■2006年8月12日(土)〜13日(日)
静岡に住んでいる凸といいます。8月12〜13日に富士山に登ってきました。昨年
も挑戦し、無事登頂したのに気をよくしたのと、貴サイトの管理人さんやみなさんの報
告に触発されたのとで、今年も挑戦と相成りました(゜▽゜)
昨年は婚約者(現在は妻)とその弟と私の3人での挑戦でしたが、今年は、妻と互い
の職場のメンバーを誘い、24〜31歳の合計10名での挑戦になりました。構成は以
下の通り。
私(31):富士登山3回目。1回目は小5の時、8合目でダウン。学生時代は陸上部
で長距離。子供120人での宝永登山の付き添い経験あり。
妻(31):富士登山2回目。ふだんは自転車に乗るのも嫌がるほど、体を動かすのが
苦手。
8(29):私の職場の後輩の女の子。
T(24):同じく私の職場の後輩の女の子。
E(24):Tの友人の女の子。
H(24):同じくTの友人の女の子。
I(27):妻の職場の後輩。偶然ながら私の高校の陸上部の後輩でもある。
K(30):Iの彼女。
A(26):妻の職場に昨年までいた後輩の女の子。
Y(26):Aの彼氏。富士登山は5回目とベテラン。
と、男3 女7というパーティーになりました。
経験と年齢から、隊長は私ということに(単に言い出しっぺだからかも?)。皆、心
身に問題のないメンバーが集まったとはいえ、半分以上が富士山初体験。頂上を踏んだ
ことがあるのは私・妻・Yの3人だけですから、なにしろ後の7人を必ず登頂させるた
めの作戦を、貴サイトの内容とこれまでの経験を参考に頭をひねって考えました。ひね
ったあげくに名付けたのが“ゆっくりみんなで登ろう作戦”です。
まず初めの“ゆっくり”は、基本の「ゆっくり歩くこと」と、「ゆっくりした日程を
組むこと」です。歩き方に関しては、実際にその場その場で伝えていくしかないのです
が、このサイトでもたくさん言われているように、とにかく1歩1歩を小さくすること
、大きな動きを避けること、深呼吸を心がけることの3点をこまめに伝えるようにしま
した。また日程は、山小屋に1泊して御来光も山小屋で拝み、2日目のお昼前に登頂す
るプランにしました。昨年も同じ日程で登頂に成功したのが最も大きな理由ですが、今
年は10人と大所帯の上初対面のメンバーもいて、体力がどの程度のものかつかめなか
ったからでもあります。
また“みんなで”ですが、これはペースを崩さずに進むことが目的です。私は学生時
代に陸上部で長距離をやっていたのですが、長距離では独走よりグループで走っている
方が楽ですし、ペースが上下するより一定のペースで走った方がやはり楽です。それを
参考に、みんなで安定したペースを保って登ることで、全員での登頂成功を目指しまし
た。それに、富士宮登山口の上部は狭い上に登山道と下山道が同じなので、パーティー
で幅をとらないようになるべく隊列を組んで1列で登っていくようにと考えました。
事前に、日程と持ち物(山と渓谷社発行 富士山ブック2005を参照しました)を
印刷したA3のプリントを印刷し、メンバーに配布。適宜質問や相談にのりながら準備
を進めました。購入するものに関してはそれぞれの人にこだわりがあると思いますが、
主なものに関してはこんな助言をさせてもらいました。
ザック:2気室に分かれているものの方が、物を出し入れするのに楽。お金があったら
背中に給水を仕込めるものまで購入の対象にいれる。腰ベルト・胸ベルトつき。腰より
上で背負えるものがよい。必ず実際に背負ってみて決めること。ポケットがたくさんあ
った方が便利。
トレッキングシューズ:ゴアテックスのもの。重さや懐具合、使用頻度を考えると1万
円代前半のものでよい。
ソックス:厚手のもの。スキー用やサッカー用で代用も可。
レインスーツ:ゴアテックスで2万円を目安に。わたしたちの仕事は野外での活動も比
較的多いので、今後も使えるからにはいいものを。
シャツ:速乾性Tシャツ。ユニクロが今年発売したBODY−TECHはお手頃。
こうして見ると、ザックに関する注文が多いですね。それだけピンからキリまで多種
多様、いろいろあるということでしょうか。
前置きが長くなりましたが(^^ゞ、こんな感じでようやく登山に向かいました。が、
ここまで準備を念入りに進めておきながら、そのすべてが灰燼に帰するのではないかと
いう事態が待っていようとは・・・
11時に静岡を出発し、東名〜西富士道路を経て富士山へ。富士宮口ではマイカー規
制の期間中なので、水ヶ塚駐車場に車を置き、シャトルバスで5合目に向かいます。5
合目到着は14:30。この日は新7合目に宿泊予定なので、多目に見ても行動時間は
2時間もあれば十分。余裕をもって、1時間を体慣らしに使うことにしました。ところ
が、荷物を下ろしてから10分程度経った頃、急に空が暗くなりました。「大丈夫かな
あ」と話す間もなく大粒の雨がバラバラと。あわてて荷物を床から離し、壁にあったフ
ックにひっかけました。その間にも雨足は強くなる一方で、すぐにレインスーツを着用
するようにみんなに伝えます。(出発までまだ30分以上あるし、それまでにやんでく
れればなあ)という思いとは裏腹に、空はみるみる暗くなり、雨は大粒、稲光と雷鳴は
その時間差をどんどん縮めてきます。20分ほど経つと、ピカッと光った瞬間にドシー
ン!パシーン!ズズズズーンという音が鳴るようになりました。雷って、すぐそばで聞
くとゴロゴロゴロっていう音じゃないんですね。普段聞いてる雷は、ずいぶんやさしい
音なんだなあと思いました。それに稲光も、普段はピカって光ってすぐに見えなくなる
んですけど、違うんですね、富士山で見ると。1秒くらい、しばらく残ってるんです、
光が。しかも、縦だけではなく横にも稲光がビカビカッ!まさに生きた心地がしません
でした。雨は強いし、雷はいつ自分の目の前に落ちてくるか分からないし。30分後に
はいよいよ外にはいられなくなり、レストハウスの中に逃げ込みました。
中にいると、外に向かっての放送が聞こえました。「危険なので、動かないでくださ
ーい!」「今動くと、大変危険です。雷がおさまるまで動かないでくださーい!」上に
上がって出口から覗いてみると、下山者の方々が懸命に下りてくるのが見えました。下
山者の方々は当然でしょうが、見ている私たちも生きた心地がしません。ようやく下っ
てきた方を見てみると、身につけていたポンチョは風で引きちぎられてボロボロです。
そんなわけで、登山開始予定の15:30になっても天候が回復する様子が見られず
、さらに食堂に移動して様子を見ることにしました。雨が降り始めて1時間が経過して
も、稲光・雷鳴ともに衰えを見せません。ここにきて、決断をせまられました。それは
、「登るか、下るか」・・・。雷は極端なことを言えば一撃必殺ですから(統計的には
2割の方は命をとりとめているそうです)、雷雲がある以上は登ることができません。
そこで、タイムリミットまでに雷雲が去らなければ下山しようと思いました。この時期
は18:40頃に日没ですが、私たちは夜間登山の準備がありませんので、行動もそれ
までと限られます。山小屋まで少しがんばっても1時間半はかかりますから、17:0
0までに雷雲が完全に去らなければ下山することにしました。その場合は、明早朝にも
う一度、日帰り登山でチャレンジすれば・・・と。これは、住居から富士山が近いこと
の強みですね。
16:00。雨が弱まってはきましたが、雷はいまだ好調。ここまでみんなにも呼び
かけて、準備をしてもらったのになぁと内心はドキドキです。万一の下山に備えてシャ
トルバスの時刻を調べに行ったりしていましたが、その往復の最中も雷がガラガラなっ
ていて、「ここで雷に打たれたら洒落にならんなあ」と思わず歩く姿勢も低くなります
。食堂に戻ると、メンバーの何人かはおなかが空いたのかカップラーメンをズルズル。
「炭水化物を補給して、これだけ体慣らしもしたら、あとはもう登るばっかだよなぁ」
などと話しながら窓の外を眺めます。
16:20。外に出ると、雨がほとんどやんでいました。稲光は見えず、雷鳴は聞こ
えますがずいぶん遠ざかり、時折ゴロゴロゴロ・・・と聞こえるだけ。西の空を見ると
、空が明るい!これは行けるかも、と念のため、男性メンバーのIとYを呼んで「とり
あえず6合まで行ってみるか」と相談。で、2人とも「行きましょう」とのことで16
:30、準備を済ませ「ひょっとしたら6合目との往復で今日はおしまいかもしれない
けど」と前置きをしつつ、5合目を後にしました。
これまで富士山に来るたびにスタートの記念写真を撮影していたのですが、今回はそ
の余裕はなし。空模様にビクビクしながら歩みを進めます。足元は雨で砂がしまってい
て歩きやすく、15分後には6合目に到着することができました。ホッと一安心しつつ
、焼き印を押してもらったり小屋の方と話をしたりしていると、あら、なんと日が差し
てきたではありませんか。ふと東の空を見ると、なんと虹が二重に!写真で見たことは
ありますが、実際に見たのは初めてで、そこまで封印していたカメラを思わず取り出す
とシャッターを切りました。10分ほど休憩して、「これなら大丈夫」と新7合目に向
かって歩き出しました。富士山らしい傾斜と溶岩の登山道はここからが本番。レインス
ーツを着込んでいて若干の歩きにくさもあって、ゆっくりゆっくり進みます。下山して
きた方に挨拶しがてら話を聞くと、「頂上では雹が降ってまっ白になりましたよ」との
こと。帰ってネットで調べたら、ニュースにもなっていたんですね。途中でレインスー
ツを脱ぐための時間をとり、1時間10分かけて新7合目に到着しました。御来光山荘
が今日のお宿。一番奥の上の段の寝床に通されました。枕の数を数えたら最大8人で使
うところに5人と広々と使わせていただき、メンバーも初の山小屋を堪能してくれたよ
うで、安心しました。
夜は消灯と同時に就寝。私も含めて、途中でちらちらと目が覚めていたようでしたが
(0時頃、御来光を目指して登山していく方々のライトや話し声が気になったようです
)、翌朝4:30までのんびりと寝ることができました。5時には宿から水平に移動で
きる道を辿って宝永山の際(きわ)まで行って御来光を拝み、6:20に山頂にむけて
出発しました。(念のため、出発前に頭痛薬を服用)
そこからの行動時刻
元祖7合:07:15着 07:25発
8合 :08:18着 08:35発
9合 :09:25着 09:46発
9合5勺:10:35着 10:47発
頂上 :11:41着 11:55発
剣が峰 :12:15着
だいたい、1合上がるのに50分のペースですね。合間に必ず1度、5分程度の休憩
をいれ、その都度深呼吸と水分、エネルギー補給をするようにしました。そして、山小
屋ごとの休憩がだんだんと長く・・・(^^ゞ。9合では、何で20分も休んでいるんで
しょう。でも、運動の苦手な妻にあわせて登った効果は抜群で(?)、頂上に着いて高
山病の症状を訴えるメンバーはいませんでした!“ゆっくりみんなで登ろう作戦”が成
功したと言えるでしょう\(^o^)/
ただし、実はこれが完全な成功ではなく・・・実は、9合5勺から頂上に至る途中で
妻が完全にスローダウンし、他のメンバーに先に行ってもらったのです。その為、そこ
でペースアップした中で下山時に頭痛になってしまったメンバーが何人か出てしまいま
した。昨年登った際、私たちは頂上ではしゃぎすぎてしまい下山時にはかなりの頭痛に
なったということもあって、頂上ではあまり長居しないようにしようと思っていました
。それで、頂上には1時間ちょっとだけいて、その間に「剣が峰登頂」「郵便局でハガ
キ投函」「栄養補給」「トイレ」を済ませて下山したのですが、剣が峰に登頂以降はそ
れぞれでの行動も多かったので、早い動きをしてしまったり深呼吸をすることを忘れて
しまったりしたようです。登頂した喜びで忘れがちなのですが、頂上では酸素が平地の
3分の2程度しかないということは忘れてはいけないと思いました。
さて、下山です。下山は「大砂走りに行きたい」という希望もあり、御殿場口を下る
ことにしました。スタートは13:10頃?
赤岩八合館:14:30着 14:45発
砂走館 :不明 焼き印・スパッツ着用などで15分程度休憩。
大石茶屋 :18:00着
大砂走りの途中でやはり妻がバテバテ。御殿場口は長丁場の上、体力の有無が砂走り
を走れるかどうかに大きく関わるため、大砂走りに入ってからグループがだいぶバラバ
ラになってしまいました。しかたないので、前を行くグループにいったん追いついて下
りきったところで待ち合わせということを連絡。その後15分ほどその場にたたずんで
妻を待ち、結局前のグループから30分遅れで大石茶屋に到着しました。
そこからタクシーで水ヶ塚駐車場に向かう予定だったのですが・・・いろいろあって
、ある方のご厚意で駐車場までただでドライバーを移動させていただきました。疲れき
ったところにそうした親切をしていただいたのが本当にありがたかったです。下山後は
富士宮の「花の湯」で温泉と夕食を堪能して帰宅しました。
今回、道中ももちろんいろいろありましたが、何よりも本性をむき出しにした「富士
山の自然」を間近に感じたことが一番大きかったです。過去にも10月の宝永登山であ
られ・強風などを体験してきましたが、本当に生きた心地がしなかったのは初めてでし
た。たまたま天候が良くなったので、最終的には山頂まで行くことができましたが、何
よりも“引き返す勇気”の大切さを感じました。でも、来年もまた行きたいなぁ・・・
・。2度登る馬鹿をすぎると、いったいどうなるんでしょう?長文失礼しました。
(管理人)
雷の恐怖体験、山小屋での宿泊、大砂走りと、これはまた内容の濃い富士登山ですね。
結局、登るのが遅いと思われた奥様のペースが実は正解だったのでしょうね。
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