登山の個人差
各登山道の説明にはそれぞれ所要時間を記載していますが、これはあくまで、ガイドブックなどの標準的な時間です。ただ、この標準的というのがくせものです。というのは、登山のガイドブックを編集している人は当然、登山のエキスパートの人が多いからです。その人たちにとっては標準的でも、一般的な人にとってはちょっときびしい時間設定になっているようです。
私の場合は、だいたい標準時間より3割程度は時間がよけいにかかります。また、急斜面ほど標準よりさらに遅くなります。だから、富士宮口の九合目以上では、けっこう時間がかかります。九合五勺から頂上までは、「あと30分」という看板がありますが、私は45分かかります。河口湖口でも八合目以上になると、ペースが落ちてしまいます。富士山の登山道は整備されていますから、たいていの人が、自分のペースで登ることができれば、登頂はさほど困難なことではありません。しかし、少しでも速いペースを求められると、ただちにその反動が出て苦しくなります。
グループ登山では、どうしても一番遅い人を基準に登らざるをえません。無理をさせると、高山病になって、ますます遅くなってしまいます。しかし、バスツアーの場合はそういうわけにはいきません。そんなことをしていたら、いつまでたっても頂上へたどり着けません。そこで、登山ガイドは、あらかじめ決めておいたペースで、参加者を誘導せざるをえなくなります。その結果、途中で脱落していく人が出てしまいます。私は、夜間登山の時に、よくバスツアーの人たちと一緒に歩くことがありますが、総じて、私のペースよりやや速いのです。だから、どんどん抜いていってもらっています。そのペースだと、ご年輩の方々には、ちょっときびしいのではないかと思います。
高齢者の場合
高齢者が気をつけなければならないのは、オーバーペースによって心不全を発症することです。特にバスツアーなどでは若い参加者たちと一緒に登ることになりますが、彼らのペースに無理してついていこうとするのは危険なことです。苦しくなったら無理をせずにリタイアしてください。できれば、自分のペースでの登山をサポートしてくれる方と登るのが良いと思います。もちろん、別に高齢者でなくても、年輩者だろうと若年者であろうと、無理なペースは禁物です。
富士山自然ハンドブック(自由国民社)によると、1987年に101才の男性が登頂に成功していますが、スケジュールは、七合目、八合五勺、頂上で、それぞれ一泊されています。途中は馬を使ったり、おぶってもらったりしたそうです。つまりこれほどご高齢でも、「自分のペース」に合った登り方をすれば、登頂の可能性はぐっと高くなるわけです。
富士宮口山頂の奥宮では、数え年が70歳以上の登頂者に記念品がいただけるそうです。
子供連れの場合
子供と登る予定の方は、
リンク集(子供と登山)を参考にしてください。また、
みんなの登山記02-14も役に立つと思います。予想外に時間がかかることがありますから、親御さんはたとえ日帰りの予定でも小さな懐中電灯を持参しておくと安心です。
元気な人の場合
もちろん、自分のペースでどんどん登っていけばいいのです。ただし、初めての富士登山の場合は、体力に自信があっても、最初は意識的にゆっくり登るのが賢明です。最初の一時間をゆっくり登ることが登頂への秘訣なのだそうです。
中には走って登る方々もいます。富士吉田市役所から山頂までの高低差約3000mを一気に駆け上がる「富士登山競走」が毎年7月第4金曜日に行われています。先頭ランナーは約2時間半でゴールしてしまうとか。五合目からではなく麓からですよ。ただただ驚きです。富士登山にはものすごい個人差があるということですね。
所要時間について
標識に「山頂まであと30分」と書いてあったのに、実際はもっと時間がかかったと、お怒りになる方がけっこうおられます。その気持ちはよくわかります。ただ、そういう所要時間というのは「普通に元気な人なら可能」という意味で、足を痛めているとか疲労困憊であるといった場合は、当然のことながらそれよりも時間がかかるわけです。特に山頂付近では個人差が大きいです。
最近、よくメールでいただくのは、『須走口下山道の最後の樹林帯に入る前に、お店の人が「あと2キロ30分」と言っていたがそれでは無理だ』というものです。確かに私もその時間ではゴールインできませんが、元気な人なら可能なことも確かです。そういう標識や店の人の説明に関しては「元気な人なら」という前提で解釈してください。そうしないとプリプリむかつくことが多くなります。特に須走口はそれまで砂走りで快調に下山していたのに、急に木の根っこなどが多くて歩きにくくなるので、なんじゃこれ~、という感じでプリプリしたくなってしまいますね。