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 みんなの登山記02−17 須 走口
 投稿者:忍忍さん

■2002年7月22日〜23日 須走口

10年越し、『3度目の正直』の登頂
7月22〜23日にかけて、須走口から単独富士登山に挑戦しました。

 富士登山に挑戦するのはこれで3度目、しかし過去2回はいずれも途中で断念
し、一度も山頂に達したことがありません。

 最初の富士登山は平成4年、職場のツアーに参加して吉田口からの挑戦です。
その日はシーズンで一番の人出があり、1万5千人もの登山者がいるから、山頂
は満杯でおそらく辿り着けないと言われていました。案の定、8合目から人の列
が全く動かなくなり、どうにも進めなくなりました。そうしているうちに横殴り
の雨に見舞われ、体調にも異常が表れたため、泣く泣く下山しました。

 2度目は昨年7月末、須走口からの夜間単独登山です。朝9時頃三重県の家を
出発し、夕方須走口5合目に到着、夜9時から登山を開始して山頂でご来光を迎
える予定でした。しかし、長時間ドライブの疲れも取れず、おまけに寝不足、し
かも初めての登山道での夜間単独登山、そして6合目まで雨という悪条件が重な
り、大陽館から見晴館までの間で見事に高山病にかかってしまいました。頭が痛
いだけならまだしも、3回も吐いてしまったので、とても7合目から上には行け
なくなり、誰もいない、物音一つ聞こえない砂走りと樹林帯を懐中電灯に照らさ
れる「下山道」の立看板だけを頼りに3時間かけて下山しました。日頃からマラ
ソンをしているので体力には自信があったのに、こんな結果になったことで、自
分がつくづく情けなくなりました。

 前置きが長くなりましたが、このような過去があるため、今回は絶対に失敗し
ないよう、まず登山前日に現地入りしホテルで一泊、そして山小屋で一泊、山頂
でのご来光にはこだわらず、とにかく登頂を第一目標にした「石橋を叩いて渡
る」作戦で挑戦しました。登山当日は朝9時に須走口5合目着、そこで十分高度
に体を慣らし登山を開始したのは11時半。歩くペースは秒速30センチくらい
でしょうか。もう「これでもか!」というほど遅い足取りです。少し前までの国
会議員たちの常套だった「牛歩戦術」を思い出しました。天候は薄曇り。昨年は
夜間登山だったので周りの様子は何一つわかりませんでしたが、今回は昼間です。
事前にホームページで見ていた景色が目の前に広がり、ちょっと嬉しかったです。
それにしても自衛隊の砲撃音は凄いですね。最初はあれを雷だと思って、途中で
会った家族連れに「雷、怖いですねー」なんて言ってました。途中で小休止を2
度ほど挟み、宿泊予定の7合目大陽館には午後3時着。こんなに早く着くんだっ
たら、もっと上まで行けそうな気がしましたが、噂に聞く(?)大陽館の豪華な
ごはんを食べたかったので、今日はここまで。ごはんはよかったですよ。おかわ
り自由なのも嬉しいです。就寝は午後6時。他に何もすることがありませんから
ね。平日ということもあり、山小屋は空いていてゆったりと寝られました。これ
が週末になるとどんな状態になるのか、考えただけで恐ろしいです。

 起床は翌午前4時。ご来光を見るため、しばらく外で待っていました。午前5
時前にご来光です。朝日に照らされた富士山が金色に光っていました。そして、
遙か上方の山頂を見て「今までの悔しさを晴らしてやる!」と決意を新たにした
瞬間でもありました。大陽館を午前5時過ぎに出発。本7合目までの道を「去年
はここをゲロ吐きながら登ったんやなあ」と感傷に浸りながら登りました。今回
は全く平気。平地と同じ体調です。見晴館に午前5時40分着。昨年はここから
無念の下山です。今回の調子良さからは、とても考えられません。8合目から吉
田口と合流。山頂でご来光を見たツアーの団体が、上から砂煙を巻き上げながら
下りてきます。煙に巻かれたくないので、山小屋の前で団体をやり過ごし、ゆっ
たり登山再開。その後も体調は快調。山頂には午前8時に着きました。10年越
しの悲願達成です。

  山頂の天気は快晴。風もほとんどありません。山頂から家族や友人に連絡をし
た後、お鉢巡りを開始。ホームページで時計回りは大変だという情報を仕入れて
いたので、逆時計回りです。お鉢周りの最中、平地になった部分で少し走ってみ
たら、すぐに息が切れました。そこで初めて空気の薄さを体験しました。剣が峰
でしばらく日本最高峰の余韻に浸りながら休憩し、午前10時40分下山開始。
下りは早いものです。

 11時20分に大陽館着。そこで大陽館のご主人に無事登頂を報告。気になる
のは、山頂から私を追いかけるように走って下山していた女性が、大陽館のバイ
トさんと会話をしたあと、辛そうな顔で今きた道を引き返し始めたことです。そ
う、彼女は吉田口と間違えて須走口に下りてしまったのです。これからまた8合
目まで登り直すことを考えると、とても気の毒でした。それとも、まだ7合目で
気づいただけよかったのかなあ。

 7合目から始まる砂走りは、杖を支えにして一歩一歩引きずるようにして下り
る人をよそ目に、ひたすら快走!懐中電灯で「下山道」の看板を探しながら下山
した昨年のうっぷんを晴らすように、とにかく快走。「止められるもんなら止め
てみろー」という感じです(笑)。そんな私の様子を見ていた砂払5合の売店の
おばさんが、「お兄さん速かったねー」と感心してました。5合目到着は午後1
時。休憩時間を除くと、実質2時間弱で下山しました。

 着替えと、ほっと一息の仮眠を済まし、今シーズン中にもう1回来ることを誓
いながら帰路につきました。今回の登山は本当に楽しかったです。富士登山の魅
力に取りつかれてしまったかもしれません。

 今回の登山では、7合目に向かう途中で登山のコツを教えてくださった、平塚
市から来られていた富士登山10回目の78歳のご老人、ご来光のとき、今まで
の登山話を聞かせてくださった富士登山23回目の男性、山頂で火口をバックに
で写真を撮ってくださった東京の男性などなど、いろんな人たちにお世話になり
ました。特に、6合目に向かう途中で挨拶をし、大陽館で一緒に泊まり、剣が峰
ではお菓子を分けてくれ、帰りの駐車場では車で走り去る私に、「お疲れさまー
っ」と手を振ってくれた横浜から来られていたご夫婦には、本当にお世話になり
ました。富士山ではきちんと別れ際の挨拶ができなかったので、この場を借りて
お礼をさせていただきます。本当にありがとうございました。
 このサイトを見てくれていたら嬉しいなあ・・・。

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■2002年8月26日〜27日 須走口

今シーズン2回目の富士登山

 8月26〜27日にかけて、須走口から今シーズン2回目の富士登山に行って
きました。前回(7月22〜23日)は単独登山でしたが、そのときの楽しさを
友人に聞かせたら「俺も行きたい!」ってことになったので、今回は2人で登山
です。前回は体調に万全を期すため前日に現地へ入り、下山後もさらに1泊しま
したが、今回は片道8時間の運転でも友達と交代できるため、8月26日の夜中
に三重県を出発、朝9時頃須走口5合目着、仮眠と高度順応の後、昼前に登山開
始。天候は曇り。山頂はおろか、6合目付近も全く見えません。天気予報では
「晴れ」と言ってたのに。

 友人は富士山を含め、2000m以上の山に登るのが初めてです。そんなこと
もあり、高山病を警戒して今回も牛歩戦術で歩いていましたが、友人はそれがも
どかしいらしく、先へ先へ行こうとします。その度に私が「ペース速いで!」と
ブレーキをかけていました。森と森の間にある岩場で休憩していたら、外国人の
女性が一人でモリモリと登って行きます。歩幅も大きく、本当に豪快な歩き方で
した。これは外国人全般に言えると思います。宿泊は大陽館、午後3時着です。
前回泊まってみて、夕ご飯の豪華さに惹かれました。友人とおかわりを繰り返し
他の人たちの豚汁が少なくなってしまいました(笑)。前回は、山頂でのご来光
を目指す人たちが出発の身支度をする度に、ビニール袋の「バシャバシャ」とい
う音で目を覚ましていたので、今回は耳栓を持参しました。これがなかなかよか
った!隣に寝ていた人がいつの間にかいなくなっていたとき、耳栓の効果を実感
しました。ただ、気になったのが、夜9時頃から強くなり始めた風。「朝になれ
ば止むだろう」と自分に言い聞かせていたものの、時間の経過とともにどんどん
強くなっていきました。風が強ければ、お鉢巡りはもちろん、山頂にも辿り着け
ない恐れがあるのでひたすら風が弱くなることを祈りながら床に就きました。

 起床は午前4時半。山頂は雲がかかっていて全く見えません。風は相変わらず
強いままです。本七合見晴館の少し上までは晴れていたため、とりあえず登山を
開始し、ご来光は登山道の途中で見ることにしました。しかし、私たちが登り始
めた直後からガスが下に下りてきて、周囲が一面ガスの世界になりました。これ
は悔しい!風もますます強くなり、見晴館に着く頃には突風に近くなっていまし
た。さらに湿気混じりの風のため、衣服も湿りがちに。ここで上だけ合羽を着ま
した。これは体の保温にも効果がありました。合羽を着るまではとても寒く、友
人はとても寒がっていましたから。それにしても、前回は快晴に加え無風の中を
楽しく登っていたのに、今回は「修行」のような辛さがありました。友人は8合
目辺りから、軽い高山病にかかっていたようです。それでも山頂に辿り着きたい
一心で、ひたすら登り続けました。

 そして、午前8時前に無事山頂着。しかし、風が強いのなんの!風に飛ばされ
る砂が顔に当たって痛い痛い。それに寒さも加わり、とにかく風を避けるため、
山頂の山小屋で温かいラーメンを食べながら少し休憩。そこで友人にお鉢巡りを
諦めるよう打診しましたが、せっかく来たのだからとどうしても諦めきれない様
子。とりあえず外に出てみたものの、やはり風は強い。そんな中、無理なら速攻
で引き返すことを条件に歩き始めました。周りはガスで何も見えません。そのと
き、私のザックに結びつけていたゴミ入れに使用しているビニール袋が、強風で
吹き飛ばされてしまいました。固結びにしていたのに吹き飛ぶとは恐ろしい風で
す。袋の中には前日からのゴミが入っていましたが、全部吹っ飛びました。富士
山にはゴミ一つ捨てないはずが、逆に散らかしてしまいました。スミマセン。さ
すがにこれで身の危険を感じ、建物の陰に避難して友人に「やっぱりやめよう」
と説得を開始。

 そのとき不思議なことが!なぜか風が弱くなり、ガスも晴れていくではないで
すか!これはお鉢巡りをするしかないでしょう。下界は全く見えませんが、山頂
全体は、はっきりと見ることができました。ほどなく剣が峰に到着、記念写真の
撮影と休憩の後、お鉢巡りを再開しました。その頃また周囲にガスが立ちこめ、
風も出てきました。また風との戦いになりましたが、40分かけて無事に吉田口
山頂まで戻りました。

 下山はハイペースです。約50分で大陽館に戻り、山頂での出来事を報告。そ
の後、楽しみだった砂走りの快走。このあたりで左足の小指を始め、両足の親指
に激痛を覚えていたのですが、我慢できない痛みではなかったので、そのまま下
山を再開しました。砂走りは友人を置いてけぼりにして、私一人で駆け下りまし
た。6合目を目指す登山者の方達がこちらを見ているのがわかります。これでコ
ケたら笑われただろうなあ。石が多くなってきたところで走るのをやめ、下りて
くる友人を待ちました。そこからの歩きは本当にきつかったです。体は辛くない
のに、とにかくつま先が痛い!前回はつま先などにマメ対策を施していたのです
が、今回は何もしていませんでした。これが失敗でしたね。特に樹林帯は友人の
手前、口には出さなかったけど辛い道のりでした。山頂から2時間10分ほどで
駐車場に戻り、靴下を脱いで足を見たところ、(血)マメが両足の親指に3カ所、
左足の小指の先に1カ所できていました。翌日小指のマメを潰したところ、皮と
一緒に爪まで剥げてしまいました。

 休憩もそこそこに家路に着きました。とは言え、8時間の道のりです。ほとん
どの道中、私は爆睡し、友人が三重県まで運転しました。なんてタフなんだろう。
ちなみに、往路も全て友人が運転しました。全然眠くもならないみたいで、本当
にタフです。

 今年の富士登山はこれで終わり。来年から、富士登山を夏の恒例行事にしよう
と思います。須走口をメインにして7月と8月に1回ずつ、年2回登りたいです
ね。来年は山頂でのご来光を第一目標にします。友人も「天気のいい日にまた登
りたい」と言っていました。前回と今回の富士登山では、登山道の特徴・必要装
備・心構えを知るにあたり、このサイトが本当に役に立ちました。もう1年早く
知っていれば去年の高山病→挫折も無かったのかなあと思っています。

(管理人)
 大陽館に半日も滞在すれば十分に体力回復ができますね。
マメができてあの樹林帯を下山するのは、さぞかしつらかったことと思います。

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(02/9/11)