■2014年7月28日(月)〜29日(火) 吉田口
56歳男、横浜市在住。16回目の富士登山です。去年は世界文化遺産騒ぎを避けてお休みしました。今年のテーマは「0合目から登ろう」。昔のメーン登山道だった吉田口が最善でしょうが、どこから歩き出せばいいのか悩みました。富士山駅?金鳥居?浅間神社?中の茶屋?馬返し? 所要時間と体力を天秤にかけ、馬返し(標高1450m)をスタート地点に選びました。
◎低山の森林に富士山を忘れる
東名高速バスを御殿場で降り、富士急の路線バスに乗り換えて浅間神社前で下車して参拝。少し離れたバス停から世界遺産ループバスに乗り、中の茶屋で待っていた9人乗りのジャンボタクシーに乗り継ぎ、11時半に馬返しに到着しました。浅間神社から馬返しまで乗客は私1人だけ。目の前のトイレで用を足して11時45分に登山開始です。
天気は暑からず寒からず。太陽は雲間からときどきのぞく程度で、とってもいい気分です。ブナやナラなど低山で見慣れた森林は、ここが富士山であることを忘れさせてくれます。登山道は広くゆるやかで歩きやすく、苔むした昔の山小屋が点在しているのも風情があります。14時半には五合目の佐藤小屋に着いていました。
少し登ると初めて見る普及協力金受付所、つまり入山料徴収所がありました。年配の男性と若い女性がペアでちょこんと椅子に座り、「協力していただけますか」と聞かれたので、「もちろん」と1000円を出しました。登山者の数を聞くと「1日で50人から100人ぐらい」とのこと。スバルライン口とは比べ物にならない少なさです。
◎山小屋はがらがらで超ラッキー
たぶん富士山で2番目にきれいな山小屋、と思われる六合目里見平星観荘で巨峰味のソフトクリームをいただいて疲れたからだを癒し、六合目安全指導センターでスバルライン口と合流したのは15時半です。20分ほど休憩してから登山再開。建て替え以降初めて見た七合目東洋館の富士山一のきれいさには感動しました。
宿はとくに決めておらず、少しでも上まで行って翌日の負担を軽くしようと八合目まで進み、暗くなってきたので蓬莱館に宿を求めました。18時15分。団体客が止まる小屋はなるべく避けようと思い、何となくすいていそうな感じがしたので選んでみたのですが、これが大正解。たまたま団体客がない日にあたり、がらがらで超ラッキーでした。
夕食のカレーを御年81歳という単独登山のお年寄りと一緒に食べました。若いころは北アルプスを制覇したそうですが、富士山は初めてで、頂上の久須志神社でお礼参りしたいとのこと。五合目から蓬莱館までの所要は6時間。翌日も同じぐらいの時間がかかる計算なので、大変だったかも。翌日に会うことはありませんでした。
◎意識して変えた呼吸法
なんとなく寝付けず眠れたのは21時ごろです。目が覚めたのは23時ごろで、これはいつもの困ったパターン。トイレに外に出たら冷たい風が吹いて凍える寒さでした。居合わせた外国人カップルが「いくらで泊まれるか」と聞いてきたので覚えていた料金を告げると、顔を見合わせて歩き出してしまいました。とても寒そうでした。
めでたく二度寝に成功して、山小屋でご来光を迎えました。朝ごはん用に渡されていた釜めしをレンジで暖めてもらっておいしくいただき、6時に出発。早朝は深夜と違って全然寒くなく、前日と同じ格好。またもダウンジャケットは着ずに終わりました。足の疲れはほとんど感じられず、前日と同じく快調に登り始めました。
実は前日、七合目手前あたりから、意識して呼吸法を変えてみました。それまでは走る時と同じように、2度吸って2度吐くスッスー、ハッハーでしたが、気まぐれで唇をとがらせて2度強く吐いて1度吸うフッフー、スーとしてみたのです。やりだしたら驚くほど呼吸が楽になって足も進むようになりました。これはひょっとしたらお勧め?
◎「富士の山頂水」を採取
当サイト・富士登山の心得でも、登山用呼吸法について「自然に空気を吐ききった段階から、さらに口をとがらせて、おなかを凹ますようにして「ふ〜、ふ〜」と空気を吹き出します。すると、あ〜ら不思議。吐き出した分、今度は大量の空気が入ってきます」とあり、10年たってやっとそれを実感できました。
珍しいことに大勢の登山者を追い抜き、8時40分に頂上到着。天気は快晴。気温は7.6℃でしたが、体感的にはもっと暖かかったです。すぐに反時計周りにお鉢巡りを開始。目の前にそびえる白山岳に一度は登ってみたいと思いましたが、山肌がぐすぐすで危なくてその気にはなれず。代わりに白山岳の一番下にある残雪の下部に立ち寄りました。
残雪の末端では、薄氷がみるみる解けて水になっていくのを観察できます。その出来立てのきれいな水を空になったペットボトルに採取。「富士の山頂水」として2リットルほど持ち帰りました。お鉢道からちょっとはずれた場所で誰も降りて来ず、3700mの別天地を独り占めしているような快感に包まれてしばしうたた寝しました。あー、最高の気分。
◎リズミカルに休みなく下山
帰りのバスの時刻が決まっているので、名残惜しいけれど愛しい残雪に別れを告げて剣ヶ峰へ。11時半に到着し、記念写真を撮ってもらうとさっさとスバルラインの下山口へ急行。途中、富士宮口の郵便局が銀明水のわきの山小屋跡地に移転しているのに気づいてプチ驚き。スパッツを装着し、ちょうど正午に下山を開始しました。
ステッキを使ってかかとで砂礫を蹴るようにリズミカルに降ります。このスタイルは富士下山にたぶん最適で、ぐんぐんと高度を下げることができます。休みなく歩いて五合目に着いたのは14時少し前。それほど急がなかったのに、また2時間を切ることができました。コケモモのソフトクリームで登山の成功をしみじみとお祝い。
東急電鉄が今シーズンから参入した五合目直通バスに乗り、14時35分に出発。富士スバルライン、東富士五湖道路、国道138号、東名高速でいずれも渋滞に遭わずに順調に進み、田園都市線たまプラーザ駅と終点の横浜市営地下鉄センター北駅にはダイヤより少し早く到着しました。あ、水の消費量は1リットルだけ。