■2005年8月2日(火)
初めて御殿場口に挑戦することになりました。私は川崎市在住の26歳♀です。山登
りは高校の時から独学で始め、今では週末ごとに近場の丹沢や奥多摩に通うほど山が
好きになりました。私が始めて富士山に登ったのは2003年の夏で、そのときに見
た河口湖の夜景、天の川、そして山頂での見事なご来光などの素晴らしい世界に感動
し、以来富士山にハマってしまい、これまでに5回登頂、その他シーズン外にもハイ
キング気分で途中まで登ったり、5月の残雪の上を歩いてみたり、タイムアタックを
したりと、色々好き勝手に楽しんでいます。
今年はすでに7/2,3に吉田口から登っています。2日の午前中に富士吉田駅を出
発。延々と歩いて五合目で友人と合流。その後夜行登山で登頂、見事なご来光を拝
み、感激しながら須走口を下山して来ました。♀のわりには頑丈な足をしてると思い
ます。私は自分の足を「結構頼りになるヤツ」と呼んでます(笑)
◎登山のきっかけと目的
ふとできた休日をどう過ごそうと考えている時に、「富士山登っちゃおっかな〜」ぐ
らいの軽い気持ちで計画したことに始まります。その週末に御嶽山(長野県)と大山
(鳥取県)に2日連続で登るというムチャクチャなプランを立てていたため、足慣らし
にどこかに登っておこうと思っていたので、その時は特に登頂するつもりはありませ
んでした。登頂する気がないんだったら、登山者が少なく静かな雰囲気で気ままに登
れる御殿場口が最適だと思い、またいずれ御殿場口から夜行登山をしてみたかったの
で、下見も兼ねて行って来ることにしました。
当初の予定 御殿場駅8:10発のバスで新五合目へ → 新五8:40出発 →
七合九勺(赤岩八合館)15:05到着 → そこから富士宮口八合目に移動して下
山開始 → 富士宮口新五18:00到着 → 18:10発のバスで富士宮駅へ
ん?いつの間にか結構なハードプランになってるかな?「富士山登っちゃおっか
な〜」どころじゃないかも。
◎とりあえず出発!
8/2早朝家を出て御殿場駅に向かいました。予定通り御殿場駅8:10発、御殿場
口新五合目行きのバスに乗りました。乗客は私を入れて2人。もう1人は途中で下車
したので、五合目まで行ったのは私だけ。噂には聞いていたけど寂しすぎる。(ちな
みに同じく御殿場駅から出ている須走口新五合目行きのバス停には、それなりに登山
者が並んでいました)
8:35新五着。御殿場駅のバス停でストレッチ済みなのですぐに出発。上を見上げ
ると遥か遠くに山頂が…、と言いたいけれど、あいにくかなりガスっていて山頂どこ
ろか数メートル先の人影すら見えたり見えなかったり。数日後に大会を控えた駅伝の
選手の方たちがどんどん私を追い越して行きます。ペースを乱さないでゆっくりと登
るように気を付けました。それにしても駅伝選手ばかりで一般の登山者が誰もいな
い。全くいない。まあ、いいや。1人でも開き直って登ってやるぞ!
◎〜六合目 時折山頂が見える
ただでさえ前半は単調なジグザグの登り。霧で視界が悪く、これがどこまで続くのか
見当も付かず、ただ無心で登りました。どれくらい登ったのか下を見ても一面真っ白
な世界で、時折霧雨も降ってきました。前後に大勢いた駅伝選手も次第に少なくなっ
て少し心細くなってきたとき、一時霧が晴れました。上を見上げるとはっきりと山頂
が現れ、御殿場口ならではの豪快な風景が広がりました。だいぶ上の登山道に3人組
の登山者と、周囲に数名駅伝選手が見えました。でも人はそれだけ。本当にここは人
気がないんだなぁ。下を見下ろすと新五合がだいぶ小さくなっていました。再び上を
見ると行く手に山小屋が小さく見えます。「六合目小屋?もうかなり登ってきたんだ
な〜」。時計を見ると10:00。ノートを開いてみると予定より1時間以上早い。
おかしいなぁ、と思いつつ、まあ早い分には問題ないと気分を弾ませて、更にもうひ
とつ上に見える小屋に向かって軽やかに歩き出しました。
◎〜七合目 恐怖の雨と濃霧
六合目小屋を過ぎたあたりで先ほどの3人組を追い越しました。大学生くらいの男性
3人組。「足を止めたらもう歩けない…」と言っていました。彼らは登頂できたか
なぁ。一時見えた青空も再び曇り、また霧に包まれてしまいました。そろそろ足が重
たくなってきたぞ。気温もだいぶ下がり、もう私の前を行く登山者はいなくなりまし
た。下ってくる人はいるんでしょうが、濃霧のため全く見えません。七合目を12:
20くらいに通過したとき、霧雨が本降りの雨に変わりました。これはすぐにやみそ
うもないと思い、急いでレインウェアをはおり、ザックカバーをかぶせました。そし
てしばらく歩きましたが、ここで初めて私の「結構頼りになるヤツ」が前進を拒否。
疲労ではなく恐怖のためです。この広大な富士山で視界がなく、人影も全くなく、こ
こまでの山小屋はすべて営業していないので、ものすごい孤独感に襲われました。ど
んなに耳を澄ませても聞こえてくるのは「ザー…」という雨の音だけ。怖かったで
す。心細くて足が動きませんでした。
とにかくこの場から逃れたい一心でがむしゃらに登り出しましたが、疲れもだいぶ見
え始め、空気も薄くなってきてるのですぐに息切れをして止まってしまいます。諦め
て下山しようかと迷いましたが、下山するにはかなり上まで登ってきてしまっていま
す。散々迷った結果、上を目指すことにしました。疲れてきたとはいえまだまだ余力
はあるし、何よりこの御殿場口が寂しくても他の登山道や山頂には人がうじゃうじゃ
いるのです。この大きな山に自分ひとりでいるわけじゃないんです。少々強引な考え
方で自分を勇気づけて、なおも雨の中を歩き続けました。
また「わらじ館」(営業していませんでした)前では迷彩服を着た自衛隊の方達とすれ
違い、その際に「こんにちは!」「頑張ってください!」と目が覚めるような気合の
入った声で励ましてもらい、かなり気持ちにゆとりが戻ってきました。
◎〜七合九勺 「もしかしてこの方は!」
しばらくして雨も小降りになった頃、13:00「砂走館」に到着。そのまま通過し
ようとしたら、「お兄さん、焼印いかがですか?」。なにお〜!お兄さんだと〜?と
思いつつ、やんわりと「お姉さんです」と私。「あっ!すいません」と小屋の方。ま
あ、こんな山の服装だし、ベリーショートだし、仕方ないけどさ。と、その小屋の方
をみると、あれ?どこかで見たことが。あの山渓の増刊号「富士山2005」の焼印
コレクションのページに載ってる○木さんではないですか。しばしその話題も含めお
話させていただきました。「頂上まで行かれるんですか?」と聞かれ、「今日中に下
るのでそのつもりはないんですけど。ここまで4時間半で来たんですけど、頂上まで
行けますかね?」と逆に聞いてみると、「そのペースだと大丈夫だと思いますよ」と
言われ、俄然登頂する気になってきました。赤岩八合館までの予定だったけど山頂ま
で行っちゃう?(明日仕事大丈夫ですか〜?)。行けそうだったら山頂目指してみま
す、と言って○木さんと別れ、砂走館を後にしました。そういえば結局焼印押しても
らわなかったなぁ(笑)
13:25七合九勺「赤岩八合館」に到着。ここで金剛杖に焼印を押してもらい、持
参した昼食を軽く食べてすぐさま出発。ここから山頂まで1時間ちょい。もう行くし
かないでしょー!
◎青空の山頂
後はとにかく登るのみ。溶岩の赤い道を息を切らしながらひたすら登ります。ここま
で来るとようやく下山してくる人とすれ違うようになり、完全に寂しさとおさらばで
す。天候は相変わらず濃霧。雨も降ったり止んだり。それでも時々霧が薄くなり、頂
上の鳥居が見え隠れしてきました。もう呼吸は乱れまくっていて、「結構頼りになる
ヤツ」こと私の足もグラグラ。
そして頂上まで後10分ほどというとき、またしても一気に霧がはれ青空が見えまし
た。鳥居はもう目の前。時刻は14:45。15時までには登頂するぞー!と今まで
の疲れも吹き飛び、鳥居目掛けて猛ダーッシュ。真っ青の空に向かって走るのは本当
に最高です。涙が出そうなほど幸せを感じました。
14:55登頂。山頂は大勢の登山者で賑わっていました。直ちに下山せねば。本当
はのんびりと寝っ転がって、心行くまで雲上の世界を楽しみたいのに。まあ、また来
よう。奥宮にお参りして、ちょこっと火口をのぞいて、15:10今度は富士宮口か
ら転がるように下山開始。
◎バスが行っちゃう 走れ走れ!
富士宮口新五合目からのバスは、平日のため18:10発が最終。普通に下れば間に
合いそうだけど、思ったとおりこの時間帯は下山者が多い。登山者もわりといます。
登下山道が一緒のこのコースはやっぱり混雑しました。「結構頼りになるヤツ」にが
んばれがんばれと声をかけ、急な岩稜帯を下ります。下りは各山小屋ごとに焼印を押
してもらいます。さっき「赤岩八合館」で押してもらった下に並べていく予定です。
八合目15:40、新七16:10通過。
愛用の登山靴はライケルのヤトナ。とても歩きやすく毎度毎度助けられていますが、
富士宮口の岩場を下るときは油断できません。ボーッと歩いてると足首をクキッと。
特にトラブルもなくぐんぐん新五合目が見えてきました。焼印も全て集まり、16:
50富士宮口新五合目到着。
最後の五合目の焼印を押してもらっている間、レストハウスでカレーを食べました。
高いけど動いた後はホントおいしい! そして金剛杖を受け取ってニコッ。実は裏面
には吉田、河口湖、須走の焼印がびっしり押してあるんです。これで全てのルートの
焼印が押してある記念の品ができあがり〜。次回からはずっとこれを使うつもりで
す。18:10発のバスには余裕で乗ることができ、私の初御殿場口登山は無事終了
しました。
おまけ 高山病とは無縁な私ですが、実は乗り物に弱いのです…。見事帰りのバス
で酔っ払い、富士宮駅に着いたときにはもうフラフラでした。(その姿を見た人は、
歩きつかれてフラフラしているんだって思いますよね、普通。)
◎御殿場口の感想
予想以上の人の少なさで途中弱気になってしまいましたが、一度登って雰囲気をつか
めば、喧騒とは無縁な快適なコースだと思いました。距離は長いですが、足にあまり
負担がこない非常に歩きやすい登山道だと私は感じます。ただ今回は濃霧の中を歩い
ていたわけで、これが一転して快晴だとしたら…。かなりの苦行になるでしょうね。
水の心配だけでなく強烈な日差しも怖い。それでもかなり気に入ってしまいました。
でも初めて富士山に挑戦される方で単独行を考えている場合、特に女性の方にはおす
すめできません。トイレの数が他のルートと比べて圧倒的に少ないし、イコール山小
屋も少ないので、何かトラブルが起きても自分だけで対処しないといけないかも。そ
して何より人が少ないのでとっても寂しくなっちゃいます(笑)
ちなみに予定通り、週末に御嶽山と大山(だいせん)に行って来ました。
ちょっとハードな足慣らしのおかげで難なく登れ、とても楽しめました。やっぱり山
登りはやめられないなぁ。
/おしまい
(管理人)
雨の中、6時間ちょっとで御殿場口を登頂?山頂付近で真っ青の空に向かってダッシュ?100分で富士宮口を下山?もうびっくりです。なんと健脚な方なのでしょう。御殿場口から登って富士宮口へ降りるという行程も信じられません。焼印収集の達人の○木さんが、こんどは山小屋の人として焼印を勧めているところがとても微笑ましい感じがしました。
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