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 みんなの登山記2013−7
 投稿者:たくさん

■2013年8月6日(火)〜7日(水) 富士宮口

埼玉から富士山まで走ってっちゃった話

 うちのかみさん(以下ぐれポン)とぼくの共通の趣味は「旅ラン(ジャーニーラン)」である。暇を見つけては自宅から関東周辺のどこかに行き、10〜20q程度のランニングをしたあと温泉に入り(なければ風呂屋に行き)、地元のおいしいものを食べる。んでその次の回はさらにそこから続きを走る、ということを延々と繰り返してきた。
 そうして「自宅(埼玉県三郷市)→江戸川土手→葛西臨海公園→お台場→レインボーブリッジ→しながわ水族館→羽田空港→川崎→山下公園→港の見える丘公園→三溪園→磯子→八景島→横須賀→観音崎→三浦海岸→城ケ島→三崎口→葉山→鎌倉→江の島→茅ヶ崎→大磯→小田原→真鶴半島→湯河原→熱海→伊東→熱川→稲取→下田→弓ヶ浜→石廊崎→妻良→雲見温泉→松崎→堂ヶ島→宇久須→土肥→戸田→大瀬崎→淡島→沼津→千本松原→」と地道に走り続けた結果、田子の浦に到着したのが2010年3月28日だった。
 そこからさらに西に向かい三保の松原から浜松、名古屋を目指す案もあったが、そっち方面に行ってしまうと最終的にどこをゴールにしたらいいのか決められないこと(日本1周するつもりは今のところありません)、右手に魅力的なでっかい富士山があったことから、海岸線に別れを告げ富士山に向かって登り始めることにした。


1日目:2010年3月29日…田子の浦→富士宮駅、13.2q
(ということで僕たちの富士登山記録は2010年3月29日に始まります)

 10時32分に吉原の駅を出発。ぐれポンが走り始めるとどういうわけか降っている雨はやみ、曇っている空は晴れてくる。この日は荒れる天気予報であったが、走り始めるあたりから晴れてきた。国道139号線をひたすら登って行く。伊豆半島では登れば下るという基本原則があったが、こっから先は登りしかない。分かってはいるがやっぱりしんどい。しかし富士山は頂が近くなるにつれ傾斜がきつくなっていきあの美しいフォルムを描くのだ。ここはまだまだ序の口である。12時8分。に富士宮駅に到着。着くと同時に雨が降ってきて、吉原駅に戻った時には土砂降りの雨。沼津の回転寿司屋で昼飯を食い、東名高速に乗った頃から吹雪になった。


2日目:2012年4月29日…富士宮駅→篠坂交差点、10.9q

 東京駅で買った「利休」の牛タン弁当がおいしかった。ヒモを引っ張ると数分でホカホカになるタイプの弁当。うまいテイルスープも付いてた。さて、この日もよく晴れた。13時半に富士宮駅を出発、富士山本宮浅間大社でしばし記念撮影。湧玉池交差点からまっすぐにのびる上り坂を見ていやでも気合が入る。知る人ぞ知るドラえもんのオブジェを左手に見つつ、徐々にきつくなる勾配にうんざりしながらひたすら登ってゆく。1時間20分で目的の篠坂交差点。ここで左折して天母の湯に行きさっぱりした。 天母の湯から富士宮にはタクシーで移動したが、運転手さんのお好みの富士宮焼きそば屋をたずねたら富士宮駅前の「すぎやま」を紹介された。お好み焼きと富士宮焼きそばを注文した。うまいよ。


3日目:2012年5月5日…水ヶ塚駐車場→富士宮口5合目、15.3q
(登る順序が翌日と逆転していますが、天候等の関係でその程度は妥協しています)

 この日もよく晴れた。自宅から西は富士山、東は筑波山がよく見えた。今回は1泊旅行なので富士宮駅前の富士急ホテルに泊まる予定。2日かけて篠坂交差点から富士宮口五合目を目指す計画である。今回の計画の大きな問題はこの時期本数の少ない路線バスでは時間が有効に使えないこと。バスにタッチの差で乗り遅れたばかりに2時間も待たなくてはならないという状況をできるかぎり避けたいのだが、どのぐらいのペースで登れるかまったく予想がつかないので、さてどうしましょ、となった。苦肉の策で2台レンタカーを借り、まず2台でゴール地点に行き、そこに1台を残してスタート地点に移動する、という必殺技にでた。また、天気予報は1日目は晴れだが2日目は雲行きがよくない。せっかくなら五合目のよい景色を堪能したいので登る順序を入れ替えて、1日目が水ヶ塚駐車場から五合目まで、篠坂交差点から水ヶ塚は翌日に登ることにした。
 水ヶ塚駐車場を10時55分に出発、11時10分に旧料金所を通過、ここから地獄の登坂である。一生懸命登る、登る。事前に航空写真(Google Earth)でつづら折りの全体像を頭に入れていたので、今どのあたりなのかが把握できていたぼくは、あとどのくらい頑張ればいいかが分かっていたので辛いなりにも頑張れたが、そういう情報が頭に入らないぐれポンは延々と続く登り坂に機嫌が悪かった。残り3qをきってあと2つの長〜いつづら折りを残した時点で昼食にした。天気よく、愛鷹山からその向こうの伊豆半島がよく見える
 残り2q、たった2回のつづら折りが本当に長い。ようやく五合目に到達したのは13時52分。3時間近くかかった。いずれ富士登山競走に出場できたらいいなとも思っているんだけど(ぐれポンはかなり嫌がっている)、ちょっと無理そうかね。五合目レストハウスの食堂で山菜そばを喰らい、いつか登るであろうさらなる高みを睨んだあと置いといたレンタカーで下山。
 晩めしは虹屋ミミの富士宮焼きそば+スーパーで買った寿司。疲れはてて酒もそこそこに寝た。


4日目:2012年5月6日…篠坂交差点→水ヶ塚交差点、18.4q

 朝はそれほど天気は悪くはなかったが、富士山を見ると変な笠雲がかかっていて天気悪くなりそうだな〜と予感させる空模様。天母の湯に車を停めて(ちなみに昨日水ヶ塚に置いといた車はそのまま置きっぱ)。7時21分に天母の湯出発、篠坂交差点通過は7時37分。毒キノコに注意しながらひたすら登ります。ぐれポンは昨日の疲れもあるのかかなりゴキゲン斜めなので西臼塚駐車場でちょっと長めの休憩(といっても5分ぐらいだけど)。 道中桜が咲いていて、どんな種類の桜かは分からないのだが、高度が高くなると関東(東海か)でもこんな時期に咲く桜があるんだな〜っと興味深かった。旧料金所にたどり着いたのが10時19分、水ヶ塚駐車場には10時42分ごろ到着したかな。レストハウスでキノコそばを食べ、置いといたレンタカーで下山。天母の湯でさっぱりし、富士宮に移動。走り終わったことを確認したかのように雨が降ってきた。富士宮市内で昼飯喰って帰宅。



5日目:2013年8月6日…富士宮口五合目〜七合目(御来光山荘)
(さていよいよ富士山頂を目指します。足かけ4年の計画でした。
ここからがいわゆる「私の富士登山記」になります)

 富士宮口五合目までは新富士の駅から富士急バスで移動。「みんなの登山記2013−3」のふじ子さんの記載にもあるが富士急バスの運転手さんは気さくで面白い。途中富士山本宮浅間大社で休憩したりしつつ登っていくのだが、天候のことや携帯電話のバッテリーが切れやすいことなどいろいろ道中アナウンスしてくれた。しかも外国人登山者には英語で対応していたよ。

 五合目レストハウスの食堂にてやっぱり山菜そばを食べたりしつつ過ごしていたところ、小学生の男の子が青白い顔して父親に連れられて下山してきた。食堂のおばちゃんと父親との会話を聞くともなしに聞いていると、皆で登山していったものの高山病のため男の子の具合が悪くなり途中で下山してきたとのこと。他の元気な人たちは上の山小屋で1泊して登頂して明日降りてくるのだが、この親子は仕方がないので富士宮市内で1泊し明日合流するらしい。男の子はひっきりなしにゲーゲー吐いていてかわいそうだった。きっと富士山はつらい思い出としてインプットされるのであろう。そんな富士山もかわいそう。大きくなったらリベンジしろよ。

 明日はわが身だ。以前3000mぐらいの山の山頂(ハワイ、マウイ島のハレアカラ山、この山は山頂まで車で行かれる)で調子に乗って走りまわったりしたときに軽い頭痛を覚えた記憶が自分にもあり、高山病は懸念事項の最たるものであったため、高地順応のため予定通りきっかり2時間食堂で過ごし15時半に登山開始した。

 残念ながら登ろうと準備を始めたあたりから雨がポツポツと降り始め、歩き始めたころには結構しっかりとした雨足になっていた。レインウェアを着て登ったが、蒸し暑いレインウェアの中でたっぷりと汗をかきあっという間に全身ずぶぬれ。レインウェア意味ない。まあ保温効果があるか。

 ところで、五合目から六合目までの間変わった二人連れと一緒だった。一人はTシャツにジーンズ、スニーカーを履いたアジア系の若い男、もう一人は一眼レフカメラを持ちYシャツに革靴の30歳ぐらいの男、ともにビニール傘をさしていてどう見ても富士山に登るといういでたちではない。ところどころで立ち止まり、Yシャツ男がアジア男の写真を撮っている。とても気になっていたら向こうから話しかけてきた。Yシャツ男は都内のタクシー運転手で、渋谷にてアジア男を乗せたらしい。アジア男は実はカザフスタンからの旅行者で、はじめは浅草に行きたいなどと言っていたらしいが、そのうち富士山に行きたいと言い出し、都内から乗せてきたとのこと。その勢いで運転手ともども雨の富士山に登ることになったそうな。カメラはカザフ君の持ち物なのだろう。晴れていればよかったのにね。にしても彼はこのあとまたタクシーで都内に戻ったのだろうか?日本語はカタコト以下だし、当然土地勘もないだろうから電車に乗って帰るなんてできそうもない。

 2400m以上の高地になるとさすがに空気を吸っても吸い足りない感じがつねにあった。富士登山のコツを記した本にあるとおり、口をすぼめて努めて大きくゆっくり呼吸すると楽な感じがした。この時点では自分よりもぐれポンの方がずっと元気だった。五合目から六合目まではぐれポンが前、自分が後で登っていたが、それでは自分の方が遅れてしまうのでその後はぐれポンに後を歩いてもらった。

 今夜泊めてもらう七合目の御来光山荘には意外に早く到着した。平日だったので空いていたが混雑時には布団2枚分のスペースに4人寝るらしい。ぬれた体を拭いてさっぱりした。初めての山小屋でとても楽しかった。水があまりないとか狭いとか自分たちのスペースが他人から丸見えであるとかいろいろあるが、そういった不便そのものも楽しんだ。失敗したのは有料トイレで、宿泊者は鍵を開けて入れるので無料ということに気づかず(確かにそんな説明はあったような気がしたので宿側の説明不足ではない)3回ほど100円玉を寄付してしまったことだ。

 夕食(ご多分に漏れずカレーライス)後軽く一杯やっているとさっきまでの天候がうそのように晴れてきて小さな虹もかかった。さらに影富士も見ることができた。夜になると御殿場から沼津、富士宮の夜景がきれいで、山小屋の人もこんなによく見えることは珍しいと言っていた。


6日目:2013年8月7日…七合目〜山頂〜須走口五合目

 翌朝は日の出前に起床した。5時少し前に太陽が富士山の斜面から昇り御来光を堪能したばかりでなく、昨日と逆側に影富士も見ることができた。さて本日の天候は前夜よりさらに晴れ、雲ひとつない快晴になった。伊豆半島から沼津市街、千本松原、田子の浦、富士宮市街、富士川、三保の松原まで見渡すことができた。特に西伊豆から沼津、駿河湾沿い、田子の浦、富士宮はこれまで長年かけてぐれポンと二人で少しずつ走り継いで来た思い出のランニングコースである。どこの風景もまるで昨日のことのように鮮明に思い出せる。そんな景色が一望のもとに見えたのは本当に感激だった。「あのあたりに淡島があるはずだよ」とか「あれが富士川河口でその向こうに三保の松原が見えるね」とか一所懸命説明するものの、ぐれポンはいつもどおり「ふ〜ん」て感じだった。

 この日も登山開始当初はぐれポンの方が元気だったが、登坂と適度な休憩のタイミングがつかめてきたら徐々に元気になってきた。「あと3回つづら折を登ったら2分休憩」みたいな感じ。また富士宮ルートは登山/下山路が一緒だから当然すれ違いが発生する。通常は登り優先でゆずるのが原則なのだろうが、ここではほとんどの場合登山者側が下山者に先をゆずっている。この適度な休憩も実によいのである。「ど〜ぞど〜ぞ、ぜひお先に♪」という感じ。

 登れば登るほど景色もよくなり、特に九合目を越えると断然眺めがよくなった。しかしその分傾斜も急になっていき、両手で岩をつかみながら這い登るような局面もでてきた。登り始めて3時間15分、とうとう富士宮口頂上に到着。昨日の分と合わせても五合目から山頂までに要した時間は4時間と少し。オーバーペースは慎むように気をつけながらこの時間だったのでぐれポンも自分も予想していたより健脚であった。

 時計周りにお鉢めぐりを開始。剣が峰でお約束の記念撮影。しかし感動したのはその先であった。とにかく雲ひとつない晴れなので北麓東麓の景色をこれでもかというくらいに堪能できた。まず見えてきたのは本栖湖から南アルプス方面、さらに中央アルプスであろ う山々も彼方に見えた。さらに歩くと西湖、河口湖が見え久須志神社あたりからは山中湖も見えた。これら富士五湖は今後走破する予定のコースに設定している。予定では次回須走口五合目から富士霊園(祖父母、父の墓がある)まで走り、さらに三国峠越えで山中湖、忍野八海、富士急ハイランド(園内もランニングコースに設定)、河口湖、西湖、精進湖、本栖湖と順番に走り、さらに峠を越えて富士川沿いに出て南アルプス市、甲府、石和温泉を走り、そこから北上して雁坂峠を越えて秩父へ抜けるつもりでいる。昨日はこれまで走ってきた思い出のコースを一望し、今日はこれから走るであろうコースを一望、なんてすばらしい富士登山になったことでしょう。ぐれポンはやはり「ふ〜ん」という感じだった。

 吉田口頂上で豚汁とおでんを食べ休憩。箱根方面に目をやると芦ノ湖まで見えた。山頂の売店のお兄さんがこんなに晴れてしかも風がないのはすごくラッキーなことだと教えてくれた。現在10時40分。須走口五合目から御殿場行きのバスの時刻を見ると13時20分のものがあり、がんばって下山すれば間に合うか。砂走りに備えてスパッツを装着し10時45分に下山開始。

 ぐれポンは登りよりも下りのほうがつらそうだった。自分はブル道も砂走りもとても楽しかったが、砂走りの砂礫の下にたまに隠れている岩に乗り上げるとずっこけて転びそうになるのは怖かった。こんなところで転んで骨でも折ったら台無しである。バスの時間に間に合うことがわかったので後半はゆっくり降りた。時々山頂を見上げると苦労して登った頂が徐々に遠くなり、周囲の山よりも自分達の高度の方が低くなってきてちょびっと切なかった。それにしても砂払い五合目吉野屋の遠かったこと。下山はぜんぜん休憩所がないんだもん。ところで昼ごろから徐々に雲が多くなり、おそらく南側の富士宮ルートはおそらくかなりの曇天かもしくは雨になったのではないかと思う。山小屋の人も言っていたが午前に晴れていても午後から荒れることは珍しくないそうな。

 須走口五合目に到着したのは12時50分ぐらい。ここで少しショックなことがあった。自分達が乗るつもりでいた13時20分発のバスは実は週末のみの運行で、今日は水曜日。次のバスまでは2時間も待たなくてはならない。しかも新富士駅で購入したバスのチケットは復路も込みのもの。早く風呂に入りたいしお腹もすくので仕方なくタクシー利用。このときのタクシーの運転手さんに渋谷からタクシーで来たカザフ君の話をしたところ、御殿場→渋谷のタクシー運賃は3万円ぐらいとのこと。渋谷→富士宮口五合目まではもう少しするだろうが10万円とかではないと知ってすこしおどろいた。

 御殿場の入浴施設でゆっくりと風呂に入りさっぱりした後は御殿場駅前の食い物屋を物色、「妙見」という和食屋がおいしそうだったのでここに入ったら大当たり。鮎の塩焼きもてんぷらも寿司もおいしかった。鱒の押し寿司と鮎の押し寿司は明日の昼食用に購入し持ち帰った。


 とうとうやり遂げた!!初めて富士山を旅ラン企画に組み込んでから3年4か月の歳月が流れていた。天気のよい冬には職場から富士山がよく見えるのだが、今後は富士山を見るたびに今回の登山のことを思い出すのだろう。
 実はぼくとぐれポンの旅ランコースは「多摩川溯上→奥多摩湖→大菩薩ライン経由で甲府に抜けるコース」やら「房総半島海沿い→茨城東海岸沿いコース」やら他にもいろいろ同時進行で走っている。しかしその中でも「自宅→江戸川南下→東京湾→三浦半島→湘南→伊豆半島→沼津沿岸→富士宮→富士山→…」と走ってきた今回のコースはもっとも早くからはじめた(10年以上になるだろう)走路である。最終的には「秩父→長瀞→秩父鉄道沿線→羽生→利根川→江戸川→自宅」となるが、すでに長瀞から自宅までは走ってしまっているので事実上のゴールは長瀞である。いつの日になるかはわからないが必ずやりとげるだろう!と決意も新たにするわけだがぐれポンは「うんわかった」てな反応。


(管理人)
富士登山に至るまでの過程が興味深いです。富士宮口へ2台のレンタカーを利用するのは「ジャーニーラン」ならではの必殺技。ゆっくり登って4時間は、日頃のランニングの成果ですね。



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(13/8/25)