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 みんなの登山記2007−14
 投稿者:Y.Fさん

■2007年7月31日(火)〜8月1日(水) 河口湖口

昨年、生まれて初めて富士登山を経験し、あまりの感動に「来年もまた絶対に来よう!」と下山しながら思っていましたがついに先日行って参りました。

昨年の初富士登山が御殿場口(登山記06-4)で、それがなかなか大変な事であったことを後から知り、自分でも驚いていましたが、今回は最もポピュラーであるとの彼氏のお勧めで河口湖口からの挑戦となりました。

何も知らずに登った御殿場口でしたが、「今回は2度目で少し様子が分かるから、却って大変かな?」それとも「一番大変といわれる御殿場口が登れたのだから案外平気かな?」とあれこれ予想を立てながらその日を待っていましたが、終わってみての第一声は「辛かった〜!!」でした。
登山口によってこんなにも様子が違うとは・・・。
驚きでもあり、また物凄く魅力でもあることを感じた次第です。

7月31日PM7:00前、御殿場インターを降りて139号線を走ります。左手には富士山の姿がくっきりと。
「今から行きますから今回も登らせてくださいね〜!」と呟きながら向かいます。
そうこうしているうちに日没を迎え、ため息の出そうな美しい景色を見ながら駐車場に到着。
まずはびっくり!!「なんてお店が多くてひらけているのでしょう!」
所謂、観光地といった風情に目が丸くなってしまいました。
昨年の御殿場口とは大違い。わくわくしながら支度を整えます。

PM8:00さあ、出発です。
お店の前を通りこれでスタートかと思いきや、登山口はもう少し奥とのこと。 結構な距離を歩きます。お馬さんの置き土産の臭いもするし、この時間に下ってくる人たちともすれ違うし「ああ、登山口によって随分雰囲気が違うのだな〜」と実感。
足元も小さな石ころの緩やかな起伏でしかも平行移動。あまり登山をしている感じではありません。
ヘッドライトを点けていましたが、それにしても妙に明るい?ふと目を前にやると、何と、ほぼまん丸のお月さまの姿がありました。
御殿場口では砂地で足を取られ歩きにくかったのを覚えていますが、今回はそんな感じはまったく無く、案外足が進みます。
しかもすれ違う人、後から追い越して行く人、とにかく常に誰かがいる!何だか安心感がありました。
遠くで「ボ〜ン!ボ〜ン!」と何かの音。時々雲が光っています。「何だろう?もしかするとどこかで花火?」そんな会話をしながら歩くうちにもう6合目。「えっ?もう6合目なの?何と早い!!」
安全指導センターのおじさんがパンフレットをくれました。
ここにも人がたくさんいて一人で来たという年配の男性とひとしきり話をしていざ出発。

ところがここでアクシデント。彼の懐中電灯が消えてしまったのです。電池がない訳でもないのに、どうも球が切れてしまったよう。でも心配はいりませんでした。
何と月明りがこうこうと道を照らしてくれているのです。
私も思わずヘッドライトを消してしまいました。
眼下には月明かりに照らされた雲海が・・・。私は今まで雲海というものは朝日に照らされるものだと思い込んでいましたが月明かりの雲海、その美しさたるや!!何とも幻想的で筆舌尽くしがたいものがあります。そのうち雲の切れ間から線香花火?が見えました。
さっきの音はやはりどこかの花火大会だったようです。山中湖でしょうか?まるで線香花火のような小さく可愛い色とりどりの花火が何度も上がっていたのです。
彼は過去にこうやって富士山から花火を見たことがあったということで「また見られるとは!!」と感激を新たにしていました。
月光の雲海に花火。本当に素敵なプレゼントを貰った気分になりました。

丁度町があるところだけ雲が切れているようで、灯りがきらきら輝いています。美しい景色を堪能しながら足を進めます。
山肌にも点々と山小屋や登山者のライトの明かりが見えていますが、この辺りから少しずつプレッシャーを感じ始めていました。というのも本当に人が多い。 後ろからどんどん登ってくる人の足音や、話し声が聞こえてくるのです。「あ〜私ゆっくり過ぎて邪魔になっているかな?」「脇に除けたほうがいいよね?」とつい色々考えてしまい、自分のペースが乱れそうになってしまうのです。
外国の方もたくさん来ていました。本当にタフですね。私が息を切らせながら、少し進んでは息を整えている横を皆で楽しくワアワア会話しながら登っていくのです。
しかも半袖の人、半ズボンの人もいます。すっご〜い!!
しばらく登っていくうちに少し人気は少なくなり、その後、うしろに若い男の子たちのグループがいることに気付きましたがあっという間に抜かされて、ちょっとここで休憩!
栄養補給をしていると、近くの小屋のご主人らしき人から声を掛けられました。「こっちはブルドーザーの道だから上りはあっちだよ!」と。
「あれ?どこで間違えちゃったかな?あの男の子たちはどこへ行っちゃったのだろう?」ご主人の指示に従って小屋の前を通り抜け本来の登り道へ出るとそこは今までとは打って変わって岩場でした。びっくり!
「ここを登るの〜?」どう考えても足だけでは済みません。杖と手と足と全部を使って、早い話、よじ登るのでした。
「知らなかった〜…。こんなところがあるなんて・・・。まだまだ勉強が足りなかった!!」考えても始まりません。子どもの時以来?必死で○十年振りの崖登りをしました。
天然の崖を登り続けると少し手を加えたような石段に変わります。そうするとそこには山小屋があるのでした。気がつくともう8合目。3000mに達しています。

ここからはまた砂礫の道。少し進んでは息を整える間隔が短くなり、空気が薄いことを実感します。そういえばさっき食べたお菓子の袋もパンパンに膨れていましたっけ!
それにしてもなんでこんなに人がいるの〜〜〜!!!山小屋の前はどこもかしこも人だかり。
足元はまた岩場へと変わってきました。「どこに足をかけよう?」と考えながら足場を整えつつ、時には彼に引っ張り上げてもらいながら頑張ります。 「こっちの岩のほうが楽そうなのに・・・」実は人がいっぱいいて、なかなか足元を選べ無くなってきているのです。
そうこうしているうちに空はうっすら明るくなってきています。周りでは「もうそろそろだ!」「あと○分ぐらいでご来光だ!」という声も聞こえはじめ焦りが出てきます。焦っても足が言うこときかないし、人はたくさんいるし、なかなか前に進めません。
「今年は頂上でご来光が見たい!」相当ひきつった顔をしていたのでしょうか、彼が「絶対間に合うから大丈夫!」と声を掛けてくれます。
それにしても登れば登るほど人が増えていき、まるで都会の渋滞並み。もう頂上でのご来光をあきらめているのか、それともこの場所が良いと思っているのか、動かない人たちもたくさんいて本当に足が進みません。
「もう間に合わないかもしれない!」と諦めつつも足を止めないことだけをひたすら頑張り続けます。
すると、とうとう目の前には鳥居が!!「やった〜!!」何とか間に合いそうです。
「彼がここなら綺麗に見られるよ!」と示してくれた場所は鳥居の若干手前の岩場。
「?」・・・しばし考えましたが、ダメダメ!!そこは頂上では無い!!「ごめんなさい!鳥居のむこうが良いんだけど!!」とこだわってしまった私でした。
無事鳥居をくぐって登頂成功!そのわずか数分後、太陽が顔を出し始めました。その美しさたるや、もう言葉にはできません。携帯でたくさん写真を撮ってしまいました。
「諦めないで良かったね!」の彼の言葉とあまりに美しい世界に感動の涙が溢れました。






AM5:00少し前でした。

・・・・・気がつくと「寒い!」本当に「寒い!」風の吹きこまない建物の陰に身を寄せて、持ってきたフリースを着て彼に温かい紅茶を入れてもらって飲みますがまだ寒い。
登っている間は夢中ですが、すっかり体は冷え切っていました。お腹が空いているせいもあるかも知れません。早速持ってきたおにぎりや、味噌汁や色々とお腹に収めます。でも、まだまだ温まりません。
彼が持て来てくれた金色のシート(防災用品?)に包まって、あちこちにホカロンを貼り付け、太陽の光を浴びているうちに大分温まってきましたが、何といってもこれが一番効きました。
それは味噌汁を作った時に残ったお湯を彼がペットボトルに入れてくれた「簡易湯たんぽ」。これを抱えているうちにすっかり元気が回復しました。



さて、今回はもうひとつ挑戦することがあります。お鉢巡りです。
昨年御殿場口から登頂成功して喜んだものの、実は富士山の頂上にはもっと高い場所があると知ってしまい、少しやり残したことがあるような気分になっていたのです。
ですから今年は何としてもてっぺんのてっぺんに行きたかった!
『馬の背』を登るのはかなりきついということで反対回りで行くことに。
富士山の頂上がこんなにも凸凹しているとは遠目に見てはまったくわかりません。噴火口の周りは本当に不規則な形であることを改めて知りました。
頂上から見る下界は本当にすごい。あの大きな湖が丸のまま見えるなんて・・・。
それにしても何と良い天気。『剣ヶ峰』の裾には残雪がきらきら輝いていました。
いよいよ『剣ヶ峰』に登って正真正銘、日本の最高地点で記念撮影。「やりました〜っ!!」大満足。
でも『馬の背』を下るのは正直怖かったです。
そして今年もまた郵便局によって職場である幼稚園の子ども達に暑中見舞いのはがきを出しました。
御殿場口山頂から須走口山頂までの間はものすごい強風で吹き飛ばされそう。岩肌にはつららまでありました。自然の厳しさを実感。


遥かに本栖湖を望む

無事にお鉢巡りを済ませて、時間はAM9:00。
そろそろ下山です。しかし下山道を見て唖然・・・。幾重にも連なるくねくねの道。
「えええ〜〜〜っ!!!」「ここをこの足で降りなきゃならないのね〜」はっきり言って呆然としました。
でも登ってきた以上下りない訳にはいきません。意を決して下り始めます。 石ころ&砂地。結構滑って歩きにくいものです。おまけにものすごい風に砂埃が舞っています。
それが延々と・・・。本当に延々と・・・。
やっとやっと江戸屋さんまで来て休憩。ホッとしたのもつかの間ここはまだ8合目。下にはつづらおりの道がま〜だまだ・・・。目の前にはこれから通らなければならない道がちゃんと見えている。
これは決して嬉しいものではありませんでした。「見えないほうが却って気楽!」「知らないということは却って幸せ!」そんな気にさせられました。 登りの時と違って今度はこの道の最後にしかトイレがありません。これも妙なプレッシャーでした。どこまでいっても変化のない道。とにかく行くしかない。精神修行にはぴったり?
あと1つカーブを曲がればこの道の終わり。腰が痛い、膝が痛い、足の親指の爪が痛い、土踏まずの上あたりが痛い、辛い体を引きずってようやく辿り着きました。

トイレを済ませ、いざ駐車場目指して出発。ところがところが、ここからがまた精神修行のVol.2か・・・?
だらだらと長い平行移動。足元は同じような石ころと砂地。落石よけのシェルターが3か所。
中を通りますが、なんと低い階段になっている。今までこき使ってきた足には本当に辛い段差。
「痛たた・・・」と思わず声がでてしまいます。
でも周りは植物があって、下界に来たのだな〜という雰囲気になってきました。そこにポコポコと蹄の音がしてお馬さんが何頭も通って行きました。
そして驚いたのはツアーで来ている団体さんと何組も出会ったこと。ガイドの方が声を張り上げながら色々説明されていたり、並んで歩いていたり、年齢も様々な方たちがこんなにもたくさん来ているとは・・・。さすがにポピュラーな登山口なのですね。
ああ、それにしても足が辛い。やっとの思いで5合目登山口まで戻ってきました。

そして最後のおまけ(とどめ?)。登山口から駐車場までの緩い登りのだらだら道。嫌になっちゃいました。
とても無口になってとぼとぼと足を引きずって・・・・・。やっと華やかな場所に帰ってきた時にはPM2:30でした。
この時は「やった〜!」という感じよりも「はあ〜、着いた…」といったところが正直な気持ちです。

河口湖口、何が辛いって下山道です。
最後下り切った時に通ってきた道を見上げて「よくもまあ下りてきたものだ」と感心してしまいました。

天気に恵まれ、満天の星空、月明かりでの登山、月光の雲海、花火、頂上での素晴らしいご来光、お鉢巡り、剣が峰登頂、やり残したことは何もない、大満足の富士登山!!
しかも十分辛かったし、「もうこれで富士登山は終わりでいいな!」と思いつつ帰路に着いたのですが、帰ってから『あっぱれ富士登山』をまた見させて頂いたり、撮ってきた写真を見たりしているうちに「また来年も行こう!」と思い始めた自分がいます。
「今度はどこの登山口にしようかな〜?彼にまた頼んでおかなくっちゃ!」


(管理人)
 これは見事な御来光ですね。こういうのを見られた人は本当に幸せです。そのかわり文中にもあるように、こういう御来光の時は寒いです。これだけ楽しい思いをしたらまた登りたくなりますね。




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(07/8/4)