■2012年7月29日(日)〜30日(月) 富士宮口
2年前の2010年に初めて富士登山、登山記を寄稿させて頂いたI.Kです。この時は剣ヶ峰に行くことができず、翌年再挑戦するつもりでしたが仕事が忙しくて行けず、今年こそはと決意して天候と仕事の合間を縫ってピンポイントで計画、ようやく念願の剣ヶ峰登頂が叶いました。
日時:7/月29日(日)〜30日(月)
ルート:富士宮口〜プリンスルート〜砂走館(泊)〜山頂〜剣ヶ峰〜須走口
登山者:父(41歳)・息子(中学2年生)
前回は初めての富士登山ということもあって、このサイトで色々と事前学習をした結果、「須走ルート・7合目山小屋ご来光後登頂」という計画で登頂しましたが、山頂到着後は時間的にも体力的にも余裕がなくお鉢めぐりは断念、反対側にそびえる剣ヶ峰を見ながら「次は必ず」と下山しました。今回はこの剣ヶ峰に近い方の山頂へ上るコースを検討。普通に考えれば富士宮ルートですが、人混みを避けたいのと2年のブランクがあるメタボ親父は急登岩場続きの富士宮ルートはしんどいと判断、登りはプリンスルート、下りは須走ルートという変則コースを選択しました。
13時半に富士宮口五合目を出発、雲の中で涼しいくらいの陽気、さして汗をかくこともなく20分ほどで新六合目に到着。日曜の午後とあって下山してくる人が多く、大勢の下山者が山荘前で最後の休憩をしていました。ここから宝永火口コースへ入りますが、一気に人が少なくなり、第一火口縁までの間ですれ違った登山者は数名でした。10分ほどで第一火口縁に到着、ここから見る火口の風景は圧巻、これから進む登山道が火口の真ん中に伸びており、富士山らしいとても雄大な景観でした。火口底から縁上部を見上げると今にも崩れそうな岩壁で、ちょっと恐い気もします。さて、火口底から馬の背を目指して火口縁斜面の登りになりますが、これがまるで砂走りのようなザラザラの砂礫で、一歩出してはズルッ、また一歩出してはズルッと滑って思うように進めません。ここの登りで一気に体力も気力も消耗してしまいました。2つ目の折り返しを過ぎたあたりでしょうか、進行方向の右側からルートに入ってきた人がいて、聞けば宝永山頂付近からのトラバースルートとのこと。遠回りになってもいい、もうこの登りはうんざり、と迷わず右折。するとしっかりと絞まった地面でとても歩きやすく、あっという間に宝永山頂に到着、ここから稜線上を馬の背まで戻りました。馬の背からは御殿場ルートの下山道をクロスして登山道までトラバース、合流後はひたすら九十九折の登山道をえっちらおっちらと登ります。七合目までは上り下りが別ルートなので、余計に他の登山者と出会うことがなく、シーズン中の富士山とは思えないほど静かな登山、マイペースでのんびりと歩き、17時過ぎに七合五勺の砂走館に到着しました。赤岩八合館と迷ったのですが、時間的にも砂走館で正解でした。
翌朝は4時半に起床、山小屋の前でご来光を迎え、朝食を食べて5時半に頂上に向けて出発。頂上まできれいに見渡せる絶好の天気、ゆっくり着実に頂上を目指します。6時半前に赤岩八合館に到着、御殿場ルート最後の山小屋ということでトイレを済ませ行動食を準備してアウターを脱いでと何やかんやと大休止、出発した時は7時になっていました。ここから先は岩場こそ少ないものの崩れて狭くなった場所や岩のゴロタで「よいしょっ」と足を大きく上げなければならない場所もあったり、さすがにこの高度ですからちょっと無理するとすぐに息が上がったりと、なかなか前に進めません。九合目でしょうか、山小屋跡のところから最後山頂までの登りはかなりこたえましたが、下を見れば前日に苦労した宝永山や遠く水ヶ塚の駐車場まではっきりと見渡せる絶景、上を仰げば真っ青な空に突き刺さるような山頂、苦しくも気持ち良く登ることができました。8時半過ぎに御殿場口山頂に到着、記念写真を撮ってすぐに隣の富士宮口山頂へ移動。一気に登山者が増えて賑やかになりましたが、それでも吉田口と比べると質素ですね。浅間大社にお参りを済ませ、頂上富士館の裏に回ると剣ヶ峰が目の前にそびえています。
気を引き締め直して、いよいよ剣ヶ峰へ。しかし、この馬の背の最後の登りは本当にしんどいですね。数歩進んで息を整えて、また数歩進んで休んでを繰り返し、じりじりと頂に向かいます。そして最後の階段を上ってついに「日本最高峰富士山剣ヶ峰」の碑の前に到達、息子と握手を交わしました。ここより高い場所は日本にはない、そう思うと感無量でした。時間的に中途半端だったのでしょうか、噂に聞いていた撮影待ちの行列もなく、すぐに近くの人と写真を撮り合いすることができました。頂からの絶景を堪能した後、お鉢を半周。吉田口山頂は2年前と何ら変わらず、大勢の登山者たちでとても賑わっていました。
息子は2年前にここで食べた「おしるこ」の味が忘れられず、今回も楽しみにしていたので、少し早いですがここで昼食。その後お土産を買ってトイレを済ませ、10時40分に須走口五合目に向けて下山開始。前回下山したルートという安心感もあってか、2人とも足取り軽く、景色も良く遠くに見える山小屋がぐんぐん近くなってくるのが面白く、ほとんど小走りの状態で11時半に大陽館到着。トイレを済ませて砂走りに突入すると、足取りはもっと軽くなり、ザッザッと規則的に、小走りというよりは軽いジョギングのような感じで進んでいきます。ただ、前回も思いましたが、砂走りと言っても大き目の石がけっこうあって、路面を見ながら進まないと、間違って蹴っ飛ばすと危ないと感じました。最後の吉野屋から五合目までの樹林帯ですが、雨で土が流出しているのでしょうか、2年前よりも下山路のえぐれが深くなっていて、樹木の根が剥き出しになって伸びている場所が多く、とても歩きにくくなっていました。周囲をよく確認すると別のところに踏み跡がついていて、おそらく多くの人が歩きやすい場所を選んで歩いているものと思われました。そうこうしながら12時半に須走口五合目に到着、前回と同じく菊屋さんで一息つかせてもらいました。疲れた身体に「こけももソフト」の甘酸っぱさが心地よく沁み込んできました。
今回、富士宮口五合目へのアプローチを検討した際、どうにも接続がいまひとつで時間がかかってしまうのが難点で、三島や新富士から2時間以上もバスに揺られるのも苦痛だと思い、今年から運行されるようになった御殿場駅発水ヶ塚公園行のバスを利用、さらにシャトルバスで五合目へ向かいました。これがなかなか接続も良く、御殿場駅から五合目まで1時間半で行くことができました。ただ残念なことに、セット券は各登山口(五合目)相互間の設定で、水ヶ塚ではセット券はできないとのことでした。御殿場から富士宮口五合目は距離的にも遠くないので、是非直通バスを運行してほしいと思います。
プリンスルートは、宝永火口の雄大な景色や人の少ない静かな登山ができるというメリットはありますが、それを差し引いても火口縁のあの登りは相当こたえましたので、私たちのような初心者には向いていないルートだと感じました(下山ルートに使うのは良いと思います)。今回利用した山小屋、砂走館はとても快適でした。おかわり自由のカレーもとても美味しかったですし、スタッフの方々もフレンドリーでとても親切でした。この日は宿泊客も40名程度と余裕があったこともあり、とてもゆったりと過ごすことができました。
今回、六合目から御殿場ルートを登ったわけですが、事前に得た情報の通り登山者の数は圧倒的に少なく、本当に静かでした。他のルートと比べて山小屋も少なく、恐らく4つのルートの中で一番不便なルートだと思うのですが、親子連れの姿が多く見られたのは意外でした(私もそうですが)。