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私の富士登山記・35


 2015年8月24日(火)~25日(水) 富士宮口

 今年は、富士宮口から登り始め、剣ヶ峰まで到達することができました。七合目までは雲の中。霧雨で気力が削がれ、とても登頂はできないだろうなあと思いながら登っていました。実際のところ、元祖七合目で一度下山を始めたのですが、その時、ちょうど雲の隙間から青空や山頂が見えたので、気を取り直して再び登り始め、いつしか、引き返すのがもったい場所まで到達。そのまま頂上まで行ってしまいました。大気が安定していて雷の心配がなかったのも大きな要因です。昨年、久々に登頂できてとてもうれしかったのですが、強いて言えば、もう一度剣ヶ峰まで到達したいなあとは思っていたのです。今は本当に満足しています。

 神奈川県から公共交通機関を使って行きやすいということで、須走口を利用することが多いのですが、今年は富士宮口から登ることにしました。以前は、富士宮口五合目へ行くには富士宮市へ回りこむか、三島駅からの登山バスを利用する必要があり、かなり時間と費用がかかっていたのですが、近年は御殿場駅から水ヶ塚公園まで行くバスがあります。これを利用すれば、水ヶ塚公園でマイカー規制で運行しているシャトルバスに乗り換えて富士宮口五合目まで行くことができます。前日、バスの時刻表を見ようとしたら富士急さん(というか、富士急のサイトを制作している会社)のチョンボ。御殿場行きの時刻表のボタンをクリックしても須走口行きバスの時刻表が出てくるのです。でも、「バス 御殿場口」で検索したらすぐ見つかったから問題なかったです。

 JR御殿場駅に午前7時23分に到着。階段を下りてバス乗り場へ移動。7時35分発の水ヶ塚公園行きのバスに乗りかえます。同時刻発の須走口行きの登山バスもあります。水ヶ塚公園行きのバスの乗客は7人ぐらい。このバスはまず御殿場口新五合目へ向かいます。富士山スカイラインの周遊区間は霧。雨は時々ワイパーが動く程度。御殿場口新五合目も霧の中でした。バスはここで10分間停止します。せっかくなのでバスの外に出て周囲の写真を取りました。気になったのは新五合目の売店「ハーフマウンテン」の看板の文字「1/2」が黒くなっていたこと。以前は鮮やかな赤でした。経年劣化で色があせたのかと思ったのですが、店先のコカ・コーラの自動販売機も黒くなっている。意図的に黒くしたようです。



 ここで、外人さんが5人ほど乗り込んできました。御殿場口新五合目の駐車場にマイカーを置き、水ヶ塚公園からシャトルバスで富士宮口へ向かうのでしょうか。もし、御来光を見てから大砂走りを疾駆して降りてきたのならすごいです。

 水ヶ塚公園には予定よりわずかに早く8時27分に到着。シャトルバスは30分ごとに発車なので次は8時半です。シャトルバスに向かう途中で、富士山保全協力金を集めていたのでさっそく協力したのですが、なんか釈然としない。このお金は五合目で払いたいですね。昨年、須走口五合目で気持よく払った感じとは違っていました。それから、バスの乗り換えのための移動の途中で声をかけるのは良いのですが、直近のバスに登山者が乗り遅れないよう配慮をお願いします。

 水ヶ塚公園を過ぎてバスはいよいよ富士山スカイライン登山区間へ。この長い上り坂を、 みんなの登山記の常連「ふじ子さん」は歩いて登ったのです。「すごい!」を通り越して全く信じられない気持ちになります。それも田子の浦から歩いてきた後のことです。(みんなの登山記2015-2)

 8時56分、五合目に到着。霧雨。正直、登る気持ちが萎んでいきました。五合目レストハウスの軒先でレインウェアを装着。なんとなく渋々な感じで六合目を目指します。途中、五合目の富士山保全協力金の小屋の前で、係のおねえさんに声をかけられました。会釈だけして通過。なんだか払わずに通過するみたいで気まずい。実は山麓で支払い済みを証明するためのシールをもらってまして、それをステッキなどに貼っておけば良かったのです。やはり五合目で支払いたかった。「さあ、登るぞ!さあ、払うぞ」にしたかった。もやもやした感じが残りました。



 六合目の雲海荘の自動販売機で飲料を一本購入して休憩。値段は300円。高い!。富士山に来たことを実感します。でもここより上は500円です。天気は霧雨。時々、細かい雨粒が落ちてくる感じ。登山の意欲は萎んだままですが、とりあえず次の山小屋をめざします。すでに時間は10時近く。

 一時間強で七合目の御来光山荘に到着。ずっと弱い霧雨の状態。もちろんレインウェアは着ていますが、ちょっと身体が冷えた感じがします。暖かいものが欲しくなったので、コーンスープを注文しました。山小屋の一段高い床に腰掛けて食べる暖かいスープの美味しいこと。ここで25分休憩。もはや登頂できるとは微塵も思っていませんが、まだ体力は十分なので次の山小屋はめざすことにしました。山口山荘へ着けば、いちおう標高3000mを超えます。それならまあ納得かなと思いました。

 天気は弱い霧雨からほぼ霧だけの状態へ。途中、ちょっとだけ雲が晴れた瞬間がありましたが、基本的にはずっと霧の中。40分ほどで元祖七合目・山口山荘へ到着。ある登山者が「まだ七合目!」と驚いていました。ここで標高3000m超え。須走口に比べて五合目が400mも高いので、ずいぶんあっさりと着いた感じがします。ここでも暖かいものが欲しくなったので、山小屋に入って「おしるこ」を注文。床に腰掛けたところ、隣にご年配の男性がおりまして、20分ほど歓談しました。すでに70才以上の富士山登頂も果たされており、奥宮でお神酒や土器(かわらけ)をいただいたそうです。私より2時間ほど早く五合目をスタート。今日は九合五勺の胸突山荘に宿泊される予定。時間をかけてじっくり登るスケジュールです。



 今日はここで十分だろうと思って山小屋を出発。下山を開始しました。そして20mほど下った時、急に雲が晴れて青空の中に八合目の診療所の銀色の建物が見えました。こうなると下るのが急にもったいなくなって、再度登り始めました。周囲が明るくなって気分が晴れやかになってきます。「とりあえず」八合目まで行ってみようと思いました。天気が良くなると現金なもので、「登っていることが楽しい」などと感じました。毎年、富士登山をやっているのは、このサイトの取材の目的もありますが、やはり基本的に富士登山が嫌いだったら登らないですよね。

 雲の上に出たせいで天気はすっかり晴れ。気分良く登っていきます。歩きながら「八合目に着いたら山頂をめざしてしまいそうだ」と思いました。八合目の池田館を少し登ると、九合目と九合五勺の山小屋と山頂が見渡せる場所があるのです。そこまで行ってしまったら、たぶんもったいなくて引き返せない。今日は雲が安定していて雷の心配もなさそうだからなおさらです。以前登った時の記憶よりも斜度のある岩場を通過して八合目の池田館に到着。飲料を購入してちょっと休憩してからさらに登り続けます。池田館から20分ほどで、その見晴らしの良い場所に到着しました。



 やはり思った通り、登りたい気持ちがさらに強くなりました。万年雪山荘を通過していよいよ胸突山荘へ。本当にここまで来てしまったという驚きと喜びがあります。最後の胸突き八丁の坂は、ものすごい斜度。圧倒されそうになりますが、あせらずに登っていきます。結局、山頂へは九合五勺から45分ほどで到着しました。九合五勺の標識には「山頂まで550m、30分」と書いてありますが、それは元気な人の場合。

 15時22分、富士宮口山頂に到達。五合目を出発してから6時間7分。まさか本当に登れるとは。五合目の霧雨の中、萎んだ気持ちだった時には想像もしませんでした。久々の富士宮口山頂です。改築中の奥宮はあまり見た目が変わっていませんね。左側の郵便局がなくなって、扉が綺麗になったぐらい。もちろん、以前と雰囲気を変えないように改築したからでしょう。ここでは休憩もそこそこに剣ヶ峰をめざします。馬の背へ至るまでに望む火口の雄大な景色。また見ることができました。ありがたいことです。馬の背は整備されていて登りやすかったです。といっても、斜度が急なのでスイスイ登れるわけではありませんが、過剰にずるずる滑ることがありませんでした。「忍」の一文字を思い浮かべながら一歩一歩、ゆっくりあせらず最高地点をめざします。馬の背を登り切るのに、約10分かかりました。



 剣ヶ峰では、石碑のてっぺんをなでなで。それから、本当の最高地点にタッチ。残念ながら展望台は閉鎖中。親切な方に石碑と並んだ写真を撮ってもらいました。ここで13分滞在して、下山開始。途中、山頂郵便局がどうなっているか気になったので御殿場口山頂が見える場所へ行きました。郵便局の営業は昨日まででした。

 さて、登ったら下らなければなりません。天気が良ければ、御殿場ルート経由で帰ることも検討するのですが、今日は七合目以下に雲があり、また、山小屋が少ないので何かの時に対応しづらいということもあって、富士宮ルートを下ることにしました。登山ステッキを使って、ゆっくり下っていきます。30分ほどで胸突山荘。さらにしばらく下って行くと、山小屋から拡声器で「○○の△△さ~ん」という声が。今夜宿泊予定の若い女性客のグループが登ってきたので、女性従業員が彼女たちを応援しているのでした。さらに「本日は満室のため引き返して下さい」と言えば、女性客もそれに合わせて本当に引き返すふりをするという「小芝居」を演じまして感心しました。若いのう。私だったらほんの1メートルでも下がりたくないですけど。



 だんだんと日が暮れてきました。下山開始から2時間近く。元祖七合目あたりから霧の中。このあたりで宿泊すればよかったのですが、なぜか「帰宅しよう」と思っていました。平日なので遅いバスはないのですが、タクシーで22時頃までに御殿場駅に着けば帰れるという計算。山小屋よりは自宅で寝たい気持ちがあるのですね。この思いがあったために、次の七合目でも宿泊をパス。ここで痛恨のミス。徐々に霧の中に入っていったために、防水性のないウィンドブレーカーからレインウェアに着替えるのを失念。下半身はずっとレインウェアのズボンを着ていたので問題なかったのですが。運動をしているせいで雨の中でも寒くなかったこともあり、そのまま濡れながら下山。当然、下着までずぶ濡れです。 段差の多い、暗い霧の中を黙々と下山。元祖七合目から翌朝まで撮影をしていません。完全に余裕がなくなっていました。これはとても帰宅するのは無理だと、ようやく当たり前のことに気付き、六合目に泊まることにしました。でも、そう決心してから山小屋に辿り着くまでの長かったこと。

 六合目には山小屋が二軒あります。どちらに泊まろうかと考えましたが、雲海荘と相互リンクしているのでそちらにすることにしました。ずぶぬれの状態で雲海荘の扉を開けて 宿泊を申し込みました。おかみさんが笑顔で迎えてくれました。ここにはスキー宿のような「乾燥室」があります。濡れた上半身の衣類を全部乾かしてもらいました。下半身はレインウェアのズボンを履いていたので、中のズボンや下着は全然濡れていませんでした。

 ちょっと吐き気がします。どうやら脱水症状になっているようです。2回めの登山の時と似たような症状になりました。夕食にきつねそばを注文しましたが、おつゆを美味しく飲み干す一方、麺が食べられませんでした。最初から「麺なし」で注文すればよかった。 夕食後は濡れていない衣類を重ね着して寝ることにしましたが、寝床へ案内してもらおうとした時にすごい悪寒に襲われました。やはり身体が雨で猛烈に冷えていたのです。ぶるぶる震えながら二階の寝床へ。今夜は空いているので、一区画、3人分を独り占めさせてもらいました。3枚の布団をかぶって「ふとん蒸し」のような状態で横になっていたらそのうち悪寒も収まり、身体の震えも止まり、寝ることができました。夜中に2回、目が覚めましたが、その都度、すぐに寝てしまいました。

 翌朝は気持ち良く目覚めました。風邪のような症状はありません。朝食は固形物を食べる自信がなかったのでコーンスープとラムネ。7時半発のバスに合わせて7時前に出発しました。途中、五合目へ至る下り坂で、ヘルメットをかぶったご年配の男性が力強く登ってくるのが見えました。どこかで見たような気がする。ちらちら視線を合わせていたら、男性が「うい~す!」(に近い言葉)と挨拶をしてくれました。もしかして「まいにち富士山」の佐々木茂良さん?



 五合目から水ヶ塚公園へのシャトルバスのお客は私一人。50分待って御殿場駅行きのバスに乗り換え。須走口からだったら登山バス一本で御殿場駅まで行けるので、一手間多い感じです。

 無事に登頂できて本当に満足です。毎年、富士登山をしていますが、最近は「絶対に登る」と決めてしまうと、体力的なこともあって、ちょっとプレッシャーを感じてしまいます。だから、行けるところまで行こうという前提にしています。でも、それでは同行者とは登れませんね。数日前、かつて一緒に登ったこともある知人たちが、20名近いグループのガイド役として全員を登頂に導いた話を聞いて、素晴らしいなあと思いました。初日は強い雨と風の中、初めて富士山に来たメンバーを励ましながらの快挙です。二日目は天候が回復し、見事な御来光を拝観できたそうです。一人で登るのも楽しいものですが、仲間と登れば喜びを分かちあえます。それはうらやましいと思いました。

 今回は下山がちょっと無茶でした。早めにどこかの山小屋に「避難」するのが正解だったと思います。身体の震えが下山途中で始まっていたら大変でした。夏の富士山でも「低体温症」の可能性があることを再認識させられました。霧のおかげで地表が乾燥しておらず、粉塵をあまり吸い込まなくですんだのは良かったです。平日なのでいきなり行っても泊まれると思っていましたが、9月2日(水)は、某旅行会社の企画で富士宮口の山小屋が全て貸し切りになったそうです。そういうこともあるのですね。気をつけたいと思います。


9:15 五合目出発(標高2400m)
9:42 六合目・雲海荘(2490)
10:49 七合目・御来光山荘(2795)休憩25分
11:56 元祖七合目・山口山荘(3030)休憩25分
13:12 八合目・池田館(3220)休憩12分
13:59 九合目・万年雪山荘(3410)
14:33 九合五勺・胸突山荘(3550)
15:22 富士宮口山頂(3740)
15:42 剣ヶ峰(3776)休憩13分

16:11 下山開始
16:40 九合五勺・胸突山荘(3550)
17:04 九合目・万年雪山荘(3410)
17:29 八合目・池田館(3220)
17:57 元祖七合目・山口山荘(3030)
19時頃  六合目・雲海荘(2490)

6:50 雲海荘出発
7:20 五合目到着(2400)

登り6時間27分
下り 約3時間半


★教訓:ずぶ濡れになると低体温症の危険があることを再確認する。

(2015/9/3)

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