■2010年7月18日(日)〜19日(祝) 御殿場口
山開き前のオフシーズンは、「1年中富士山に登れる人はいいな〜」と、こちらのサイトの
「積雪期の富士山」のリンクでも紹介されている
『山ちゃんのブログ』を毎週チェックしながら羨ましく思っておりました。冬の富士山に登るだけの体力・技術・経験・装備など、全て不足している私としては、ブログを通して富士山の状況をリアルタイムで教えていただけることはとても嬉しいことでした。そんな影響があったからか、今年の富士登山は「御殿場ルート」と決めていました。そして待ちに待った、私でも富士登山できるシーズンが到来!!。
いつも下山にしか使わない御殿場、1000メートル余分に登らないといけない御殿場、山小屋の少ない御殿場、殺風景な砂地を黙々と登る御殿場、過酷な御殿場…… 御殿場の登りに初挑戦です。幸いにも梅雨前線は急激に北上し、海の日の3連休はバッチリ高気圧に覆われ、天気図に低の字はありません。急遽出発を7/18(日)に決め、赤岩八合館を予約しました。今回もヨレヨレおじさん(48歳)の一人登山です。
7/18(日) 新宿駅6:01発の小田急線〜新松田/松田駅乗換えでJR御殿場線御殿場駅到着が7:55です。小田急線新松田着7:19、JR御殿場線松田発7:23、乗換え時間が4分しかありません。新松田駅で小田急線を降りると、たまたま前にいた高校生くらいの人がダッシュしたので、つられて走ったのですが、距離がけっこうあるうえ御殿場線の車両がホームの遠くの方に停まっているので、ギリギリで御殿場線の発車に間に合った感じ、トイレに寄っていたら完全にアウトでした。同じ経路での移動をお考えの方、ご注意ください。ここはダッシュするべし。乗り換え時間4分は短いです。
さて、御殿場駅からバスで五合目まで行き、日焼け止めを塗って靴紐をしめて、いざ出発!大石茶屋を過ぎ、一人でゆーっくり歩きます。この辺りは、いつもなら大砂走りの急坂を駆け下りた後の区間なので平坦なイメージがあったのですが、下から歩くと結構上っていることに驚き。ということは、この後さらに勾配がきつくなるんだなと思い、体力温存、体力温存と言い聞かせながら、歩幅を少し縮めてゆっくり歩くことを心がけました。イメージとしては、登頂直前のヨレヨレ状態。すると、元気に抜いていった男性4人のグループの一人が引き返してきて、「大丈夫ですか? 気分悪くありませんか?」だって。気持ちは嬉しかったのですが、そんなにヨレて見えたのかなあ。少しシャンとして歩こう。この後この4人組とは、翌日の山頂まで追いついては離され、抜いては抜かれのくり返しとなりました。
しかし、解ってはいたものの、延々と続く単調な山道と、一歩踏み出す毎にズリッとすべる火山礫の絨毯に、気力と体力がジワッと削がれていく気がします。御殿場ルートのやっかいな点は、序盤から気力と体力の消耗戦を強いられることではないでしょうか。とにかく赤岩八合館までは体力温存、富士山を堪能しながら燃費節約登山を心がけるのだ!
六合目小屋前
途中昼食タイムで休憩中の4人組を抜き、六合目小屋で大休止の昼食中に抜かれ、六合小屋跡で休憩中の4人組を抜き、七合目手前で抜かれといった具合。4人組は速いペースで歩きながら頻繁に小休止をとる、こちらは歩きはゆっくりだけど、たまに立ち止まって水を飲んだり写真を撮ったりする程度で、ほとんど休憩しない。小休止している4人組にやっと追いついたと思うと、彼らは出発、待ってくれ〜。結果4人組からわずかに遅れて本日宿泊の赤岩八合館に到着しました。五合目を出発してから休憩込みで約7時間半でした。予定どおり、疲れたけどまだ体力残っているぞ。
山小屋のお兄さんがザックを持ってくれて2段目の寝床に案内されましたが、笑顔のなんと爽やかなこと。他のスタッフも気さくで親切、めちゃくちゃ好感が持てます。寝床も以前泊まった他ルートの某所ほどぎっちぎちの感じではなく、ゆっくり休めそうな予感。するとどこからか呼ぶ声が聞こえ、キョロキョロしていると「上です、うえ」。あの4人組が、なんと食事場の屋根裏にあたる場所から声をかけてくれたのです。そんな所にも寝る場所があったのか!
ここに来て思ったのは、富士宮ルートの八合目からトラバースしてくる人が結構たくさんいるんだなあということ。夕食を食べながら(名物のカレーをしっかりおかわりして)話した若い男性も、今回が始めての富士登山にもかかわらず富士宮の八合目から来たと言っていました。ろくに調べもせずに軽装で登ってトラブルになる人もあいかわらずいるようですが、ここにいる人たちはネットなどできちんと下調べして来ている人か、経験者が大半のようです。
寝床の壁にもたれかかって座っていると、窓から影富士が正面に見え、時間の経過とともに微妙に位置を変えながらだんだん伸びていきます。その様子を眺めているうちに眠くなってきて、早々に寝ることに。夜中に目が覚めたので、星を見るために外へ出ると、すばらしい星空が広がっていました。星の数、大きさ、光量、どれをとっても圧倒的、北斗七星をこんなにはっきりと見るのは初めてです。線で結んであるみたいにはっきりわかります。ずっと眺めていたかったのですが、猛烈な寒さに耐えられずに山小屋の中に退散しました。
日がかわって19日、朝4時に目が覚めると外はだいぶ明るくなっていました。相模湾や江ノ島、駿河湾も見渡せます。雲が少なく、きれいな御来光が拝めそうです。ところが、ちょうど陽が昇ってくるあたりに雲がちょこっとあったおかげで感動的な日の出というにはいまひとつかな。しばし変わりゆく空の様子を眺めた後、山小屋の朝食をおいしくいただき、山頂目指していざ出発!
一人でトボトボと登るのだ
ゆっくりペースで登りながら駿河湾方面の写真を撮っていると、例の4人組の内2人が追いついてきました。あとの2人はちょっと高山病っぽい感じらしく遅れているとのこと。先行の2人は元気でズンズンと前へ行ってしまいました。こちらはといえば、昨日のようなスローペースを心がけるまでもなく自然にスローになっていますが、体調も気分も良好、深呼吸を繰り返しながら進むと、やがて見覚えのある鳥居が近づいてきました。
銚子口に無事到着、赤岩八合館から約1時間10分でした。4人組の先行2人が銀明水のベンチで休憩中。聞くと、先行2人は今回が初めての富士登山で、「初めてなのに御殿場に『楽勝楽勝』とか言って連れてこられたんですよ」とのこと。しかし、あのペースでガシガシと登れるのはすごい、若さかな。もっとも、彼らに言わせると、あんなにゆっくり歩いているのに、いつのまにか登ってきている私の方が不思議、ということのようですが… やがて4人組の後続2人も到着、登頂を喜びあいました。続いて見覚えのある顔も到着、赤岩八合館でお隣さんだった神戸方面から来た親子です。今回が5回目の富士登山で、大変礼儀正しい中3の息子さんは3年連続3回目とのこと。
郵便局のポストで暑中見舞いを投函、剣が峰まで登ってお約束の写真撮影の列に並ぶと、前にいるのは神戸方面の親子。ご縁がありますね。お互いに写真を撮りあってお別れしました。その後時計回りでお鉢を一周、測候所下の残雪はまだけっこう残っていてロープが張られていたのですが、通っている人もいたので強行突破、滑るので怖かったです。滑落したらすり鉢の底にまっさかさま?でも、すでに途中まで来てしまい、戻るに戻れず、腰を低くして慎重にズルズル滑りながら進みました。
お鉢巡りで360度の景色を楽しんで、金明水にもお参りした後、下山は思いつきで富士宮ルートから降りることにしました。ここを歩くのは30年ぶりなので、ほとんど記憶がありません。新鮮な気持ちで下山し、八合目池田館脇から御殿場ルートへの脇道に入ります。分岐のトイレ脇には付きっきりの係員がいて、「下山道はこっちですよ」といわれましたが、「知ってまーす」と応えてスルー、後ろから舌打ちが聞こえました。やはり富士宮側は、ここを通られるのがイヤなのですね。このエスケープルートは六合目から宝永山経由で行くよりも、両コースの距離がはるかに近いので、相互に通行できるメリットは大きいと思うのですが、ブル道の部分で上を見上げると谷状の地形になっており、上の方には雪渓がある場所だそうで、落石があってもおかしくない場所のようです。御殿場側の山小屋では「通れますよ」と気軽に案内していますが、実際どうなんでしょう。落石があると怖いので、上に注意を向けながら小走りで駆け抜けました。
プリンスルート合流地点看板
御殿場ルートに合流した後は、七合目から大砂走り方面下山道に行かずにあえて登山道を逆行して下りました。というのは、登ってくる時に六合小屋跡の先に宝永山方面を示す案内板が立っているのを見つけて、「ああ、ここがプリンスルートとの合流地点だな」と思い、気になっていたからです。案内看板の所まで登山道を下り、そこから宝永山方面への踏み跡をたどるプリンスルート逆行コースに入りました。いつかプリンスルートを登ってみたいと思っているので、その時のための下見です。所々黄色や白のペンキで矢印が書かれているので迷うことはありませんが、夜間や霧が出ているときなどはコースアウトしそうで不安かも。やがて御殿場下山道の宝永山・富士宮方面への分岐の少し上に出ました。富士宮からプリンスルートを登る方は、宝永山尾根から御殿場コース下山道に合流したら、下山道を数十メートル逆行するかたちで登った後、小屋跡先にプリンスルート分岐を示す看板がぽつんとありますので、見落とさないようにね。
宝永山から見る砂走り
せっかくここまできたんだからと宝永山・富士宮方面への分岐へと進み、雄大な宝永山火口の風景を見渡してから、御殿場大砂走り行き直滑降の道を駆け下り、そのまま大砂走りに突入しました。うちの子供たちも大好きな大砂走りを、今日はお父さんが代わりに一人で満喫するのだ。宝永山から見ると、大砂走りが結構な傾斜であることがわかります。一気に大股でザクザクと下り、あっという間に五合目到着、山頂から五合目まで約4時間。今回はちょっと欲張りな回り道下山ルートでした。
今回の富士登山は、初日をかなり意図的にスローペースで登り、体力温存に努めたことや、山小屋でゆっくりと一泊出来たことなどで、2日目の登山核心部分をゆとりを持って登ることが出来ました。天候にも恵まれて、富士山の美味しい所を味わいつくすような、とても良い登山だったと思います。ただ、好天のあまり、日焼け止めを頻繁に塗っていたにもかかわらず、顔・腕・首が真っ赤に焼けたのは誤算でした。もっと強力な日焼け止めを持っていくべきだったかな。
私も不二倉さん同様、登山記の投稿までがワンセットとなりつつありますが、私のつたない登山記が、これから富士登山される方のヒントに少しでもなれば幸いです。