[登山記の目次に戻る]

 みんなの登山記2012−29
 投稿者:Y.Iさん

■2012年8月2日(火) 須走口

54歳男、横浜市在住。15回目の富士登山です。今回は、あるプロジェクトに参加しました。その狙いは頂上の剣が峰にある元気象庁富士山測候所(現在の名称は「富士山特別地域気象観測所」)での宿泊。こんなチャンスはめったにありません。日本最高地点で過ごした29時間は…。

■15kgの重み
気象観測所には2泊の予定でした。食料はブルで上げてもらい、水は観測所内で買うこともできましたが、自分の食い扶持ぐらいは自分で面倒みないでどうする、とやせ我慢をしたおかげで、都合15kgの荷物(うち水が6リットル)を担ぐはめになりました。1泊までだと5kg程度ですむんですがね。

御殿場駅に8時半集合。登山バスに乗って須走口へ。9時40分に到着し、10時すぎには歩きだしました。70代から10代まで男ばかり7人のパーティで、登山ルートに詳しい私がしんがりを務めました。天気はそこそこの晴れ。暑くはありませんでしたが、重い荷物はやっぱり大変。70代のリーダーが超スローペースだったので、なんとか遅れずに登ることができました。

15時過ぎに大陽館に到着しました。ピーク時だったので、寝床の幅はたったの50cm。少し寝転がって17時前に夕食にありつけました。お代わり自由の豚汁は3杯いただき、もうおなかいっぱい。食後は寝床にもぐりこみ、ぐっすりと寝込みました。目が覚めたら、ええと20時?! いつものことですが、早起きしすぎです。寝たり起きたりの繰り返しで、4時過ぎに本格的に起きました。

出発は4時半。もうかなり明るくてヘッドランプは不要。風もなく暖かかったので、持参したダウンジャケットも不要。登山時と同じ格好で登り始めました。混雑はなく、一行は順調に9時半に吉田口登頂。反時計まわりにのんびりお鉢巡りをして、11時前には観測所に到着しました。入口が剣が峰に向かう階段の途中にあるのは分かりますよね(写真1)。ここまで水は1リットルの消費。

■3776mの別天地
この観測所はいくつかのカプセルの集合体で、観測室・機械室・複数の居室・物置などがあります。アメダスが気温・気圧・湿度を自動観測しているほか、夏の2カ月間はNPO法人の「富士山測候所を活用する会」のメンバーが交代で駐在。独自の観測に加えて、有償でさまざまなプロジェクトのお世話をしてくれます。

居室には普通の布団があり、一度に泊まれるのは20人程度までです。電子レンジと湯沸かしが備え付けられており、レトルト系の食品なら調理可能。ただし禁酒です。一番の特徴は地下にあるトイレ(写真2)。大便は微生物を入れた特殊な袋のなかですませ、きちんと縛ってバケツに廃棄します。あとでNPO法人がまとめてブルで麓まで下ろすことになっています。夜は疲れも手伝って、ぐっすり寝ることができました。

登頂した3日は天気がよくて暖かく、観測所の内外でまったりと過ごしました。中央アルプスから北アルプスを初めて望むことができました。あー、なんて幸福な気分。3776mという別天地に長くいると、呼吸を深くしないと脈がだんだん速くなることも実感しました。下界とはやはり違います。私は大丈夫でしたが、最年少のメンバーが軽い高山病を発症。ちょっと心配です。

■下りは自己最速
4日は日の出前に起きてご来光を待ちました。剣が峰でのご来光は初めてです。頂上を埋め尽くす人波のさらに上から撮影(写真3)。この日も抜群の天気でした。午前から午後にかけて戸外でプロジェクトの作業をして、15時には自由の身になりました。もう1泊するはずでしたが、諸般の事情で高山病のメンバーとその連れと一緒に3人で下山することにしました。

剣が峰発15時55分。お鉢を半周回って下山開始が16時15分。日の入り時刻を考えてスバルライン口を目指しました。3人でさっさと駆け下り、18時ちょうどに五合目に到着。所要1時間45分は自己最速でした。登ってきた須走口に下りると暗くなった樹林帯で閉口していたでしょう。定時の下山バスに飛び乗り、19時に河口湖駅にたどりつきました。水も食料も半分以上余りました。

今年の富士山はこれ1度きり。というより、さて来年はどうしましょうか。もう趣向も尽きたような気がしますしね。

写真1


写真2


写真3



(管理人)
測候所で宿泊とはうらやましい。私も泊まってみたいです。私と同世代なのに、15キロを担いで登り、1時間45分で下山するパワフルさもうらやましい。



BACK  TOP  NEXT

(12/10/5)