色のレインスーツを着てすっかり雰囲気が変わっていたので、他のメンバーが気づかなかったのでしょう。私も気づきませんでした。また、私がトランシーバーのアンテナをたたんでいたせいで受信ができず、それで他メンバーからのコールを受けられませんでした。初歩的ミス。しかし、高地ではこういうぼーっとしたことをしてしまうのです。ご来光は雲のせいで、すっきりしたものにはなりませんでしたが、途中、雲海が金色に染まる瞬間がありました。


 太陽が昇ると、またみんな一斉に山頂をめざしだしたので、登山道の渋滞が始まりました。三回目の登山で山頂付近で大渋滞にはまったことがありますが、それ以来のことです。私は何度も富士山に登っているうちに、たとえば五合目を夜明け前にスタートするといった「楽な登山」をするようになっていました。その結果、混雑した状況を強く認識せずにあっぱれ!富士登山を運営しておりましたが、今回の経験で、よりバスツアー参加者の方々の苦労を感じることができたので、それは良かったと思いました。



 ついに登頂。9時間以上もかかってしまいました。山頂もすごい混雑。私はメンバーの中で2番目の到着でした。ちょうどキリンの生茶の宣伝隊が記念撮影中。それからしばらくしてBさんが到着。三人で混雑した人をかきわけて火口を見に行きました。そして私とBさんと二人でお鉢巡りをすることにしました。天気は穏やかですが、もう二人とも疲れているのでとにかくペースが遅い。やがて富士宮口側に到着。ちょうど富士登山駅伝が開催される日だったのですが、選手が山頂まで駆け上がってくるのはまだ数時間後。



 Bさんが郵便局で手紙を発送している間、私は頂上富士館でカップヌードル。軽い頭痛と吐き気。あまり体調は良くありません。しばらくしてからBさんが手続きを終えて来たので、剣が峰をめざします。今年は富士宮口山頂に新しいトイレを建設中でした。その代替となる6基ほどの簡易トイレにはそれぞれ6〜7人ぐらいの行列ができていました。


 測候所へ至る急斜面、馬の背もすごい混雑。苦労して登り切ったらまた行列ができていました。なんと、剣が峰の石碑のそばに立って記念撮影をするための行列です。これまた初めての経験です。やはり石碑と一緒に写真を撮りたいので行列に並びました。本当に混んでいる日はこんなこともあるのですねえ。ようやく順番が来て写真撮影を済ませた後、Bさんを測候所脇の展望台に案内。ここが「民間人が来られる日本最高地点」なのです。誰もおらず、雄大な景色を堪能できましたが、我々が入っていくのを見たのでしょうか、他の人たちがどんどんやってきたので一気に混んできました。

 測候所を出発しようとした時に、トランシーバーに他メンバーからの連絡が入りました。たった今、山頂に到着したとのこと。そしてとにかく眠いから途中の山小屋で眠り たいというので、八合目の胸突江戸屋を指定して、先に下山してもらいました。途中、電波望遠鏡の脇を通りましたが、測候所が無人になったせいで、電力の確保が困難になったため、電波望遠鏡の運用を近々終了することを下山後に知りました。

 結局、お鉢巡りに3時間もかかってようやく河口湖側山頂に戻り、飲料を購入してから下山開始。途中の胸突江戸屋で眠っているメンバーを確認して、先にBさんと下山しました。なお、江戸屋では変なうるさい外人がいたせいで、あまりよく眠れなかったそうです。なにやら足を痛めたので何か乗り物で下山したいと山小屋の従業員に訴えていて、結局、適当にあしらわれたという、そんな内容。こういう登山者の相手もしなければならない山小屋の人は大変です。

 すでに足がかなり疲れていたせいで、下山が本当にきびしく感じました。砂埃もけっこう多く、防塵マスクにしておいて正解。先月の御殿場口の下山がいかに楽だったかと思い出し、ぶつぶつグチをこぼしながら下山を続けました。昨年はこんなにきつくは感じませんでしたが、今回はとにかくしんどかったです。ようやく下山道が横方向になり、落石防止トンネルを2つすぎたあたりで、胸突江戸屋に寝ていたメンバーが追いついて きました。途中、六合目の登山道の分岐点で、富士登山が初めてのメンバーに、ここから登ったことを説明。五合目では先に3名が待っており、無事に全員集合。おせっかいな外人のおっちゃんに記念写真のシャッターを押してもらい、それからまもなくシャトルバスで北麓公園へ。ようやく富士登山が終わりました。しかし、高速道路が渋滞していたので、特にドライバーはまだまだ苦行が続いたのでした。

19:00 北麓公園をバスで出発
19:50 五合目に到着
20:20 登山開始
20:52 六合目
21:50 七合目花小屋
0:14 八合目太子館
1:40 元祖室
3:00 富士山ホテル(休憩30分)
3:33 本八合目出発
4:47 御来光
5:38 山頂到着
6:15 お鉢巡り出発
6:51 富士宮口山頂(休憩30分)
8:10 剣が峰(滞在15分)
9:23 河口湖口側へ戻る
9:35 下山開始
10:21 八合目江戸屋(分岐点)
11:55 七合目トイレ
12:50 六合目
13:24 五合目へ到着
13:40 シャトルバス
14:19 北麓公園
登り9時間18分
下り3時間49分

★教訓:超混雑時の河口湖口のすさまじさを知る。
(2005/9/8)


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