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 みんなの登山記2013−10
 投稿者:ちわさん

■2013年7月18日(木)〜19日(金) 須走口

今回のテーマは『楽しい富士登山』です。登山なのですから「苦しい」とか「しんどい」と言うのはもちろんあるのですが、その事が今回の一番の思い出にはしたくありません。下山したときに「もう富士山はこりごりだ」という事がないように、「楽しかった」と言える登山が今回のテーマです。
なので、事前のリサーチで「唯一樹林帯があり変化に富んだルートで、下山時の砂走りも楽しみ・・」とあり、多くの諸先輩方が「のんびりと楽しめる須走口」と高評価な須走口からの登山です。

小心者の私は6月に5合目まで下見に来ており、駐車場や登山口への入り口は確認済みで、宿泊する山小屋も見晴館と決めていました。
夕食にハンバーグが出て、ご主人自慢の豚汁がお替り自由、と言う大陽館にも興味はあったのですが、今回は初日になるべく高いところまで登ってしまいたいので、ハンバーグの夕食は次回のお楽しみとすることにします。

今回は、前回の失敗経験を生かし五合目駐車場には8時に到着しました。
やはりこれが大正解です。ご来光登山から下山した人たちが満車だった駐車場から出て行くので、数台の空きがあります。
ちょうど2台分空いた所があったので、そこに滑り込むように駐車!!セーフ!と言う感じです。

数分もしないうちに隣のスペースにも車が入って来ました。
年配の方の5人組みです。楽しそうにおしゃべりをしながら身支度をしていらっしゃいます。
歳をとっても共通の趣味のお友達がいると言うことは実に羨ましい事です。

高地順応のため五合目の山小屋へ移動し、たっぷりの休憩に入りました。
外のベンチでの休憩ですが、何も注文しないで座っているのは居心地が悪いので、ソフトクリームを注文して食べていると、どんどん下山者がやってきます。富士登山の報道では軽装登山も話題になっていますが、竹下通りでも行って来たのかと思うような"ファッション"の方も下山してきます。
自衛隊の方や、大学のワンゲル部らしき団体も下山してきます。
おば様達のグループは楽しそうにおしゃべりをしながらの下山です。きっと、登山中もおしゃべりが尽きなかったのでしょうね。
しばらくすると、中国人の男女5人のグループが来て売店の方に「%&$*○▲(バス乗り場はどこ)」と聞いているようです。
売店の方が「&%$#△●◎(すぐそこです。あと3分だから早く)」と言っているみたいです。売店の方はバイリンガルです。
言葉が通じたらしく相手はOKのサインを出してバス停に向かいました。でも女の子二人はなぜかトイレの方へ行ってしまいました。売店の方があわててバス停に向かった人に「%&$※●○(二人、トイレに行ったから運転手に待つように言ってね)」らしき説明をしてます。OKサインをしているので通じたようです。女の子二人がトイレから出てきたので、売店の方がバス停のほうまで様子を見に行ってくれましたが、なぜかバスは二人を置いて出発してしまったようです。
NHKでやっている定点観測の番組ではありませんが、ここでもいろんなドラマがあります。

山小屋の若旦那Y氏と目が会い、お話をさせていただくと、今日はテレビの取材があるとの事!そういえば、登山道の入り口にカメラクルーらしき人たちが見えます。さすが世界遺産の富士山は人気者です。
たっぷり休憩して、Y氏にも挨拶を済ませ、いよいよ登山開始です。
まずは、古御嶽神社に御参りです。そこから樹林帯の登山道へ入っていきます。
木の葉の隙間から日光がキラキラと射し込み、見上げると木の葉の向こうに青空が見え、ぽっかりと白い雲が浮かんでいます。どこからともなく鳥のさえずりが聞こえて、とても気持ちがいいスタートです。

しばらくすると高齢の方3人組にお会いしました。「年寄りはゆっくり行きますからお先にどうぞ」とおっしゃるので「失礼ですがお幾つですか」と聞くと、最高齢の方は80歳との事!! 自分の父親ぐらいの年齢で富士登山をされるのですから敬服の至りです。

樹林帯が少し開けたところで上の方を見ると、"鯉のぼり"が立っています。目標があると言う事は嬉しいですね。
程なく発電機の音が聞こえたと思ったら突然に長田山荘が現れ六合目に到着です。

ここから先は約1時間毎に山小屋があります。吉田ルートのように山小屋が密集していない分、景色を楽しみながらのんびりゆっくり富士山を楽しむことが出来ます。 長田山荘を再出発してからちょうど一時間で瀬戸館に到着します。やれやれ、ほぼコースタイム通り! そこで発見!「ここは本六合目です」の看板
えぇ?六合目の長田山荘から一時間登ったのに、ここも六合目なの?
一瞬がっかりしましたが、六合目を「10等分の6」などと考えてはいけないことを悟りました。
「六合目」と言う名称の場所、「本六合目」と言う名称の場所、と割り切ることにした方がいいのです。
実際、この上の大陽館は「七合目」でその上の見晴館は「本七合目」です。さらに江戸屋は「八合目」で胸突江戸屋は「本八合目」です。

瀬戸館で小休止した後、約一時間で大陽館に到着です。
12時半になっていたのでここで昼食休憩に入ります。
白いビーチ用のベンチに腰掛けた所で「豚汁」の看板が目に入ってきました。ハンバーグは夕食にしか食べられないけど、豚汁は販売しています。
ご主人自慢の豚汁をここで頂かない訳には行きません。早速注文!・・・ところが、なかなか豚汁が出てきません。
そう!時間帯が悪いのです。山小屋もちょうどお昼休みのようで人がいません。それに本日の豚汁の仕込み途中だったようです。
でも、出来上がった熱々の豚汁をおいしく頂きました。

今日の宿泊は見晴館ですので、今から向かったのではチェックインには早すぎます。
ここで大休憩にすることにしました。天気もよく風もほどほどで富士山にいる喜びを満喫できます。

ちょうど前の席に一眼レフカメラを持った若者が座りました。自分もカメラ好きなのでそのカメラを見ると、10年位前のデジタル一眼レフです。よく使い込んでいると感心します。ところがレンズは75-300mmという望遠レンズ。
風景を撮るのでしたら、・・・しかも富士山のように雄大な景色を撮るのでしたら、広角のレンズが必要なんですが。。。
「いい写真が撮れましたか」と聞くと「やぁぁ、だめなんですよ」と。やっぱりです。
「そうだよね。望遠では景色は難しいですよね」「そうなんですよ。レンズ選び失敗しました(笑)(汗)」
落ち込んでいる若者に「写真、撮ってあげますよ」と言って一枚撮ってさしあげた。かなり離れて撮ったのですが、望遠レンズですので画面いっぱいに彼の顔が写っていて、背景はほとんどなし!。富士山での貴重な記念写真なのですが、どこで撮影したのかさっぱり分からない写真に仕上がりました。ごめんなさい。

13時半を過ぎたので、そろそろ本日宿泊の見晴館に向かいます。出来るだけゆっくり歩いたのですが見晴館には一時間で到着しました。
弾丸登山や日帰り登山で時間に縛られている登山者には、本当に申し訳ないくらいのんびり登山です。
チェックインの時間前でしたが、予約している旨を伝えると「中へどうぞ」とすんなり入れてくれました。今日の宿泊者一番乗りです。
ここは登山靴を靴箱に入れる方式です。これだとほかの人の靴と間違えるリスクがありますね。
そう言えば靴にリボンをつけている人を何人も見かけました。・・・ふむふむ、そう言う事だったんですね。靴箱で間違い防止のリボンだったのです。

支払を済ませると広間の一番奥のテーブルに案内されました。しばらくするとカップルの宿泊者がやってきて、私の隣の席に案内されました。その彼氏も一眼レフのカメラを持っていました。
私も一眼レフカメラを持ってくれば良かったかなぁ、とも思いましたが、カメラ本体が800gほどあって、レンズと合わせると1.5kg超になります。
登山のときは荷物を100gでも軽くしようと工夫しているのに、いきなり1.5kgの荷物が増えるのはかなりの勇気が必要です。
今回の私は200gのデジカメが精一杯です。
「重いのに大変ですね」と話をすると、この他に交換レンズを持ってきているとの事。それでは絶対に2kgは超えます。
しかも彼の持っているカメラは今年発売の高級モデルで重量感たっぷりです。

山小屋の入り口から「80歳のお年寄りが登っていたよ」と話声が聞こえました。私が六合目の手前で会った方の事のようです。
「それでさぁ、山小屋に泊まらないで、山頂まで行くそうだ。無理しないほうがいいと思うけどなぁ」・・・
えぇ、そんな強行登山だったとは思ってもいませんでした。どうかご無事で行かれます様にとお祈りするしかありません。

宿のご主人とお話をさせていただいていると「今日はテレビの撮影があるんですよ」とのこと。しかも、五合目山小屋のY氏がガイドをしながら来るというではないですか。テレビの出演者はお笑い芸人で、マッシュルームカット、ふくよかなスタイルで"トド"の物まねをするH氏と他二人。
五合目で見たカメラクルーがそうだったんですね。
撮影は18時ごろ、寝床のシーンを撮っていました。カメラさん、照明さん、マイクさん、ディレクターさんと宿のご主人、女将さん、Y氏が狭い寝床に来ての撮影。泊り客は遠巻きにその様子を見ています。
Y氏や撮影クルーの方々は、見晴館の別館に宿泊したので、その後は私たちと一緒になることはありませんでしたが、都内でも芸能人を見かけるのはめったに無いのに、富士山の山小屋で芸能人に出くわすとは思ってもいませんでした。

翌朝は4時に起床し、山小屋前でご来光を参拝させていただき山頂を目指します。
見晴館から吉田ルートとの合流する本八合目までは、火山礫のざくざくした道です。足を踏み出してもなかなか前に進みません。
しかも、八合目江戸屋から上は登山道と下山道が入組んでいて分かりづらい所もあり、標識を見落として歩きづらい下山道を登っていく人もいますので要注意です。

本八合目の山小屋を抜けると山頂まではもうひと頑張りです。ここから先は前回の吉田ルート登山と一緒ですので、ペース配分が分かっています。「はぁーふぅー」と一呼吸で一歩進むリズムは牛歩並みに遅いペースです。でも、前に進んでいればいつかは山頂に到着する、と言う思いで登っていくと、早いピッチで登って休憩を挟みなが行くよりも早いような気がします。
見晴館から山頂まで2時間30分で到着したので、これはほぼコースタイム通り。ゆっくりでしたが、進み続けたのがよかったのかもしれません。

山頂は晴天、風はほどほど、気温は6℃。
今回は、お鉢めぐりが出来そうです。
その前に山頂から、山中湖、河口湖、八ヶ岳などの景色を堪能してしばしの休憩。
すると、そこに、Y氏がいるではありませんか。
「Yさん、撮影は終わったんですか」
「はい、1時ごろ見晴館を出てきました。ご来光を拝んで撮影の方は終わって、皆さん下山しましたよ」
その後せっかく山頂に来たので、しばらくゆっくりしていたとの事です。
Y氏はこれから下山するというので、私はお鉢めぐりをしてから下山することを告げて別れました。

これから、お鉢めぐりに出発です。
「時計回り」にするか「反時計回り」にするか迷う所ですが、判断基準は剣が峰の馬の背を「登り」にするか「下り」にするかです。
馬の背の急坂で足を滑らせた場合、下りだと「転倒」登りだと「手をついて擦り傷」・・・・ 結局「転倒はいやだな」という結論で、時計回りでいくことに決めました。
案の定、馬の背ではざくざくの礫でなかなか登りません。中間あたりには岩の上に礫が乗っており滑ります。
上から若者がダッシュで降りてきましたが、この中間地点でかかとが滑り転倒、尻餅をついまま10m位落ちていきました。
ダッシュは危険です。!
お鉢めぐりはアップダウンがあるものの、結局同じところに戻るためトータルの高低差は「ゼロ」!
これは精神的に楽です。(笑)

山頂の景色や火口の大きさ・雄大さを写真に撮りましたが、4×3の写真のキャンパスにこの感動は納め切れません。
空の青、雲の白、赤い瓦礫、グレーの溶岩、火口の大きさ、残雪・・・・・
この素晴しさや感動は「記録」ではなく「記憶」に収めることにします。

剣が峰を下りたあたりで、ザックに「ご結婚おめでとう」と書いた短冊をつけた女の子がいました。
「すみませーーん、それ、どうしたんですかぁ」と聞くと「私たち、そこの神社で結婚式を挙げたんです〜」と隣の彼氏を指差しました。
おぉそんなことが出来るのかぁ、と感心しましたが、神社なので不思議ではないですね。 それにしても参列者は大変でしょうね。ご両親ならまだしも、祖父祖母を富士山山頂までは呼ぶのは無理です。
逆に考えると、会社の上司などを呼ばずにすむのでいいかもしれません。

白山岳の下あたりでこちらに手を振って向かってくるカップルがいます。 見晴館で一緒だったカップルです。それにしても、この広い富士山でまたお会いするとは偶然です。「いい写真取れましたか」と聞くと、満面の笑顔で「それはもう、バッチリです」
それはそうですよね、登山の荷物のほかに2kgの機材を持ってきたのですから、いい絵が撮れなかったらがっかりですね。

山頂の景色を楽しませていただき、いつまでも見ていたいのですが、そうはいきません。下山開始です。
下山道は八合目の所で須走ルートと吉田ルートに分かれます。この分岐の所でハンドマイクを持ったお兄さんが、「スバルラインに下山する人はこの先を左にいってくださぁ〜い」と案内しています。ここで間違ってもその少し先の看板で戻ることが出来るのですが、吉田ルートを下山する方は、『江戸屋で左』と頭に叩き込んでおく必要があります。 下山者のほとんどが吉田ルートのほうへ回りこんでいくところ、私はまっすぐ須走ルートへ向かいます。

途中の砂走りは礫がクッションになって歩きやすいですが、ついつい速度が上がってしまいます。小休止のために止まろうとしてもなかなか止まることが出来ず、速度が出ていたことに気がつきます。そして止まってみると下山道が結構な傾斜であったことに驚かされます。
所々に大きな石があるし、礫の下に岩があってかかとがズズズッと滑る所があて注意が必要です。

小休止していると、上のほうからカメラを担いだ青年が降りてきました。昨日大陽館で会った彼です。
こんな偶然ってあるんですね。この時間でここを通過すると言うことは、私とほぼ同じタイムスケジュールだったと言うことです。
私の横を通過するときに「あれから写真撮れましたかぁ〜」と声をかけると、彼のほうも気がついて「ぜんぜんで〜す」と返事をしてくれましたが、なにせ速度が出ているので止まることが出来ず、そのまま遥か彼方へいってしまいました。

吉野屋へ到着し、あの有名な洗面水を頂こうとしましたが、今日は山小屋を立替工事中なのでやっていないとの事でした。がっかり。
ワンちゃんと女将さんに挨拶をし、樹林帯へ突入です。
木の葉が日差をさえぎってくれるので、気持ちよく下山できます。木の根っこにつまづいたり、滑って転倒しないように、気をつけながら降りてゆきます。
最後に古御嶽神社に無事の下山を報告し、Y氏のいる山小屋へ向かいます。

五合目の山小屋の前では、下山者の呼び込みをしています。「きのこ茶いかがですかぁ。休んでいってくださ〜い」
私は下山途中からここの"きのこうどん"を食べると決めていたので、声をかけられる前に「きのこうどんくださ〜い」「あ、その前に体が熱いのでソフトクリームを先にお願いします」と注文。。
Y氏としばしの歓談をしていると、「五人で来たんだから、五人で降りようよ!」とちょっと不満げな声が聞こえました。どうやら八合目の分岐ではぐれてしまった方が、すでに下山していたお仲間に不満を言っているようです。
なんとその方たちは、昨日の駐車場で隣に停めた車の"仲良しご年配の五人組"です。
これで仲違いされる事が無いようにと心配していましたが、車に戻って様子を見ると、もうすっかり仲良し五人組なっています。
「富士登山楽しかったですか?」と声をかけると、「天気もよかったし最高でしたよ。な!な!」とお仲間に目配せをし、皆さん同じように楽しい登山をしてきた様子でした。

私も、いろんな人との出会いや体験をさせていただき、今回のテーマ『楽しい富士登山』の目標は達成致しました。


(管理人)
お笑い芸人のH氏とは日村勇紀さんのことです。TBS「ジョブチューン」という番組でチャンカワイさんたちと登頂しました。ちわさんは気さくに色々な方に話しかけて楽しい登山ですね。



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(13/8/29)