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 みんなの登山記2006−23富士宮口
 投稿者:E.Mさん


■2006年8月20日(日)〜21日(土)

海抜0メートルからの富士登山

私は71歳の男性です、過去5回の富士登山を経験しました最初は51年前に二十歳の時昭和30年 で当時は自動車は2合目迄で一般登山者は山小屋に一泊するのが常識で私も友人3人と富士宮口 を登り御殿場口の砂走りを下山しました。

最近は11年前還暦を記念して当時54歳の家内と二人で充分天気予報を調べての決行でしたが7合目 で大雨になり富士山の雨は上ばかりで無く下からも吹き上げて来ます、勿論雨具は用意して登りました が家内が隙間から入った雨に濡れ寒いと訴えました。
此の雨はきっと止むと確信していましたが此処で寒いのでは山頂の日の出前の寒さには耐えられ無い と思いリタイヤして5合目に戻ると空は“満点の星空”そこで家内を帰し、私単身で再登山して山頂での 御来光には間に合いませんでしたがお鉢巡りをして下山しました。
昨年古希を記念に6回目の登山を計画したが実現出来なかったので、今年は是非実行しようと思って 居たところ“富士山に海抜0メートル田子の浦から登ろう”というイベントを知り其の日程は、

第1日 田子の浦→村山浅間神社
第2日 村山浅間神社→西臼塚駐車場
第3日 西臼塚駐車場→7合目(一泊)
第4日 7合目→山頂→5合目駐車場
此の日程なら自分にも可能性は有ると思いましたが、自宅は海抜2メートルに在るのでいっその事 自宅から3日間で登る計画を立てました。



予定日程
第1日 自宅→富士宮市篠坂 40km
第2日 富士宮市篠坂→富士宮口5合目 27km
第3日 富士宮口5合目→山頂→5合目
此の計画を実行する為に、40km(2回) 30km(3回) 27km(2回)のウォーキングやり 翌日筋肉痛にも成らないのを確認して決行を決意。

第1日行程 (6月1日71歳の誕生日)
 8:00 自宅スタート
 9:30 興津川橋       6km
12:30 富士川橋      22km
14:20 富士宮浅間神社  31km
15:40 富士宮市篠坂   40km  8時間40分
此のコースは東海道五十三次の浮世絵で有名な「さった峠」やポスター、カレンダーでよく見る 富士山をバックに鉄橋を渡る新幹線の富士川鉄橋等の素晴らしいロケーションの連続で 少し長めのハイキングと言った感じの快適な歩きだった。

第2日行程 (8月5日)
 5:30 自宅スタート   海抜2m.  (自転車を車に積んで)
 6:50 富士宮市篠坂          海抜   510m (此処から自転車を曳いて)
11:05 旧料金所     14km    〃  1450m
12:40 高鉢駐車場    17km    〃  1600m
16:50 富士宮口5合目 27km    〃  2400m  8時間50分 
此のコースは距離は27kmだが高度差が1890m有り問題は何としてでもゴールしないと 帰りの足が無い事と途中でリタイヤしても同様だ、其処で篠坂まで車に自転車を積んで行き 篠坂からは自転車を曳いて登れば途中でアクシデントに遭い引き返す場合も帰りは坂道ばかり だから問題は無い。

篠坂をスタートして標高1000m地点まではヘヤピンカーブの連続此処からは御殿場方面へ東へ 緩やかな坂道を進むと平坦な道では自転車に乗りたい誘惑に駈られるが我慢して自転車を曳き 続ける旧料金所では今日から車両規制が始まりガードマンがチェックして居て前日から上がった 車が下って来るから気を付けて登る様にと注意を受ける。 今度は引き返す様に西に向かって高鉢駐車場へ、途中で3人の自転車で登る若者に追い抜か れるが自分は歩くのが目的だから意に構わず自転車を曳き続ける、登山道の際には5合目までの 距離数を示すプレートが100m毎に有り数値の減るのを確認しながら登る、5合目まで後8km地点 からはヘヤピンカーブの連続の急傾斜の坂を登って居ると道路管理の作業員にもう少しだから頑張 れと励まされ5合目にゴール。



第3日行程 (8月20〜21日)
14:00 自宅スタート
16:10 富士宮口5合目着 (高山病対策の為 約2時間休憩)
20:00 5合目スタート
20:20 6合目雲海荘 (書籍 富士山村山古道を歩く を購入)
21:20 新7合目
22:40 元祖7合目
23:45 8合目
 0:55 9合目  (酸素を吸う)
 1:50 9合5勺  
 2:55 山頂  5時間45分
 5:30 お鉢巡りスタート
 6:40 お鉢巡り着 (浅間神社奥宮で高齢登山者記帳)
 7:00 下山スタート (御殿場口から宝永山経由で富士宮口5合目へ)
 7:50 赤岩八合館
 8:35 砂走館
 9:20 宝永山分岐点
 9:00 宝永山山頂
10:10 富士宮口6合目
10:25 富士宮口5合目 3時間10分

此の行程は夜行登山、山頂で御来光を迎え余裕が有ったらお鉢巡りをする予定で自動車で行くと 駐車場の心配が有るので中型バイク(250cc)で行く16:10に5合目到着高山病対策の為に 約2時間休憩を取る

20:00スタート登山シーズンも終盤になり登山者の数も少ない6合目迄は私の一人旅、小屋で “村山古道攻略法”の貼紙を見て尋ねると村山古道(江戸時代、明治初期に賑わった登山道で最近 有志によって復活された道)に就いての本だった、村山古道には興味が有り機会が有ったら登って 見たいと思っていたので早速買ってしまった。

富士宮口は登山道の両側か片側にガードロープが張って有り無い所には岩に白いペンキの矢印か 標識が有るので迷う事は少ない夜の場合どうしても分からなくなったら休憩を兼ね少し待って居れば 登る人か下る人に出会う、此れは閑散期の事で最盛期には行列が出来て前の人のカカトを踏み 付けそうなる。

新7合目、元祖7合目のベンチも4〜5名の休憩者しか居ない前回の時はベンチの空きも無く岩に 腰掛て休憩したグループの登山者同志が大声で話し合い小屋の人に宿泊客の迷惑になるからと 注意される光景も見掛けた。

8合目の途中で後からマウンテンバイクを曳いたり担いだりして登る若者に追い越される、若さに驚嘆 苦労して担ぎ上げても走れる所は無いだろうに、御殿場口の砂走りなら可能なのか?此れも私と同じ で或る事に挑戦して其れが達成された時の感動を味わう為か。 私は高山病に罹った事は無かったので酸素ボンベは使用した事が無かったが今回は保険の心算で 持参したので予防にと吸ってみたが格別変化は無いし効果の程は不明で以後持参したのも忘れ 使わずに終わった。

9合目からは階段の様な急な坂の連続、此処を登るには私なりの技が有る其れは前傾姿勢をとり体重 を前に掛けて手を膝頭に添え小さな歩幅で段差の少ない場所を選んでリズムカルに登る事だ、金剛杖 を使用するよりも楽で私は初回登山の時以外は杖は使用した事が無い、直立の姿勢では転倒した場合 後ろにヒックリ返る危険が有りアブナイ

2:55 山頂着、山小屋や神社の軒下など風当たりの少ない場所は先客で占領されて居たので 少しでも風の少ない岩陰を捜し御来光まで約2時間の待機、此処で用意して来た衣類
1 Tシャツ  
2、冬用長袖シャツ 
3、夏用長袖薄手シャツ  
4 冬用薄手セーター
5、ナイロン製薄手防風ヤッケ
6、バイク用雨合羽
以上6枚を着ても風に当たるとまだ寒い、其処でサッカー観戦用のポンチョ型雨合羽を頭から被り 膝を抱えウズクマルと丁度テントの中に入った様な感じで短時間なら快適だ、また此れは雨天の 場合もリュックサックの上から被るとリュックの濡れも防げて便利だ。
空が少し明るんで来たので銀明水を隔てた対岸へ移動しカメラの用意をしようとしたらカメラが無い きっとさっき迄待機して居た場所だと引き返すとカメラは有ったが再度の移動には時間も無し気力も 失せ鳥居の前の岩場で御来光を迎える。

5:30 お鉢巡りスタート 時計回りで日本最高峰剣ヶ峯へ剣ヶ峯の直前の坂はスキージャンプ台 を思わせる様な急斜面で真ん中を歩くと砂利道の為踏み出した足がズリ下がる感じで歩き難い 火口側の岩の部分を歩いた方が歩き易い。 剣ヶ峯の石碑の前で記念写真を撮り観測所裏の5〜6名は立てる展望台から南北アルプスは霞んで 見え無かったが天子山脈、毛無山、朝霧高原を眺めて一旦火口の縁へ戻る、河口湖、須走側からの 登山者は反時計回りで回る人が多い様で何組かのグループと行き交う挨拶を交わしながら進むと 山小屋群の前に出た前回の時は確か少し火口の中へ下り山小屋の裏に出た様な記憶が有るが 記憶違いか?。
富士宮口に比べ格段に登山者の数は多い最盛期なら富士山銀座と言ったところだろうか、小屋の裏 の方に向かって行列が出来て居たのでついて行くと鳥居の様な木の柱に金剛杖の鈴を括り付けて 居る何かのオマジナイだろうか何のご利益が有るのだろう、富士宮口では見掛け無かったが 私の見逃しか。

6:40 130分掛けてお鉢巡り一周、山頂郵便局で記念のハガキを出そうと思ったら局は昨日20日 で閉まっていた残念、今回の目的の一つでも有る高齢登山者記帳を浅間神社奥宮で記帳すると、 記念の扇子と御神酒を戴き其の杯を記念に持ち帰るのも良し噴火口に投げ込むと厄落しに成るから どちらでもお好きな様にと言われたが私は厄などに拘らない性質で厄落とし等やった事が無かった ので記念に持ち帰る。



7:00 下山スタート 御殿場口から宝永山経由で富士宮口5合目へ51年前通った事を思い出し ながら富士宮口とは違った広々とした砂利道を下る、登山者の数は少なく見通しが良い道なのに 人影の全く無い時間帯が時々ある。 赤岩八合館で休憩して居たのは3人だけ、砂走館では布団を乾して居た人だけで休憩する人は誰も 居ない、ここで少し休憩して靴と靴下を脱ぎ裸足になって足を日光に晒す、此れは足の疲れを取る のに有効で靴擦れの予防にもなると聞いた事が有る、今回の登山を計画してから4ヶ月間に 約360km歩いたが靴擦れや豆が出来た事は一度も無かった。

道の砂礫の粒がだいぶ小さくなって来た砂走りに近づいた証拠だろうか、道端で休憩している人に 出会い御殿場口は此方でしょうかと尋ねられ私も御殿場口から宝永山経由で富士宮に下りますと しばらく同行する。 ブルトーザー道と交差した地点の砂走りと宝永山への分岐点で別れ私は宝永山へ火口の縁で 宝永山頂と火口へ下る分岐点に出る、其処から山頂までは500m位だろうか道はほぼ平坦で傾斜 は少ない、山頂に行って見ると厚さ20cm位の御影石のモニュメントが無残に破壊されて居た突風で 転倒したのだろうか?。
縁の分岐点まで一旦戻り今度は火口底の中へ下ると道は砂利道でサクサクと音を立て疲れた足 には適当なクッション代わりに成って有り難い、火口底から脱出して富士宮側の縁に出るには少し 登りが有り登りきると其処はベンチ等が設置された公園の様な広場で山頂登山では無く此処が目当 てのハイカーで賑わって居た。其処から少し登ると火口縁に出る。 此処からは裾を回り込む様に傾斜の少ない道を進み富士宮口6合目の雲海荘と宝永山荘の間を 抜け出て5合目にゴール。

自宅まで約70kmをバイクで帰る   13:40 無事自宅着
此れで全行程 完歩  3日  総歩行距離 82km    総歩行時間  27時間35分

此のルートは単調で階段の連続の様な富士宮口より歩く距離は少し長いが疲労度はあまり 変わらない様に私は感じました、しかし夜間や天候が悪く見通しの悪い時は始めての人には お勧め出来ません。

次回は“村山古道で”での登山に挑戦する為情報収集中
1、富士市立博物館 井上卓哉氏学芸員の調査研究報告書 富士山村山口登山道の現状について
2、海から登る富士山
3、富士山・村山古道を歩く 雲海荘で買った本


  (管理人)
長年の経験によるいくつかの「登山の知恵」は参考にしたいですね。「前回の時は確か少し火口の中へ下り山小屋の裏に出た」というのは記憶違いではありません。山頂のお鉢巡りのルートはだんだんと限られてきています。

※「さった峠」はパソコンで表示されない文字が含まれるのでひらがなにしました。


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(06/9/21)