■2008年8月21日(木)〜23日(土) 須走口
年齢62歳、神奈川県横浜市在住、登山歴はここ三十年これとい
ったものなし。高校時代は山岳部、大学時代はワンゲル同好会で
盛んに山歩きをしていましたが、就職してぷっつりと山には行かな
くなりました。ただ一度だけ、息子二人がまだ小学生だった時に妻
と4人で蝶が岳・常念岳を縦走しました。槍ヶ岳はまだ子供には無
理と思い、穂高連峰と槍ヶ岳の雄姿を真正面に見ることができる常
念岳を狙ったという記憶があります。それからまもなく米国での生活
が長くなり山は私の念頭から遠い存在になっていきました。
それが急に富士山に登ってみようと思い立ったのです。富士登山
は未経験です。というか、昔の私は富士山を馬鹿にしているところが
があって、日本一高い山であっても私の山行の対象になりませんで
した。今思うと若気の至りとはいえ勿体なかったなと思います。
それがなぜ富士山にいってみようと思ったのか。やはりこの歳に
なって遣り残しているものの一つだなと思ったことと、それにこの
「あっぱれ!富士登山」がけしかけてくれたせいだと思います。
今こうしてこの登山記を書いていて、しみじみ充実した時間を富士
山にもらったと感謝しています。最初で最後の富士登山になると思
いますが、何の束縛もなくある意味気ままに富士山単独行を楽しめ
たことがよかった。昔と違い体力的に苦しかったけど本当に楽しい
富士登山でした。
私の登山記はあまりみなさんの参考にならないと思います。気ま
ますぎてお恥ずかしい道行きだからです。名づけるなら「行き当たり
ばったり富士登山」でしょうか。
まず、今回の富士登山のテーマは、@どんなに時間がかかっても
いいから必ず登頂するAこころゆくまで富士登山を楽しむBそのた
めに晴天の日を狙う、の三点でした。日程は横浜から東名高速で便
利な須走り口とし、一応標準的な一泊二日(実際は二泊三日、後述)
、駐車規制のない平日としました。
仕事の兼ね合いと天気予報を照合させながら、21日(木)午前アタ
ック開始の予定をとりあえず立て、御来光館に予約。しかし、その後、
諸事情で二転三転し、落ち着いたのが22日(金)早朝に登山開始、
頂上へ。折角だからゆっくりと頂上で泊まることとし、御来光館をキャ
ンセルして山口屋本店に宿泊予約。これならどんなに気ままに登っ
ても頂上に行くだけだから余裕だろうと考えたわけです。
そして当日。高地に慣らすため前日は仕事を適当に切り上げ、家
を夕方6時過ぎに出て、8時過ぎには早々と須走口駐車場に。駐
車状況は平日のため8割ぐらいの混み方。すんなり駐車できました。
明朝の出発時間は決めず、まあ、目が覚めたらと気楽に構え、車の
中で途中で買い込んだ
崎陽軒のシュウマイ弁当(740円)を肴にビー
ルで一人ミニ壮行会をして、就寝。その間、何組かが夜間登山に向か
っていきました。頂上のご来光を見るために、何時間も景観ゼロの苦し
い山登りをするのですから、ただただ感心するばかり。もっとも降るよう
な星空と下界の夜景が慰めになるのでしょう。
未明2時ごろに目が覚め、ちょっと早いけど身支度して30分後に出
発。平日で時間が早いせいか、他の登山者の姿はなく、暗い樹林帯
へ。
長田山荘を通過して瀬戸館に着いたのが4時半ごろでしたか。ここ
でご来光を待つことにして、モーニングコーヒー(400円)。このへんは
へばり気味もまだ余裕で元気。富士山の御来光初体験。少し雲が高
かったけど、山小屋のお兄さんが「これなら出ますよ」。その言葉どお
り、5時過ぎ雲海の果てがオレンジ色に変わり、やがてまぶしい御来光
が昇ってきた。いやー、素晴らしい。神々しさに見とれながら思わず合
掌。御来光信仰に深く納得した瞬間でした。
さあ、これからです。が、ここからがヘロヘロ登山。七合目大陽館に着
いた時はハーハーゼーゼー。あのワンちゃんたちの犬小屋脇のベンチ
に寝転がって大休止。天気がよく気持ちよく一時間ほど昼寝してしまっ
た。
本七合目見晴館まではまあまあまだ余裕はありましたが、八合目、
河口湖口合流点の本八合目からは、お恥ずかしい限りのバテバテ
登山。大中小休止の連続で、さすがに体力減退と寄る年波をいやと
いうほど思い知らされました。それでも「さすが日本一の山、あんたは
エライ」と富士山に責任転嫁して気力を振り絞り、アタック継続。
本八合目トモエ館で頂いたコーンスープ(400円)は美味しかった。
市販の缶入りを温めただけだが、私的には一番のおいしさと思いまし
た。
お気楽登山の本領はここから。時間を気にせず、休憩中に前を通
過していく登山者の様子を観察したり、雲海を眺めたりして結構楽し
い。若い人が多いことと、外国人がやたら目に付きフジヤマの国際的
人気にも驚いた。横須賀の若い米海兵隊員のグループ、来日まだ1
年という中年ドイツ人夫婦と言葉を交わしたがみんな「ワンダフル」を
連発していた。こういうのって、嬉しいですね。駄々をこねている小さ
な子をなだめすかせているお父さんお母さんの姿も微笑ましかった。
御来光館で大休止、見上げれば頂上の鳥居はもうすぐそこに見え
るのだけれど、ただ眺めて「あれが頂上か」と思うのみ。「もう少しだ」
という気力が出てこない。ただ、空気が薄くてすぐ息が上がるが、高
山病らしき症状はまったくなく気分は悪くない。
「一歩ずつ進んでいる限り必ず目的地に着く」という登山の鉄則を
支えに、とにかく一歩ならぬ半歩の歩みを続ける。そして最後の岩場
を上り階段を上って頂上へ。午後1時05分登頂成功。
山口屋本店の休憩所に腰を下ろし、登山道を見下ろした時の充実
感が懐かしかった。ふと、奥穂山荘から涸沢カールを見下ろした昔の
感慨を思い出しました。
苦しかったけど楽しい時間を富士山にもらい感謝です。60歳を過
ぎての富士山初登頂、遣り残してきたものの一つをやり遂げられまし
た。
(付記)
○装備
ザック(25リットル)、雨具上下(ホームセンター1980円、透
湿なし、防寒兼用)、長袖、ズボン、フリース1着、ウイ
ンドウブレーカー、下着・靴下・Tシャツ替え各1枚、杖
(百均)、スパッツ(妻の手製)、耳栓・防塵マスク(いずれ
も百均)。ヘッドライト(百均)、軽登山靴(やまや特価94
50円で新規。使い込んだ重登山靴でとも考えたがちょっ
と重すぎて断念)、タオル数枚、簡易トイレ1部(百均)、
トイレットペーパー少々、ひも数本、ガムテープ少々、筆
記用具、替え電池
○持ち物
水1・5リットルペットボトル2本(最後少し残った)、飴、スルメ
塩豆、ミニサラミ(昔やってた組み合わせ)、携帯電話(
ソフトバンク、頂上もOKでした)、デジカメ、
○経費
東名高速料金など交通費4000円、シュウマイ弁当740円、
コーヒー400円、ラーメン800円、コーンスープ400円、山
小屋7000円、こけももソフト350円、トイレ使用2回400円
、御殿場温泉館500円 (合計 1万4590円)