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 みんなの登山記02−3 河口湖口
 投稿者:寅さん


■河口湖口(02年7月24日)

 はじめまして!東京在住の寅と言います。このページを参考にして今回彼女と富士山 に初アタックしてきました。しかし高山病になったり下山が遅れ夜になり霧に包まれ て危なく遭難しそうになりました。これからもし自分達のような事態にあった人がい ても慌てないように参考にして欲しいと思います。

<準備>
 僕は20代の時によく山に登っていましたが、30代になって久々に登山を再開です。彼 女はほとんどはじめて。そんな状態で富士山はあまりにも危険なので事前に低い山に 登ったり、トレッキングシューズのならしも兼ねてウオーキングしたりしていまし た。
 実は7月前半に河口湖口に登りに行ったのですが、凄まじい雨風に霧まで出たため、 危険と判断し断念しました。今回は2度目の挑戦です! 装備に関しては「あっぱれ!富士登山」を参考に、掲載されているものはほとんど揃 えました。

<いざ出発>
 7月24日(水)のAM1時過ぎに車で家を出て河口湖口五合目に3時半ごろ到着、薄く霧 は出ていましたが、撤退した前回に比べれば雲泥の差。車で仮眠しようとしたが、寝 つけず日の出が近づき、結局睡眠をとれずご来光を迎えました。雲は多かったが、な かなか表情があって良かったです。
 車に戻り少し休んでから、荷物を用意し準備運動をして、AM5:38出発!今回はこの時 間から登り、日没には帰ってくるという日帰り登山です。あっぱれ!富士登山にあっ た小御岳(こみたけ)神社お参りをしようと思ったのですが、シャッターが閉まって いてお参りできませんでした。今思えばこの事が何かの前兆だったのかもしれませ ん。
 お馬さんに抜かれながら、ゆっくりとステッキを使って歩きはじめました。天気も よくすがすがしい朝です。馬に乗ってるおじさんが僕らを通りすぎる数秒の間に「あ そこは○○って小屋だよ」などとミニガイドをしてくれ、嬉しい気持ちになりまし た。

<六合目>
 安全指導センターを横目に見つつ休憩。登山のためのパンフレットをもらいまだまだ 先は長い事を実感。水分を取りとにかくマイペースで進みました。平日のため登山者 もさほど多くありませんでした。危惧していた団体さんも少ししかおらず、平日のこ の時間を選んで正解だと思いました。これから本格的登山のはじまりです。

<七合目>
 ここから岩が多くなり軍手が必需品です。このあたりから確実に息苦しくなりまし た。そのため山小屋ごとに休憩をとりました。天気が良かったので一斉に布団を干してい ました。あまりいい評判の聞かない山小屋も「こんにちは」「がんばってください」 などと声をかけてくれて印象は良かったです。ただ山小屋の前のベンチに座って水な どは飲めても、自分の食べ物を食べたりするのはなんとなく気が引けました。こっち の考え過ぎかもしれませんが、目の前の人の目線は気になります。おにぎりなどは途 中の岩場のスペースで食べました。山中湖を見ながらの食事は美味しかったです。
 他の登山者で目を引いたのは、自転車を担いで登っているおじさんでした。しかもマウ ンテンバイクではなく旅行用のものにGPSを取り付けていました。「自転車で頂上か ら降りるんですか?」と訪ねると「いやーそれ用じゃないから」と言っていまし た。じゃー担いで登り、担いで下るのか?なぜ!?と思いましたが、きっとおじさんに とって大事なパートナーなのかと想像しました。

<八合目>
 登山をしていていま何合目にいるかで、どのくらい登ってきたか実感が持てますが、 僕はスントの腕時計についている高度計が、いまどれくらいの高さにいるのかわか り、非常に役に立ちました。
 このあたりから彼女の足が痛みだしサロンパスをして休憩を増やしました。そして息 苦しさも増し、食べる酸素と缶の酸素もまめに使いました。この時点でお昼になって いたので、少し時間を気にしはじめました。太子館ではうとうとと5分くらい寝てし まいました。やはり疲れが出てきました。ここからが長そうだ。

<本八合>
 ここにきて彼女の足の痛みが増し、膝も痛みだしました。サポーターをしてかばいな がらゆっくり登ります。それに加え頭痛と吐き気も出てきました。高山病のようで す。息が切れたら休憩。そして酸素の摂取。かなりきつそうです。風も冷たくなってきま した。富士山ホテルに着くまでは相当に時間がかかりました。僕がまったく元気なの が救いです。僕まで高山病だったら大変なことになっていました(汗)

<九合目鳥居>
ここにきて彼女の体調が急激に悪くなり、足の痛みに加え、頭痛、吐き気、眠気が 襲ってきました。岩場でしたが、スペースを見つけ休ませました。ただ日がもう陰ってき て日陰になっていたので、風でかなりの寒さです。このままだと体力が奪われるの で、もっている衣類をすべて着させて(レインスーツも)ホカロンを体に貼り、レジャー シートを体に巻き風があたらないようにして仮眠をとらせました。緊急時にビバーク する感じです。この時点ですでに3時をまわっていたので、日没の事が気にかかりは じめました。

<富士山頂>
 やったー!ついに頂上だ!!時間を見たら4時半過ぎ。げげっ!11時間もかかってし まった。でも登れて良かった。一番にしたことはトイレに行く事。それから彼女を休 ませ、ストーブでカップラーメンを作り、ポタージュスープを作ってのませました。 しかし体調は一向に良くならず、山小屋で休ませるか、下山することで高山病の症状 を緩和させるか悩みましたが、彼女の「下山しよう」の言葉で下山を決意。もう6時 になっていた……。

<下山〜恐怖のはじまり〜>
 下山をはじめる前に、貼るホカロンを2個彼女に身につけさせ体温が下がるのを押さ えました。下山をはじめると目の前に富士山が見えた。え?どうしてと思ってよく見 ると夕日が富士を照らし、街に影を作ってそれがまるで本物の富士のように見えてい たのです。そして雲はまるで湖にように広がり、それは見事な景色でした。
彼女は膝を痛めているので下山は苦しかったようですが、救いはしばらくするとの頭 痛と吐き気がピタリと治まったことです。やはり高山病だったのかと思いつつ、下山 を続けました。
 八合目江戸屋に来たころにはもう暗くなり、あらかじめ用意していたヘッドランプを 使いました。あっぱれ!にあった通りに河口湖口方面と須走口方面も間違わずに進め ました。ここまでは順調でした。ここまでは。

 それからの行程が長い長い。いつ終わりが来るのか検討もつきませんでした。しかも やがて霧が発生して、ヘッドライトの光が反射して視界が困難に。もう回りには誰も いません。不安な気持ちになり平日に来た事が少し恨めしくなりました。
状況は更に悪化してきました。霧だけではなく雨まで降り出しました。おまけに風も 吹いてきました。そしてこの下りが彼女の足を更に痛めました。おまけに霧雨が僕の 眼鏡について視界か聞かなくなってきました。ふたりで手をとり少しずつ進みます が、あまりに霧と雨がひどく崖に向かって進んでしまい危なく崖から落ちそうになりまし た。

 それからはジグザグの道だと言う事をイメージして、なるべく壁よりに歩くよう にしました。来るなよ落石。しかし普通の状態でも数時間かかる行程を探りながら歩 いていると全然進む事ができません。不安と恐怖がこみあげてきます。

やっと何かの建物が見えました。そこには緊急避難小屋とありました。そこで休めば 良かったのですが、恐怖心から早く行きたくなり、まだまだ長い行程とも知らず進み ました。そこからが長いのなんのって。彼女の足も痛みもなくなり麻痺していまし た。
 視界がきかない事がこんなにも恐ろしい事とは思いませんでした。岩が人に見えた り、風が誰かの声に聞こえたりしました。あとで聞くと彼女もそう感じていたそうです。 苦しさと不安の中やがて明かりが見え、たどりつくとトイレでした。ちゃんとあっぱ れ!にのっているトイレなのに、恐怖からここがそのトイレとは思えなくなっていた のです。

 このまま下山できないのではと思っていたところに獅子岩につきました。自分達の来 た道はあっていたのだとひと安心。しかしここからが今回の登山の一番の恐怖でし た。霧は弱くなっていましたが、雨が本格的に降ってきました。雨のため落石よけのシェ ルター(コンクリートのドーム状の道)を通ったのですが、ここが夜はお化け屋敷の ように無気味な廃虚の様相で恐かったです。

 ほんとにこの道であっているか時折不安になった時それを確認するのに、地面に落ち てるゴミで判断しました。けっこうゴミが落ちていて、それを見てここは人が通る登 山道だと推測して進みました。残念なことですが、たとえゴミでも人の気配が感じら れ気休めになりました。

 いくつかシェルターを通って進むと、目の前に道がなくなっ ていました。目の前には木が道を塞ぐように倒れていました。もしかして雨で木が倒 れたのかと思い僕だけ少し進んでみると行き止まりでした。どうやら道に迷ったよう です。ここでお互いかなり動揺しました。後ろに一本道を見つけましたが、おかし い。獅子岩からほぼ直線のはず。この道は戻る道だ。かなりあわてましたが、ここで冷静 にもういちど道を確認しようと思い土砂降りの中取り出したのはあっぱれ!のHPをプ リントしたもの。ここに確かに横方向に進むと書いてある。やはり迷ったようだ。ま ずい。ここは冷静になって考えようと、シェルターに戻ることにしました。あそこな ら雨をしのげるので、コースを確認できる。最悪そこにいれば、水も食料もストーブ もあるし、携帯も緊急用の笛もサバイバルシートもあるし、大丈夫!と自分に言い聞 かせました。とにかく戻って冷静になろう。

 もどる途中で、道を発見!「道があるよ!ここだ!!」思わず叫びました。この道は 方向があっている。どうやら雨で見落としていたようだ。手にはあっぱれ!のページ が雨でぐしゃぐしゃになったまま握られていました。

 そのまま六合目の穴子屋にライトを発見!雨宿りしてる青年がふたりいました。人に 会うのは数時間ぶりです。五合目がこの方向である事を確認し、やっと朝来た道をも どりました。五合目についたのが、なんとPM11:40!出発はAM5:38ですから……。も う身体も限界。彼女も雨のせいで寒気が治まらず、薬を飲ませましたが早く家で休ま せたくて車を走らせました。帰りの車も極度の疲労から木が人に見えたり、信号まで の距離感がつかめなかったり危険でした。幸い無事着きましたが、これは反省しまし た。せっかく無事帰って来たというのに。しかしそれほど動揺していました。

<最後に>
 今回の登山で感じた事は動揺すると判断力が落ちて、わかっている事も忘れてしまう 事です。何度もあっぱれ!のページを印刷までして読んでいたというのに。それと高 山病に対しての認識の甘さ。気象条件の急激な変化とその厳しさ。身にしみまし た。
 逆に役に立ったのは使わないだろと思ったが一応持っていたカイロやストーブです。 高度計つきの腕時計も下山時、どこにいるか分からない時に目安になって助かりまし た。あとはゴアテックスのトレッキングシューズ。もし雨で足まで濡れていたら、もっ と危険だったでしょう。食料も多少多めに持っていたのも良かったです。水ももしも を考え残してありました。

 もし富士登山で下山が夜になり、気象条件が悪くなった場合ぜひ僕らの失敗を参考に にして冷静に判断して行動してください。どうしても焦りから、先を急いでしまいが ちですが、一歩とどまって時には安全な場所に戻る事も選択してください。僕らは冷 静になろうと一度来た道を戻ったため、正しい登山道が見つかったのです。観光地化 している富士山は楽なイメージがありますが、全然楽ではありません。一歩間違えば 大変危険でした。それと同時に簡単に僕達みたいな事に陥る人がいるのではないかと いう考えも浮かびました。ならばこのレポートをぜひ参考にして欲しいと思います。

「富士登山」より「無事登山」が一番です!!

(管理人)
 私も膝痛で河口湖口を下山したことがありますが、めちゃくちゃつらかったです。足が故障した場合は下山に備えて早めに引き返すことも必要です。それに加えて雨、闇。そのつらさは想像ができません。


(02/7/29)


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