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 みんなの登山記2009−42
 投稿者:KENさん

■2009年8月29日(土)〜30日(日) 富士宮口

こんにちは。8月29・30日、山室を利用して富士山に行ってまいりました。静岡県西部在住の48歳中年男です。事の始まりは昨年のガソリン高騰です。毎日のように値上がりを続ける石油製品に悲鳴を上げた我が奥様が小遣いの値下げを切り出しました。金額は言えませんがそんなに多くはない小遣いを減らされたくない私は自転車での通勤を提案したのです。交渉の末何とか自転車を購入してもらい会社への通勤が始まりました。会社までの距離は片道15kmあります。自転車といっても今流行のロードやクロスバイクと違いジャスコのバーゲンで買ったパパチャリです。往復2時間の死のロードの始まりです。会社の同僚に何故かを尋ねられた時に出た答えが「富士山に登るトレーニング」でした。季節は冬になり残業が増える頃になると石油価格も安定し、妻から自動車通勤の許可も下り富士登山の話は会社で忘れられようとしていました。しかし、今度は世界同時不況です。製造業に勤務する私の給料は残業カットにより10万円以上手取りで低くなり当たり前のように小遣いは減りました。毎日、約一箱の煙草を買い続けることも困難になってきました。考えぬいた末医者の「禁煙外来」にかかってみることにしました。経口薬で禁煙チャレンジです。最長3ヶ月間は保険適用とのことでしたが、3週間弱で薬を飲むと気もちが悪くなり案外簡単に禁煙成功です。禁煙した私に会社の同僚がまた理由を問うてきます。とっさに出た答えが「富士山に登るから」でした。季節はすでに春。もう富士山に行かないわけにはいきません。ネットでこのHPを知り、入念な下調べを始め、自転車通勤も再開しました。奥様に一緒に行くことを勧めるとまんざらでもなく、更に奥様の友人2人も行きたいとのこと。4人が揃ってド素人では不安です。会社の富士登山経験があるという同僚を口説き5人での挑戦が決定しました。日程は女性陣の仕事に併せ(月締めや経理処理等会社で重要な人たち・・・男二人はいつ会社を休んでも問題ない・トホホ)上記のようになりました。男女とも旬はとっくに過ぎており体力気力共に不安が先走ります。安全を最優先して一人でも無理な場合や天候不順な場合には全員下山するなど事前にベクトル合わせを行いました。山室は9合目の「万年雪山荘」に予約をして準備万端です。予約時は「山も終わりだから空いていて大丈夫ですよ。」とのことでした。が、行ってみると全く大丈夫ではなかったのです。では、5人を紹介します。

私(男)学生時代は運動部所属。若い頃は波乗りに明け暮れたが、現在無趣味で酒が大親友。
奥様(女)36歳 派遣社員としてキャリアを重ねる一方呑み会の幹事を常にこなしている。
K美(女)36歳 独身の貴族看護師。妻の友人。年に2〜3回は海外旅行をこなしている。
K子(女)36歳 独身の経理担当。妻の友人。彼女がいないとこの会社事務処理不能に陥る。
T須(男)36歳 4月の富士にアイゼンなしで行く無謀者。年に2度の大事故でICU帰り。

8月29日(土)天気はマアマア朝6時30分に自宅を出発します。K美とK子とは途中で待ち合わせです。二人を乗せて東名へ乗りました。ETC割引の影響でやはり高速は混んでいます。予定では11時富士宮口5合目着、12時に登坂開始でしたが静岡の手前で事故情報が掲示板に表示されています。ICに着くと大きな掲示板に「事故・ここでおりろ!」とあります。しかたなく下道に進みましたがいつも以上に混んでいます。だらだらと走りながらFMで事故がどんなにひどい状況か聞いていると清水周辺で事故があったが、事故処理は終わっているとのことです。「ヤラレタ」と思いながら清水から再び東名に合流しましたが、かなりの時間ロスです。こんなこともあるさと考え直して富士宮市内で「ウミャ〜富士宮焼きそば」を食べてから5合目に向かいました。順調に富士山スカイラインを登っていくと山下に向かって路上駐車が連なっています。よく見ると路肩に上の駐車場から何km地点かを示す小さな看板が立てられています。気づいた時に3.5kmの表示でした。驚きながら更に上へ進むと駐車場整理の人が「今は多分上に車を止められますから行ってください。」と言ってくれました。おそるおそる登っていくと登山道入り口から20mほど進んだところに停めることができました。駐車係りの人に聞いたところ、丁度30台くらい一気に下山した直後で運がよかったのだと教えてくれました。この日の路上駐車は最長6kmだったそうです。来る途中の渋滞も何でも駐車場よければ全てよしです。情報ですが、混むことが予想される日は夕方の6〜7時ころ到着すると案外スムーズに停めることができるということでした。(保障はできませんよ。)約1時間の高度順応をすませ13時30分登山開始です。上り始めてすぐの2億円厠で用をたし(ふぉんとに2億もかかるのかいな?)ゆっくりと歩みを進めます。おっ発見、靴をガムテープでぐるぐる巻きにして下りてくる人がいます。さらにコンビニ袋のようなもので縛ってくる人。バンダナみたいな布で縛ってくる人。6合目までに少なくとも5人の靴底が取れています。やっかいなことに靴底剥がれは片足にとどまらず必ず両足の底が剥れるようです。T須君、指を指して笑っていますが彼の右足の踵も10分後には口が開いてきてしまうことを彼はまだ知りません。6合目の雲海荘・宝永山荘の前はすごい人達です。出発が遅れたこともありここは止まらず新7合目を目指します。私が先頭できましたが。ペースが早いと文句を言われ奥様と交代します。しかしすごい人です。登山道が上りも下りも同じなのですからしかたないのですが、想像していたよりもはるかに登山道が狭いのです。道というより路地です。あぜ道です。所々で立ち止まってしまいます。山下から上に向かって雲が流れ眺望はあまりよくありませんが、暑くはありません。歩く速度と気候が微妙にマッチしてこの辺りは皆余裕です。K子が目前を歩くT須君の踵を見て叫びました。「T須さんっ靴が剥れてるー。」彼の登山靴購入時期は10数年前だそうです。見た目はよくても劣化は進行していたようです。でも誰にもどうすることも出来ません。ベロリンチョと剥れませんようにと念じながら9合目を目指します。立ちとまり休憩を挟みながら新7合の御来光山荘で一休みです。私は一番後ろを歩いていたので気がつきませんでしたが女性陣の顔つきが出発直後と明らかに違います。上り始めはカメラを向けるとにっこり笑ってガッツポーズをしていたのに7合目でカメラを向けてもニコリともしません。怒っているかのようにさえ見えます。様子を伺い、さりげなく体調を聞いたりしてみるとまだ頑張れそうです。体勢を整え長い休憩にならないように出発です。一度の休憩を短くして回数を増やす作戦にしました。8合目の池田館では当日宿泊する人の受け入れでごった返しています。私達の休憩するスペースはありませんし、9合目に明るいうちに着けなくなりそうなので声を掛け励ましあいながら歩を進めます。「ドゥ〜ン。」雷のような音が轟きます。一瞬ビビリますが自衛隊の演習のようです。上を見てもまだ山室は見えません。辺りはだんだん暗くなってきました。そのとき「ウ〜ウ〜」とウシ蛙のような声が響きます。何かとおもったらK美曰く「声を出すと気分転換になるからやってみて」ですと。半信半疑で声を出すとあら不思議それまで単調な登りで滅入っていた気持ちが楽になります。ついには奥様とK美は中学校の校歌を歌い始めました。(こいつら絶対に高山病にはならんな・・。)心の中でつぶやいた頃山室の明かりが見えてきました。山室が近づいてくると水銀灯の明かりが足元を照らしてくれます。19時ようやく万年雪山荘に到着しました。休憩を含めここまで5時間30分かかりましたが、ゆっくりのペースを保ってきたせいか体調がわるくなったメンバーは一人もいません。宿泊する人達が食事をとっています。何時まで食事がとれるのか聞くと19時30分頃までとのことです。荷物の片付けもそこそこにカレーをほおばりました。隣のテーブルの外人さんは持ち込んだワインを何本か空けご機嫌です。毎日酒を睡眠薬代わりに呑んでいる私は指を銜えるしかなくとても羨ましかったです。酔いが早く呑みすぎは危険との情報を仕入れていた私は、缶ビール1本でぐっと我慢して8時の消灯を迎え布団に潜り込みました。しかし・・・全く眠ることができません。こんなとき強いのは普段酒を飲まないT須と不規則な勤務シフトで生活しているK美です。私と奥様が小声で話をしている横であっという間に寝息を立てています。眠れぬまま12時になろうとした頃です「すいません。」誰かが山室に入ってきました。私たちが寝ているのは食堂の2Fです。1Fの話し声は筒抜けです。「9合5尺の山室まで行き風を避けながらじっとしていたんですが、震えが止まらなくなってしまったので降りてきました。泊まるお金はないので寝ませんからここに居させてもらえませんか。」あつかましいヤツがいたもんです。やんわりと断られ若者(多分)は出て行きました。きっと下山したのでしょう。使わないつもりでもお金は持っていないといざという時に困ります。人の出入りが少なくなりやっとうとうとし始めた頃大声が響き渡りました。「いらっしゃいませ〜〜暖かい食事と飲み物が用意してありま〜す。おいしいうどん30食限定で〜す」驚いていると明らかに人が山室に入ってきています。確か山室の営業時間は朝の3時とか5時のはずです。もうそんな時間なのかと思い時計を見るとまだ午前1時30分です。なんと徹夜登山の先頭集団が9合目を通過し始めたのです。呼び込みの声とお客の話し声で寝る処ではありません。2時になった頃トイレをかね様子を見に行ってみました。オーマイ ガッ!何と食堂を占領していたのはみんな外国人です。20人以上居たでしょう。英語が(多分)飛び交っています。遠州弁しか話せない私は話しかけられてはかなわんのでそそくさと2Fに上がり布団に入りました。しばらくするとこんどは宿泊客が出発の準備を始めます。「おはようございます。」って挨拶があちらこちらで聞こえます。(まだ真夜中ですよ・あんたら業界人かい?)心の中でつっこみをかまし時間の過ぎるのを待ちました。寝たような寝てないようなぼぅっととした状態で空が明るくなってきました。ご来光です。大勢の人が雲海を見つめています。この日9合目は無風で気温は7℃ありました。朝食弁当と一緒に万年雪山荘のHPから印刷したクーポンで飲み物をサービスしてもらいました。ゆっくりと準備をして7時に山頂を目指して出発です。私達が最後の客だろうと思っていましたが、昨夜ご機嫌だった外人さんがまだ起きられず寝ていました。T須くんの靴底は両足共あんぐり口を開けてしまっています。出発に先立ち山室の人に相談してみたところ、明日は山を降りるからとガムテープをもらうことが出来ました。応急処置完了です。登山道を登っていくと山室の後ろに長く延びた万年雪が確かにありました。登っていくと大勢の徹夜登山をした人達が下山してきます。すごい人です。あちこちで渋滞してます。降りるに降りられない人が無理をして足を滑らせ落ちました。前へ進めないでいると横で「ザーー」という音がしました。登山道を無視して登る人が本当にいました。「ダメだよ。中に入って。」思わず手に持ったストックでその人の足を止めロープの中に入れさせます。初めての富士ですが毎日の様に本やHPを見続けた私はベテランのように振舞ってしまいました。あちこちで人が寝ています。みんな高山病なのでしょう。一人の女性は顔が真っ白です。色白とかのレベルではありません。(早く下山したほうがいいよ!)心の中でつぶやきながら9合5尺に着きました。私達は長袖と半袖のTシャツ2枚ですが、下山してくる人達はレインスーツを着込みワッチキャップを被っています。やはり夜明けはそうとう寒かったのですね。山頂はもうすぐそこです。メンバーは口数こそ少なくなってきましたが、一歩一歩ゆっくりと歩みをとめることなく鳥居をくぐりました。そして8時30分山頂に到達しました。女性陣は目に涙を浮かべ感動をかみしめている様です。よし剣が峰だ!富士館の後ろに行って馬の背を見上げると長い列が見えます。写真渋滞ですね。剣が峰での写真撮影はまた今度きたときにしよう。と、あまりいろんなことに執着しないといういい性格の私達は火口をバックに記念撮影を済ませ御殿場口下山道へと向かいました。靴の紐を締め直しサングラス・ゴーグル・マスク・タオルで顔を覆い砂塵対策もバッチリです。あまりに大げさに顔を隠した奥様とK美は、月光仮面とマイケル ジャクソンになっています。下り始めいまにも落ちてきそうな大石・岩がごろごろしています。この世の景色とは思えません。それにしても人が歩いていません。さっきまでの渋谷スペイン坂状態がウソのようです。必死の形相で富士宮口を降りていった人達はこのルートを知らないのでしょうか?来年富士宮口から富士登山に初挑戦するアナタ様迷うことなく下りは御殿場口を選択してください。こちらは自分の好きなペースで下山が出来ます。富士宮口は混雑時電車ごっこのように列になって一生懸命下りないといけません。景色を楽しむ余裕もないでしょう。山室を終う準備をしている赤岩八合館・砂走館の前で休憩をしてゲーターを装着し砂走りに突入です。宝永山方面への分岐を過ぎたあたりで奥様の足が止まりました。「ザックが肩に食い込んで痛くて歩けない。」と、わけのわからんことを言い出しました。仕方ないので奥様のザックを腹側にしょって先を急ぎました。奥様のザックは22リットルです。これが35リットルクラスのザックではこの方法がとれません。腹側に掛けると大きすぎて顔が隠れ前が見えないからです。最後宝永山の火口から富士宮口新六合目までの登りは見ると一瞬心が折れそうになりましたが案外止まらずに歩けました。雨が降り始めたのでカッパの上着だけを着て5合目に戻ってきました。休憩を取りながら登りが7時間、降り4時間弱で全員無事登山成功です。車に戻り荷物を降ろすと意外に細かい砂埃が体中を覆っていることに気づきました。ここでのお役立ちグッズは大きなゴミ袋です。ザックや帽子・手袋・ストックなど一人の荷物をまとめて一つの袋に入れてしまえば降ろす時にもの探しをしなくて済みます。車の中の汚れ防止にもなります。さあスカイラインを下ります。やはり日付が変わっても路上駐車は続いています。普通にタクシーが流しています。乗る人も降りる人もいます。路駐の先頭は(下に向かって並んでいるため)この日も6キロの表示があるところでした。ヒョエ〜〜ッツ!戻る途中に天母(あんも)の湯へ立ち寄り汗を流してスッキリ綺麗に。前日ほとんど寝ていないこともあり風呂上りに30分ほど熟睡してしまいました。こうして中年グループの富士初挑戦はめでたくフィナーレです。HPでいろいろな情報を提供してくださった管理人さんありがとうございました。私は自転車通勤の甲斐もありほとんど筋肉痛にもならず、翌日も自転車で会社に行くことが出来ました。来年初挑戦するアナタ・身体は鍛えておいたほうがいいですぞ!!えっ、富士に登る方法より一回りも年の離れた女性と結婚する方法をおしえろ・・・ですか??そこんトコロは企業秘密ということでゴニョゴニョ・・・

(管理人)
歌うのは腹式呼吸を促進するので良さそうです。下山時に車を汚さない工夫は良いですね。私も下山して知人の車に乗るときにシートにバスタオルを敷いて、衣服の汗や汚れがシートに付着しないようにしたことがあります。



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(09/9/21)