■2010年8月10日(火) 須走口
大阪在住の49歳男「pencil」です。富士山には2005年に富士宮口から早朝出発の日帰りで登頂し、お鉢巡りもして帰りました。以後、他の登山口からも早朝出発・日帰り・お鉢巡りを基本としたプランで9回登頂し、今年は10回目になりました。普段は回数登山で地元では有名な奈良県の金剛山に登っていて、山登りには慣れていますが健脚ではなく、むしろ登る速さは遅いほうで、道を譲ることが多く、下りは苦手です。
今回の富士登山での私の課題は、仕事場の上司が他の人から5合目観光のお土産としてもらっていた金剛杖に頂上の御朱印をいただいてくることです。このため普段私が使っている登山ステッキを使わず、その金剛杖を借りて登ることになりました。4日間で3回登頂する計画をしてましたので課題のクリアは容易と思ったのですが、現実は甘くはなく、雨と台風の接近で山頂への登頂は1回だけになりました。このときのルートは、須走5合目から登り、6合目からはコノスジ中途道を通って吉田6合目に移動して山頂を目指して、下山は須走ルートです。同行者は無く単独です。なお、文章中にいくつか標高を示しましたが、私が地形図から読みとった値ですので、HPや実際の看板に書かれているものと異なる場合があります。
最も登山者が多いと言われる吉田ルートですが、関西からは、スバルラインへのアクセスは不便で、マイカー規制中のシャトルバスは始発が6時なので、早朝出発の日帰りには不向きです。日の出を待ちきれずに1度だけ夜間に登りましたが、昼間の明るいうちに登って写真を撮りたくて、しかもあまり評判の良くない吉田ルートの下山道を避けた登山プランはないかと思っていたとき、
2009年46番のK.Tさんの登山記を読んで、これだと思いました。ただ、吉田ルートの6合目までは、私の足では3時間はかかりそうなので、日の出とともに出発しても8時の到着となり、これでは始発のシャトルバスで吉田口5合目から歩いた方が早く到着しそうなのですが、下山のしやすさとその後の道程と高山病予防の効果を考えて、須走口からのルートに決めました。
初日の月曜日は前日の夜半から雨が激しく降って、朝になってもやまなかったので、軟弱な私は小富士だけ往復してその日の予定をキャンセルしました。まだ3日もあるので、天気の良い日に登ればいいと軽く考えていました。
翌8月10日火曜日の朝4時40分に須走5合目に再び到着しましたが、平日にもかかわらず駐車場は満車で、1.2km下った場所(1870m)に路上駐車しました。いつも平日に登っているので駐車場には停められたのですが、今回は初めてそれができませんでした。富士登山の車の数は増えているような気がします。出発は4時55分です。
車内で朝食を食べてから約20分間は車道を歩いて出発点の5合目(1970m)に到着しました。山頂付近だけ朝日を浴びた富士山の姿が青空をバックにして綺麗に見えていましたが、5合目は東の空の低い雲のせいで太陽はまだ見えていません。日の出を見るまで待つことも考えましたが、車道を歩いた分だけ予定をオーバーしているので、止まらずにそのまま登山道を登り始めました。
須走6合目までは私の好きな道なのですが、最初に車道を余分に20分歩いたせいか、今年は少し苦しく感じ、休憩をしたくなりましたが、山小屋以外で休憩するのはペースが速すぎる証拠で、予定時間を気にせずに歩くこととし、ペースを少し落として5合目からは75分で6合目の長田山荘(2420m)に着きました。
駐車場所から95分間歩き続けましたが、休憩は5分と決めているので、焼印を押してもらい、長田山荘のご主人とコノスジ中途道について少し話した後に出発しました。コノスジ中途道は登山道に入る場所のすぐ右側にあり、登山道とブル道の間の細い踏み跡を進みます。踏み跡はしっかりとしていて、濃霧や夜間でなければ迷う危険は少ないと思います。最初はやや下り気味で、25分ほど歩くと最初の難所の岩場が現れます。溶岩でできた岩は濡れていて滑りやすそうだったので慎重に足場を選んで横切ります。その7分後には下る道との分岐に到着し、道標があります。下る道の行き先が「須走砂払5合目へ」となっていて、少し興味を持ちましたが先へ進みます。さらに3分で次の難所の沢に到着しますが、ここは溶岩が少な目なので先ほどよりも横切りやすかったです。
ここを通過するとそれまでの樹林帯を抜けて視界が開けますが、いつの間にか雨になっていて霧のために景色がよく見えません。最初は霧雨かと思いましたが、少し雨が強いようなのでここでレインウエアを装着して吉田ルート6合目を目指します。ここからは何度か樹林帯を横切りながら基本的には砂礫の道を少しずつ登っていきます。25分ほどで最後の岩場を横切りますと、すぐ左上方に吉田ルートを下山する人が見えるようになり、さらに15分ほどで多くの下山者でにぎわう吉田ルート6合目の安全指導センターの横(2400m)に出ました。コノスジ中途道を歩いたのは、途中でレインウエアを着る時間も含めて1時間23分で、吉田ルート6合目付近の到着時刻は午前8時3分でした。
数分の休憩の後、ベンチのある7合目を目指してゆっくりと登り始めますが、天気が良くなる気配はありません。雨になったのは北側にまわったせいで、上に行けば良くなるかもという期待はもろくも崩れました。シェルターで囲まれた人工的なジグザグ道を約50分で登り切ると7合目の花小屋 (2700m)に到着しました。ここからは私の嫌いな岩登りが始まります。雨で岩が濡れているので余計に鬱陶しいのですが、須走から登り始めた私は8合目まで登らないと下山もできないので、黙々と登ります。いくつかの山小屋と岩登りを交互に繰り返して東洋館(2900m)には午前9時58分に到着しました。花小屋からはちょうど1時間です。須走と吉田の両方の焼印を押してもらうはずでしたが、雨のために吉田の焼印はどこも押してもらえませんでした。
この先は山小屋がしばらく無く、岩場の登りが続いて少しうんざりで、このコースの日帰りプランでは精神的に一番辛い所かもしれません。38分後に太子館(3040m)、その18分後に蓬莱館(3080m)を通過し、蓬莱館から上は再び砂地の道になって少しほっとするが、雨は容赦なく降り続き、この頃には山頂に行く気がだんだん無くなって、8合目まで登って須走の下山道を降りる決心をし始めてました。まだ2日の予定があるので、無理する必要はなかったのです。そういえば6合目付近では前後に多くの人が居て、みな山頂に向かっていたようですが、登るに連れて少なくなってます。先に登ってしまい、登る人の少ない時間帯になったのか、悪天候であきらめて下山したのでしょうか?
8合目までと決めてしまえば、1時間後くらいには下山できるだろうと思われ、そう思うと雨もそれほど気にならなくなるから不思議なものです。砂地のつづら折れの道をトボトボと歩いて登り、34分後には白雲荘(3200m)、その11分後には元祖室(3250m)を相次いで通過し、そのときまでの目標地点だった富士山ホテル(3350m)にはさらに33分後の12時11分に到着しました。ここのすぐ上で須走ルートの登山道が合流していることは前回の登山で知っていたので、最悪、その登山道を下れば須走口には戻れます。ただ、登山道を逆行するのはできれば避けたかったので、正しい下山道を見つけることにしました。しかもこのときには雨がさらに強くなって豪雨のようになり、下山を促しているように思えました。
しかし、富士山ホテルの建物を回り込んで、8合トモエ館と江戸屋の間の場所に来ても下山道が見つかりません。この場所は須走の下山のときに立ち寄った場所で、下山道と繋がっているはずですが、下山道への道がわかりません。仕方がないので階段になっている登山道を少し登ると、左側にブル道があり、そのすぐ先にたくさんの下山者が下っているのが見えました。喜んでそこまで行きましたが、そのときは、その下山道が吉田ルートのものなのか、須走・吉田の共用のものなのかが判断できませんでした。下山道の分岐は下江戸屋であることは知っていたはずですが、なぜかそのことが頭に浮かばず、吉田ルートを下ることだけは避けたかったので、たまたま下りてきた下山者に、須走と吉田の分岐点の標識を見たかどうかを尋ねたら、少し上の方にあったと思うという返答でした。
そう言われると上に行くしか仕方がないのですが、数分登れば、この先が御来光館で、下山道の分岐は下にあることははっきりと判りました。つまり、先ほどの下山者の返答は誤認だと判りましたが、たとえわずかでも登山道を逆行して下るのは悔しかったので、半ばやけくそで頂上をめざす決心をしました。悪天候の時に無理は禁物ですが、このとき山頂を目指したのにはそれなりの理由があります。それは、雨は降っていたが、雷は無く風も弱かったこと。ちゃんとしたレインウエアを着ていましたが、袖から浸みたり汗などで服は濡れていても、リュックには乾いた下着とタオルがあり、防寒用の上着も乾いた状態で持っていたことです。私は汗かきなので、晴れていてもリュックの中は汗で濡れてしまいます。そのため全ての持ち物は水を通さない袋に入れてからリュックに詰めます。おかげでザックカバーをしなくても雨で持ち物が濡れることはありません。いくつかの偶然が重なった結果ですが、とにかく山頂を目指すことになりました。
こうなると不思議なもので、あれほど激しかった雨も小やみに変わり、下がると思われた気温もほど良い感じで、山頂を目指す条件としては悪くはありません。もともとお鉢巡りを含めた時間設定だったので、それをやめれば下山時間にも余裕がありました。34分後に御来光館(3450m)、その41分後に9合目の鳥居(3600m)を通過し、山頂の鳥居(3710m)をくぐったのは37分後の14時3分でした。登りの合計時間は駐車場所から9時間8分、須走5合目からは8時間48分、吉田6合目からはちょうど6時間になりました。
9合目を過ぎてしばらく登るとかなり急な岩場になりますが、前回の時も気になりましたが、この急な岩場を下ってくる人が結構居ます。山頂近くになったときには下ってくる人に下りやすい下山道があることを伝えましたが、最初の人はそのまま下っていきました。ただ、最後の角付近と鳥居の直下で会った人は、戻る距離が少ないせいなのか、登り直して下山道へ向かったようです。みなさん下山道のことは知らなかったようで、登山道の終点に下山道の案内の標識が欲しいと感じました。
山頂に着くと、雨もやんで、薄日も差してきました。まずは久須志神社に飛び込んで御朱印をいただきました。焼印を断られ続けたので、押してもらえるか少し不安でしたが問題ないようです。途中でリタイアを決めていたので、この瞬間は本当に嬉しかったです。無事に課題もこなして昼食を食べ終えて下山しようと思った頃には青空が見え始め、火口も見えました。こんな雨の日に火口が見えるなんて思ってもいませんでしたので、下山を後回しにして火口の縁に行ってしばらく景色を堪能しました。去年と同様に剣が峰付近の残雪も多く、火口周りの見慣れた景色を今年も見られたことに感謝し、日本最高点が少し心残りでしたが、8合目で下山するつもりだったのに山頂まで行けて満足していましたし、お鉢巡りの時間はないので下山することにしました。下山開始は14時50分でした。このときには翌日もこの場所に戻ることを考えていました。
下山を始めると先ほどまでの青空が一変して霧になり、小雨も降るようになりました。8合目で下山し損なった場所も確認して、吉田ルートと須走ルートとの分岐点が近くなりました。えらい早くに分岐の看板が有ると思ったら、それは100m先に分岐という予告看板でした。その50m先にも予告看板がありましたが、本気で分岐間違いを防ぎたいのであれば、例えば分岐通過直後の須走ルート側に「スバルラインは戻れ」のような標識を置いたほうが効果的ではないかなどと思ったりもしました。実際に分岐を過ぎた直後には、須走口5合目と書かれた標識はいくつもあるのですが、何か印象に残らないと言うか、間違う人はどのようにしても防げないのだからこんなものかと思いながら下山しました。
下山から75分で7合目の大陽館に到着し、少しの休憩の後に砂走りに向かいました。砂走りの突入口はえぐれた状態で下りにくい場所になっていて、岩場を下る感じで慎重に下らなければなりませんでした。砂地になってからも石が多くてときどき足を取られました。この道は下りやすかったはずなのにと思いながら、2年前に大砂走りを2度下山したときのことと比較していました。距離が長くはなりますが、下山は大砂走りが一番楽だと感じました。
砂走りの中間付近の樹林帯の少し前に、砂払5合目まであと20分の案内がありましたが、これはここの下山者には愚痴のネタにされていました。私は樹林帯の手前で有れば40分近くかかることは経験済みでしたが、この案内を信じた人たちは20分以上経過したのに休憩所らしき場所が見えないことを不満げに言ってました。それでも標識から30分経過した17時18分には砂払5合目に着きましたが、この時間の吉野屋は無人状態でした。
5分ほど休憩した後に下山を再開しましたが、このあとの下山道は歩きやすかった印象があったのですが、3年の間の浸食のせいなのか、段差がきつくなって下りにくい場所がいくつもありました。この日は登りで9時間以上も歩いたせいで、足はかなり疲労していて、足が攣っていました。砂走りで1回、5合目の直前で1回、足に力が入らずに転倒してしまいましたが、幸い下山には問題がありませんでした。しかし須走ルートは下山が比較的楽という私が持っていた印象は少し変わってしまいました。
5合目に帰ってきたのは18時ちょうどで、下山の合計時間は休憩も含めて3時間10分でした。足が攣って転倒を2回したわりには時間は普通でしたが、まだ駐車場所まで1.2km下らなければなりません。下る方が駐車場までの登り返しよりましかなと思いながらも、これが結構長く単調な歩きでした。下山の後半は天気が少し良くなって、景色も少し見えていましたが、5合目に着いた頃からまた雨になり、駐車場所に着いたのは18時25分で、合計13時間半の行程は終了しました。
汗かきで水分を多く必要する私は、こんな天気でも水分は2.5L消費しました。13時間以上かかっていますので、これでも少ないほうです。持って上がったのは2Lで、山頂で500mL1本購入しました。以前は必要な水は持って上がる主義でしたが、荷物が重くなってさらに多く必要になるので、無理をせず、片道分だけを持つようにしています。
朝にはびっしり詰まっていた路上駐車の車も、私が帰る時間にはぽつぽつという感じで、9割以上は残っていませんでした。上の駐車場もこの時間には十数台分の空きがありましたが、ふじあざみラインを下っている途中ですれ違う登りの車も多かったので、翌日の朝にはこの日と同じように路上駐車がたくさんできるような気がしました。
足が攣ってしまったことで、翌日の山頂はあきらめて、御殿場5合目から幕岩を経由して双子山を登るハイキングコースを歩きました。双子山の高い方にも登りましたが、ここは富士登山を思わせるような急坂で、約30分ほど黙々と登りましたが、前日の疲れはそれほど残っていませんでした。前半は良い天気でしたが、幕岩を通過してからは雨になり、双子山を登っているときには南西の強風が吹いていました。この日は午前中の天気は前日より良かったのですが、風が強いので午後からの登頂は難しかったかもしれません。最終の4日目は、台風の接近で危険なので前日に予定をキャンセルして4日目を迎えることなく大阪に帰りました。
まとめ
コノスジ中途道は想像していた以上にわかりやすく歩きやすい道でしたが、岩場を横切る所があったり砂礫の所では踏み跡が判りにくかったりするので、夜間や視界の悪いときは通らない方がよいでしょう。一般的な道ではないので、山歩きに不慣れな人にはお勧めできません。ということは、スバルラインに下りる人が間違えて須走に下りて、元の吉田6合目に戻るという目的には使わない方がよいでしょう。疲れた足で通るには不向きな道のようです。
ROUTE5というサイトには
平成御中道という名前で写真付きで詳しい紹介があります。
(駐車場情報)
4日間富士山の5合目に行きましたので、駐車場情報もリポートします。
8月8日の日曜日は午後6時頃に須走5合目に入りました。この日の正午まではマイカー規制
でしたので、駐車場は空いていると思ったのですが、私が駐車場に入れた最後の車だったようで
それ以降の車は5合目でUターンを指示されて路上駐車でした。翌日のお昼に下山したときには
私が翌日に駐車した1.2km下付近まで車が残っていました。
8月9日の月曜日の午後2時頃、御殿場5合目に行きましたが、上の駐車場に2〜3割車がある
だけでした。
8月11日の水曜日にも御殿場5合目に行きましたが、登山前の午前10時頃と下山した午後3時
頃はともに上の駐車場に8割近く車がありました。第2駐車場には1台だけ車がありました。
下山時の方が少なかったですが、半分以上埋まっていました。観光で来る人も多いようで、
大石茶屋まで軽装で歩く人を多く見ました。
(国道138号線の渋滞回避)
御殿場駅・御殿場ICから、須走・スバルライン方向へ行くための
国道138号線は、東富士五湖道路の無料化の影響なのか、今年は渋滞が激しいようです。
日曜日の夕方に御殿場ICから須走5合目に向かうときは「ぐみ沢」の交差点から進んだせいで、
「ぐみ沢上」の国道138号線との合流地点までは車がほとんど動かない状態でした。合流してから
もノロノロと進み、ふじあざみラインに入るまでは40分ほどかかりました。翌朝の早朝に同じ場所
を進んだときは10分でした。
逆方向も混雑していて、月曜日に下山したときは、平日のお昼頃でしたが、東富士五湖道路から
渋滞が続いていました。御殿場駅から須走5合目に行くバスも途中までこの道を通るはずです
ので、運行スケジュールに影響が出ていると思います。火曜日の午後7時頃に下山したときは、
前日ほど混雑はなく、須走での合流はスムーズでしたし、車が多くても流れはスムーズでした。
車で行かれる場合は、「萩原北」、「ぐみ沢」の交差点から須走方面に向かうのではなく、
一つ南側の「ぐみ沢丸太」の交差点から御殿場5合目方向に向かって進み、自衛隊の滝ヶ原
駐屯地の手前の交差点で、「山中湖方面」の案内に従って右折し、「水土野」の交差点で
138号線に合流すれば渋滞の影響をかなり減らせると思います。