■2008年8月3日(日)〜4日(月) 御殿場口
はじめまして、神奈川県在住の50歳男性です。
今回、御殿場口からの富士登山をしてきましたので、投稿させて頂きます。私自身これまでに4回富士登山をしてきました。1回目は11歳の時に父親と妹と河口湖口から、2回目は28歳に女房と河口湖口から、3回目は38歳に長男と富士宮口から、4回目は40歳に女房、長男、次男の家族全員で河口湖口からと10年に1回のペースで登ってきました。
今年3月に50歳となり、メタボ検診ではお腹をへこませてギリギリ腹囲測定をクリアと、体型、体力に不安をかかえる年齢になってまいりました。そこで週に3回程度ウオーキング&ジョギングをするようになりました。体重も3キロ程度減って、その効果もみえてきたのですが、体力の確認に富士登山をと思い立ち、このサイトや登山記がたいへん参考にさせていただきました。それでも御殿場口の登山記は少なく、みなさまの参考になればと思って書きました。
●なぜ御殿場口?
前回の河口湖口からの富士登山で最も苦しかったのは下山道でした。40年前には吉田大沢の砂走りが使え1時間半くらいで降りることができましたが、現在のジグザグ下山道は、登りで消耗した脚力では足の衝撃も強く、辛い思い出でした。
そこで、砂走りのある登山道をと考えました。御殿場口は下山道が大砂走りで魅力的ですが、距離が長いことと大石茶屋から日の出館までトイレがなく、一緒に登る女房の負担が大きい(男ならばいざとなれば立ち・・ですが)ことから、このサイトご推薦の須走口を考えていました。
下山道だけ御殿場口も考えましたが、それでは御殿場口を制覇した気分になりません。
土日での登山は登山客が多く、山小屋もすし詰め状態で、互い違いに寝かされた経験もあるので、今回は月曜日に休暇をとり、日曜日からの登山という予定です。登山日は8月3日と決めましたが、この日は富士登山駅伝の日であることに気づき、それならば駅伝をみながら御殿場口を登れば、長い距離も登れるのではないかと考え、御殿場口に変更、赤岩八合館に予約をとりました。
●御殿場口まで
富士登山駅伝当日は最も御殿場口が混雑する日で、駐車場に車を停められないと考え、交通手段は電車・バスにしました。車を使わないもう一つの理由は、下山した直後にビールを浴びるほど飲みたいと思っていたので、車での移動はあきらめました。
御殿場駅8時5分が朝一番のバスです。富士登山駅伝のスタートが8時で、交通規制があるとバスも停められてしまい、登り区間が見られなくなると考え、7時に御殿場駅到着、富士山口からタクシーを使い、御殿場口5合目に7時40分到着しました(約5000円の出費)。
御殿場口5合目の駐車場は自衛隊車両が並んでおり、ほとんど満車状態でしたが、路駐している車はなく、奥の方には空きはあったかもしれません。自衛隊員が応援のノボリを持って登山していきます。ランナーの家族と思われる方も多くみられ、とても賑やかな雰囲気でした。
● 富士登山駅伝
富士登山駅伝は、御殿場市陸上競技場(標高約580m)から富士山御殿場口山頂まで46.97kmを6人、11区間で往復する、世界で最も標高差のある駅伝競走大会です。1区から6区まで富士山を登り、頂上まで登ってきた6区の選手は山頂の浅間神社で襷にスタンプを押してもらい下山。7区以降は同じ道を登った選手(すなわち7区は5区の走者、8区は4区の走者、……、11区は1区の走者)が下る駅伝です。毎年自衛隊チームが数多く参加し、優勝を独占していますが、一般参加の学生・社会人・クラブチームなども多数参加しています。
● いよいよ登頂
日焼け止めクリームを顔、首、耳、手に塗ってから7時50分に登山開始。10分で大石茶屋に着きました。ここで半袖Tシャツとジョギング用短パン(長ズボンの下にはいていたので長ズボンを脱ぐだけです)にして通過。右手に直線の下山道を、左手に双子山、宝永山を眺めながら、緩やかな砂利道をジグザクに登っていきました。太陽が降り注ぎ、汗が出てくるので15分おきに、凍らしてきたポカリスエットを一口飲みながらゆっくり歩いて行きます。
1時間ほど歩いていると、駅伝のランナーが見えてきました。駅伝コースは下山道の砂コースを登って行きます。自衛隊チームはゼッケンが100番台、一般参加は99番以下のゼッケンで、区別がつきます。それにしても先頭集団は考えられないスピードで下山道を登って行きます。遅いチームは本当に辛そうで、歩く姿もしばしば見られます。登山道をノンビリ登っている我々は立ち止まり、写真を撮ったり、「頑張れ!」「歩くな!」と応援しながら登って行きました。
しばらくすると、大砂走りを横切り、下山道を左に見ながらの大きなジグザグ道になります。この場所が次郎坊というのでしょうか?
ビリ争いをしているランナーに少し道を譲りながら登り続けると、10時25分、2合8勺に到着。ここは大砂走りと登山道が接しているところで、気象庁の避難小屋(?)があるところです。7区8区のリレーポイントで、富士登山駅伝最大の見せ場です。20度の大砂走りの急斜面を、転びやすいことをかえりみず、もの凄い速さで駆けおりて襷(たすき)リレーをするところで、転倒者が続出します。3年前まではフジテレビなどで中継されており、目立ちたい走者はテレビに映ることを期待して、わざと(?)砂の中に転がり込む迫力のある映像を見た記憶があります。残念ながら今年もテレビ中継はないようでした。
この中継点にあと40分くらいで選手が到着するとのこと、ここで大休止をとることとしました。ここには太郎坊から登って来た4区のランナーが復路の8区の準備のため、キャンプ用のマットを敷いて休んでいます。100チーム以上が参加しており、走者を介助する方や大会運営に携わる方もいるので、すごい賑わいです。登山者で見学しているのは10人もいなかったと思います。
ここにはいつもはない簡易トイレが2つ準備されており、見学者、登山者も使うことができました。(翌日はすでに撤去されていました。この日だけのトイレポイントのようです)
オニギリや黒糖菓子を食べていると、選手の点呼がはじまりました。このころから靄(もや)がかかってきて視界が20〜30メートルくらい、上を見上げても選手が見えません。しばらくすると「ゼッケン102番」と優勝候補筆頭の滝ヶ原自衛隊がコールされます。ほんとうにあっという間の襷リレーでした。その後、続々と襷リレーされます。転倒するものもいましたが、結構大丈夫そうです。でもここから7合目の砂走館までの標高差1017mを1時間弱で登り、40分くらいの休憩後、ここまで10分くらいで降りてくるわけですから、とても信じられません。自衛隊チームがぞくぞくと続き、一般参加1位はトヨタスポーツマンクラブ(総合では9位)でした。
全部の襷リレーは見ると、まだまだ時間がかかります。20番目くらいまで見たところで、11時20分出発しました。ここからは下山道の大砂走りから大分離れて、ジグザクに登っていきます。途中曲がり角には自衛隊の方がいましたが、登山者には10人くらいしか会えませんでした。途中、閉ざされた小屋(環境省避難小屋?)で10分休憩、おにぎりを1個ずつ食べ、さらに登って行きます。15時10分に日の出館に到着、15分のトイレ休憩と、ポカリとお茶のペットボトルを買い、まだ氷の残っている水筒に入れ替えます。
● 砂走館到着
その後まもなく砂走館に到着。ここは富士登山駅伝のリレーポイントであり、昨日は山頂を目指す6区のランナーや関係者で大賑わいだったそうです。ここで赤岩八合館の宿泊状況をきいてみますと、予約が100人くらいとのこと。やはり赤岩八合館は富士宮口からブルドーザ道を使って、流れてくる登山者が多いようです。足の調子はまだまだ大丈夫で、高山病の症状も特にありませんが、混んでいる山小屋はなるべく避けたいので、本日の宿泊は砂走館に変更しました。こちらは予約が20名とのことです。
日が沈みかけ気温はどんどん下がり、砂走館でいただいた暖かいお茶がとても美味しく感じました。明日ご来光を山頂で望みたいことを伝え、出発は1時30分で大丈夫と教えていただき、また朝食は戻って食べることを伝えました。山頂までの往復にいらないものは山小屋で預かっていただける(無料でした)とのこと、洋服類を少々とスパッツ、空のペットボトルなどを預けました。(結局雨具や水筒は持っていくので余り減りませんでした)
夕ご飯は手作りカレーが食べ放題。噂通りでとても美味しく、2杯いただきました。この時間まで我々以外にだれも宿泊者が来ません。予約者全員キャンセルかと山小屋の方が心配していましたが、その後2組、5人いらっしゃいました。この人数ですので、本当にゆったりと寝ることができました。
自分たちも疲れから早く床につきたいのと、宿の方たちも昨日の駅伝の宿泊者たちのお世話で忙しかったのでしょう、8時過ぎには電気を消してもらい、就寝しました。
● 山頂でのご来光を目指して
携帯の目覚ましを1時にセットしましたが、夜は風もあり、1時間おきに目が覚めてしまいました。他の宿泊者に迷惑がかからないよう準備し、1時30分出発。ヘッドライトは、今回新しいものを買いました。以前のものに比べるとLEDは明るく、電池は単3が1本と、軽く快適です。かなり風があり、寒く感じるので、Tシャツに長袖シャツ、その上に雨具のジャケットを着て登りました。もともと遅いのに加えて、ヘッドライトで足場を探しながら登るので、普段の1.5倍時間がかかります。
赤岩八合館に2時25分到着、トイレ休憩をして、直ぐに出発します。ここを過ぎてしばらく登ると、やや大きめの赤石が敷き詰められた登山道で、特に曲がり角では石が深くなり、とても歩き難いです。ペースもさらに遅くなりますが、立ち止まらないようにし、少しずつ足を前に出して登って行きます。
しばらくすると東の空が赤くなってきました。御殿場口は山頂直前では富士山自身に遮られて、ご来光が望めないことがわかっています。山頂まで結構距離があり、かなり焦りました。前を歩く女房も同様に思ったのか、急にペースを上げて登って行きます。少し明るくなり斜面が見えて登りやすくなったことと、どうしても山頂でご来光をという思いが、スピードを上げていきます。かなり明るくなり、もう間に合わないかと思ったとき、鳥居がみえてきました。山頂でご来光を待っている人の声も急に聞こえるようになりました。右の脇腹がかなり苦しかったのですが、太陽の明るさに元気をもらい、一気に登りきりました。
頂上到着時間は4時50分。かなり明るくなってきており、右に進むと山の陰でご来光に間に合わないと、あわてて左手に進み、人だかりの岩の上に登りましたが、10分位ご来光まで時間がありました。雲がかかっていたので、多少日の出が遅くなったようです。初めての山頂でのご来光、素晴らしい景色でしたが、富士山に重なって昇る太陽の姿でしたので、少し残念。右に回れば雲海からのご来光が望めたかもしれません。
●お鉢巡り
2人とも体力的に余裕があり、高山病の症状もなく、天気も絶好で、今回初めてのお鉢巡りを行いました。馬の背の急斜面も風がそれほど強くなく楽しんで登れ、富士山の最高峰、剣が峰に立つことができました。記念撮影をしたり、展望台から影富士を堪能したりした後、時計方向にのんびり景色を楽しみながら回りました。久須志神社、浅間大社奥宮で御朱印をもらい、7時20分に下山開始。
●下山
登ってくる方は殆どいない御殿場口にツアーの方々が大勢並んで、降りる準備をしています。かなりの人数です。下りだけ御殿場口というツアー客や個人登山者は今後も増えてくるでしょう。この方々の後ろになっては詰まって大変と、列の脇を急いで通り過ごし、追いつかれないよう距離をとりながら降りました。登りで苦労した大きな赤石のジグザグ道もそれほど苦痛ではありません。それにしてもほとんど登ってくる方とすれ違うことはありませんでした。小学校低学年の子供連れのご家族が1組、お子さんを励ましながら登っていました。富士宮口から回って赤岩八合館から来た方かもしれません。山頂と赤岩八合館の間くらいにもう一軒山小屋があると、目指すものができたり、焼印ももらえたりで、子供にとっては登る気力がわいて登りやすいコースになるのにと考えさせられました。(我が家はもう子供と登ることはないでしょうけど)
●あっという間の大砂走り
砂走館で朝食をいただきました。暖かいご飯に味噌汁、焼きたての目玉焼きにハム、昆布の佃煮と沢庵、梅干です。山頂で飴やお菓子を少々食べただけで、お腹も減っており、とても美味しかったです。お客はほとんどいませんでしたが、オーナーが赤岩八合館から降りて来ていたので、山小屋の方々もテキパキと動き回っています。ここのバイオトイレは駅伝の時に許容以上に使われたとのことで、電気もつかず、スイッチも動きませんでしたが、ヘッドライトを使って用をたしました。そういえば今回入ったすべてのトイレにトイレットペーパーはあり、持って行ったものは全く使いませんでした。山頂の富士宮口にあるトイレも清潔でした。
さきほどのツアーの方々は上の赤岩八合館で休憩している様子です。休憩もそこそこに、宿泊のお礼をして、9時55分に下山開始。まもなく砂走りとなりました。はじめは幅が3〜5mくらいと狭く、大き目の石が混ざった砂走りでしたが、次第に石がなくなり、幅も10m以上はある大砂走りに。砂走館でスパッツをつけていたので、靴の中に砂は入ってきません。足を大きく前に出すだけで飛ぶように降りられます。歩くたびに足首まで沈み込み、思ったより足に負担はきません。途中から霧が出てきて視界は30mくらいでしたが、ちょうど前の人が見えるくらいで、前の人影と左にある道標のロープを頼りに、どんどん下りていきました。前の人と距離をあければマスクなしでも砂埃が口や鼻に入ることはほとんどありません。みなさん砂走りではしっかりと水分の準備が必要と書かれていますが、自分は水分の補給はほとんどいりませんでした。また飽きるくらい長いとみなさん書かれていますが、駆けるように降りてみたり、雄大な景色を写真に撮ったりしているとあっという間です。
襷リレーポイント、気象庁の避難小屋(?)を過ぎると、まもなく砂が浅くなり、足への負担が大きくなります。砂が深そうな場所を選び、歩幅を小さくして歩き続けます。最後の砂走りは少しうんざりしましたが、行きはこの長い距離をよく登ってきたな〜と感慨深げに歩を進めました。
大石茶屋に到着、おいてあるハタキでリュックやズボンの埃を払い、100円の洗面水で顔を洗いまいた。冷たくてとても気持ちよかったです。最後の下りがまだ少し残っていますが、待ちきれずにビールを購入。350cc缶ビールが500円と山小屋料金でしたが、とても冷えており、生き返りました。(昨晩は高山病を心配して我慢したので)
バス乗り場に11時30分到着。平日のバスは12時00分、次は15時00分。本数が少ないのも御殿場口の人気のなさを反映しています。ですが12時のバスの座席はすでにいっぱいです。タクシーを頼もうかとも思いましたが、バスとの差額は3000円、御殿場でのビール代にしようと思い、立ってバスに乗ることにしました。
●御殿場で乾杯
バスは富士山口に到着、目の前のホテル御殿場館内にあるマリーズカフェに入りました。生ビールが450円とリーズナブル、ホウレン草サラダ、チキングリル、大盛りのフライドポテトをつまみに、2人で生ビール5杯、赤ワイン1本で乾杯、6171円の出費でした。
●総括
持参した飲料(2人分)
・1リットルの水筒2本(水)
・600ccの水筒2本(ポカリ)
・500ccのペットボトル2本(ポカリとレモンウオーター)
・ウイダーゼリー2本
すべて凍らして持って行きました。特に1リットルの水筒の氷は夕方でも半分くらい残っていました。この中に山小屋で買ったお茶を入れたので、翌日も冷たく飲めました。
山小屋で購入した飲料
・500ccのペットボトル2本(ポカリ)
・500ccのペットボトル1本(お茶)
御殿場口は、4つの登山口のうち最も標高差があり、途中山小屋やトイレが少なく、最難関と思われ、不人気ですが、1泊登山を考えておられる方には、是非お勧めのコースです。雄大な景色、大砂走り、渋滞に巻き込まれることのない登山、比較的空いている駐車場と山小屋、等、自分のペースでゆっくり登山することができます。女性はトイレの心配があると思いますが、その場合には是非、富士登山駅伝の日に登ってください。
自分としては須走口がまだなので、近いうちにトライしたいと思います。どうも有難うございました。