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 みんなの登山記2010−44
 投稿者:H・T さん

■2010年8月15日(日)〜8月16日(月) 御殿場口

昨年09−21にて投稿させていただいたH・Tという者です。
体力も脚力も無い凡人ですが、昨年立てた目標通り、 8月15日に御殿場ルートを山小屋泊にて登山したので、今年も投稿させていただきます。

実は中々日程が決まらず、7月31日に衝動的にスバルライン五合目から日帰り登頂して、 終電に次ぐ終電で昨年以上に死にかけましたが、それは今回は割愛させていただきます。

今回のプラン
ありません。全くどうなるか見えません。
強いて言えば、15日は夕飯前に赤岩八合館に無事辿り着くこと。 16日は、赤岩八合館に到達できていれば登頂は問題ないので、 久しぶりにお鉢巡りをして昼前後くらいに下山完了、程度です。

8月15日

7:24 御殿場駅着
街全体が霧に覆われている感じです。
天気予報では曇り又は霧一時雨でしたが、 ネガティブに考えてしまい、雷に対する不安が高まります。
バス停は、須走口新五合目行きは20人程度、 対する御殿場口新五合目行きは、自分も含めて5人程度です。

8:40 御殿場口新五合目着
流石に渋滞知らずで、相当早く着きました。
バスの車内でも天気に対する不安は増すばかりでしたが、山の神様の粋な計らいか、 新五合目の近くになると一気に晴れ渡り、不安は殆ど消えました。
が、それはそれで次の問題が。
視界が良好になりすぎたため、富士山がはっきりと見えます。
写真などでは見ていたけれど、本当に遠い。
しかし命に関わる事ではありませんし、こちとら承知の上で来ています。
同じバスに乗っていたおっちゃんに頼まれて写真を撮ったり、 軽く準備運動をした後、大石茶屋に出発です。


9:00 大石茶屋着
朝食にうどんを。
高所順応は必要ないと言う話をよく聞きますが、一応40分程潰しました。

9:40 大石茶屋発
いざ登山道に入ると、並行する直線の下山道も手伝って、先程見た時よりもより遠さを実感。
噂に聞く「延々と続く景色が変わらないジグザグ道」において、 少しでも精神的な負担を減らせる事ができるかもしれない小細工を左手に握り締め、 スローペースで歩き始めます。小細工については後述。

11:00 新五合五勺着
スローペースで歩いているつもりが、余りの遠さに焦ったのか、 明らかに普段よりもペースが早い事に気付き、修正して到達。
途中親子連れ四人組と追い抜いたり追い抜かれたり。
山の神様の粋な計らいは続いていたようで、登り始めて暫くしたら再びガスに覆われ、 天気的には曇り又は霧時々晴れ。登るのには良い条件です。
ここまでは緩やかで比較的歩きやすい道だったため、正直気が緩んでいました。
最大の難所に突入すると砂礫に足を取られ、本当に進んだ気がしない。
感覚としては、10cm足を上げて5cm沈むといったところ。
12時過ぎ頃に、先程の親子連れの父親が家族を呼び止め、 昼食だと言って立入禁止の中継小屋へと向かって行きました。 聞こえていた親子の会話によれば、日の出館もしくは赤岩八合館まで行く様子でしたが、 立ち入り禁止の場所へ行く行かないよりも、大砂走りを渡って再び登山道に復帰できるのか、 時間的に山小屋に到達できるのかの方が気になりました。

周囲に自分と近いペースで歩く人がいなくなったため、完全に孤独に。
暫くはそのまま一人で歩き、中国人らしき二人、 そしてかなりのペースで登っていく男女四人組に抜かれます。
どれだけ抜かれようとも、初日の目標はあくまでも「赤岩八合館に辿り着く事」なので、 スローペースをひたすらに守り続けます。
旧四合目のブル道交差点で、目の前を通り過ぎるブルを眺めながら一回目の食事休憩。
すぐ先で休憩していた先程の四人組の横を通り過ぎ(すぐに追い越されました)、登り続けます。
30分毎に取るように心がけていた小休憩も、精神的な疲労か、15分毎になりました。
やがて、上の方にどこかで見た覚えのある人の姿が。
朝同じバスで新五合目にて写真撮影を頼まれ、先に新五合目を出発していたおっちゃんでした。
ペース的には自分と同じか、それよりも更に遅いと言ったところでしょうか。
そのまま登り続け、おっちゃんと高齢の家族連れが会話をしていて、家族連れが出発。 おっちゃんに挨拶して、そのまま3分程度の会話。
このおっちゃんも自分と同じで、今日は赤岩八合館までの予定との事。
人と話をした事で少し気力が回復し、再び登ります。
家族連れを追い越します。ご年配の女性と、その息子さん、お孫さんと言ったところでしょうか。
お婆さんは頻繁に足を止めて座り込んでいるようで、場所が場所なので少し心配です。

ようやく新六合目を超え、再びブル道交差点に差し掛かり、先を見て目を疑いました。
砂礫はもう嫌と言うほど歩きましたが、傾斜がそれまでとは比較になっていない箇所が。
前日知人に御殿場ルートを登ると話した時、「大砂走り登ってきて」と冗談で言われましたが、 ある意味それが冗談ではないように思えました。
傾斜を登りきり、少し行った所で二度目の食事休憩。

15:25 日の出館着
やっと営業している山小屋に到着、ここまで約6時間。
途中の「御殿場口六合目」という表記がある柱からここまでは一時間で来たので、 (実を言うと、御殿場ルートの正しい六合目を把握していません) 六合目まで約5時間、他のルートでは考えられません。
缶か瓶の炭酸飲料でもあれば気付に、と思いましたが、 ソフトドリンクは全てペットボトルだったので、トイレ休憩のみで済ませました。

15:35 日の出館発
そのまま少し歩きわらじ館、砂走館。
わらじ館は営業しておらず、砂走館は情報通り改装のため解体中。
ただしバイオトイレはスタッフも使う関係か、使用可能な状態でした。 砂走館から更に歩き、ふと顔を上に向けると白い建物が。
今日の到達目標地点、赤岩八合館が視界に入ります。
既に砂礫地帯も終わっているため、自然と気力も回復しました。

16:30 赤岩八合館着
どうにか17時前に到着できました。
チェックアウトを済ませ、軽く横になったり外の空気を吸ったりしながら休憩。
17時頃夕食。実は今回、カレーを三杯食べるのを密かな目標にしていましたが、 元々そんなに食べる方ではないので、二杯で止めておきました。
カレーはご飯も含めてレトルトでは無い上に味も良い。
スタッフは面白いので、ここが富士山である事を忘れそうになってしまいます。

暫くして、先程のおっちゃんが到着。
どうやら予約はしていなかったようですが、一人だった事もあり、泊まれました。
そして偶然、寝床が隣に。翌日の予定を聞いたらほぼ自分と同じでした。
ちなみに最終的に山小屋は満員でした。
消灯時間の21時少し前に横になり意外とすぐに眠りに落ちました。

ここで、序盤に記述した小細工について。
「景色が変わらないジグザグの登山道が延々と続く」という前情報で、 ならばいっそカーブを数えて進捗確認に使えないか?と考えました。
そして調達したのが交通量調査などに使われるカウンターです(写真参照)。
事前に昭文社の地図でおおよそのカーブの数を確認し、登山中もカーブ毎にカウントしていました。



写真は赤岩八合館到着時のカウント数です。
6合目辺りまでは押し忘れや不要なカウントも少なく誤差の範囲でしたが、 そこからはカーブと言えない微妙な場所で押したり、逆に押し忘れたりが増えてしまい、 誤差がかなり大きくなって意味が薄くなりました。
おおよその進捗の確認として一定の効果はありましたが、 時々やたら長い直線があると、一回押してから次が中々押せないためストレスが発生し、 逆効果になってしまう場面もあり、正直あっても無くても変わらない様に思いました。
ちなみに人には全くお勧めしません。
売ってる場所を探し出す段階で手間でしたので。

8月16日

ご来光登山目的の人たちが動き始める時間帯に一度目が覚め、次に起きたのは4時。
そのまま何となくカメラを構えたりで5時頃にご来光。
地平線の辺りは雲に覆われていたので、今ひとつでした。
ご来光を見終えて館内に戻ると、既に隣のおっちゃんは食事を終えて出発していたようです。
自分も朝食を済ませ、精神的に出発できるタイミングを待ちます。

6:20 赤岩八合館発
歩き始めはスローペース。とはいえ、眠って体力も回復しているので、 明らかに昨日よりペースは早くなっていますし、意識してそれより遅くするような事はしません。
やがて頂上の鳥居が見えると、思わず小走り気味に歩き出しました。
多分、あの時の自分はやろうと思えば駆け上れていました。

7:30 山頂着
頂上に到着です。
着いた直後は最後の小走りで乱れた息を整えてましたが、それが落ち着いてくると、 前回までの、登ってみれば意外すぎる程にあっけなく、大した達成感を得られなかった記憶と、 対する昨日の苦しすぎる登山道の記憶が蘇り、恥ずかしながら感極まってしまいました。

家に生存報告兼登頂報告の電話を入れ、頂上富士館側へ。
浅間大社奥宮に参拝し、続いて郵便局へ。
郵便局は初使用。葉書が売り切れの所に一枚分けて頂いた女性の方に感謝です。

8:20 お鉢巡り開始
三年ぶりのお鉢巡り。長蛇の列が頂上富士館の辺りからも確認できていたので、 馬の背を登っても最高地点はスルーしました。
時間をかけて歩き、吉田ルート側山頂に到着。
そういえば祝杯のコーラを飲んでなかったと気づきましたが、 どうせなら富士宮側で飲もうとここではパスしました。
頂上富士館に戻り、コーラを買おうとしても、確認した範囲では売ってませんでした。失敗。
無いものを買うことはできないので、諦めて下山する事に。

9:50 下山開始

10:50 赤岩八合館着
遅い祝杯を。

11:05 赤岩八合館発

11:30 日の出館通過
日の出館を過ぎて下山道を少し歩くと、砂礫の道が。
かなり傾斜のある場所です。
更に暫く歩き、宝永山との分岐を左に進み、いよいよ大砂走りに。
須走ルートの砂走りは個人的に好きではないのですが、 こちらは何も考えないで走れたので、かなり楽しかったです。
唯一誤算があるとすれば、今回持ってきたカメラ用ウエストポーチの存在です。
走るとこれが全く安定せず揺れるので、走ることに集中できませんでした。
次回はこれ無しの状態で思いっきり走ってみたいと思います。

12:50 大石茶屋着
かき氷を食べて休憩

13:10 御殿場口新五合目着
下山完了。
バスの時間を下調べしないで動いたため、一時間待つ羽目に。

まとめ

他の人の登山記などで読んではいましたが、実際に登ると予想を遥かに超えていました。
私のような凡人が単独行となると、精神的なサポートも無いため余計に辛く、 砂礫の登山道中、ふと無限地獄という表現が浮かんでしまうくらいでした。
だからこそ、赤岩八合館まで縁があったおっちゃんには今回特に感謝です。
自分の視界内に、近いペースの登山者が一人でもいるだけで、精神的にかなり救われました。
今回の御殿場ルートで、他のルートでは知りえなかった色々な事を知ることができた気がします。
山小屋など無く、厳しい道が延々と続く。
それが本当の登山なのだろう、と、納得もしました。
道中は本当に辛いですが、登頂時のあの感覚を思い出すと、また何回でもここから登りたいと思います。
個人的にとても大きな収穫を得て、私の今年の富士登山シーズンは終了となりました。


(管理人)
確かに御殿場口の砂礫部分はとても長く、景色がなかなか変わらないせいもあって、永遠に続くような感じです。無限地獄は無間地獄と同じ読みの造語ですが、この場合はぴったりの表現です。



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(10/9/9)