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 みんなの登山記2010−20
 投稿者:Y.Iさん

■2010年8月8日(日)〜8月9日(月) 富士スバルライン

52歳男。横浜市在住。11回目の富士登山で11回目の投稿ですが、初めて登頂できませんでした。初の徹夜登山に挑んだのですが、悪天候に阻まれてしまいました。過去に雨にたたられたことは何度もありましたが、ここまでどうにもならなかったのは初めてです。しかし、うまくいかなかったことのほうがこれから登る方たちの参考になるかもしれないので、お伝えします。

2週間前に南アルプスの北岳(3193m、日本で2番目に高い山)を極めた次男と一緒。次男は過去3年連続の富士登頂を果たし、体力的にはもう親を超えるレベルですが、まだ剣が峰にたどりついたことがなく、「3776」の達成が課題でした。吉田ルートの往復を選んだのは、徹夜登山で何かあったときに一番頼りになるからです。その「何かあったとき」が現実のものになるとはつゆ知らず。

■リュックカバーを忘れる
東京駅発の富士急高速バスで河口湖駅へ。夕方の西の空にはあやしい雲が幾重にも折り重なっていました。御殿場ICで東名を降りた後、国道138号はお約束のように渋滞。到着が30分遅れ、2000発の五合目行き登山バスにギリギリ間に合いました。マイカー規制でガラガラの富士スバルラインを40分で走り抜けて五合目到着。いまは日英中韓の4カ国語で富士山ガイドをするんですね。

雲行きがよくないのは事前の天気予報でも分かっていました。新月なのに星は一つも見えない漆黒の闇。2130に五合目を出発しました。日曜の夜なので、登山者は意外と少なかったです。2200に六合目を通過したころから霧雨が降りだし、すぐに大粒の雨に変わりました。リュックにカバーをかけ、ここ数年は持参するだけで全然使っていなかったレインスーツを着込みました。

と、レインスーツ姿の次男を見ると、リュックがむき出し。「カバー忘れた」としょんぼりしています。ピーカンの南アルプスにはカバーを持参したのに、リュックを代えたのが運のつきでした。「濡れてはいけないものをこちらのリュックに移そう」と呼び掛けたのですが、「特にない」との返事。しかたがないので、そのまま歩き続けます。

■ずぶ濡れのダウンジャケット
七合目の岩場を過ぎ、八合目太子館には100到着の予定が030。暑くないので、ペース自体は好調です。しかし、雨は土砂降りになり、ときには突風も吹きます。3000mを超えれば、雨風は一段落すると予想したのは甘すぎました。気温がだんだんと低くなり(山頂で4℃)、濡れた手袋をつけた次男の手はこごえ、手袋をつけない私の手(乾いた手袋をとっておくため)もかじかんできました。

山小屋で雨風を防げないのは、富士登山の宿命です。風下になった建物の壁に張り付くのがやっと。ただ、八合目白雲荘は入口の上にひさしがあり、助かりました。温かいスープ(400円)を注文し、次男につかの間の暖を取らせました。その上の元祖室には200到着。次男のリュックから防寒用のダウンジャケットを取りだしたら、入れていた袋が防水仕様ではなく、嗚呼ずぶ濡れ。もうそれ以上登る気力が失せました。

■「避難所替わりのトイレ」の是非
こんなひどい風雨の中でも山小屋を出て、ご来光を目指すグループは大勢います。彼らの出発を見届けて元祖室に宿泊依頼。そんな登山者もまた大勢いました。ちょうど2人分が空いたというので、1万円を払ってシュラフにくるまることができました。その直後の宿泊依頼は「下(白雲荘)か、上(富士山ホテル)に行って」と軒並み断られていました。厳しい現実です。

元祖室での深夜のエピソード。200円を払うと宿泊者でなくてもトイレに入れます。雨風に窮した登山者がトイレの個室にこもり、長時間出てこないことが判明し、「トイレは避難所じゃない!」と山小屋関係者か宿泊者がどなる声が壁ひとつ隔てた大部屋に響いてきました。双方の気持ちはよく分かりますが、やっぱり「避難所替わりのトイレ」はまずいです。

■引き返す心構えは大切
結局、朝方まで雨は降り続き、ご来光を目指したグループの多くは登頂を果たせないまま、引き返してきたそうです。事故がいつ起きても不思議はない状況でしたから当然でしょう。私たちは朝までたっぷりと寝て、雨がやんだのを見計らって720に下山開始。砂礫の坂を飛ぶように駆け下り、848に五合目到着。900発の臨時バスで河口湖駅に戻りました。次男の剣が峰登頂は次回以降に持ち越しとなりました。

雨風が予想されるときは、防水・防寒の備えをするのはもちろん、リュックを入れ替える場合には、ちゃんとチェックリストをつくり、必要なものがちゃんと入っていることは確認することが必要です。親として、いっしょに確認すべきでした。反省。また、いつでも引き返す心構えは大切です。吉田ルートは山小屋が多いので、なんとか悪天候に耐えられたことも大きかったと言えます。

(管理人)
防水の重要さ、山小屋はキャパシティの関係で必ず避難できるわけではないことなどを再認識させてくれる登山記です。



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(10/8/10)