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 みんなの登山記2004−14富士宮口
 投稿者:ザキさん


■2004年8月20日(金)〜21日(土)

タイトル:同行したアホな友人の姿に大爆笑!!

●初登山のきっかけ

今年の春、会社の友人(Sさん42歳)と飲んでいるときに、Sさんが過去4回富士 山に登頂していることを知り、一度も登ったことのない私(38歳)から一緒に 登ってくれるようにお願いしました。 その場で二人で今年の夏に登山することを決めました。 ジョギングが趣味の私は、それから夏の登頂に向けほぼ毎日3〜5Kmのジョギン グを続けました。

Sさんからいろいろ体験談を聞いたり、マップルのガイドブックを読んだりして 準備を進めました。(HPで情報収集するということに気が付かず(必要を感じ ず?)、貴サイトを知ったのは下山後、来年のプランを考えているときです。と ても素敵&役立つHPですね!)

7,8月は夏休み&お盆ということで、家族持ちの二人の日程を合わせるのが難 しく、会社創立記念日で半ドンの8/20(金)の夜間登山しかないということに なりました。当日が悪天候なら、今年の登山は諦めなければならず、祈るような 気持ちで天気予報をチェックしていました。

●出発当日の悪夢

心配した台風の影響もなく、富士山周辺の天候は良好の様子。これはご来光が拝 めるぞーと喜び一杯で出勤しました。 しかも、当日の日テレの占い(普段はくだらないから見ないけど、この日は ちょっと気になった)によると私のてんびん座が一番ラッキーな星座。しかも、 「初めてのことをやるときは友人のアドバイスを受けると良い」なんて、正にこ の日にぴったりのコメント。 予定通り登山道具を会社最寄駅のコインロッカーにいれ、出勤したところ、Sさ んが私の席で私を待っていました。おっ、Sさんも張り切ってるね!とウキウキ しながら、「良かったねー、天気大丈夫そうだよ。バッチリじゃん」と声をかけ たのに、Sさんは浮かない様子。 しかもその虚ろな表情はどう見ても二日酔い。アレー??そして重い口をあけた Sさんから驚きの発言が...。

「ゴメン、実は昨日、家に帰ってないんだ。だから、登山道具持ってきてな い...。今着てるスーツも靴も一緒に飲んだNさんの。なぜか朝起きたらNさん 家だったの。マズイよね〜。自分の服はゲロで汚れてるし、靴はどこいったかわ かんない。Nさんの嫁さんには迷惑かけただろうなー。ヤバイよなー...」 「ナッニー!どうすんじゃ、ボケ!この酔っ払いオヤヂ!!何考えとんじゃ!ド アホ!Nさんの嫁のことより、ワシと富士山のことを気にせんかい!!」と罵声 を浴びせてみたものの、どうすることもできません。会社から家が遠いSさん は、道具を取りに帰る時間的余裕がないのです。 Sさん曰く、「でも大丈夫。一昨日、登山靴と服だけは会社に持ってきてるか ら。リュックと着替え、道具類を忘れただけだよ。平気、平気」

確かに、服装だけしっかりしていれば、食料などはもともと現地購入予定なので 支障はないかと少し安心しました。何より過去4回登頂しているSさんがそう言 うのだから大丈夫かと。そして今日の占いのことを話すと、Sさん、「私もてん びん座。それじゃ大丈夫ジャン、OK、OK」とノー天気にヘラヘラしています(と いうか、酔っ払ってる)。

そこで、持ってる服装を確認すると、なんとTシャツと半ズボンだけ。あれだけ 私に「山頂は寒いぞー」と言っていたくせに、なんじゃこりゃ?どうするつもり だと詰め寄る私に、「この天気ならそんなに寒くないよ。100均でカッパだけ買 えば大丈夫。風さえ防げばいいのよ」
「それじゃ、寒いって。私が予備に持ってきたヨットパーカーだけは貸せるけ ど、それ以上は貸せないよ。会社が終わったらジーンズメイトでも行って、安い トレーナー類を買おうよ。」
「平気、平気。大丈夫だって!もともと寒いの好きだし」

仕事が終わり着替えて、予定通り昼過ぎに会社を出た私達は、「服を買え!」 「いらないよ!」と何度も言い合いましたが、Sさんは結局100均で上下のカッパ (各々100円)を買っただけ。私もついに、「そこまで言うなら、ほんと凍え死 んでもしらないよ。勝手にセー!」
心の中では「私は素人。相手は経験豊富。だから、絶対大丈夫だ」と一生懸命自 分に言い聞かせていました。 当初、リュックも買わず手ぶらで登ると言い張っていたSさんですが、駅で千円 の安いリュックを見つけ、これだけは無理やり買わせました(自分の荷物を分担 して持ってもらおうという気持ちもあり)。

●それでも7合目辺りまでは順調!

東海道線で三島駅まで行き、食料・飲料を買って、最終バスで富士宮口に到着 (19:30)。
私は寒くないよう衣類を着込みレジャーシートを敷き出発まで売店敷地の広場で 仮眠をとりました。寒くはなかったのですが、周囲が予想以上にうるさく(そ りゃそうだ)、ほとんど眠れませんでしたが、身体を休めることはできました。 Sさんはというと、Tシャツ+私から借りたヨットパーカー+半ズボン+上下 カッパという格好です。しばらくするとスネが汗ばんできたと言うので仕方なく 私の秘密兵器「グンゼの白モモシキ」を貸してあげました。本人、これで大丈夫 と満足しています。二日酔いだというのに、結局、電車やバスの中でもビールは 3本も飲むし、ほんと、何考えてんだか...。富士山をナメきっているとしか 思えません。
このSさんの態度に、天罰が下るようないやーな予感が私を襲います。 ちなみに、Sさんは仮眠をとろうともせず(寒くて寝れないのか)、売店のおじ さんとムダ話をしてなんだか盛り上がっています。この辺が初心者と経験者の貫 禄の違いかなーと、不覚にも少し感心してしまいました。

予定通り22:45に新5合目を出発。

麓は良い天気だったのですが、残念ながら5合目付近は雲に覆われ期待した星空 や夜景は見えません。それでも風はほとんどなく穏やかで、気分爽快、ワクワク でスタートしました。
Sさんはヘッドライトもないので(買えと言ってもやはり買わなかった)、私の ヘッドライトが二人分を照らしています。私はSさんの足元も意識しなければな らず、それだけが煩わしいです。
ゆっくりとしたペースで歩き、休憩、水分補給もこまめにとったので、酸欠にも ならず、ジョギングの成果か本当に疲れを感じません。楽しいだけです! 6合目過ぎから上空の雲がなくなってきて、美しい星空を見ることができました (夜景は見えず)。
Sさんは4つも流れ星を見ました(私は握り飯を食べていたので、一つも見 ず)。そんな穏やかな雰囲気で、7合目過ぎまでは本当に順調でした。このまま 行くと山頂では雲もなく、素晴らしいご来光を拝めると期待し、ますます心ウキ ウキです。

●ついに天罰が下る!

しかし、やはり富士山はSさんを許しはしなかった。8合目付近で急に雲が厚く なり、風も強くなってきました。もちろん気温(体感温度)も厳しい寒さまで下 がっています。
休憩では風を受け難い岩陰に隠れ、二人まるでホモだちのように身体を寄せ合い ました(ゲッ!)。とにかく風を防がないとSさんの体温が奪われるので、仮眠 (緊急)用に持参したレジャーシートを取り出し、それを二人で被りました。効 果はバツグンです。休憩を終え、歩き出そうとしましたが、どうみてもSさんは 寒そうです。経緯もあり私には弱音を吐かないのですが、これは既にシャレに ならない状況です。そこでレジャーシートでSさんの身体をリュックごと上から 包むことにしました。何かの役に立つこともあろうかと用意していたビニール紐 でレジャーシートが飛ばされないよう、縛りつけました。
海苔巻に例えれば、具のかんぴょうがSさん、酢飯が100均のうすーいカッパ、海 苔がシートというところでしょうか。
皆さん、想像してください。すごい姿です(レジャーシートはかわいい大きなス ヌーピーの絵)。
シートを紐で縛ったとはいえ、風にあおられ、シートはマントのようにバタバタ と激しい音をなびかせています。見ようによっては、ヒーローに見えなくもあり ません(絶対見えない)。

それだけでも十分すごい姿なのに、しばらく歩くとうすーいカッパのスネの部分 が破れてきました。 おそらく休憩で岩場に座ったときに小さな破れ傷ができたのでしょう。何しろ安 くてうす〜いカッパですから。それが強風にあおられ、みるみるうちに破れが広 がっていきます(膝から下はシートに覆われていないので、風をモロに受ける)。 ついに、両足とも膝から下は白いモモシキが丸見えで、その周りに緑のカッパの 切れ端がヒラヒラとしています。まるで味噌汁の豆腐にまとわりつくワカメのよ うです。膝下のカッパの大部分は富士山の暗闇に消えていきました(おいおい、 環境破壊だぞ!)

その姿をすぐ後から見続けている私は、本当にたまりません。何がたまらないか というと、おかしくて、です。笑いがとまらないのです。爆笑です(酸素薄いの に)。すんごいです。シャレにならないはずなのに、シャレ以上に面白い。とに かく、ものすごいもの(絶対人間には見えない)が、私のすぐ目の前をもくもく と歩いているのです。(今思い出した!ハリーポッターのディメンター+「砂の 器」で砂丘を歩くボロオヤヂをすっごく格好悪くした感じ!!)

その姿で少し歩いては休むを繰り返しました。休憩中は私がかいがいしくシート と紐の縛り具合を点検し、直してあげるのです(小学校に送り出す前の玄関先の お母さんみたい)。その間中、私は笑いが止まりません。Sさんは震えています。 登山道の傍らで休憩中の私達の姿を多くの人たちが好奇の視線を投げながら追い 越していきます。
Sさんも変ですが、富士山の荒れる登山道で暗闇の中、爆笑している私も変です (実は最初のヘッドライトの電池が切れ予備電池に変えたので、節電で休憩中は ライトを切っていた)。気が変になった人だと思われたかも知れません。私は、 体調も万全、疲れなし、ただただ面白いのです。
ははははっははははっははっは...ヒーヒー。

●恐怖の山頂
悪条件の中でとうにご来光を諦めた私達は予定よりゆっくりと登りました。結局 山頂についたのは5:30頃です。霧雨の山頂ではほとんどの人が山小屋(頂上富士 館)に避難(休憩)しており、私達も直ぐに山小屋に入りましたが、満員電車並 の混雑でびっくりしました。立ち食いを覚悟して買ったカップラーメンですが、 運良く二人分の席を確保することができました。さっさと食べて、休憩もそこそ こに山小屋を出ました(Sさんは食事中ももちろんシート巻きの格好です)。

山頂は霧雨で視界が悪く、強風でした。下山ルートは須走口と決めていたので、 下山道入口を目指してお鉢を歩きました。このお鉢歩きが一番恐かったです。途 中までは鉄柵もなく、道幅も狭く、金剛杖も飛ばされそうな強風に本当に顔が青 ざめました。風は火口側から裾野に向かって吹いており、このときは前を歩く 「ゲテモノ」の姿を見ても面白いどころか、本当に心配になりました。
二人とも吹き飛ばされてしまうのではないかと...。私達以外にお鉢を歩いて いる人にはほとんど会いませんでしたが、数人の方が私達とすれ違いました。
「気をつけてください」とお互い声を掛け合いながら。(その日のニュースで何 も言ってなかったので、皆さん無事だったのでしょう)

どうにか須走口下山道までたどり着くことができ、すぐに下山開始です。

●ヘトヘトになった砂走り

下山してしばらくすると風も弱くなってきて、霧雨も止みました。 周囲も明るくなり、ホッしました。そうするとまた、Sさんのおバカな姿が私を 笑いの世界に引きずりこみます。登頂したこと、恐怖の山頂を無事切り抜けたこ となどで気分はますますハイになります。 Sさん曰く「登りは暗くてそんなに恥ずかしくなかったけど、こう明るくなると さすがに恥ずかしいなー。みんな、モモシキのあたりを見るんだよね...」は はは、ザマーミロ!

7合目まで降りてくるとようやく暖かくなってきたので、山小屋の陰でついにS さんがシートをとり、モモシキも脱ぎました。上半身はカッパ、下半身は半ズボ ンというチグハグな格好ですが、それまでの格好と比べたら、つまらないくらい マトモです。あー、つまんない。

それから楽しみにしていた砂走りに突入しましたが、睡眠不足と疲れでだんだん 辛くなってきました。Sさんも須走口下山は初めてなので、二人ともゴールがど の辺りかわかりません。最後の砂走りが延々と続くような気がし、滅入ってきま した。
ようやく売店に着いて、ゴールだーと喜んだのに、バス停まであと2Kmの標識に 全身の力が抜けました。この道を下山したことのある人は分かると思いますが、 バス停までの林の下山道がほんとキツかった。というか、なんだか腹立たしい感 じでした。この時点では、「もう二度と富士山なんかに登るもんか、これで最後 だー!」と思いました。
ようやくバス停前の売店についたときは、本当に嬉しかった!!やっと終わっ たーという感じです。

下山7合目まであんなに元気だった私は、ゴールしたときにはもうヘロヘロでし た。Sさんはというとシートを脱いだ開放感と暖かさからか、後半なぜか元気ピ ンピンでニコニコしています。
それがなんとも憎らしい。おまけに登山途中何度も私に、「もう酒は懲りた。し ばらく反省して禁酒する」とほざいていたくせに、すでに売店で生ビールを美味 そうに飲んでます!
(私も酒飲みですが、さすがにこの状態では飲めませんでした)

私の神聖な初登山は、アホな友人と登ったおかげでなんとも変ちくりん(?)な ものになりました。
下山直後はもう懲り懲りだと思った富士登山も、結局翌日には来年のプランを頭 の中で立てていました。すっかりはまってしまったようです。
来年はアホな友人とは登らず、可愛い娘(現在小6)と二人で、河口湖口から日 帰り登山を楽しむ予定です。そのための情報収集の過程で、この「あっぱれ!富 士登山」を知りました。 今から来年のシーズンが楽しみです!!

*ちなみにSさんとは翌週仲良く反省会(禁酒はどうした??)をやりました。S さんの写真を送りたいのですが、Sさんの職場のデジカメでとったので、データ はSさんが握っています。私の写真はくれたのですが、肝心のSさんの写真だけは 絶対に見せてくれません。よく撮れてるはずなのに。チックショー!)

*反省会での会話:私「あの占い当ってるよ。初めてのことは友人のアドバイス聞けって言ってたじゃん。あれはあんたが道具を忘れたという初めてのアクシデントに対して言ってたんだよ。だから私が服を買えって言ったのを素直に聞くべきだったんだよ」 Sさん「あ、そっかー、なーんだ。そうだったんだ...」

/完


  (管理人)
 無事に下山されてよかったですね。Sさんの姿は、万が一遭難してニュースで放送でもされたら悲しすぎます(笑)。過去4回の登頂はよほど良いコンディションだったのでしょう。経験者ゆえの油断だったのかもしれません。スヌーピーにモモシキ。荘厳な富士山のイメージがもうだいないしですぅ(爆笑)。


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(04/8/29)