■2009年8月17日(月)〜18日(火) 河口湖口
バスツアー1名参加で初登山! 46歳、運動不足のオバサンが感動の登頂成功
転勤で静岡県に来て6年目。静岡県が大好きになり、名所めぐりを楽しんでいます。でも、最大の名所である富士山にまだ登ったことがない・・・。また転勤になる前に「静岡県民としてやっておかねば!」と思い立ち、17日(月)出発のバスツアーを申し込んだのが13日(木)という超駆け込み参加でした。他の名所にはいくらでも一緒に行ってくれる友達にも、こればかりは「絶対無理!」「パス!」と断られ、仕方がないので1人で行くことに・・・。超不安。
何しろ「思いつき」に近い状態で決めてしまった富士登山。もちろん何の予備知識もなく、どうしていいのか分からずにネット検索で行きついたのがこの「あっぱれ!富士登山」でした。本当に勉強になりました。みなさんのように役立つ内容ではありませんが、感謝の気持ちを込めて私も書かせて頂きます。
○バスツアーにして良かったこと
1.連れていってくれるので道に迷う心配がない
2.登山ガイドさん付きなのでペース配分など困らない
3.帰りにバスで爆睡できる
4.みんなで行けばこわくない!(笑)
○持って行って良かったもの
1.登山用ステッキ2本(1本よりはるかに楽!岩場でも活躍)
2.ゼリー飲料(定番。水分とエネルギーが同時にとれる)
3.氷砂糖(アメより食べやすい)
4.ロングサラミソーセージ(塩気もあるし、ジャーキーより脂肪分がありスタミナが補える)
AM7:00 出発
各インターで参加者を拾いながら快調に・・・と思いきや、出発1時間足らずで高速道路の路肩にバスが停車。何と、車両の故障のため別のバスに乗り換えることに!!Σ(ll◎д◎ll)
待つこと1時間、ようやく別のバスが到着。このロスで、予定されていた5合目での90分の食事&休憩はなしになり、サービスエリアで買った昼食を各自車内でとることになりました。(でも帰りにバス会社と旅行社から丁寧な謝罪があり、おみやげとサービス券が配られました。トラブルがあっても知らんぷりのところも多いので、良心的だと思いました。)
PM1:50 5合目 いよいよ登山開始!
5合目での休憩が20分になってしまったので、大急ぎで準備してスタートです。高山病を防ぐには、この5合目でたっぷり時間をとること・・・というのを読んでいたので不安でしたが、登山ガイドさんがそれも考慮してゆーーーっくり歩いてくれました。
天気は上々♪ 眼下に河口湖、山中湖が綺麗に見えます。ツアーなので立ち止まれないため、歩きながら素早く写真撮影。
PM3:20頃 6合目 休憩
まだまだ半袖1枚で十分な気温です。ここまでに小刻みな小休憩を何回かはさみました。以下はガイドさんからお聞きした「小休憩のコツ」です。
・休憩は短く。2分〜4分。長く休むと体のリズムが狂ってしまうため。
・短い時間でも面倒がらず必ず荷物を降ろす。
・水分と行動食をとる。
・深呼吸をする。3メートル前のロウソクを吹き消すように息を吐ききってから吸う。
・軽い伸びやストレッチなど。疲れない程度に。
PM5:30頃 7合目 「花小屋」さん前で休憩
6合目まではかなり整備された山道でしたが、この7合目付近から岩が目立つようになりました。花小屋さんから先は岩、また岩・・・。昔あったCMの「ファイト〜!いっぱ〜〜つ」状態のところも。「こんな足場も無いようなところを本当に人が登れるの!?」と思いました。言うならば、お城の石垣をもうちょっとデコボコにした感じ??底のしっかりしたトレッキングシューズでないと危険だと思います。手を使って四つんばいで這い上がっている人もいましたが、私は2本のステッキのおかげでどうにか登れました。肌寒さを感じ、長袖のパーカーを着ました。
PM6:10頃 もうすぐ8合目
さすがに寒くなってきて、フリースの上着をはおりました。空気が薄くて「辛い」感じ。このあたりで心臓の鼓動が大きく早くなり、深呼吸をしたくても「ハッハッ」と息が上がって、足が震えて少し胸がむかつく・・・まさか高山病!?…(つд`)
小休憩の際に旅行社の添乗員さんが私の様子に気づいて「この人を一番前に」と声をかけてくれました。ツアーでは後ろより前を歩く方が断然楽なのだそうです。でも、私より年配の人や小学生もいるのに・・・気が引けます。情けないです。日頃の運動不足を後悔しました。
PM7:00頃 8合目「太子館」到着
もう倒れる寸前で着きました。思わず「やったーーー!!」と叫んでしまいました。とりあえず8合目まで来られて、「もうここで十分かも」と思う気持ちと、「ここまで来たんだから頂上まで行きたい!」との気持ちで揺れ動きます。
夕食を待つ間に、ここまでの道のりで仲良くなった人達と記念撮影。昨日まで知らなかった人達なのに、ここで一緒でなければ生涯出会うこともなかった人達なのに、本当に不思議です。ツアーっていいなぁ!
「太子館」の夕食。カレーライスに、なぜかサバのみそ煮!?でもこれが美味しかったです〜♪おかわりのご飯も少しありました。富士山の形をしたカステラまんじゅうが付いて、ほのぼのした気持ちになりましたよ。従業員さんの対応もとても感じが良かったです。
予定より1時間遅れの到着でしたが、PM8時頃には殆どの人が仮眠に入りました。「太子館」は寝袋なので、隣の人と掛け布団を共有することもなくgoodです。誰かのイビキに安眠できない人も、全く頓着しないで爆睡する人もいろいろ。オーディオプレイヤーで音楽を聴いて防音する人もいました。私もそうしましたが、耳栓よりその方が(たとえ眠れなくても)気が休まると思いました。
空気の薄さに加えて、人が詰め込まれる山小屋はやはり酸素不足です。少し胸が苦しかったけれど、努めて深呼吸をしました。
PM11:45 「太子館」出発
PM11:30起床。15分間で着替えと準備とWCを済ませて素早く集合。天気は良いですが、万一の場合と防寒を兼ねて雨具も身に着けるよう指示がありました。ヘッドランプを装備して、いよいよ頂上を目指します。
ここからは最初の方はまだ岩場ですが、その後は延々と続くつづら折りの坂道です。上を見上げるとずーーっと灯りが連なって、とてもあんな高くまで登れるとは思えないほど。泣きそうでした、まぢで。ここまででリタイアされた方が4名。私も、「もうやーーめた!」って言いたい・・・。でも、行けるとこまでは行きたい・・・。でもでも苦しい。
肩で息をしている私の顔を、登山ガイドさんが心配そうにヘッドランプで何回も確認してくれます。「深呼吸ですよ。深呼吸!」励ましてくれる声と真剣なまなざしは「この人も絶対頂上に登らせてあげたい!」という誠意に満ちています。私のザックまで持って登る後ろ姿に心で手を合わせながら、ただ必死について行きました。
AM3:00頃 9合目付近
もうツアーのみんなも口数が少なくなり、黙々と登り続けます。上から下まで連なるランプの灯り。無言で続く列は本当に「修験者」みたいです。道端で仮眠をとっている人もいます。このあたりから、早い人は右へ、遅い人は左へ、というルールで登るようですが、なかなかスムーズにはいかない・・・。他人をかき分けてまで先に行けない日本人のサガでしょうか。道もどんどん狭くなり、しょっちゅう行列が停止します。これが噂の「渋滞」!!
ガイドさんが喉を枯らして叫びます。「止まらないで下さい!少しでも前につめて。まだ下には列が続いています。少しでも多くの人がご来光を見られるように協力して下さい!!」必死の訴えにまた少しずつ行列が動いていきます。朦朧とする意識の中「あの鳥居が9合目ですよ。もう少しです!」との声・・・。でももう何が何だか分からない。酸素の缶が無くなってしまったのでガイドさんが手持ちの酸素を時折吸入させてくださったけれど、息が苦しくてうまく吸えない・・・。何で来ちゃったんだろう。でも頑張らなきゃ、もう少し、もう少しで頂上・・・。
AM4:25頃 頂上到達!!
「あれが頂上ですよ」「本当ですか!?本当に?本当に頂上!?」
夢のようでした。鳥居をくぐり、富士山頂の石碑を見た瞬間もう涙が止まらなくて・・・本当に感激しました。何か叫んだような気がするのですが「やったーーー!!」なのか「ありがとうございました!!」なのか覚えていません。でもきっと両方だったと思います。
後ろを振り返る余裕もありませんでしたが、ツアーの皆さんも無事に山頂に着いたようです。ご来光までにはまだ少し時間があります。空いた場所を見つけてデジカメと携帯を準備し、静かに日の出を待ちました。
AM5:02 ご来光!!
荘厳でした!
見渡す限りの雲海の向こうに、真紅の光がともって、雲が赤く染まって・・・。周囲から感動のため息、一斉に起こるカメラ撮影の音、そして歓声・・・。もう言葉では言い表せない。感無量でした。
いつも5時起きなので日の出を毎日のように見てるのに、今日は本当に特別でした。雲海の上に昇る太陽なんて、もう一生見ることはないかも・・・。何だか世界中の人に「ありがとう」を言いたい気持ちでいっぱいになりました。
AM5:20 集合 火口見学
山頂のお店(山口屋本店?)で記念のバッジに今日の日付を刻印してもらい、大急ぎで集合場所に。みんな最高の笑顔でしたよ。
お鉢めぐりはツアーに入っていなかったので火口も見られないと思っていましたが、何と帰りがけに火口見学ができて感激しました。剣が峰の富士山測候所跡を仰いで下山開始。この時にヒザに巻くゴム製のサポーターが希望者に貸し出されました。これがあれば格段に下山が楽になるそうです。私も貸して頂きました。ありがとうございます!。・゚・(ノД`)・゚・。
AM5:50頃 下山開始
「富士登山は下りがつらい!!」という話を聞いて覚悟していたつもりでしたが、想像以上にきつかったです。ひざの力を抜いて、前傾姿勢で自然に倒れるように重心を移動すると楽に足が出るそうですが、私も必死に努力しましたがだんだん両脚が固く突っ張って・・・。力を抜こうと頑張ると呼吸がおろそかになり、吐き気が起こってきました。下山だといって油断は禁物。この時もまだまだ高度があって、高山病になる人も少なくないのだそうです。
傾斜はゆるいものの、カーブまでの距離が長く砂地で足をとられます。次第にひざのクッションがきかなくなり、ひと足下ろすたびに痛みがおそってきました。もう足が動かない、泣いて座り込みたい、でもツアーの皆さんもつらいけど頑張っている・・・。必死に下り続けましたが9合目あたりの小休憩で、またしてもガイドさんが荷物を持ってくださいました。それでも足の痛みは徐々に増していきます。そこで私のステッキを横にして、片方の端をガイドさん、もう一方の端を私が握って下りる方法をとってくださいました。これだとかなり楽です。
AM7:00頃? (もう時刻を確認する余裕はなくなりました) 8合目付近
しかし8合目に達する前に、太ももからくるぶしまでの脚全体がパンパンに固くなってきました。意識が朦朧としてきて小休憩では吐いてしまい、少し楽になっても休憩が終わって歩き始めるとまた痛みで顔がゆがみます。もう深呼吸どころではありません。痛みをこらえるので息を止めがちになり、ますます状態が悪化していきました。
つづら折りのカーブのたびに止まり、ツアーの最後尾が追いつくのを待ちます。この時に、他の登山客が座って休憩をとっているのを見かけますが、雄大な景色を足元に感じたいと思うためか「道のふちに座って足を谷側に投げ出して」いる人が少なくありませんでした。これは大変危険です。もし足元の石を転がしてしまったら、その下の道を歩く人を直撃していまいます。わずかな休憩時間も惜しんでガイドさんが必死に注意して回ります。「落石事故が起きています。どうかもう少し内側(山側)でお休み下さい。お願いします。」決して声を荒げることなく、丁寧に一組一組に声をかけて回る姿に頭が下がりました。
私も事前にこのサイトで知識を得ていたので危険さを知ることができましたが、もし何も知らなかったら当然同じことをやっていたと思います。絶景の谷を見下ろして、足をぶらぶらさせて風に吹かれたい・・・と誰しも思うでしょう。「知らなかった」ではすまないですが、知らないで登る人を責めることもできません。登山ガイドさんは毎回のことでどんなにかうんざりして腹立たしいことかと思いますが、根気よく穏やかに注意されていて本当に立派だと思いました。
AM8:00時頃? 7合目付近?
まだまだ先は長いですが足の状態は回復しません。とうとうガイドさんは、私の腕を脇に抱えるように組み、持ち上げるように支えながら下りる方法をとられました。そのうち元気な中学生の男の子N君が手伝ってくれ、両脇から腕を支えてもらいながら、半ばぶら下がってズルズルと下りていきました。これはかなり楽でしたが、私が楽な分、ぶら下がられているお二人はかなりつらいはずです。しかもツアーの皆さんだって疲れがピークです。60歳以上の方や小学生のお子さんも参加されています。ただただ申し訳なく、恥ずかしく、情けなさで一杯でした。「大丈夫です!私ここから先は自力で頑張れますから。荷物も持てます!」と明るく振舞ってみましたがプロはお見通しです。「・・・ダメです。あなたの状態を見ると、この先悪化してたぶん動けなくなります。そうなったらもっと困ることになるんですよ。頼むから預けて下さい。」静かですが強い説得力のある口調です。観念してお任せすることにしました。
ツアーの皆さんは、私のようなヘボいおばさんのせいで行程が遅れ、おまけにガイドさんが身動きとれないせいで皆さんにも不便をかけているに違いないのに、「大丈夫?頑張って一緒に下りようね。」「大変だね、かわいそうに。」と優しく励ましてくださいました。怒鳴られたって文句が言えない立場です。私ならイヤミの一つも言いたくなります。それなのに・・・。・゚・(ノД`)・゚・。本当に感謝で一杯でした。
AM9:20 6合目付近?
もう何が何だか分からない状態です。ぼんやりした目に落石避けのシェルターが見えてきます。3個設置されていますが、この落石シェルターの1個目と2個目は内部がすごい段差でした!作ってもらっただけでも有難いのですから文句は言えませんが、疲れきった足には相当きついです。そのためかシェルターの外を歩く人もいるようですが、絶対危険だからつらくてもシェルターを通るようにとガイドさんに言われました。シェルターの屋根部分には石や土が積もっています。ということは・・・シェルターを作ってからもこれだけの量が上から落ちてきたということです!言われればなるほどと思いますが、私はきっと気づかなかったと思います。案の定、シェルター付近で座って休憩をとっているグループもありました。ガイドさんがまた注意をしに走ります。あわてて立ち上がる人達を見て、本当にほっとしました。
AM9:40頃 6合目
両脇を支えてくださっているガイドさんと中学生のN君に、これ以上迷惑をかけられない
(>_<)!!と思い、ここから馬に乗せてもらうことにしました。料金は¥12000ですが、この状況では高いとは言えません。実は7合目からも馬で下山できるのですが、それには¥30000ということでした。財布に¥15000しかなかったので7合目では諦めましたが、もうお土産は買えなくてもいいやと思ってここで馬に乗りました。
休憩をとっているツアーの皆さんに見送られ、小さくてかわいい道産子の背にザックを背負ったまま揺られて行きました。実は私は乗馬のライセンスを持っているのですが、急な坂道や岩場をこんな小さな馬が下りていくのに本当に驚きました。しかもかなり揺れてバランスの取りにくい箇所も!「あのう・・・落ちた人とかいないんですか?」と馬を引くお兄さんに尋ねると「いないですね〜」と笑われました。すごいことです!皆さん度胸があるのですねー。
お兄さんと楽しく雑談しながら山道を下りて行きます。この方は小さい頃から当然富士山になじみがあるわけですが、このところ富士山に急速な変化が起きているそうです。昔はこんなに植物は無かったと・・・。「やはり温暖化の影響でしょうか。」と言うと「そうだと思いますよ。緑が増えてびっくりします。」と言っておられました。
AM10:10頃 5合目到着
お馬さんに揺られて無事に到着!!ツアーの皆さんはまだつらい山道を下山中のはず・・・。本当に申し訳ないですが、ほっとして全身の力が抜けるようでした。集合拠点の「みはらし亭」で自分の名前にチェックを入れ、記念の鈴を頂きます。店内で休憩していると、バスの運転手さんが優しく声をかけてくださり、荷物を先にバスに運んでくださいました。
念願の「こけももソフト」を食べながら待つこと40分・・・。ツアーの皆さんが無事に下山され、合流できました。広場で集合、万歳の声、深々と頭を下げて挨拶されるガイドさん、一番キツイ最後尾でお客さんを気遣いながら歩き続けた旅行社の添乗員さん・・・。もう感動で一杯でした。挨拶が終わり、写真撮影をお願いしようと近づいていった私にガイドさんが固い握手をしてくださいました。また涙が出そうでした。この後、休むひまもなく次のツアーの案内に行かれるそうです。まだ24歳、私の長男と同じ歳です。本当にありがとうございました。
広場では、これから登山に出発するツアーの人達の「エイエイオー!」の声。頑張ってください。どうか皆さんも感動の登頂ができますように・・・心から祈りながらバスに乗り込みました。
・・・その後はバスの中で爆睡、昼過ぎに「
河口湖みはらし亭」で入浴、お昼を食べて帰路につきました。富士の赤い砂を洗い流し、さっぱりして充実感がこみ上げてきます。苦労をともにしたツアーの皆さんはもう「戦友」のよう。各インターごとにバスを降りる人も、バスから見送る人も、いつまでも名残惜しく手を振り続けます。人のあたたかさを感じられて・・・ツアーっていいなぁ!!
皆さんにご迷惑をおかけして、恥ずかしい情けない登山でしたが、生涯忘れられない体験ができました。本当にありがとうございました。これをお読みくださった皆様も、どうか素晴らしい富士山に出会えますように・・・。
最後にこの登山記を、ガイドのHさん、中学生のN君、Eトラベルの添乗員さん、そしてツアーでご一緒できた皆さまに捧げます。