私の富士登山記・9 |
2回目の河口湖口登山の様子をまとめてみました。 どうでもいいような細かなことまでクドクドと、 本当に我ながらクドく書いてます。 写真もはりつけて重くなってます。あしからず。 9回目の富士登山★出発数日前★ 日程も決まったことだし、そろそろ富士登山の準備をしなくては。一年ぶりにトレッキングシューズを下駄箱から取り出し、破損してないかを確認。一部補修。そして本番のように厚手の登山用ソックスを履いて試しに散歩してみました。す、すると・・・。 2キロほどしか歩いていないのに、いつもの富士登山のように左膝が痛くなってきました。「そ、そんなばかな・・・」呆然と立ちつくす私。ちょっと考えてすぐに原因がわかりました。厚手のソックスを履いていたため、着地時に足裏にかかる衝撃が普段とは微妙に異なってかかっていたのです。具体的には足の外側が高くなり、やや内股気味になっていました。そのため膝の外側部分の筋に衝撃がもろに伝わっていたようです。これが膝痛の原因だったとは。わざわざ高い登山用ソックスを購入したのが裏目に出ました。 もちろん登山用ソックスそのものが悪いわけではないです。あまり薄いと今度は足裏の皮が剥けます。ソックスと靴との組み合わせで、場合によっては足に無理な姿勢を強いることがあるのだなと気づいたわけです。足と地面の接地角度は、スキーではカント角といって、けっこう気にする点ですが、登山でも重要なのだと再認識しました。やはり事前に靴は試し歩きをしておくのが大切です。 1999年7月31日(土)・河口湖口 A君のマイカーで深夜2時に河口湖口五合目に到着。週末の混雑のためすでに五合目の駐車場は満杯。2キロも離れたところに車をとめるように警官に指示されました。1キロぐらいの距離は覚悟していましたが、その倍の距離だと知ってがっくり。とりあえず仮眠することにしました。シートを倒すと車の窓越しに夜空が見えます。満天の星でした。風は強そうでしたが、今、登っている人たちは、明朝、素晴らしいご来光が見られるだろうなと、ちょっとうらやましくなりました。 再び目が覚めると午前4時半。せめて五合目からご来光を見ようと車外へ出ましたが、駐車場所は富士山の北北西の位置。山影に隠れて見えませんでした。あらためて登山口までの距離を感じ、いささか気が滅入りました。でも、このまま帰宅するわけにもいきません。風が追い風だったのことを唯一の心のよりどころにして、登山口まで歩くことにしました。緩やかなので、特に問題はありませんでした。30分ほどしてようやく五合目に到着。賑やかです。レストハウスで一服。リポビタンDを購入。売店の張り紙を見ると、「水を大切に。ここではトラック1台分の水を20000円で運び上げています」と書かれてありました。 5:30、準備を整えていよいよスタートしました。登山道なのにいきなり始まる下り道。前回はここでうきうきしてペースを上げたため、あとあと高山病で苦しんだのを思いだし、意識的にゆっくり歩きました。天気は快晴。絶好の登山日和です。 6:15、六合目に到着。係りのおにいさんが「富士登山者のみなさんへ」という河口湖口登山の注意書きを配っていました。やはり下山時に須走口へ行かないようにという事が特に大きく記されていました。いよいよ、七合目に向かって出発。ここからは砂礫のジグザグの道が続きます。ちょうど吉田大沢にあたる部分なので砂防工事が進められています。沢が徐々に崩れているのです。 ここから私はダブルステッキにしました。つまり登山用ステッキを二本使うわけです。一本だと身体の片方に重心が偏ってしまうので、私は二本の方が良いと思い、新たに購入していたのです。しかし、さすがにここまでする人は少ないらしく、今回の富士登山ではとうとう最後まで他にダブルステッキをやっている人は見かけませんでした。むしろ「あの人、杖を二本持っているよ」とか「あれじゃ肩が疲れそうだな」という話し声が聞こえてきたりしました。やはり珍しいのかな。ここでも疲れないように徹底的にペースを落としてゆっくり登りました。 7:00、七合目の花小屋に到着。ここでポカリスウェット購入(350ml缶・300円)。持参した500mlの水はすでに7割ほど飲み干してます。私は水飲み大王なのでこれからもグビグビ飲み続けます。ここから何軒もの山小屋が続きます。しかし、登山道が岩場になって登りにくい。しばらくは二本ステッキで登ってましたが、さすがに邪魔なので一本は縮めてバッグに入れました。岩場は足を不規則に大きくもちあげなければならないので疲れます。七合目トモエ館の上に救護所があります。千葉大のお医者さんが交替で詰めているそうです。7:35に富士一館でまたまたポカリスウェット購入(350ml缶・300円)。快晴のため、喉がすぐに乾きます。7:56、東洋館に到着。ここから次の太子館まではちょっと離れているので、ここで休憩。ミネラルウォーター購入。今回、秘密兵器としていびき防止用テープを持ってきました。鼻に張り付けて鼻腔を開き、酸素吸入量を増やすためのもの。よくスポーツ選手が鼻に張っています。確かに効果あり。しかし、暑いため汗で剥がれてしまう。鬱陶しいので結局取ってしまいました。 8:30、八合目の太子館に到着。すでに標高3000mを越えています。当然のごとくポカリスウェット購入。持参の食塩も舐めました。健脚のA君には、「今年は私はあきれてしまうほどに、あるいは腹がたつかもしれないほどに遅く歩くからあしからず」と何度も言い含めてありますので、気長に私のペースにつきあってくれています。太子館のトイレは雨水による水洗方式です。トイレットペーパーも備え付けてありました。けっこう清潔でキレイなので、お嬢様方にもおすすめトイレといえましょう。チップ制ですので利用には100円必要です。右手には吉田大沢が拡がっています。砂走りなので昔はここを下山路に使用していました。また、以前、プロスキーヤーの三浦雄一郎さんが富士山大滑降にチャレンジした場所。でも、今は落石の危険があるため、立ち入りは禁じられています。さて、五合目からここまで約3時間経過。六合目でもらった注意書きでは3時間25分になっていますから、予想外に順調なペース。 9:10、白雲荘に到着。ここでオレンジジュースを購入。そこから少し登ると、元祖室があります。ここには烏帽子岩の祠があって食行身禄(じきぎょうみろく)という江戸時代の行者さんを祭ってあります。富士講に非常に縁の深い場所です。このあたりからは岩場ではなく砂礫の登山道になります。ずるずる滑りやすいですが、だらだら歩けるのがいいです。私はカーブではできるだけ大回りします。少しでも疲れないための工夫です。 9:45、本八合目の富士山ホテルに到着。もちろんホテルといっても山小屋です。でも、3棟ほどあってけっこう大規模な山小屋です。ここで「荷物預かります。300円」という張り紙を見ました。すぐ上に八合目トモエ館と胸突江戸屋があります。河口湖口と須走口の合流点。胸突江戸屋は、元・のりピーハウス。のりピーの結婚ぐらい、全然関係ない男たちまでもが、がっかりして、そして相手の男性をうらやましく思ったことはあまりないなあ、などとどうでもいいことを考えながら記念撮影。 10:15、頂上まで最後の休憩場所である御来光館に到着。頂上がかなり近くに見え始めました。天気はあいかわらず快晴ですが、少し雲が発生し始めました。前回、ご来光を見るために夜登った時は大変な大渋滞でしたが、今回は登山客が少ない時間帯なので空いています。途中、高山病で吐いている少年がいました。そしてようやく吐き気が収まったと思ったら、すぐに早足で歩き出し、そして10mほどでまたダウン。おいおい、少年、ゆっくり登らないとだめじゃないか。同行者の親御さんらしき人もしきりにそう忠告しているのですが、ガッツがありすぎるのかなあ。ゴルゴ13というマンガでヒマラヤの高地では、走り出しただけで命を落とすというようなことが描かれてました。高地では急いじゃだめです。 10:55、九合目の祠に到着。閉鎖されていました。数年前に夜登った時はここで、飲み物を販売していたのですけど。いよいよ頂上が近くに見えてきましたが、まだまだ苦しい。ここで試してみたのが「にっこり作戦」。つまりどんなに苦しくても笑顔を作れば苦しさが紛れるのでは、ということ。確かに効果があるような気もするのですが、なんだかあほらしくなってすぐにやめてしまいました。ひたすら忍耐の登山。たとえ1歩10センチでもいいから継続して登るように務めました。そうはいってもすぐに休憩せざるを得なくなります。あ〜しんど。 11:35、登頂!。やれやれようやく着きました。本八合目から頂上まで注意書きでは80分になっていましたが、私の場合は110分かかったことになります。やはり後半、頂上近くになって大きくペースが落ちました。今回は「山頂でご来光を」という目的がないので遅れても別にどうということはありません。五合目からの所用時間は6時間5分ということになります。注意書きでは365分ですから・・・、ありゃりゃ!これはピタリ賞。ビンゴ〜!ではありませんか。ま、たまたまですけど。いつも通常の登山時間より20%余計にかかると自分では自覚しているので、意外に今回は速かったわけです。これはやはり天候が良かったせいですねえ。暑かった以外は風も穏やかで、申し分がありませんでした。今回、昼間に河口湖口を登ってみて、あらためて岩場の多い登山道だなあと思いました。 たいしたドラマもないのに、うだうだくどくど書いてすみません。 では、後半をどうぞ。 まず、売店でアクエリアスを購入。さてお腹もすいてきた。ちょうど昼食タイム。登山口に一番近いせいか、いつも山口屋支店になんとなく入ってしまいます。私はカレーライス1200円を注文。水もついてきました。レトルトのビーフカレーでしたが、米の炊き加減も良好で非常に美味しく感じました。A君は牛丼1200円。みそ汁付き。(こちらには水はつきません)。メニューを見ると単品だと、みそ汁600円。ライス500円。すると、牛丼の具は100円ってこと?。今日はhitomiのCandy girlなどのメドレーがBGMでかかってました。 今回は余力がありそうだし天気が良いのでお鉢巡りを考えましたが、同行者のA君が今回はやめておくと言いました。健脚の彼にしてはちょっと意外でしたが、確かに河口湖口の下山道の長さ、さらに五合目から駐車場まで2キロの距離を考えると体力を温存しておくのが賢明です。私は大沢崩れを見に外輪まで登りました。A君はその間、横になって休憩。涼しくて最高に気持ちよかったそうです。山口屋支店へ戻ってまたまた水(500ml)を購入。これは下山用です。万年雪で冷やしてあるので旨い。 13:10、下山開始。3回目の登山の時は、ここをスキーのウェーデルンのように軽快に走り降りたのです。でも、もはやそんな気力も体力もありません。いや、そんなことをしたら後半、猛烈に足が痛くなるのがわかっているわけですから、じっくりゆっくり歩みを進めます。砂礫が深めの時はかかと寄りに着地し、砂礫をずるずると踏み込んで下っていきます。砂走りの要領です。道が固い場合はそんなことをしたらずるっと滑って後ろに転倒してしまいます。足をヒネリでもしたら大変です。杖を使って身体を前傾気味にしながら足裏全体で静かに着地させます。そんなことを意識しながら降りて行きました。時々、上方を見て落石にも注意しました。 13:50、最後の山小屋、江戸屋に到着。須走口との分岐点です。ここで間違ってしまうと大変です。ちょっと気になったのは、外人さんたちは河口湖口の方をスバルラインと覚えている人が多いのではないか、ということ。外人さんにとっては「カワグチコグチ」よりは「スバルライン」の方が英語だから覚えやすいはずだからです。実際に「ここ、スバルライン?」って外人さんに尋ねられたのです。だとすると、案内板のSUBARU LINE とSUBASHIRIのローマ字表記が並んでいるのは、似ていて間違えるのではないかと思ってしまいました。江戸屋の飲料は600円均一。ちょっと高い。でも、飲料を何も持たずに下山ルートへ進むのは危険です。日射病で脱水症状を起こしかねません。手持ちの飲料がない場合は、生命維持のためにも必ず購入を。大きくせりだしている亀岩を見ながら下山道に入っていきました。 14:32、緊急避難所に到着。下山路はジグザグで延々と続いています。快晴で砂も乾燥しているせいか、砂埃がすごいです。女性の登山客の何人かはタオルを口にまいてマスク代わりにしていました。ジグザグの下山路を半分ほどすぎたあたりに避難所があります。10人も入ったら満員になりそうなシェルターがあるだけ。売店などはありません。ただ、下山路があまりに単調なのでとりあえずの通過点としての目標にはなります。両手ステッキでやや前方荷重の状態で降りていきました。でも、小石が多くて歩きにくい。注意書きでは「落石注意!」と大きな文字で書かれています。確かに河口湖口の下山道は落石の危険性が以前から指摘されています。しかし、現在の下山路に替わるものができない状況では、有効な対策は難しいようです。各自が注意するしかありません。 15:07、ジグザグの下山路をほとんど下った場所にトイレがあります。チップ制です。そしてさらにジグザグを2往復ほどして、ついに横方向の道になります。そこが獅子岩です。私は馬はそこで待っているものを思ってましたが、(だって馬の料金表に「五合目、獅子岩往復10000円」と書いてますから)、実際はツバクロ沢の落石防止トンネルを二つすぎた、獅子岩から500mほど離れた場所に待機していました。確かに、落石防止トンネルのある場所を馬に乗って進むのは、(トンネルを通れないので)危険だから仕方ないのかもしれません。今回はまだまだ元気なので馬に乗るのはやめました。 16:00、六合目に到着。ここから登ってきた道を帰ります。階段や固い岩場の下り坂で、疲労しきった足にはまことにつらい。これなら登りの方がいいと思ってしまいます。そしてようやくやや登りの道になりました。両手ステッキで地面をスキーのようにこぎながら快調に歩いていきました。前回の時はこの登りが地獄の苦しみのように感じたのですが、今回は「下山で足が痛いよりマシ」という気持ちでした。これから登山するバスツアーの団体客が大勢歩いてきます。こんな時間に登り始めるのは変だなと思いました。後でわかったのですがスバルラインの大渋滞のために到着が大幅に遅れていたのです。3時間は遅れていたはずです。 16:30、ようやく五合目に戻ってきました。頭痛がします。高山病なのか日射病なのか体調が少し悪くなってきました。レストハウスで冷やしうどんを食べて休憩しましたが、なかなか頭痛が治りません。それに、まだ駐車場まで2キロあるのです。これは歩きたくないなあと思い、ちょうどやってきたタクシーにだめもとで頼んでみました。スバルラインの登り線はものすごい渋滞です。そこをようやく登ってきたのだから、タクシーの運転手さんだって遠距離の客を乗せたいにきまっています。でも、親切な運転手さんでして、「よわったねえ〜」と苦笑しながら乗せてくれました。途中、観光バスが向きを変えるので車の流れが止まったりしていて、わずか2キロでも結構時間がかかりました。これを疲れ切った足で歩いたとしたら・・・。想像するだに恐ろしい。親切な運転手さんありがとう。反対側の登り車線は大変な渋滞でした。これならマイカー規制の時期にやってきて、麓からシャトルバスで来た方が遙かにマシです。 高速道路のサービスエリアのトイレで顔を洗いました。そして鼻をかんだとき、真っ黒な鼻くそが出てきてびっくり!。下山時に大量の砂埃を吸ってしまったようです。たぶん、肺の中にも砂塵がたくさん入ってしまったはず。「こりゃ健康によくないわ〜・・・。」と溜息がでました。下山時の砂埃が舞う中でも、砂走りじゃないし、この程度なら大丈夫だと思ってマスクをしなかった結果が黒い鼻くそ。その後、JR八王子駅まで送ってもらい、横浜線で帰宅しました。電車は中は寒い。体調がすこぶる悪く、夏風邪のような状態でして、鼻水が止まりません。富士登山は登りの苦しさがありますが、それは楽しい苦しさでもあります。下山、そして帰宅時のしんどさというのはまことにつらい。でも、帰宅後、シャワーを浴びてから飲むビールの格別のうまさたるや筆舌に尽くしがたいものがあります。缶ビール4本が乾ききった私の身体の中に滝のように流れ込んでいきました。喉にしみわたるなんて感覚じゃないです。まさにナイアガラ瀑布のような流れ込みです。要するにそれだけ脱水症状だったということです。かくして翌日の日曜日は疲労と筋肉痛のため、一日中ベッドの上。御殿場口で行われた富士登山駅伝のTV中継の様子をぼんやりと見ていました。 ★教訓:晴天下の富士登山は暑いことを改めて知る。 ★水飲み大王の給水データ★ 五合目スタートから下山(五合目の食堂)まで:4650cc(約4000円) ふ〜む、我ながらよく飲んだもんだ。いくら快晴だったとはいえこんなに飲むものかしらん。でも、これでもまだ脱水症状を起こしてる。昼間の富士登山はやはりそれが問題ですね。帰宅時に体重を計ったら2.5キロ減っていました。そこから缶ビール4本と水をたくさん飲んで、せっかくの富士山ダイエットも元の木阿弥・・・。なお、私は大柄でやや肥満気味なので大量に汗をかいております。 (うんちく) バスツアーで参加する方は、初日に7〜8合目の山小屋へ行くときに暑い中を歩くことになります。また2日目、下山してくるとまた暑くなってきます。日除け対策と水の確保に注意しておいてください。 ★登山用シャツの効果★ 今回は、登山用長袖シャツを着てみました。ダクロンという素材で、できているもので、汗をかいてもどんどん放出するので、乾きが速くべとべとしないという優れ物です。その下には同じくダクロンのTシャツを着ました。 確かにべとべとした感じがなかったです。しかし、今回は自分でも不思議なくらい喉が乾きました。まさかダクロンの乾きが良すぎて、それで発汗が過剰に促されていたのではないか、という疑問がわいてきました。綿のシャツは汗の吸収はいいのですが乾きにくい性質があります。しかし、晴天の富士山のような暑い場所では、徐々に乾燥した方が、比較的長くシャツが湿っているので、蒸発の気化熱による冷却効果が継続されるのではないか?そして、発汗が抑えられるのではないか。そんな気がしました。 おそらく夜間登山の場合にはむしろ有効な衣類だと思うのですが、昼間、暑い場所では乾燥が速すぎて過剰に発汗してしまうのかもしれません。下着だけダクロン製のTシャツにして、長袖シャツの方は無理して購入することはないかも。なにせ定価12000円もするんです。それならレインウェアのしっかりしたものを購入するのが先決です。 ★危機一髪!青いドラム缶落下事件★ ある山小屋まであと10段ほどの階段を登るだけ。やれやれ、ようやく休憩ができると安堵したその瞬間、目の前に青い物体が現れた。 「な、な、な、なんじゃ〜!!?」 ゆっくりと私に向かって落下してくるのは、なんと青いドラム缶。徐々に迫り来るその青い物体に私はなすすべもなく立ちつくしていた。私はほんのわずかな未来に起こるであろう激突という最悪の事態に身をすくめた。 「ああ・・・。」 もう少しで、これまでの人生が走馬燈のように巡りはじめようかという瞬間、青いドラム缶は突然落下を停止した。ドラム缶に付いている石油ポンプの管がロープの役目をして動きを止めたのだった。 かくして、戦慄の青いドラム缶落下事件は無事、大団円を迎えたのだった。 中身の石油が空になって軽くなったドラム缶が風に煽られて転がり始めたという次第。 「怖かったよ〜」と私が言えば、「すみませ〜ん」と山小屋の兄ちゃんが答えた。 富士登山では何が起こるかわからない。改めて痛感した一瞬のできごとであった。(完) ■写真:M.Tさん (1999/8/5) |