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 みんなの登山記02−2 河口湖口→須走口
 投稿者:「体重85kgの男」さん


 諸般の事情で急遽、富士登山を仲間同士でいくことになり、2002年7月12日に富士登山を行った者です。登山の基礎知識および富士登山の知識が全くなかったため、インターネットで情報を収集した際、本ホームページを知ることができ参考にさせていただきました。
 そこで、突然、富士登山に行く羽目になった場合で、登山の最中に「足の異常」が発生したために過酷な富士登山経験になってしまった事例を報告させていただきます。(ぜひ、トラブルが発生した場合の視点にたった情報の拡充をお願いしたいと思います。富士山は、慎重に準備をしても、一歩間違えば大変なことになる山であることを周知することが重要と感じています。)

1 準備期間
(1)健康状態
 富士登山の半月前に、ジョギングが原因で右ひざにやや違和感が発生。登山の直前には、違和感解消。

(2)用品等
 ザック等の装備を持っていなかったので、ホームページで奨励されている用品一式が入るものとして30リットル級のザックを購入。それ以外にも、万が一のための激安のゴアテックス製雨具等を購入。

2 登山:河口湖口
(1)台風接近
 富士登山の予定日の直前に台風が本州南部を通過。一時は富士登山中止を検討したが、台風の移動速度が予想以上に速く、台風一過の状況で登山を行えることが判明。ライブカメラ等の情報から、台風通過直後の1〜2日めは、天候が良いことを確認できたことも、登山決行を決心できた要因の1つ。)

(2)登山実施状況
 ア 5合目〜7合目
 河口湖口を7月12日 0325にスバルラインの駐車場に到着。高地順応のため、40分ほど自動車内で休憩。0400に出発。雲ひとつなく、風もほとんど無い状況。(5合目という低さではあるが)出発して20分後、御来光を見ることができ幸運でした。まず、歩き出して意外だったのは、河口湖口の最初の下りが終わってから、6合目までの最初の段階で、かなり斜度が厳しい坂が存在していたこと。高山病対策として、特に意識してゆっくり歩行していたつもりでしたが、一緒に登山した仲間の中で、あっという間に高山病で脱落する者が発生。自分自身も6合目手前あたりで休憩中に、心臓がドキドキして、生あくびが連続したり、妙なセキがでたりするなど、高山病の症状がでてきて焦りました。長めの休憩を取ることで、なんとか症状が緩和され、登山継続。

 イ 7合目〜本8合目
 この頃からジョギングで傷めていた右ひざの調子が悪くなりだし、かばい始める。ある山小屋の手前の階段を上るとき、右ひざをかばうため、左足を使って階段を昇ったところ、左足の筋肉が硬直。ベンチに座り、数分間、硬直した筋肉をマッサージしたところ、硬直から開放される。この段階から歩行するスピードを極端に低下させて、高山病対策と足の不具合発生防止を図る。

 ウ 本8合目〜頂上
 とにかく呼吸の辛さは、半端ではないことを体験。なかなか近づかない頂上を見上げつつ、とにかく1歩でも前進しなくては頂上につかないと考えつつ1歩1歩前進し、出発してから8時間25分後に頂上に到着。頂上についた途端、本8合目あたりから吹いてきた風が、更に強くなり、雨粒も混じってきたので、すぐに下山。

cut

3 下山:須走口
 下山は疲労等で大変と聞いていましたが、私の場合は、右足の膝の異常で相当に厳しい状態になってしまいました。歩き始めてわかったのですが、斜度がゆるければ、それなりのスピードで歩けるのですが、斜度がきつくなると、右ひざに痛みが発生。しかし、下り坂はほとんどが、きつい斜面なので、痛みに耐えつつ歩行。やがて、砂走りに至り、この区間の長さにあきれると同時に、どんどん足の痛みが悪化。(河口湖口のような馬とかを使って降りることができないため、須走口下山の際は、足のトラブルの兆候がある人は注意が必要と感じました。)
 砂払いの山小屋は、まだ営業していませんでした。ここから、須走駐車場まで2.3km(30分)という表示を見ましたが、この表示は誤解を生むので、修正すべきですね。50分ぐらいの表記にすべきと感じました。私のような足を傷めた者にとって、須走の樹林帯の歩行は最悪でした。すでに、右膝がほとんど動かない状態になり、なんとか体をかろうじて支えることが可能なだけの状態になっていたので、樹林帯の山道の狭さ、根の出っ張り、台風通過直後のためか泥だらけのぬかった土が私の歩行の障害になりました。
 どんどん暗くなってゆくので、遭難の恐怖を感じつつ、やっとの思いで5合目についたのが、1730。下山を開始して、4時間50分を要しました。下山後、右足を持ち上げることがほとんどできなくなり、車に乗ることも困難となる。(注;ドライバーは私ではありません。)

4 教訓
 登山開始以前に発生したちょっとした足のトラブルを甘く見ると、富士登山ではきわめて危険。無理をすると、とんでもないトラブルを生起させる危険性大。

5 その他
 富士登山には、数多くの危険が存在し、運が良くなければ、あっという間に危険な状況に遭遇することを身をもって体験しました。以下、気のついた点をメモとして記述します。

一部の山小屋周辺の道
 2人の人間が通行できないほど道が狭いだけでなく、転落したら大怪我〜死亡になりそうな場所にもかかわらず柵も何もない場所が散見された。あまりの怖さにびっくりさせられた。

日焼け
 日焼け止めクリームは手、首、顔に塗りましたが、唇が無防備であったので、唇だけ皮が向けそうなひどい日焼けになってしまいました。皆さんは、どんな対策をされているんでしょうか?

まめ
 事前に、富士登山用の靴を2週間履き続けて足を慣らし、更に数回・連続して数km歩いて、まめが発生しない靴下を選択したため、13時間半も歩き続けたにもかかわらず、足にまめは発生しませんでした。(靴下2枚履き。)

ひざ痛&筋肉痛&高山病後遺症?
 登山後、翌日は下半身の筋肉痛は相当にひどい状況。右ひざ痛は、湿布等の治療で、足を動かすことは可能な状態に復活。妙に頭がふらつく場合あり。特に頭を下に下げてから、上を向いた場合に貧血のような感じあり。

携帯電話
 私はJ−PHONEを使用しています。確かに山頂や河口湖口で概ね使用可能でしたが、今回の私の場合、膝の痛みが激化したきた段階に歩いていた、須走口の砂走りの5合目近傍から樹林帯で通話不可だったことにショックを受けました。万が一、助けを呼ぼうにも使い物にならないわけですから・・。また、こまめに電源を切っておかないと、すぐに電池が消耗することも体験しました。今後、手動式の携帯電話充電器も富士山等で登山する人には必携の備品と思います。

富士山の気象情報
 インターネットの時代にも関わらず、「山と渓谷社」のホームページの気象情報以外に富士山頂の気象情報がほとんど入手できなかったことは意外でした。私は、3週間の間、、「山と渓谷」のホームページを見つ、富士山の気象特性を確認し、ライブカメラの映像と気象現況の比較をしていました。理想的には、富士山頂上にライブカメラが常設され、頂上の気象観測データが配信されることが理想と思います。現在の気象傾向を知るには、最低限1週間から2週間程度の気象状況データが確認できればと思います。

事故
 富士山で多くのけが人や死亡者が発生していることは、あまり理解されていないようです。(私も各種ホームページを見て、初めて実態を知りましたし、実際に登山を行って、簡単に事故死する可能性がある場所と実感しました。)おそらく交通事故で全ての事件がテレビ等で報道されていないのと同じ状態なのかと思います。観光客を集めるためには、客が減るような情報は問題かもしれませんが、事実として周知させる必要はあると思います。(山梨県警のHPには、前年度の事故報告が掲載されていますが・・)
 富士登山は一般的なイメージとしてにあまりにも簡単に頂上までいけると感じさせていると思います。今後、富士山の火山性微動などのように富士噴火の可能性も踏まえつつ登山を行うことが必要な時代に入ったわけですから、交通死亡事故現況のように富士登山におけるけが人や死亡者の推移を警察が中心となって明示する方法も一考の価値はあると思います。

落石
 今回、台風通過直後に登山を行ったため、周囲の者から落石の発生を心配されました。そこで、富士登山における落石事故の情報を探しましたが、ほとんど断片的なものしか見つかりませんでした。昔、テレビで富士山落石事故で多数の死傷者が発生した時に遭遇したある家族が、父親の指示に合わせて家族全員が落石を回避する行動を行ったことで助かった事例を見たことがありますが、この種の情報がネット上で公開されていない(見つからない)のは残念でした。過去の発生場所すらよくわからなかったです。
(父親の指示とは次の通り)
1 まず、落石に対して(つまり山頂側の方向に)正対した。
2 父親を先頭にして、家族(母、子供2人ぐらい?)が縦に1列に並ぶ。
3 父親が落石の動く方向を冷静に観察した上で、家族に対して”右!”、”左!”と動く方向を指示する。
4 家族が一体となって、父親が指示した方向に移動。
5 結果として、落石の直撃による死傷から免れた。
 漫画みたいな話ですが、実話であったことからテレビでとりあげられたのでしょう。彼らは単に運が良かっただけかもしれませんが、かなりインパクトのある話だったのこんな記憶として残っています。
(管理人注:この落石事故は1980年に河口湖口登山道そばの吉田大沢で発生したものだと思われます)


6 最後に
 当ホームページから得た数多くの情報により、今回の登山は(私が足を傷めて、苦心した以外は)大成功に終わりました。貴重な情報の提供に感謝いたします。おそらく、多くの富士登山予定者が、当ホームページを参考に登山をするかと思います。遭難、事故防止のための情報の充実に期待しています。インターネットの時代のおかげで、安易な考えで登山を行うことなく、最低限不可欠な準備を確保できたのは、”あっぱれ富士登山”等の富士山を愛する皆さんの情報提供あればこそでした。多くの方が、安全に富士登山を達成されることを願っております。

(02/7/23)


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