[登山記の目次に戻る]

 みんなの登山記03−1 須走口
 投稿者:バンザイさん


■2003年6月6日(金)〜6月8日(日) 須走口

6月の富士登山

【はじめに】
 この登山記は、はじめの段階では富士山頂までの登山を目的にしていないことをお断りしておきます。今回のテーマは夏の登山シーズンを前に、ひとけの少ない富士山の下見です。日程はかなり前より梅雨入り直前の土日に照準を合わせ、前か後に1日の休暇入れておく計画にしました。もし6月の第一土日が雨だったら、あるいは休暇がとれなかったら、2003年6月の富士登山計画はなしの心づもりでした。6月はまだ営業している山小屋が少ないので、山小屋に関しては事前に小屋へ直接オープン情報を確認しておかないとたいへんなことになります。吉田口の小屋が土日祝日のみの営業であり、1合目から縦走を計画するとどうしても、月曜日に休暇をとり、土曜に佐藤小屋泊、頂上は雪のため無理だろうから、八合目で須走に抜けるプランを考えました。月曜日に休暇をとることにしていましたが、仕事の都合で月曜にはずせない用事が入ったので金曜日スタート。天気も月曜日より金曜日のほうがよさそうなのでやむなしです。結果的に小屋が6月1日から平日もオープンしている須走口からスタートすることになり吉田に抜ける計画変更です。

 能書きばかりで肝心な登山記になかなかはいらず恐縮なのですが、もう少し辛抱下さい。『富士に1度も登らぬバカに2度登るアホ』という有名なことばがあります。これはなかなか味がある言葉だとは思いませんか。日本人に生まれたからには1度はということと、外国人にとっても『フジヤマ・ゲイシャ・ハラキリ』といわれるぐらい富士山は日本の象徴です。しかし、そこに2度も行くのはよっぽどのもの好き。事実登頂した方のほとんどはもういいよ。2度とは行きたくない。とくに女性はもうコリゴリといわれます。なんでかなと考えたのですが、やはり日本一の高い山、それにふだんは山をやらない方が集中した時期に登る。当然設備はキャパシティーを超える。まかりまちがって多くの人が気分よくなって、リピータが増えたら、御来光時刻前の頂上付近はどんなになってしまうのでしょうか。それでなくても7月・8月期間中休日の御来光時刻の山頂近辺はラッシュアワー状態です。集中を避けたらというのが今回の下見のねらいです。

 主な時間を書きましたので、私の登山ペースがわかると思います。
 特徴として
1.登りはじめはゆっくり。
2.昼間の暖かい時間に行動する。
3.登り下りの時間差があまりない。
4.頂上での御来光はもちろん、頂上そのものにもこだわらない。

【歩きはじめる前に】
10:35須走口五合目着
 下界から登山をはじめる場合、五合目が車から歩きにかわるポイントになりますが、車・バスから下車後いきなり歩き始めず1時間は休んでみて下さい。私はたいてい昼食をとってゆっくりします。お茶を飲み、回りを見ているだけでも五合目とはいえ富士山なので2000mはあり、多くの山々が眼下に広がるのが見渡せます。ここからの景色もわるくはないです。富士山といっても頂上ばかりではありません。五合目からでも相模湾を見ることができます。この1時間休みをとることによって、上り始めるとその後の展開がずいぶん違います。

 きのこうどん・きのこそばはすでにいただいたことがあるので、今回はお茶漬けにしてみました。漬物の歯ごたえがよく水分たっぷりで、夏場疲れて喉が渇いた状態にはとくにいいなと思いました。店の方々のお話では2・3日前に雪が降ったようなので完全に頂上はあきらめムード。その代わり幻の滝が今日のような天気の午後は絶好だよということでしたが、日が暮れる前に七合目までは進みたく、雪の状態によっては引き返して今晩は菊屋さんで泊めていただくことにもなりかねませんから、後ろ髪を引かれる思いであきらめました。

【雪中登山】
12:00須走口五合目発
14:00林館着(16分休憩)
15:05瀬戸館着(11分休憩)
16:16大陽館着
 林館の前から瀬戸館までは残雪がかなりありました。ところによっては、ここは木々の上なんだなというところがありました。雪原の上に足跡がたくさん残されていました。このルートは登るのでさえもきつく、降りるのは道を見失うのではないかと思い、6月上旬の富士登山はやっぱり危険だと思いました。この状況では、この登山記を読んでいただいた方々にはまったくお薦めすることはできません。途中、宿の予約をキャンセルしようとして連絡を入れると6合目からは雪がないよということでガンバってしまったのです。

 登りはじめて不安になったのは降りる時のことを考えてしまったからです。山で道に迷ったら、とくに富士山のような独立峰は、とにかく上るしかないと思います。万一下に向ったら樹海のどこにいくのかわからなくなり、今は上がるしかない状態になってしまいました。こういう心理状態になること自体がイエローカードです。

【夕餉のひと時】
 きょうはハンバーグ定食です。というか正確にはトン汁定食にハンバーグ付です。トン汁とごはんはお代わり自由なので安心です。なにが安心だかわからないのですが、ここで忽然ととりだした下界からの持込み白ワインはほどよく冷えています。ご丁寧にとういか、瓶入りで持参してしまい、1グラムでも荷物を減らした方がいいぞという先輩のアドバイスもありましたが、自分でもしょうもないアホだと思いますがやめられません。山での瓶入りはワインうまいです(笑)。うますぎていくら飲んでも酔いません。高地なのにおかしいなとおもいながらも、気がつくと1日めで1本あけそうになってしまったので、残りをガマンして翌日に残しました。次回は白の他に赤も持ってくるかなんてのん気なことをこの時は考えていました。飯も快調におかわりまでしてしまい、絶好調です。
ところが一眠りすると、めちゃくちゃ気持悪くなってしまい、ジーッとたたずんでいました。やはり高地でのアルコールは注意が必要です。それから瓶は必ず持ち帰って下さいね。

【天候の回復維持と新たな欲】
09:07大陽館発
 睡眠時間9.5時間確保で日頃の睡眠不足解消。昨日の雪で気持はめげてしまったが、天候に恵まれ、雪があるとこまで行こうと登り始める。目標はあくまで吉田口との分岐点がある八合目です。昨日の登山道は、けっして下りたくないので、吉田口経由で帰宅することも視野にいれはじめました。

09:44見晴館着(10分休憩)
10:14須走江戸屋着(6分休憩)
10:40八合目江戸屋着(6分休憩)
11:00御来光館着(6分休憩)
11:30九合目山小屋跡着(7分休憩)
12:00山頂到着
 登山中、雪は奇跡のようですが、ほとんどありません。もちろんところどころに、雪が存在したり、土と雪がマゼマゼ状態になっていますが、雪に出くわす時間帯は10時〜15時と想定していたので気温が高くカチンカチンに凍ることはあろうはずもなく、ゴアの防水登山靴で十分でした。

 山頂ではざっと見回して剣ヶ峰とお鉢めぐりは自分の実力では早々に無理とあきらめ、山口屋前でどん兵衛きつね大盛りを食べ、昼寝の時間です。それにしてもスキーやスノーボードを抱えていく人をたくさん見かけることができました。自分の服装もそうなのですが、近年の登山をはじめとしたアウトドアにおける装備の進化は目を見張るものがあります。昔、富士山をはじめて滑降したプロスキーヤー以上の装備になっているのではないのでしょうか。こういった装備のアップが行動範囲を飛躍的に拡大させたのでしょう。しかし各人の体力や判断力が往年のプロスキーヤーのレベルにあるとはとても思えません。いままで到達でききることができなかったエリアへ優れた装備のサポートにより到達する機会が増えるのはいいのですが、そんなとき小さなアクシデントが重なり、装備・体力・判断力のアンバランスがあらわれてしまったらと思うと心配です。
13:31下山開始
 下山道は雪が多く、登山道を下る。通常7月・8月は登山道を下るのはマナー違反で危険ですからやめましょう。しかしこの時期はそもそも登山禁止の看板が貼りだされ、自分自身の責任がより強く求められることもあり、少しでも安全な道を選んでしまいもうしわけありません。
13:54九合目山小屋跡着(5分休憩)
14:23御来光館着(7分休憩)
 午後にはいり本来なら気温の下がり始める時間なのですが、高度差で温度低下が相殺され寒さをほとんど感じさせません。むしろ時々ふわっと暖かいものさえ感じられます。

14:40八合目江戸屋着(7分休憩)
15:00須走江戸屋着(8分休憩)
15:26見晴館着(12分休憩)
16:05大陽館着
 各小屋間の上り・下りの所用時間はあまり変わりがありません。

【大陽館のこと】
 本日も8時間の睡眠を確保しました。この時期6月上旬は富士山でもここより上の小屋はあいていません。ということは日本国内で我々がもっとも高い所で眠ったのかな、なんて考えると気分がよくなってきましたが、他の山の小屋のオープン状況がわからないので、どなたか詳しい方がいらっしゃれば教えていただきたいものです。大陽館の宿泊代は素泊まり5000円(食事代は別途2食で2500円)ですが、同一シーズン2泊目からは2500円です。ですから連泊はとくした感じ。トン汁定食のおかずも1泊めと2泊めは違います。1泊めはハンバーグ。2泊めはさかな。ハンバーグが苦手なおじさんは2泊めが楽しみです。その他数々のおまけありです。山にはお金より時間を持ってくることですね。カミナリのある時、明日仕事があるからということで、無理してでていけばそれだけでリスクが高くなります。そんなわけで『泣かれるより叱られる方がいいだろ』という宿の方の言葉が、このような料金設定にもあらわれているようです。

 それにたまの休みを富士登山にあてるわけです。今の時代の人は常日頃睡眠不足におちいっている方が多いでしょう。富士登山による肉体の疲れが睡眠薬がわりとなり、日頃の睡眠不足を解消しようではありませんか。富士山に登って疲れたではなく、富士山に登ってリフレッシュできたが基本です。

【幻の滝】
08:33大陽館発
 いよいよおそれていた七合目からの下りです。2日間天候に恵まれたとはいえ金曜日の雪がすっかり消えているとは思えません。下り道は3本あります。登山道・下山道・ブル道。仮に雪があったとしてもブル道の方が危険は少ないと判断し選択しました。実際下りに入るとまったく雪はなし、両脇1mの高さまで積雪があるとこもあり、面白い景色が楽しめ、登りと比べて、リスクはほとんどなし。でもこの選択も6月だから許されるものだとおもいました。

09:49第三駐車場着
 時間に余裕があったので、幻の滝を見にいきましたがそれほど感動はありません。むしろ同じ場所で11月上旬に見た、金色の芝生のような大海原に土をこぼして盛り上げた大島・利島のほうが、自分の好みにはあいました。もちろんこれも自然頼みで、秋だからいつでも見られるとは限られません。たくさん富士山に行ってようやくめぐり合ったボーナスです。でかける人も少ないのですから、雑誌等の取材情報は少ないとおもいますが、11月上旬の五合目も天気が安定している日を選び日中だけなら、かなり安全でいいものが見ることができます。だから1度だけに限らず何回も何回も富士登山を目指したいとおもいます。

10:29幻の滝発
10:59菊屋着

【まとめ】
 明るいうちに自宅着。下見のはずが思いがけず11度目の登頂(剣ヶ峰は7度だけ)でした。シーズン前の抜け駆けになってしまいましたがタイムとか登る時間帯にコツがあると思います。なるべく安全な時間帯に登り、1日のうちで一番暖かい時間を一番寒い頂上ですごし、気温の下降とともに、山を下れば寒さを感じません。7月・8月も原則は同じですが、くれぐれも6月の夜間登山は避けて下さい。気温の低下により雪は固まり、先が見えないため、思わぬ大事故につながります。

 ここまで書いてきて6月の富士登山が是か非かわかりません。他人には積極的に薦めることはけっしてありません。多くのスポーツもそうですが、楽しみの中には危険が伴います。そういった危険をこわがるだけでは楽しみは味わえません。そのリスクをどれだけ減らすことができるか。自分の力の限界はどのくらいか。他人が決めるのではなく、自分の判断で行動することによって、他では味わえない意外な出会いがあるのだと思います。

 多くの人がでかける7月・8月の富士登山でも危険要素は沢山あるのです。最後にこのホームページの主旨である7月〜8月の夏山登山シーズンに限定した情報とは異なる6月の富士登山記を掲載させていただいたことに感謝いたします。

【おまけとして今回の持ち物】
水1.5L・・・・・・2本
水0.5L・・・・・・1本
ノンアルコールビール(350ml)・・・5本
白ワイン(瓶入760ml)・・1本
梅干・・・・・・5個
チョコ・・・・・・1箱
どん兵衛きつね大盛・・・・1個
6Pチーズ・・・・・4個
太めのソーセジ・・・・・・1本
コーヒ豆・・・・・・・・5杯分
カップミルク・・・・10個
ブースター付ガスストーブ・・・・1式
やかん・・・・・・700ml
保温カップ・・・・・・1個
ペーパフィルターとドリップセット
懐中電灯(ヘッドライトタイプ)
雨具(上下にわかれるゴアテックス)
トイレットペーバ(芯ぬき)
予備の下着(上下)
ビニールごみ袋・・・・・5枚(水ものがあるため多めに)
ひやけ止めクリーム(女性は絶対必須)
長めのマフラー・・・・・・1本
厚手のトレーナ(上下)
スパツ

着衣
大きな富士登山用笠
メガネ(コンタクトではないことを強調)
Tシャツ
長ズボン・長ソデ
うすい靴下
厚い靴下
ゴアの防水登山靴(踝まで隠れる)
リュックサックはイシイの35L
軍手(ゴム付き)
フリースの手袋(今回は出番なし)
金剛杖(焼印だらけ)


(管理人)
 当サイトでは決して6月の富士登山はおすすめしていませんが、登山記としてとても興味深いので掲載させていただきました。バンザイさんが記されているように大陽館の食事はあくまで豚汁が主菜なのです。私も大陽館のご主人からその旨を聞きました。豚汁の油分が登山時の保温効果になるということでした。






BACK  TOP  NEXT

(03/7/7)