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 みんなの登山記2006−25吉田口
 投稿者:Yoshi T.さん


■2006年8月10日(木)〜11日(金)

 はじめて富士山に登り始めてからはや5年、今年二回目の富士登山を富士吉田 口から行う事にしました。今回が14回目の富士登山です。自分がこうも富士山 に魅せられ、飽きずに登り続けられているのも、毎回登るテーマを決めているか らでしょうか。これまでは焼印がそのテーマの中心でした。ここのサイトへの焼 印についてのレポーティングとそのメンテナンスをする必要を感じていていたか らです。
 今年は、焼印とは一歩距離をおき、これまで登山記を読んでもあまり記述がな いと思われる、「神社と富士講」を登山のテーマとして掲げる事にしました。し かしながら、この登山記で歴史的な記述を書いていくつもりはありません。また 、その道のプロでもないので、正しい厳格な作法も知りません。ただ、先人たち をしのびつつ、富士講に一歩でも近づくべく、その真似事をしながらの富士登山 です。その過程を記述し、私の登山記の中で参考になる部分があれば幸いです。

 今回の富士登山の目的と目標を次のとおりに設定しました。

・神社を起点(今回は下吉田の小室浅間神社)とし、その往復徹夜登山を決行す る。総歩行距離往復約50km。標高差3,026m(富士急下吉田駅標高753m)。
・神社参拝の際には、先ず手水舎(ちょうずしゃ、てみずしゃ)で、口をすすぎ 、手を洗い、心身を清めること。
・各神社では、二拝二拍手一拝の作法を守り、身滌の大祓を唱えること。(身滌 の大祓は自分は全国の一宮を巡拝していたので暗記しています。)
・道中の北口本宮浅間神社(850m)、吉田口一合目(1520m)の鈴原天照大神社と二合 目(1700m)御室浅間神社を参拝すること。
・吉田口六合目に着いた後トラバースし、河口湖口五合目の小御岳神社を参拝し に行くこと。
・ご来光の時間までに頂上に到達し、久須志神社前で国歌君が代を聞きつつ、国 旗日の丸の掲揚を見ながらご来光を拝する事。
・頂上に着いたら浅間大社奥宮と久須志神社(東北奥宮)を参拝し、お鉢めぐりを 行うこと。
・ご朱印の頂ける神社では全て朱印をいただくこと。(朱印は参拝の証となるも のです。)

身滌の大祓の祝詞を参考までに記します。神社参拝時には必ず唱えるようにして いるものです。

身滌の大祓 (ミソギノオホハラヒ)
高天原に神留座す。神魯伎神魯美の詔以て。皇御祖神伊邪那岐大神。
タカマノハラニ カムヅマリマス。カムロギ カムロミノ ミコトモチテ。
スメミオヤカム イザナギノオホカミ。
筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に御禊祓へ給ひし時に生座る祓戸の大神等。
ツクシノ ヒムガノ タチバナノ ヲトノ アワギハラニ ミソギハラヘタマヒ シトキニ 
アレマセル ハラヒトノ オオカミタチ。
諸の枉事罪穢を拂ひ賜へ清め賜へと申す事の由を天津神国津神。
モロモロノ マガゴト ツミケガレヲ ハラヒタマヘキヨメタマヘト マヲスコ トノヨシヲ 
アマツカミ クニツカミ。 
八百萬の神等共に聞食せと恐み恐み申す
ヤヲヨロヅノカミタチ ドモニ キコシメセト カシコミカシコミマヲス

【行程】
(公共交通機関利用分)
名古屋バスセンター(7:40)―富士吉田駅前(12:10) 富士急バス 往復割 引運賃7,000円
富士吉田駅前(17:20)―名古屋バスセンター(21:50) 実際は往復とも1時間 近く遅れて到着。

富士吉田駅―下吉田駅 富士急行線 片道210円 往復420円

(往路)
下吉田駅(標高753m)―小室浅間神社―北口本宮浅間神社(標高850m)距離3.8km
―中の茶屋(標高1,100m)距離3.9km―馬返(標高1,450m)距離3.7km 
―三合目(標高1,800m)距離2km―五合目(標高2,300m)距離1.5km
―六合目(標高2,390m)距離1km ここから河口湖口五合目へトラバース
河口湖口五合目小御岳神社(標高2,305m)距離1.8km
ここまでの歩行距離17.7km。標高差1,552m
小休止

河口湖口五合目(標高2,305m)―頂上(標高3,776m)距離7.0km〜お鉢巡り〜距離3.0km
ここまでの歩行距離(お鉢巡り含む)10.0km。標高差1,471m

往路 歩行距離合計 27.7km 標高差3,023m

(復路)
頂上(標高3,776m)―吉田口五合目(標高2300m)距離7.5km
後は富士急行線下吉田駅まで往路と同じ。(標高753m)距離14.9km

復路 歩行距離合計 22.4km 標高差3,023m

往復 総歩行距離合計 50.1km 標高差 3,023m

 とにかくよく歩きました。これを徹夜で26時間かけて歩き続けたわけです。自 分の人生の中で最も長時間の不眠歩行記録となりました。名古屋から7:40発の富士 急のリゾートエクスプレスという高速バスに乗り、12:10に富士吉田に着くはず なのに、お盆休みということもあり、1時間近く遅れて着きました。それから富士 急の電車に乗り、さらに標高の低い下吉田へと向かいます。ここが標高753m。こ れまでの最高は、須走口の起点の神社である東口本宮富士浅間神社の標高800mが 最高でしたから、それからさらに50mばかし低いわけです。自分としてはどうして も標高差3km以上を登り下りしたかった。標高800mなんて、標高差3kmにわずか24m ばかし満たないではないですか。今回は、そういうのは嫌なので、標高差3kmをさ らに23mを上回る3,023mの登り下りです。ちなみ富士急行線の下吉田駅のひとつ前 (富士吉田駅の次の駅)である、月江寺駅は標高が776m。ピッタリ標高差3kmの登 り下りをされたい方はこの駅が便利です。

 兎にも角にも、自分は神社参拝を中心に据えての今回の富士登山なので、北口 本宮富士浅間神社を上宮浅間というのに対し、下宮浅間である、小室浅間神社か らスタートさせる必要がありました。上宮・下宮両方参拝しないと片参りになり ますし。この神社は、下吉田駅から歩いて5分もかからない所に鎮座しています。

 予定より1時間半近く遅れて小室浅間神社に着きました。先ずは登山の無事を祈 念し神社の参拝を済ませました。14時前に神社をスタート。最初の目的地北口本 宮浅間神社を目指します。金鳥居をくぐり、約45分かけて到着。手水舎で清めた 後、二礼二拍手一礼し、祝詞奏上の後再度一礼し参拝を終え、金剛杖に北口本宮の刻印を頂きま した。今度は中の茶屋目指して歩きます。

 今まで2回の吉田口の登山は馬返までアスファルトの道を歩かなければなりませ んでした。正確には、東富士五湖道路とクロスする地点から右手へ入って行くと 、山道があったのですが、自分は気付くことが出来なかったのです。麓から歩く 富士登山愛好家には朗報なのですが、この度、今年の5月から北口本宮浅間神社( 標高850m)の裏側をちょっと行った所標高860m地点から馬返まで、山道が整備さ れ、神社の裏手からずっと山道を歩く事が出来るようになり、より登山らしくな ってきました。入り口は、北口本宮浅間神社から約200mの地点にある、富士山慰 霊碑から、案内板に導かれ西側に入っていった所です。吉田口遊歩道と銘打って います。

 さて、次に向かった中の茶屋で一服、そばを食べました。この時点で16時15分 でした。それからさらに3時間半かけ、5合目の佐藤小屋に着いたのが、19時45分 。ここまで登山客に誰とも会うこともなく、日没後の登山道の廃屋を眺めながら の一人登山は寂しいものでした。ただ、吉田口一合目(1520m)の鈴原天照大神社と 二合目(1700m)御室浅間神社のあたりは、まだ日没前で、無事参拝を済ませること が出来たのは幸いでした。とはいったものの、どちらも廃屋になりかけみたいな 感じなので、整備が急務だと思います。

 佐藤小屋では、焼印をもらうために小休止。今年からデザインが変わっていま した。なかなか焼印が熱くならなかったため、けっこう40分くらい佐藤小屋にい ました。それから、帰りに里見平の星観荘焼印をもらう事とし、とりあえず六合 目の河口湖口との合流地点を目指しました。結局吉田口・河口湖口の合流地点ま で誰にも会わず登山しているのは自分独り、もっと多くの人に麓から登る楽しみ を味わってもらいたいなぁと強く感じました。

 21時過ぎにトラバースして、河口湖口の五合目の普段にぎやかな所に着いたの ですが、富士急経営のレストハウス以外は皆閉まっているありさま。ここは富士 急が営業している通常の登山バスの関係もあり、それらの客を当てこんでか、遅 くまで営業しているようです。先ずは腹ごしらえと、菓子パンを購入しパクつき ました。しばし休息、汗で濡れた服を着替え、荷物の整理。その後に小御岳神社 へ行きましたが、当然閉まっており、ご朱印、刻印等は頂けませんでしたが、社 殿の外側で祝詞だけあげてきました。

 21時45分河口湖口五合目を出発。頂上までの顛末は他の方々の登山記に詳しい ので割愛します。ただ今回も確認できたのですが、七合目の花小屋から八合五勺 の御来光館までの河口湖口に属する山小屋は、夜間の焼印はすべてOKのようでし た。自分は、鳥居荘、元祖室、御来光館、頂上山口屋(須走口所属)でしか焼印はしませんでし たが。頂上へは4時15分に到着しました。河口湖口五合目から登頂に6時間半かか り、麓からはすでに14時間15分経っています。これでまだ半分。大丈夫なのか?

 4時50分過ぎ無事雲海から昇るご来光を久須志神社(東北奥宮)前から仰ぐこと が出来ました。また、富士山頂上で御来光を拝しつつ、国歌君が代を聞きながら 神主による国旗日の丸の掲揚は、人生初めての体験でなかなかおつなものです。日 本最高地点での国旗掲揚でしょう。

 今年一回目の富士登山のとき、山頂の富士浅間大社奥宮でご朱印帳を購入しま した。今後の富士登山では、里宮、奥宮含めて富士山関連神社を参拝するたびに その帳面に朱印を書いて頂くつもりです。一種の幼稚園や小学校の頃に使ってい たお便り帳みたいなものでしょうか。死ぬまでにその帳面を満願にしたいなぁと 思っています。今回もご朱印と金剛杖への刻印を頂きました。
 さて、無事浅間大社奥宮と東北奥宮である久須志神社の参拝を終え、郵便局で 登頂毎に購入している登頂証明書を購入、自宅へ投函した後、お鉢めぐりも済ま せました。晴天に恵まれとてもよかったです。さあ、これからが下山です。
 河口湖口の下山道はあまり好きではないです。御殿場口みたいに土壌がやわら かくないのでもろ膝にきます。ダラダラ下りが何とも退屈。とにかくスキーの要 領で金剛杖をポール・ストックに見立てて下りてきました。河口湖口・吉田口分 岐の六合目についた頃には膝が笑っていました。帰りに吉田口の二つの山小屋 へ立ち寄り、星観荘で焼印とジュースを、佐藤小屋で小屋名を記した根付け/携帯 用キーホルダーを購入しました。この根付け、吉田口・河口湖口のすべての山小 屋にそれぞれの山小屋名を入れて作ってあるそうで、焼印に続く新たなコレクタ ーズアイテムの登場となりそうです。一つ200円。但し全山小屋共通の「3776 m 富士山 日本一」は300円。 自分は吉田口分だけに留めておきます。 麓から登った場合のみに購入、次回に星観荘の分を購入しようかと考えています 。

 さて、佐藤小屋から最終目的地の小室浅間神社までがものすごく長かったです 。昨日から徹夜で歩き続けているわけです。だいぶ疲労も蓄積されて来ているの が分かりました。馬返の吉田口登山道の入り口には10:00〜16:00まで ボランティアで水や麦茶、食べ物を無料で提供してくれる所があります(小屋にな っている)。市役所の管轄だと聞きました。おばちゃん達2人が対応してくれ、 そこでジャガイモのふかし芋、稲荷寿司に沖縄パイン糖、麦茶の接待を無料で受 けました。この時かなり疲労困憊していたので、無茶苦茶助かりました。この時 点で昼14時を過ぎており、後3時間20分で名古屋行きのバスが出てしまいます。 かなりあせりました。食べ物を口に入れた事によりかなり体力的にも回復したの で、そこから北口本宮までは山道を走りに走りました。お陰で1時間20分ほどで北 口本宮浅間神社までたどり着くことが出来ました。無事にたどり着けた事へのお 礼参りを済ませた後、昨日は刻印、本日は朱印帳に朱印を書いてもらいました。 お神酒も頂きました。15時40分過ぎに上宮である北口本宮浅間神社を出発、下宮の小室浅間神社へ向かいました。金鳥居をくぐり目的の神社までおよそ40分。これが長かった。最後の力をふりしぼり16時15分過ぎに最終目的地点である小室浅間神社 に到着。感無量でした。お礼参りにも力が入ります。二礼二拍手一礼と祝詞を奏 上の後、御朱印と金剛杖に神社の焼印を押印してもらいました。

 総歩行距離50.1km、標高差3,026mの徹夜登山はここに完結を見ま した。下吉田駅まで歩いた後、富士吉田駅への電車に揺られる中、自分の成し遂 げた26時間15分を思い起こし、我ながら今回はよく頑張った、自分を誉めても良 いと思いました。来年もまた吉田口かもしくは須山口等他のルートになるかわか りませんが、麓から登りたいです。


  (管理人)
 おつかれさまでした。すごすぎます。


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(06/10/4)