須走ルート
標識の色は赤です。
- 五合目の標高
- 2000m
- 良いところ
- 人が少ないのでゆっくり登れる。(ただし八合目まで)
- 樹林帯があるので自然を楽しめる。
- 下山路に砂走りがあるので下りやすい。
- 難点
- 五合目が少し低い。(標高・約2000m)
- 八合目からは混んでいる。
- 歩行距離
- 14.0km (登り:7.8km 下り:6.2km)
- 所要時間
- 登り:6時間(休憩時間含まず)
- 下り:3時間(休憩時間含まず)
- もちろん個人差はものすごくあります。
- (登りは半分で行く人もいれば、2倍以上かかる人もいます)
須走(すばしり)ルート五合目へ至る、ふじあざみラインを車で登っていくと、やがて視界が開け、富士山の全容が展望できます。五合目の標高は約2000m。富士宮口五合目より約400m低いです。
五合目には二軒の山小屋があります。手前の山荘・菊屋には、皇太子殿下がここでご休憩された時の写真が飾られています。奥の東富士山荘の御主人はきのこに詳しく、食事のメニューにもきのこを使った物が用意されています。
売店の人の「いってらっしゃい」の声に送られていよいよ登山開始。古御岳神社(こみたけじんじゃ)で登山の安全を祈願したあと、しばらく森の中を登っていきます。
しばらく登っていくと登山道と下山道が交差している場所があります。まちがって下山道へ進まないようにして下さい。標識はたくさん立っていますが、夜間は見落としやすいので要注意です。
15分ぐらいで樹林帯を抜け、視界が開ける場所に来ます。そこからは灌木(低い木)の中を歩いて行きます。登山道は空いていてとても静か。おちついて登ることができます(その分、夜は単独で登るのはちょっと心細い感じがします)。このあたりの登山道は分岐するような道はありませんし、小さな道標がけっこうたくさん立っているので、それに注意していれば迷う心配はまずありません。
標準的な脚力なら1時間半ぐらいで、六合目・長田山荘にたどり着きます。標高は2420m。つまり富士宮口五合目とほぼ同じ。「富士宮口なら自動車でこの高さまで登って来られるのか…」と思うと、ちょっと複雑な心境。
長田山荘からはまた灌木の中を進みます。時々視界が開ける場所では左手に砂走りが見えます。
のんびりした雰囲気の中を登って行くと、やがて本六合目の瀬戸館(標高2620m)に到着します。以前は焼印ではなくてインクのスタンプだったのですが、2004年から焼印を押してくれるようになりました。
瀬戸館の右側の道を進むと、胎内洞穴という溶岩洞窟があります。穴なので安産の御利益があるとか。ただし、夜間などにまちがって登山者が進まないように「通行禁止」のロープが張られています。
瀬戸館を過ぎると樹林帯がなくなり展望の開けた登山道になります。良く整備されています。
さらに登っていくとだんだん木々が減り、かわりに岩が増えてきます。斜度がきつくなっていき、落石注意の看板が目立つようになります。瀬戸館から30分ほど歩くと、やがて七合目・
大陽館(標高2920m)が崖の上に見えてきます。歩き続けても、なかなか近くならない感じがしますが、あせらずじっくり登っていきます。
大陽館までくれば山頂まで見渡せるようになります。大陽館には白い大型犬が飼われています(詳細は
こちら)。大陽館では焼き印はやっていません。かわりにシールが販売されています。大陽館の夕食は富士山の山小屋としてはずいぶんと豪華です。ハンバーグに食べ放題の豚汁。登山時の体温低下を防ぐために動物性脂肪を摂ってもらおうというご主人の配慮です。ご主人は豚汁を「主菜」と位置づけておられます。
※「太陽館」ではなく「大陽館」です。テンが付きません。「テン(が付くこと)でダメな山小屋にならないように」ということなのだそうです。
大陽館から次の本七合目・見晴館(標高3140m)の白い鳥居が見えています。約30分で到着。見晴館はまだ建物が新しいです。子連れ登山の場合、ここで一泊して登頂に成功したという話をよく聞きます。
見晴館から次の八合目・下江戸屋(標高3270m)をめざします。この付近は登山道と下山道の共用部分が多く、砂礫がずるずる滑り、けっこう登りにくくて大変です。下山者が巻き起こす砂埃にも悩まされます。
須走ルートは夏休みや休日でも比較的静かに落ち着いて登って来られますが、本八合目(標高3370m)まで登ると、急ににぎやかになります。吉田ルートと合流したのです。特に週末の深夜ですと急に人がわき出してきたかのような喧噪にびっくりします。須走ルートが持つ静かに自然を満喫できる富士山と、吉田ルートの観光登山化された賑やかな富士山。1粒で2度おいしいのです。この山小屋は胸突江戸屋。八合目の下江戸屋とは姉妹店です。バイオトイレが設置されています。
★ここから山頂までは吉田ルートのページを見て下さい。
<下山時、分岐点に注意!>
下山時、山頂から本八合目を通過して、八合目の分岐点までは吉田ルートと同じです。そちらを参照して下さい。さて、注意ポイントがあります。それは分岐点です。
※2014年は下江戸屋を過ぎたところに分岐点がありましたが、また以前のように下江戸屋の手前に戻りました。
八合目の下江戸屋の手前に分岐点があります。ここで間違えやすいのは吉田ルートを下る人です。吉田ルートへは下江戸屋の脇を回り込むようにしてつながっているからです。須走ルートの下山道は道なりに下りていけば良いのです。
しかし、吉田ルートへ下る人が圧倒的に多いので、それに釣られてそちらへ進んでしまう人もいます。やはり、須走口へ向かう人も写真の標識には十分に気をつけていなければなりません。この写真の標識をぜひ覚えておいてください。標識は分岐点から少し離れた場所に立っているので、視界が悪い状況では見逃すことが多いです。
須走ルートのシンボルカラーは赤です。山頂から分岐点までは、赤と黄色の両方を使った標識が立っていますが、分岐後はどちらかの色になります。もし、標識の色が黄色ばかり目立つようになったら間違っています。すぐに、標識をじっくり再確認するか、周囲の人に確認して下さい。
江戸屋という山小屋は二つあります。上が本八合目の「胸突江戸屋(上江戸屋)」。ここで説明しているのは下の八合目にある「下江戸屋」です。下江戸屋の前は細い道。右側は崖のようになっています。標識を見逃して下江戸屋の方へ行ってしまっても、山小屋を過ぎたところに再度、分岐点があります。
まちがって吉田ルートのスバルライン五合目へ下りてしまった場合、そこから須走口五合目へタクシーで戻ろうとすると、2万円近くかかるはずです(従来の須走口→スバルライン五合目の事例を参考にしています)
下山、砂走り
須走ルートは大陽館を通り過ぎた七合目以下の部分に砂走り(標高2890mからスタート)があります。ただ、道幅は狭く、石や岩がたくさん落ちているので、そんなにスピードは出せません。御殿場口の大砂走りのような「飛ぶように走る感覚」はとても無理ですが、それでも地表が柔らかい場所では、比較的楽に下りていけます。逆に言うと、直線的に下りていくから斜度があるのに、地表が堅いと足に響いてつらいです。
晴れている日は、砂埃がすごいのでタオルやバンダナなどで口と鼻をふさぎましょう。コンタクトレンズの方は、ゴーグルなどで目を防備すると良いでしょう。なお、砂走りに入る前に飲料を購入するのをお忘れなく。天気が良すぎると脱水症状になる危険があります
砂走りは時々、道が付け替えられます。2009年は、途中、樹林帯の中をくぐり抜けるように通路が設定されていました。また、2011年には途中で左方向に曲がって、長田山荘に接続していました。しかし、2013年にはそうでなかった、という感じです。
約2キロの砂走りを悪戦苦闘しながらやっと砂払い五合の売店・吉野屋(標高2230m)に到着すれば、ほっと一安心です。砂まみれになった顔を洗うための「洗面水」が有料で使用できます。
ここからは案内板にしたがって樹林帯に入るとすぐにさっきまで歩いていたブルドーザー道へ戻ります。つまり下山客を素通りさせないためのお店の作戦です。しばらく進むとまた樹林帯の中に入っていきます。途中、登山道を横切るように下山道が造られています。段差が少ないように整備されていますが、下の方では少し段差のある場所が増えてきます。また、木の根っこがむき出しになっている部分が多いので、足をひっかけないように注意して下さい。吉野屋とゴールの五合目の売店との標高差は270mです。まだけっこう残っています。
途中から登山道に合流し、やがて古御岳神社に到着します。無事の登山を感謝。そこからはゴールの売店はすぐです。小富士へは500mあまりですが、下山時にさらにそこをついでに見てこようという人はよほど元気な人です。
須走口へは御殿場駅からバスが出ているのでマイカーがなくても訪れやすい場所です。五合目に20時頃到着するバス(金~日)があるので、元気な人ならそれを利用して徹夜登山にもチャレンジできます。公的には「弾丸登山は控えましょう」ということになっておりますが。健脚ならば須走口を登って御殿場口から大砂走りを堪能して下山、そして御殿場駅に戻るというコースも考えられます。
須走ルートの地図
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平15総使、第64号)
日帰り登山でも懐中電灯を
日没までには楽勝で下山できると思っても予想外に時間がかかり、暗闇の中で困り果てる人が意外に多いようです。特に最後の樹林帯を懐中電灯なしで下るのは非常に困難です。暗くて、どちらに進んで良いのかわからなくなります。そして、段差が多いので危ないです。暗くなるまでに下山する予定であっても、保険の意味でも懐中電灯を持参しておくと良いでしょう。(2014.9.5追記)「良いでしょう」ではなくて「必携」です。持参してないと遭難します。真っ暗です。
下山道の通行規制
ブルドーザー道を使って駐車場へ直行できることが知られてきたせいで、現在は途中で立入禁止のロープが張られ下山道へ誘導されるようになっています。以前の下山道よりはるかに段差が少なくなっていますし、ブル道を使って駐車場へ出てしまうと最後に試合放棄をしたような感じがするので、そのまま下山道を使うのが良いと思います。