[登山記の目次に戻る]

 みんなの登山記2007−20
 投稿者:M.Tさん

■2007年8月11日(土)〜12日(日) 須走口

 今春、高校生になった娘と2人で登ってきました。「山頂で御来光が観たい!」というリクエストで、登山日は、夏期休暇の多い連休の、最初の土日です。少し前までは、河口湖口(スバルライン)と富士宮口(スカイライン)はマイカー規制が始まっているから電車とバスにしようかと思っていたのですけれど、子供と一緒に帰ることを考えて須走口へ車で行くことにしました。
 6月から圏央道と中央道が八王子ジャンクションでつながり、高速道路が使いやすくなっています。私の家からだと、鶴ヶ島ICから河口湖ICまでの99.8Kmを使います。100Km以内のため時間帯によってETCの割引料金もあるから、とても便利です。12時を過ぎた頃、家を出ました。圏央道は空いているだろうけれど、中央道は? と少し心配しながら早めに出たのです。でも、行ってみたら中央道の渋滞も無く、河口湖ICで下りたのは13時54分でした。それから一般道を通って須走方面へ向かいました。富士吉田線を使わなかったのは、時間が早かったからちょっと節約。それと「帰りにお風呂へ入るならどの辺かな?」という下見のためです。それほど混んではいませんでしたし、山中湖周辺の景色も楽しめてよかったですよ。

 ふじあざみラインを通って、須走口の駐車場へ着いたのは15時頃でした。車の中で仕度してすぐに新五合目の山小屋へ行き、座敷でゆっくりと食事をとります。私は親子丼、子供は山菜うどんを美味しく頂きました。そのあとは2人ともソフトクリーム。先々週、一緒に下山した人達と食べたソフトクリームがとても美味しかったので、登山前から味わってしまいました。ところで、徹夜登山というと暗くなってから出発することが多いのですが、そうすると日が昇るまで夜の中を歩き続けることになり、最初は景色を楽しめません。
 そこで、明るいうちに樹林帯を抜けられるように16時過ぎに出発することにしました。早めに出発してスローペースで登り、渋滞で山頂の御来光に間に合わない、ということが無いように八合目くらいまでの間に時間を調節することもできます。その分疲れるでしょうけれど、子供は車の中で寝て帰れるから大丈夫だろう、という思いつきです。山頂に早めに着けば御来光の前に体を休めておけるから、御来光直後のお鉢巡りにも疲れを残さなくていいかな、と思っていました。子供にとっては最初で最後になるかもしれない富士登山なので、身体に無理しないよう、富士山のよいところをたくさん観られればいいなあ、とも思っていました。



 そんなわけで、明るいうちから樹林帯の木陰を進んで行きます。涼しくて汗をかくのも気持ちよく、しばらく登ってから時折視界が開けるポイントでも、眺めを楽しむことが出来ました。遠くに眺める山中湖や町並み、青い空と目線より低く連なる夏の雲、富士山の麓から東に見える山までを覆う影富士、そして最後は、暗くなった富士の右手に連なる雲が夕日に染まった赤い水雲線。「来てよかった。こんなに気持ちがいいなんて。」そういいながら、最初のうちは疲れも見せずに登って行きました。  新六合目の長田山荘に着いたのは17時半頃です。最初に影富士を見たのは17時15分頃で、そのあと18時頃まで、少しずつ伸びていく影富士を堪能することが出来ました。周辺に雲の無い富士登山は久しぶりで、想っていた以上の眺めに私も少し興奮してついついハイペースになります。最初から足取り軽く登ってしまったこともあって、実は山頂へ着いたのは0時前なんです。でも、この時はそうするつもりも無くて「どの辺りで長い休憩を取ろうか」と考えながら登っていました。

 大陽館へ着いたのは19時40分頃で、寒くなってきたためセーターを着ました。子供にあまり荷物を持たせるわけにもいかないので、食料や下山途中用の水は私が持っています。水は子供も2リットル(500ml×4)を持ち、私は自分の分と2人の下山分で、合計5リットル(500ml×6、2000ml×1)でした。それでちょうどバランスが取れて、同じくらいのペースで登ることが出来たようです。水を多めに持ったのは念のためなのですけれど、子供が下山までに飲んだのは1リットル、私の方は2.5リットルで、3.5リットルの水を持ち帰ることになってしまいました。子供は私以上に飲む量が少なく、少し心配になるくらい。でも、荷物もそれほど気にならなかったし、それほど体調も崩さずによかったです。
 うちの奥さんへは時折メールを送っていて、大陽館に着いたときもすぐにメールを送っていました。すると直ぐに「寒いんだね。Yちゃんは大丈夫?」と返信が届きます。携帯(au)は富士山でも便利になって、アンテナ1本でCメールが送れない状態でも、Eメールは送ることが出来ました。そう言えば、はぐれた時のために、子供の携帯には私宛へ直ぐ電話できるようショートカットを作成してもらっていました。早い時間からの徹夜登山ではぐれることもありませんでしたが、混雑しているときなら重宝するかもしれません。奥さんからのメールには「帰宅してから直ぐに食べられるようにアイスとプリンを買ってきた。」と書かれています。登山中はなかなか気持ちに余裕をもつことが出来ないので、ふと声をかけられたような嬉しいメールでした。
 21時20分頃には、ここの管理人さんからも励ましのメールを頂いて、場所を伝えると「それはペースが早すぎる〜!」と、直ぐに返信を貰っています。確かにそうなのですが渋滞は避けねば...。いずれにせよ、思いがけない励ましの携帯メール、ありがたいことです。21時50分頃、本八合目に到着して奥さんへメールを送ると直ぐに返信があり「八合目まで行ったの? ガンバ、おやすみ。」と書かれています。「え? もう寝るのかな〜。」「アイスとプリンと... ビールも買ってきたんだね...。」そんな話をしながら、2人で重い腰を上げました。

 大陽館のところで「それほど体調を崩さずに」と書いたのは、本八合目を過ぎたところで子供が酸欠になったためです。座って休み、水を飲んでも「頭がボーッとしている、歩きたくない。」と言います。寒さと酸欠で紫色になった爪の色は私と同じくらい、唇は血色が良く顔色も普段と変わりません。そこで初めて酸素を使ってみました。スプレータイプの酸素缶で、買ったのも使うのも今回が初めてです。3〜4回吸い込むと目の開きが大きくなって「あ、気持ちよくなった。身体の中に足りなかったものが入って来た感じがする。」と言うのです。そんなに直ぐに効くものなのかな? と思って私も使ってみたところ、確かに直ぐに実感できます。酸素缶は下山するまで頼りになりました。自分なら使わずに耐えてしまうところ(というより、今まで酸欠がそれほど気にならなかったんですね)ですけれど、子供用に備えていてホント良かったです。2本で千円の酸素缶、余った1本で次も安心です。
 体調の方はそれくらいですが、もう1つアクシデントがありました。暗くなってきたので子供がヘッドライトを使おうとした時、ライトが点かないのです。私とお揃いのものを家で渡して点灯を確かめていたので、「バッグの中でスイッチが入ってしまった」と思い、少し慌てていたこともあって電池を買い求めました。が、電池を交換しても点灯しない。点灯している方の電池を使ってみても点灯しない。そこで、2人で1つのライトを使うことにしました。人がほとんどいない登山道でゆっくり登れるし時間もある、ということで実際何もトラブルは無かったのですけれど、今思えば山小屋でひとつ買って安全を計るべきだったと思います。

 ライトひとつで不自由をしながらも、人のいない登山道でそれほどペースを落とせず、0時前には山頂へ着いてしまいました。あとはもう、御来光まで待つしかない。自販機の暖かいココアを飲み、冷たい風が吹く中、3時間身体を寄せ合って星を眺めました。人がほとんど居ない山頂は静かで、満天の星は言葉にならないくらい綺麗です。何度か流れ星も見ました。星が描く微妙な曲線が信じられないくらい太いんです。
 3時になると山小屋がオープン。山小屋の入口に寄り添っていたので、直ぐに注文出来たのはよかったです。少し遅れると店の中にも入れず待たなくてはなりません。私はうどん、子供はラーメンを食べて暖を取り、長居出来ない山小屋を後にして御来光を見る場所を探します。山頂へ着いてからペンギンのように寒さに耐えていたから、撮らないままでいた写真を、神社前で1枚撮りました。その後は、登頂の階段を見下ろせる場所で御来光を待ちます。



 空は少しずつ明るくなり、星が霞んでいきます。次第に明るくなる地平線、というより雲平線? 太陽が昇るあたりの直ぐ上には三日月のような白い雲が浮かんでいるように見えました。「あれ、雲だよね?」と、そんな声も聞こえる中、その白い雲のようなものは形を変えずに少しずつ上がっていきました。よく見れば、三日月の形だけでなく、僅かに丸い輪郭が見えました。そして御来光の瞬間、この日は歓声もなく、皆静かに見入っているようでした。子供も携帯で写真を撮っています。「友達に送るんだ。」という笑顔、元気そうなので安心しました。

 御来光の後、長い行列待ちのトイレを済ませると直ぐに下山開始です。天気が良く霧も雲も無いからお鉢巡りを、と思っていたのですが、初めての高山病に驚いたようで「早く家に帰りたい。」んだとか。5時40分頃下山を始めて、新五合目に着いたのは10時頃でした。早く帰りたい、と言うばかりで新五合目で休もうともせず、子供は駐車場へ歩いて行ってしまいます。私はソフトクリームが食べたくて引き止めたのですけれど、駐車場への坂も走るように登ってしまうんです。子供にしてみれば、車まで辿り着いた後は涼しい中で寝られるわけですから、無理のないことかもしれませんね。案の定、そのあと子供が起きたのはシルバンズでお土産を買うために駐車した時と、谷村SAで休憩したときだけです。家に着いたのは14時ちょうどくらい。帰りの高速も快適でした。

 砂走りが歩きづらかったのか「富士山には、もう行きたくない!」と言い、家で寝転がると好きなTVドラマを見ながらご機嫌の様子。それからお風呂に入って一眠り。晩御飯のときは「途中で携帯見たら友達からメールが5件も来ていて、返すどころじゃないでしょ?」と楽しそう。子供は回復が早いなあ、と感心します。私の方も晩御飯の前に一眠りして、夜は早めの就寝。翌日の今日は登山用具を片付けてゆっくり身体を休めることが出来ました。親子のいい思い出になりました。
(管理人)
 2007年の私の登山記のAさんことM.Tさんから送られてきた登山記です。父娘で山頂の寒い中、御来光を待ったのは良い思い出になりますね。山頂で満天の星空を見るなんて素敵です。



BACK  TOP  NEXT

(07/8/13)