■2009年8月9日(日) 富士宮口
51歳男。横浜市在住。9回目の富士登山です。
最初の登山から5年が経ち、加齢と運動不足による体力低下を調べるために、ほぼ同じ日帰りコースを登ってみました。5年前は雨の中、休憩20分を含む4時間で登頂しています。今回、下りは御殿場口から大砂走り・宝永火口を経由して富士宮口に戻る予定。
●車中泊した落石場所に震撼
前日8日の夜に家をマイカーで出発。ガラガラの東名高速を御殿場ICで出て、富士山スカイラインへ。自衛隊滝ヶ原駐屯地の手前右にあるセブン・イレブンで最後の補給。前回と違ってマイカー規制中なので、水ヶ塚駐車場に零時ごろ入りました。駐車場は8割がた埋まっていました。
5時ごろ目が覚めると、天気はまあまあの晴れ。富士山の優美なスロープがばっちり見えます。ただし山頂部は雲に包まれており、御来光は難しかったかな、という感じでした。朝食はサンドイッチ。シャトルバスの往復切符(1300円)を買い、6時発のバスに乗り込みました。ちょうど30分で新五合目駐車場に到着。すでに大勢の登山者がいました。
5年前は食堂のすぐ上の駐車場に車を止めて一晩を明かしました。そう、7月に落石による死亡事故が起きたまさにその場所です。改めて山を見上げると、さえぎるものが何もないスロープ。丸い岩が落ちてきたらどこまでも転がってくるだろうな、と思いました。身震いするとともに、亡くなった方のご冥福を祈りました。
●新六合目で早くも息切れ
日焼け止めを塗り、トイレをすませて7時半出発。同じころに登り始めた20代後半ぐらいの男女2人ずつの4人組の女性陣の足元に目が留まりました。工事現場で見かけるような水色のプラスチックシートをすねに巻いています。おしゃれとはいい難いのですが、スパッツ代わりなんでしょうか。新六合目の雲海荘には20分で到着し、10分休憩。
あれ? 5年前、ここは素通りしました。休憩したのは新七合目と八合目の2ヵ所だけ。とくに暑くもないのに、新六合目で早くも息が切れていました。情けない限りですが、それが現実でもあります。新七合目で10分、元祖七合目では15分の休憩。八合目への途中で足が止まり、とうとう登山道のわきで横になって休みました。
その後は、登りで使う予定がなかったステッキの助けを借りてややペースアップ。八合目と頂上手前では、下山者とのすれ違い渋滞に巻き込まれましたが、かえって適度な休憩になりました。頂上にたどりついたのはちょうど12時半。登りの所要時間は5時間で、うち1時間を休憩に費やしました。
●珍しい残雪といつもの強風
頂上は風が吹いて少し寒く、薄手のダウンジャケットを着込みます。剣が峰に向かう途中の右側にある火口のふちで、おにぎり弁当を食べると気力も回復。去年まではなかった残雪があちこちの斜面にへばりついています。この珍しい光景をカメラに収めました。ついでに近くにいた高校生ぐらいのかわいい女の子に頼んで、残雪を背景にした私の写真を撮ってもらい、彼女の写真も撮ってあげました。
彼女は家族で相模原からやってきて、家族全員が初登頂とのこと。靴底が擦り切れかけた私の靴と違って、ピカピカの新品です。「富士山は登山口の頂上で満足する人、剣が峰に登って満足する人、お鉢巡りで初めて満足する人の3タイプがいる」といった話をしました。初登頂で満足した彼女は下山口へ、私は3回目のお鉢巡りのために剣が峰に向かいました。
いつものことですが、急斜面の馬の背は難所です。この日も強い西風が吹き荒れ、小さな男の子を連れたお父さんは「こわいよー」と泣きつかれて断念。滑って手をつく人もいます。ステッキの先導で慎重に歩を進めて剣が峰に到着。「日本最高峰」の石柱を抱えた記念写真を撮ってもらったのは、最初に見かけた4人組の女性でした。例のスパッツはそのまんま。「登山用じゃないんで…」と照れていました。
●チョコレートと生クリーム
剣が峰の真下では、残雪を観察してみました。ここの新着情報によると、8月3日に除雪して道を作ったばかりです。雪は厚さ1mほどもあり、上部は黒土で覆われています(写真)。ちょうどチョコレートと生クリームのように見え、写真でみるとおいしそう。雪の端からはポタポタと水滴が落ち、道には細い流れができています。この雪は解けてしまうか、根雪となるかは微妙ですね。
ガスがときおりかかるお鉢をゆっくりと時計回りに歩いて河口湖・須走口の頂上へ。去年も報告しましたが、ここが登山道の終点であって下山道は別のところに存在することを示す標識がありません。だから、ここから下山する人が後を絶ちませんでした。富士宮口のようなすれ違い渋滞を避けられるせっかくのシステムなのですから、なんとか解決すべき課題です。
●スパッツ代わりにコンビニ袋
御殿場口頂上を15時前に出発。いよいよ下山です。山頂部には2時間半いたことになります。駆けるように降り、1時間後には七合目の日ノ出館に着いていました。ダウンジャケットを脱ぎ、リュックからスパッツを取り出すと、あれ?左足の分しかありません。どうやら家で入れ損ねたみたいです。スパッツなしでの大砂走りは無謀なのに…。
そこでふと、あの4人組が頭に浮かびました。コンビニ袋だったら弁当を包んでいたものがリュックに入っています。富士宮口新五合目で配っていた同じサイズのゴミ袋もあります。耐久性に問題があっても、何もしないよりはマシでしょう。ということで、袋を2枚重ねにして右足に履いてスパッツ代わりにし、上部をくるぶしのところでしっかりと結びました。いざ大砂走りへ。
1歩3mの快感を味わいながら、駆け下ります。袋の底はほどなく破けましたが、結び目がほどけなかったため、靴に砂れきが入ることはありませんでした。大成功! 途中から右の方に逸れ、宝永火口を目指します。火口縁で休んでいる大学生ぐらいのグループに声をかけられました。「登山道はどこですか?」。富士宮口から火口を登ってきたそうです。
●雄大な宝永火口を堪能
ええと、ここは下山専用道。登山道ははるかあちら(東)、と指差しをして教えました。「近道に見えてもめり込むから、大砂走りは登れないよ」と念を押しておきます。宿は七合目の砂走館。「途中でたぶん日が暮れるけど、ライトは持っているね」と尋ねると、人数分あるとのこと。それなら一安心です。彼らが去年有名になった「プリンスルート」をたどっていたのを知ったのは帰宅後でした。
初めて間近で見る宝永火口のカーブは雄大そのもの。カメラの視野角にはとても収まりきれません。大砂走りから続く砂れきの道をゆっくりと下りながら、素晴らしい眺めを胸にしまい込みました。火口底から新六合目へ。登りはわずかといえども、疲れた足にはこたえます。あともう少し。
雲海荘のわきで本道と合流。しばらく歩くと、目の前にあの4人組がいるじゃありませんか。例のスパッツは目立ちます。バスの時間が気になったので、心の中で「おかげさまで大砂走りを無事降りられました」とお礼を言って抜き去りました。下りの所要時間は2時間半。約2kmも遠回りをしたのに5年前より20分も短縮されていました。
●「下山は御殿場口経由」をお勧め
17時半のバスに飛び乗って18時に水ヶ塚駐車場到着。まず我慢していたトイレに行きました。水はアクエリアスを1.5リットル消費。行動食はソイジョイ3本とカロリーメイト1箱を用意し、ソイジョイを1本だけ食べました。東名高速はいつもの大渋滞。途中のラジオで大きな地震があったことを知りました。その32時間後に駿河湾地震が起き、東名高速は土砂崩落で一部通行止めになりました。
同じようなコースで登りは1時間余計にかかり、各合目で必ず休まないと歩けなかったのにはちょっとがっかりしましたが、これは仕方ないことです。それよりも、下山時間の短さは意外でした。岩場の多い富士宮口の下りは大変なんですね。私のように下りが得意なタイプには「下山は御殿場口経由」をお勧めします。
タイムテーブル
富士宮口新五合目 0730発
新六合目 0750着 0800発
新七合目 0830着 0840発
元祖七合目 0915着 0930発
八合目 1000着 1010発
九合目 1110着 1120発
九合五勺 1145着 1155発
頂上 1230着
剣が峰 1320着
御殿場口下山口 1455発
八合目 1535通過
七合目日ノ出館 1555着 1600発
宝永火口底 1645通過
新五合目 1725着