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私の富士登山記・30


 2010年9月1日(水)~2日(木) 富士スバルライン

 やはり登山記はすぐに書かないとだめですね。今回は年が変わってからようやく書き始めたのですが、かなり忘れてしまっています。デジカメ写真を見て、あれこれ思い出す努力をしながら書いている作文です。

 前回は須走口から日帰り登山を試みましたが、今回は途中で一泊してのんびり登ることにしました。久々に富士宮口から登ることを考えましたが、のんびり構えているうちに9月になって、登山道が通行禁止になってしまったので、結局、須走ルートか吉田ルートを富士スバルライン五合目から、の二者択一。それにしても、なんで行政的に「富士スバルライン五合目」と呼ぶことにしたのでしょうかねえ。確かに「富士スバルラインを登ってくるのだから」という理屈はわかるのですが、それなら、富士宮口は「富士山スカイライン五合目」、須走口は「ふじあざみ道路五合目」と言い換えないと統一感がありません。「河口湖口」の表記に長年慣れているので、しっくりこない感じがまだ強く残っています。
 結局、須走ルートは昨年登ったので、今年は吉田ルートを登ることにしました。前々回の登山では横浜から河口湖駅までバスに乗って行ったのですが、乗車時間がちょっと長く感じたので、今回は電車を乗り継いで行きました。多少、交通費は増えますが仕方ない。私は身長180センチと大柄な体型なので、ずっとバスの狭い座席に座っていると窮屈でつらいのです。

 自宅を午前10時半に出発。横浜線で八王子駅へ。そこから特急で大月。12時半に富士急行に乗り換えます。フジサン特急の特急券は300円。乗客は外人さんが10名ばかり。それから、途中の都留文科大学の女子学生が数名。発車してすぐに検札に来た女性の車掌が、しばらくして、車内販売の売り子としてワゴンを押してきたので、ちょっとびっくりしました。人件費節約ですね。
 やがて、山々の間から富士山が見えるようになりました。やや靄がかかっている感じですが、天気は良好。このまま好天が続いてくれることを祈ります。目的地の河口湖駅に到着したのが13時半。20分の待ち合わせで五合目行きのバスが出発。最前列の一人席に陣取りました。富士山は山頂まで良く見えます。
 1時間の乗車で快晴の五合目へ到着。平日でもそれなりのにぎわいを見せています。古御岳神社へ行く途中の「こみたけ売店」の脇にコインロッカーが設置されていました。その脇には「名物・噴火カレー」の立て看板。コインロッカーは、富士スバルライン五合目では、富士急雲上閣の中にたくさんおかれています。



 今回は事前に宿を予約しませんでした。とりあえず決めていたのは七合目の山小屋に泊まること。9月の平日なので、七合目なら飛び込みでも問題なく泊まれるはずです。山頂での御来光拝観が目的なら八合目以上の山小屋にするべきですが、寒い思いをしてまで山頂で御来光を見る気は今回もありませんでした。とにかくなんとか登頂することが第一の目的です。

 二年ぶりの吉田ルートです。最初は緩い下り道が続きますが、最近はすっかり運動不足なので、意識してゆっくり登ります。登山バスツアーに参加された方から「自分が参加したツアーでは序盤からガイドがハイペースで歩いた。負荷をかけて身体を高地に慣れさせるためなのだそうだ」という報告をいただきました。そんな説は初耳だったのでびっくりでした。「それは絶対、ちゃうやろ」と思いました。投稿してくれた方も全く納得されていないようでした。

 スタートしてから15分で泉が滝の分岐点。前回は六合目の星観荘に泊まるため、下り道へ進みましたが、今回は登り道へ進みます。20分ほどで六合目の安全センターに到着。 山頂までよく見渡せます。整備されたジグザグ道をのんびり歩いていく内に、七合目の山小屋群が近づいてきました。
 さて、どこに泊まろうか。何軒か通りすぎて、やがて富士一館へ到着しました。ここが今年から改装してきれいになったのは知っていましたが、実際に見ると本当にきれいで快適そうなので、ここに泊まろうかなと思いました。そして決め手になったのが客引きをやっていたお兄さんの態度でした。彼は全然強引ではなく「よろしかったお泊まり下さい」という優しい感じで話しかけてきて、とても好印象だったのです。そろそろ太陽が沈みそうな時間帯だったので宿泊することに決めました。でも、「泊まります」と返事したら、そのお兄さんは、ちょっとびっくりしてました。そもそも富士山に宿泊の予約をせずに来る人が少ないでしょうし、山頂での御来光拝観が前提ならもっと上部の山小屋に泊まるのが良いわけです。そして9月の平日ということで八合目の山小屋も余裕があるはずです。そういう点で、私はかなり珍しい客なのだと思います。その日の宿泊客は私一人でした。でも、この時期の平日、七合目の山小屋ならありがちなことなのだろうと思います。



 きれいな寝床に案内され、荷物の整理をした後、夕食のお呼びがかかりました。17時半にカレーライスの夕食を食べ、その後、外に出て影富士を眺めた後、早々に寝床に入りました。しかしこの時点はまだ19時。全然眠くありません。外では休憩する登山者たちで賑わっています。その声につられてまた外に出てみましたが、太陽が沈むと一気に体感温度が下がります。時間的に、まだ八合目の宿を目指している人が多かったのですが、この暗さと寒さの中を、あと2時間ほど登るのは大変な事だなあと思いました。
 寒くなったので寝床へ戻りました。やがて山小屋のスタッフたちも夕食となり、楽しそうに談笑しています。特にリーダー格の人の声が大きく、寝床まで響き渡っていましたが、私は密閉式のイヤホンを装着して音楽を聴き始めたので全く影響なし。のんびりと眠くなるのを待ちました。結局眠るまで3時間ぐらいはかかったと思いますが、用意していた音楽やラジオの録音を聴いていたので退屈しませんでした。

 翌朝は4時半に起床。5時に山小屋を出発。少し登ったところで御来光を拝観しました。5時8分。とてもきれいでした。上部を見れば、鳥居荘が朝焼けで赤く染まっていました。 天気は快晴。ゆっくりと登っていきます。岩場の付近は、前回は登るのが辛かったのですが、今回は七合目に泊まって休養を十分に取ったおかげで、あまり苦しさも感じずに登り切ることができました。平日とあって登山客はまばら。

 やはり登山記はすぐに書かないとだめです。本八合目まで、これといって思い出すことがありません。ただ、10人ほどですが、登山道を下りている人がいて、どうして下山道を下りないのかなあ、と思ったぐらいで。それと、すこぶる快適な登山をしたことぐらい。知人から「管理人さんの富士登山はいつも晴れていますね」と言われましたが、そもそも天気が良くないと登りませんからねえ。雨中や寒い夜間に登るのは辛いです。また、落雷が特に怖いので、それが収まる時期まで登るのを待っているうちに9月になった、という事情もあります。でも、これも富士山に近い首都圏に住んでおり、また単独登山だからこそ可能なことです。遠方の方だとそう簡単にスケジュールを変えられませんし、グループ登山ですと、ようやく各人がスケジュールを調整して集まるわけですから、多少の悪天候でもがんばることになります。

 本八合目のトモエ館に到着。今年も、店内に飾ってある木村拓哉さんのスマスマ富士登山の際の写真を見て、高地まで登ってきた事を実感。体調が良いので、休憩なしに登り続けました。7時半。ちょうど、御来光拝観を終えた人たちが下ってくる時間帯です。それでも、ピーク時のように下山道いっぱい、というわけではなく空いています。

 今回、吉田ルートを選んだ理由として、御来光館のライブカメラを見てみたい、という事がありました。八合五勺の御来光館は、営業期間中、USTREAM(ユーストリーム)を利用して、富士山から見た下界、雲海の様子をライブ映像で配信しているのです。山麓から富士山を撮影したライブカメラは多くありますが、その逆はあまりありません。また、twitter(アカウント@goraikoukan)を使って、天候などを実況しているのです。私は8月9日に御来光館のサイトがリニューアルされていることを知り、その素晴らしさに感動して「新着情報」で紹介しました。また、8月12日に台風が接近した時は、御来光館がホームページ、twitterで最新の情報を配信しているので、これも紹介しました。それによって多少なりとも御来光館のサイトへのアクセスが増えたようです。私としては、これだけ有用、有益な試みをされているのだから、少しでも多くの登山者に知ってもらいたいと思いました。そこで、トップページに御来光館のバナーを勝手に貼りました。(もちろんクリック報酬など発生していませんので念のため)。そうしたら、御来光館の担当者さんが当サイトのバナーを貼ってくれました。ありがたいことです。



 そもそも、御来光館は八合五勺という、山頂での御来光拝観には非常に有利な場所に位置しているので、現在の富士登山ブームであれば、特に何もしなくても容易に大勢の宿泊客を集めることができます。ですから、サイト運営は宣伝、PRのためというよりも、むしろ、登山客への情報発信という目的の比重が大きいのです。そういうご主人の心意気を応援したい気持ちになりました。吉田ルートは携帯電話(特にNTTドコモ)が繋がりやすいので、携帯端末でtwitterを使えば、御来光館が発信する最新の情報が読めます。多くの人が携帯電話を持参して登っている現状では、有効な情報発信の手段だと思います。
 御来光館では念願の(というほどでもないですが)ライブカメラを後ろからのぞいて満足。普通のビデオカメラを三脚に取り付けているものですが、「ほほう、これがあの映像を撮影してくれているのか」と妙な親近感を感じたりしました。私はこのライブカメラの存在を知ってからは、よくアクセスするようになりました。そこに映し出される雲海を見ると、富士山の八合五勺が、ものすごく身近に感じます。不思議な感覚です。サイト運営の担当者さんとは何度かメールをやりとりしたので、ご挨拶しようと思ったのですが、その方は山麓で作業をしているのだそうです。確かに接客などで忙しい山小屋では、あれだけ頻繁な更新作業は無理だとすぐに納得しました。

 8時45分。山頂到着。本八合目から1時間15分で登り切りました。これでも決して速いわけではないのですが、ピーク期の大混雑を考えれば、かなり短い所用時間です。2007年は御来光前の大混雑に巻き込まれて本八合目から3時間かかりました。

 久須志神社に入って無事の登頂を感謝。ふとみると、片木盆(へぎぼん)にお銚子とかわらけの盃が載っているのが見えました。そばにあるのは「高齢者登拝者名簿」です。富士山の奥宮と久須志神社では、70才(数え年)以上の参拝者が記帳すると、盃に御神酒を注いでもらい、飲み干した後は、その盃を火口に向かって投げることになっています。確か、扇子も授与されるはずなのですが、私が撮影した写真には写っていません。当サイトでは、そのように説明している文章があるので、ちょっと不安になって確認のためにネット上を調べてみたら、2010年に登山された方のブログに、奥宮でもらった扇子の写真があったので安心しました。70才を過ぎても富士山を登頂できる体力を維持できるのはとても幸せなことだと思います。



 天気も体調も良好。雷も全く心配がない雲の状態なので、2006年以来、久々にお鉢巡りに出かけました。時計回りに歩いて25分かけて奥宮に到着。すでに奥宮も頂上富士館も閉まっていました。そのまま剣が峰の方に歩いていくと、久々に「コノシロ池」を見ました。7月初旬に登れば、雪解け水が集まって池のようになっているのを見ることができますが、9月になっても「それらしき物」が残っていたのに驚きました。
 そして、難関の馬の背。ここで、中年の男性から声をかけられました。とても明るい性格の男性で、剣が峰に登り切るまで、ずっと話し続けました。確か焼津の人で、名物のB級グルメを紹介してくれたのですが、この登山記を書いている時点では、ど忘れしてしまいました。また思い出したら追記します。この、おっちゃんのおかげで退屈せずに登り切ることができました。



 山頂で、四国松山の銘菓「六時屋タルト」を記念撮影してみました。なぜ、これを持ってきたかといえば、私の実家が松山の近郊にあるのです。登山の数日前に帰省した際、購入したものを持参しました。このお菓子は柚子風味のあんこを白いカステラのような生地で巻いてあるもので、なかなかおいしいです。登山中の糖分補給の意味も兼ねて用意しました。六時屋だけでなく、一六本舗、ハタダ製菓など、いろいろな和菓子屋が作っていますので、松山に立ち寄られたらぜひご賞味下さい。でも、実際のところ、一六本舗の製品はデパートの物産コーナーによく置いてあります。例えば、横浜高島屋でも売っています。だから、わざわざ帰省しなくても買うことはできるのですがね。ポテトチップのアルミ素材の包装に比べてしっかりしているらしく、あまり膨れませんでした。その後、測候所の展望台に登り、「日本一高いところにいる人」になって雄大な景色をしばらく眺めました。測候所ではauの携帯端末は感度0でした。残念。でも、奥宮の方へ戻れば通話ができるはずです。

 約100分でお鉢巡り完了。10時半に下山開始です。途中の標識には「吉田ルートの黄色」と「須走ルートの赤色」が併記されていました。前年は「須走ルートの赤色」ばかりが八合目まで続き、吉田ルートを下ってスバルライン五合目へ戻る人々にとって、すこぶるわかりにくくなっていました。そもそも本八合目の「大行合」(おおいきあい)から山頂までは須走口に属するのです。だから赤い標識だけで正解ではあるのですが、そんな事項に杓子定規にこだわられても、下山者にとっては混乱の原因でしかありません。当サイトへのメールでも、その点の不備を指摘する声が多かったのですが、改良されて良かったと思います。それでもまちがって須走口へ下山する人が後を絶たないのですが。



 八合目の分岐点の標識はあいかわらず地味で、目立ちにくい感じです。ちょっと霧がかかったりすると、下山者は見落としてしまう可能性が大きいです。そこで、分岐点から須走ルートを少し下ったところに、間違いを知らせる標識が立てられました。「○」「×」の表現は良いと思います。 これでも間違えてしまったら、もう仕方ありません。

 七合目の大陽館にたどり着きました。前年は面白いイラストがたくさん掲示してあったのですが、今年は撤去されていました。面白かったのに。ちょっと残念です。ここでスパッツを装着して、いよいよ砂走りに突入です。前年は、砂がふかふかで下りやすく、思わず笑みがこぼれるほどに楽しかったですが、今年はどうでしょうか。
 残念ながらちょっと砂が重く、ウキウキ気分にはなりませんでした。自衛隊員、男女一名ずつが下っているのを追い越していきましたが、すぐに疲れてしまって、何度も立ち止まって休んでしまいました。結局、コンスタントにゆっくり確実に下山した自衛隊のお二人に途中で抜かれてしまいました。今回は砂払五合目の吉野屋までが長く感じました。「砂払五合目」といえば、二年ほど前に配られた富士登山のパンフレットに「砂五合目」と書かれていたのを思い出します。すごい誤植。でも、わからないではないなあとも思います。まさに砂まみれの苦行ですから。

 今回は疲れていたので、吉野屋の低い石垣に座ってしばらく休憩していました。もう、店じまいの時期が近いようで、かなり片づけた状態での営業です。ちょっと気持ちが悪くなっていたので、炭酸飲料を購入。下山時は脳味噌が揺られ、衝撃を受けるので気持ちが悪くなるという説を聞いたことがありますが実際はどうなのでしょうか。
 吉野屋から樹林帯を35分ほどかけて下り、古御岳神社で無事の下山を感謝。そこから数分でようやく山荘・菊屋に到着。今回も生ビールで乾いた喉を潤し、きのこピラフを食べた後、登山バスで御殿場駅へ。国府津経由で横浜へ戻りました。まあ、これといって、事件のようなものもなく、無事に下山できてなによりだったと思います。

(1日目)
14:35 五合目到着(標高2305m)
14:48 五合目出発
15:02 泉ヶ滝(2280)
15:22 安全センター(2390)
16:13 花小屋(2700)
16:35 富士一館(2820)
(2日目)
5:02 富士一館出発(2820)
5:24 東洋館(2900)
5:56 太子館(3050)
6:04 蓬莱館(3100)
6:38 白雲荘(3200)
6:57 元祖室(3250)
7:27 八合目トモエ館(3370)
7:44 御来光館(3450)
8:16 九合目 迎久須志神社(3520)

8:45 山頂到着(3720)
9:39 剣が峰(3776)(休憩22分)
10:30 お鉢巡り終了、下山開始
11:06 八合目 江戸屋(分岐点)(3270)
11:33 大陽館(2925)(休憩38分)
12:19 砂走り(2890)
13:02 砂払い五合 吉野屋(2230)(休憩20分)
14:00 新五合目到着(1970)

登り5時間20分
下り3時間30分



★教訓:登山記はすぐ書かないと忘れてしまうことを知る。

(2011/2/9)


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