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私の富士登山記・11


 2000年7月8日(土)〜9日(日)・河口湖口

 飲み仲間と富士登山をすることになりました。実は昨年、8月末に一度計画してい たのですが、天候が悪いので中止してしまったのです。しかし、当日は天気予報がは ずれて、ライブカメラで富士山を見ていたら、みるみる雲が晴れてしまって大後悔。 みるみる雲が晴れるぐらいですから、風は猛烈に強かったわけですが、それでも登れないことはなかったなあ、 一緒に行く予定だった人たちに申し訳ないなあ、と、一年間いじいじして過ごしてき ました。今回はそのリベンジ。ところが、また見事なタイミングで台風3号がやって きました。2日ほど前は、ちょうど首都圏を過ぎてしまうという予報だったので問題 ないと思っていましたが、前日の予報では、朝9時に東京へジャストミート!。ちょ うど集合する時間帯。これはだめかなあ、もうやめようかなあと思ったのですが、昨 年、前日に中止にして失敗したことを思いだし、じっと我慢。とにかく当日決めよう ということにしました。そして、当日、7月8日。天気予報を見ると、ありゃりゃ、 思ったよりコースが太平洋よりで、そして早く通過してしまっている。これならなん とかなりそうです。ただ、朝10時の集合は2時間遅らせました。

下山道の立て札快晴の河口湖口五合目

 というわけで、ハラハラしながら当日を迎えたのですが、いざ出発してみると、富 士山周辺は快晴。午後3時半頃に五合目に到着。駐車場もまだ空いていたし、風も予 想したほど強くなく申し分ありませんでした。今回は、実は私11回目の富士登山に して初めて山小屋に宿泊することにしました。総勢7名の内、2名が登頂は最初から 止めて、のんびり七合目まで行って、そこで御来光を見ることにしたからです。それ も馬で登って楽をしようという魂胆。河口湖口は七合目まで馬でいけるのです(12 000円)。ところが到着が遅かったせいか、五合目に馬がおらず、結局二人も歩く はめになってしまいました。でも、多少は自力で登った方が、富士登山の気分が味わ えたので、結果的には良かったように思います。台風のせいで登山路が適当に湿って いたせいか、六合目から七合目までの整備された砂礫のジグザグ道は、砂塵が舞うこ とも、足が滑ることもなく快適に登ることができました。途中で馬に乗った人が追い 越していきました。タイミングが悪かったみたい。

六合目から七合目を見る
六合目から七合目を見る

 今夜の宿は花小屋。七合目で一番低い場所にあることと、以前、JALの機内誌で 紹介されていて、そこで見た山小屋のおやじさんの笑顔がなんとも好印象だったから です。実際のおやじさんも、そして一緒に山小屋を切り盛りしている奥様も、予想通 りの暖かみのある素敵な方たちで、よくしていただきました。富士山の山小屋では珍 しく、囲炉裏があり、そこに銅製の大きな骨董品のやかんがつりさげられて常時、お 湯を沸かしています。そのお湯を汲んで作るホットコーヒーがなんとも美味しそうで した。

 みんなが旨そうにビールを飲むので、私も飲んでしまいました。いや本当に旨かっ た。でも、後で振り返ると、その後の登山がちょっとつらくなったので、やはり止め た方が賢明でしたね。しばし、おやじさんたちと歓談した後、山小屋定番の夕食カレ ーライス。量が物足りないのは知っていたので、食後のデザートとして持参のあんパ ンをぱくつく。

 19時頃から23時15分まで就寝。山小屋で寝るのは初めてです。枕が50セン チおきに並んでいて、混雑時にはぎゅうぎゅうに詰められるんだな、とわかりました 。でも、今夜はお客が少ないので、枕二つ分の幅でゆったり寝かせてもらいました。 お客が少ないせいで寝室はちょっと寒かったです。やはり19時という早い時間では 、なかなか眠れません。うつらうつらしているうちに出発の時間がやってきて、おや じさんが起こしにきてくれました。

 23時30分、花小屋を出発。2700mの地点ですから、残りは約1000m。 標準では4時間30分かかります。御来光は午前4時30分頃なので、少し余裕をも って5時間前に出発しました。最初はしばらく急な岩場が続きます。岩場は足を大き く持ち上げなければならないので疲れます。早く砂地の登山道にならないかなあと思 いながら登っていました。天気は快晴。満天の星空。風もさほど強くありません。今 回は徹夜登山でいつも使っていたダウンジャケットをやめて、薄いウィンドブレーカ ー3枚とフリースを重ね着することにしました。七合目で、Tシャツ、シャツ、薄手 のウィンドブレーカーA、八合目で フリースを重ね着、九合目で、薄手のウィンド ブレーカーB、そして山頂近くでウィンドブレーカーCといった具合に重ねていきました。これだけ持参すればさすがに防寒対策としては十分でした。総じて外人さんたちは軽装です。

 太子館を過ぎたあたりで、同行者は2グループに分かれました。早いグループ3名 と、遅いグループ2名。私は遅いグループです(登山回数と登山速度は関係ないです )。私のペースだと御来光に間に合うかどうかわからないので、先に行ってもらいま した。私としては、須走口との合流部分(胸突き江戸屋)で御来光の二時間前なら、 なんとかなるだろうと予想していました。とりあえずそれを目指して進むことにしま した。そして、なんとか2時30分に、胸突き江戸屋に到着しました。玄関の扉の「 HOUSE」の文字(元のりピーハウスの名残り)を見て、なんとか間に合いそうだ な、とほっと一息つきました。

 八合五勺の御来光館は、開業していませんでした。九合目のほこらも閉じたままで す。この時点で3時半。頂上での御来光にはなんとか間に合いそうです。ところが、 このあたりから渋滞が始まりました。数歩進んでは流れが止まってしまう。御来光に 間に合わなくなりそうでちょっと心配しながら、それでも、4時12分に山頂にたど り着きました。早いグループは10分ほど早く着いていたようです。

 当初は、御来光見物のベストスポットとされる朝日岳に進もうとしましたが、火口 の方からものすごい強風。吹き飛ばされそうな恐怖感を感じるほどでした。そのため 朝日岳にはあまり人が集まっておらず、ほとんどの人が売店で風が遮られている地帯 に集まっていました。おそらく富士宮口側はものすごい強風だったのだと思います。 逆に河口湖口側は富士山が風除けになっていたので、さほど風を感じずにすんでいた のでしょう。

御来光1 御来光2御来光

 4時30分に、御来光!
 ところが、太陽が半分しか見えないスペースを開けて、横に細長い雲がかかってい たのです(左上の写真参照)。いったん太陽は出たのですが、みんなこれでは御来光 とは言えないだろうと沈黙していました。そして雲から完全に出た時、明らかに腰砕 け、というか、へなちょこ、といいますか、歓声をあげるタイミングを逸してしまっ たような感じがしました。私は御来光目的で夜間に登ったのはこれで6回目ですが、 実は完全な文句のない御来光を見たのは一回しかありません。たいてい霧だったり雲 に隠れて見えなかったり。それに比べれば、かなりマシな部類だったのですが、あの 雲さえなければ・・・。ちょっと惜しかったなあ。

 近くをしばらく一緒に歩いていた登山ガイドの人が参加者たちに「頂上での御来光にこだわるな」としきりに言っていたのが印象的でした。たぶん、あせらないように、との配慮でしょうが、やはり、何度も御来光を見ていると、別に頂上だろうと八合目だろうと変わりないじゃん、という心境になるのだと思います。実際、見た目はほとんど同じ。私自身も、「ぜひ山頂で御来光を!」ということにこだわる気はだいぶ薄れてきています。今回は初めて登る人がいるので、せっかく登るのだからということで、通常の「山頂で御来光」のスケジュールになりましたが、八合目ぐらいで御来光を見るつもりでいた方が、混雑は終わっているし、山小屋はピークをすぎてのんびりと応対してくれるし、山頂で寒風の中、待っている必要もないし、かなり登山が楽になります。でも、一回だけ登る人は、どうしてもこだわってしまうのもよくわかります。私も、なんだかんだ言っても。時間的に間に合いそうなら、やはりなんとか頂上で、と思ってしまいますからねえ。ま、こだわりですね。

富士山の火口今年はまだ雪がたくさん残っています。すごい向かい風でした。

 今回はみんなへたばっています。私も軽い頭痛と悪寒。お鉢巡りは強風で無理だし 、そもそも5名とも疲れてその気力がありません。私が行ってみたかった白山岳の釈 迦の割れ石見物も次回に持ち越し。でも、その強風の中、白山岳に登っている人が1 0名ほどいました。風で飛ばされないように祈るのみ。誰もがすぐにでも下山したい という気持ちで一致。5時17分に、そそくさと下山を開始しました。台風でちょっ と登山道が雨で濡れたのでしょうか、適度に湿っていて、あまり砂埃が舞い上がりま せん。その点は快適でした。今回は工事用の防塵マスクを購入していたのですが、結 局使いませんでしたし、前回のように鼻くそが真っ黒になることもありませんでした 。

 帰りはただただ単調なジグザグ道。じっと我慢で歩いていきました。途中、水平方 向の道には落石防止のトンネルがあるのですが、そこにはハチがうじゃうじゃいて、 とても通過できません。ハチに刺されるか、落石か・・・。結局、落石の危険があっ ても、トンネルを通らない方を選びました。とりあえずハチに刺されるのは嫌ですも ん。

 五合目のレストハウスで七合目滞在組と合流。これから観光をする気力がないので 、軽く食事をして解散とあいなりました。私もドライバーもあまりに眠かったので、 東名高速の足柄PA(上り方向)でお風呂に入り二時間仮眠しました。料金は600円。休憩 室で真横に倒れる椅子で深い眠りにつきました。ドライバーも仮眠したおかげですっ かり体力が回復。この施設はなかなか良いです。

 今回は7名グループのリーダー格で登山をしました。途中で誰かがへばったら一緒 にそこで待機する覚悟はしていましたが、みんな登頂に成功。それよりも、みんな無 事に帰宅できたのがなによりです。ちょうどバスツアーの人たちと同じ時間帯に登っ たのですが、バスツアーの登山ペースだと私にはちょっときついかな、という感じで した。まあ、私がもともと標準より2割程度遅いので、そう感じたのだと思います。 でも、これだとご年輩にはちょっときついので、例えばもっとゆっくり登る富士登山 ツアーがあるといいのではと思いました。それにしても、参加者を大きな声で励まし ながら登っていく登山ガイドさんのご苦労がよくわかりました。闇の中で数十名を把 握しなければならないし、とても大変な仕事だと思います。

 太子館専属の登山ガイドさんが、ポカリスエットのことを「ポカリス」、グループ 離脱を「グルプリ」と略して呼んでいたのが、なかなか印象的でした。グループ離脱 とは、例えば4名で参加していて、その内の一人が高山病でリタイヤしたら、残りの 3名も一緒に登山を止めてしまう、という意味です。その不思議な造語感覚が、今回 の富士登山では一番記憶に残ってますねえ。あと、富士山では、ブルドーザーのことをブルーザーと、濁らずに呼びますね。

★教訓:登山途中でビールは飲まない方が良いことを知る。

(2000/7/14)


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