[登山記の目次に戻る]

私の富士登山記・10

 1999年8月18日(水)〜19日・富士宮口

 私の会社は夏休みが遅い。そこでお盆休みのピーク時をはずして登山をすることになりました。同行者の弟の車で富士宮口新五合目に22時半に到着。駐車場は平日なので余裕十分。そしてそそくさと準備をして10分後に登山開始。さんざんHPで高所順応(五合目でじっくり時間をとって薄い空気に慣れること)を呼びかけておきながら・・・。で、結局そのツケは払わされることになりました。

 夜空は満天の星。天の川は西洋ではミルキーウェイといいますが、まさに乳濁色の川が天空を貫いている。そして星が多すぎて星座がわからない。星ってこんなにたくさんあったんだとけっこう感動。南西風が吹き込んでいて空気が非常に清浄で澄んでいたのです。御殿場市方面の夜景も素晴らしい。予想していたより風も穏やかで最高のコンディションでした。

 新六合目までは緩やかな登り坂。20分ほどで2軒の山小屋へ到着。そこで軽く水分を補給して登山開始。なお、富士宮口は新五合目の売店が22時頃には閉まってしまうので、新六合目で金剛杖などを購入することになります。雲海荘はシーズン中は、週末はオールナイト。平日は0時頃までは開いているそうです。

 新六合目から急に険しくなります。富士宮口ってこんなに急だったかな、という感じでした。30分ほどで六合目の山小屋(休業中)。そして新七合目、七合目、八合目と続きます。暗闇の中に山小屋のライト。それをめざして登山は続きます。気温も高めでした。前回の夜間登山では七合目でダウンジャケットを着込みましたが、今回は薄いウィンドブレーカーで全然平気。

 八合目あたりで睡魔が襲ってきました。前日、昼寝ができなかったのです。そこで今回も九合目の万年雪山荘で一時間ほど横になろうか、なんて考えていました。ただ、満天の星、下界の夜景があいかわらずめちゃくちゃ美しい。こんなに澄んだ空気の中で見るご来光はさぞや素晴らしいだろうと思い、なんとか夜明け前に頂上に登ることに考えを切り替えました。

 この調子でいくと我ながら嫌みなほどに完璧な富士登山になりそうです。メールでは、雨の中を登った、強風で吹き飛ばされそうになった、あるいはあまりの悪天候なので引き返した、などの富士登山報告をいただいています。それなのに、いくら横浜在住でアクセスが良いからといって、最高の天候で最高のご来光を見たなんて登山記に書いたら、こりゃ反感買いそうだなあ、などと心配したりして。でも、そうそううまくいかないのが富士登山。

 異変に気づいたのは九合五勺の山小屋のライトがサーチライトのようになっている時。自分のヘッドランプの明かりも同様。あたり一面が急に深い霧になりました。つまり雲の中に突入したのです。急に寒くなってきました。あわてて、今回は必要ないかもしれないと思っていたダウンジャケットを着込む。レインコートは重ね着しなかったのですが、露の粒が見えそうなほどの霧で、そのうちダウンジャケットがしっぽり水分を吸収。ま、これは大したことはないのですが、問題は軍手。濡れた岩場を掴みながら登って行くうちにすっかり濡れてしまって指先が冷たい。ただ、なぜか今回に限り、たまたま毛糸の手袋を持参していました。それに交換できて本当に助かりました。(軍手の予備は必要だなと思いました)。そして同時に高山病の症状発生。軽い頭痛と悪寒。「頂上まで30分」という立て札が見えました。でも、それは本当に健脚の人の場合。私は九合五勺から山頂までは自分は45分かかると知っています。今回もジャスト45分でした。

 ようやく登頂。ご来光は霧の中にぼんやりと見えましたが、とても納得できるようなものではない。山頂の霧は深く、火口底は何も見えない。お鉢巡りをする気力はなく、今回も弟(元気そのもの)に我慢してもらいました。とにかく富士山測候所へ。馬の背は砂地が削られている部分もあって登りにくい。苦しさに耐えながらようやく到達。また測候所脇の展望台へ。霧で視界不良。

 弟が持参した携帯コンロでお湯を沸かしてコーヒーを飲みました。とても美味しかったです。暖かさにほっとしました。白湯も旨かった。高山病の症状による悪寒を多少なりとも癒してくれました。なお、携帯コンロなどを持参するのは体力に余裕がある人に限ります。初めての富士登山ではそういうものは持参しないほうが良いです。少しでも荷物は軽く。

 下山は御殿場口から。岩と砂礫が散乱していてすごい光景。こんなところを富士登山駅伝の選手は走って下ったとはとても信じられません。山頂から1時間かかってようやく赤岩八合館に到着。それから、八合目の水平方向のバイパス道(約500m)を伝って富士宮口へ。そこからは登ってきた岩場を下りていく。狭い道だと登り優先なので下りの人は待つ。すると登りの人が「ありがとう」「おはようございます」と声をかける。う〜ん、いい雰囲気です。これは他のルートでは味わえないですねえ。ただし、これは平日で登山者がほどよい人数のおかげ。混んでいると登山者と下山者が鉢合わせ渋滞して逆にけっこう殺伐なムードになったりします。

 膝の痛さを我慢してようやく下山。頂上を見ると晴れてました。やれやれ・・・。新五合目からは富士山測候所の白いドームがくっきりと見えます。ガイドブックなどでは「すぐ近くに見えるので楽に行けそうな感じがするが・・」なんて書いてあります。同感です。確かに近そうに見える。でも、遠いよ〜。

 今回の反省点は五合目の高所順応の時間をおろそかにしたために、結局高山病の症状がでたということ。HPでは偉そうなこと書いても、自分がおろそかにしているんだからどうしようもないですねえ。

★教訓:高所順応の重要性をあらためて知る。


★登山記録★
 新五合目 22:40
 八合目   1:50
 九合五勺  3:36
 山頂    4:21
 下山開始  6:10
 赤岩八合館 7:10
 七合目   8:40
 五合目   9:47
 (所用時間、登り5時間41分、下り3時間37分)

(1999/8/20)

BACK  TOP  NEXT
あっぱれ!富士登山