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 みんなの登山記2013−3
 投稿者:ふじ子さん

■2013年7月26日(金)〜27日(土) 吉田口

楽しい季節がやってきましたね。そう、富士登山!
今年で15回目の挑戦ですが、今回は少し変則的なプランで登ることになりました。登山だけではなくマラソンも趣味でやっている私ふじ子。富士山が好きなら一度は参加しないと!と、今年で66回を数える富士登山競走に出場することにしたんです。この大会、麓の富士吉田市役所をスタートし、吉田口登山道をかけ登り、ゴールが山頂という過酷なレースなんですが、初参加者は五合目がゴールの五合目コースにしかエントリーできないとのこと。ならば、ゴール後帰宅せずにそのまま山頂アタックしたれ!
ということで、今年もおもしろ登山をしますよ〜(笑)。

五合目以降のプランですが、今年は富士山が世界文化遺産に登録された特別な年。混雑状況なども全く読めないので、実際に現地での様子を見てから決めたいと思います。
それでは、気合を入れて富士山を走る&登るぞー!!


◎〜五合目

7/26(金) 3時半起きの眠い目をこすりながら自宅(川崎市内)を出発。電車を乗り継ぎ富士山駅へ。途中、富士急行線の車窓から富士山の姿が見えテンションが上がります。夕方一時的に雷雨の予報が出ていましたが、それ以外は翌日も含め特に問題ないお天気とのこと。私はスーパー晴れ女〜♪(登山記2012−20参照)
富士山駅から徒歩で富士吉田市役所へ。ゴールの五合目と閉会式の会場となる富士北麓公園に送る荷物をそれぞれ預け、スタートラインに立ちます。暑いです! 立っているだけで汗びっしょりです。

9:00いよいよスタート。市役所前の道を少し走り、すぐに金鳥居のある登り坂に突入します。北口本宮冨士浅間神社から吉田口登山道に入り、しばらくはアスファルトの道が続きます。だらだらと、でも確実に標高が上がっています。う〜ん、もう疲れちゃった(笑)。
中の茶屋通過。ここから傾斜が増し、足元もでこぼこと若干悪くなります。道幅が狭くなり山の中といったかんじです。あっ、エゾハルゼミの鳴き声が…なんて思う余裕がなくなってきました(汗)。このあたりから歩きが入ってきます。
馬返し通過。これより先は未舗装の登山道です。ヤバっ、背中がつりそう! もう走れません。早歩きにチェンジです。時々登山者の方とすれ違います。大勢で押しかけてゴメンナサイ!
一合目鈴原神社の前を通過。どんどん標高が上がり涼しくなってきました。いつの間にか雲の中に入り、あたりは真っ白に。その後もひたすら樹林帯を登って登って……11時半過ぎ、佐藤小屋下の林道上でようやくゴール!! あ〜疲れた…。山頂コースの人はこのまま更に登るのか…。私にはムリです(笑)。

ではでは、いったんスバルライン五合目に向かいます。事前に預けておいた荷物を受け取り、選手の更衣室となっている雲上閣で着替えをすませます。後ほどここへ舞い戻ってくるので、おみやげなどは物色せずに外へ。そこへ耳を疑う男性の声が…。「富士登山競走に参加された方のシャトルバス乗り場は、ここから800メートル先の駐車場になりまーす!」 …まじっすか? 富士急バスの乗り場から乗れるもんだと勝手に思い込んでいたので、軽いショックを受けました(笑)。
なにはともあれ、前半戦終了です。


◎再出発まで

大会のシャトルバスに乗り、閉会式が行われる富士北麓公園に向かいます。(大渋滞だな〜。今夜の登山道はどんなもんだろか…)なんて考えているうちに夢の中へ。爆睡している間に北麓公園に到着しました。先ほどとうって変わって真夏の空気です。
預けていた登山用ザックを受け取り、大会に合わせて開催されているB級グルメフェスの屋台で食べまくり、栄養補給です。目の前にどーんと富士山の姿が見えます。すぐ戻るから待っててね。

16時頃、これまた大会のシャトルバスに乗り、今度は県営富士北麓駐車場に移動します。今日の夕方17時からスバルラインのマイカー規制が始まるので、五合目行きのバスにここから乗れるわけです。
この時間はまだ駐車場はガラガラです。バス停のベンチにレースでびしょ濡れになったウェアを干したり、歯みがきをしたりと勝手気ままにくつろいでいるところに最初のバスがやってきました。運転手さんに今年の混雑具合を聞いてみると、意外な答えが…。
「テレビじゃ混んでる混んでるって騒いでるけどさ、実際それほどでもないんだよね。テレビが騒ぎ過ぎてるから逆に敬遠して人が来ないんだよ。海の日の3連休だっていっぱい増発便用意したのにさ〜、あんなに必要なかったよ。」 「えっ、そうなんですか?」 「富士急行はさぞかし儲かってるなんて言われてるけど、去年の方がよかったんだから。」 …さようでございますか。
富士登山競争に出たと話すと、「それでこれから登るの? 絶対頭おかしいよ〜」とヒドイ言葉を残し(笑)、17:00発の運転手さんは6人ほどの登山者を乗せて出発していきました。

間髪いれずに2台目のバスが到着。これは河口湖駅から来た通常のバスですが、これまたお客さんはまばら。「乗りませ〜ん」とお断りして見送ると、何と3台目のバスが入ってきました。先ほどの運転手さんの言っていた通りですねぇ。
「何時のに乗るの?」と聞かれたので、「まだ決めかねてるんですよね。混み具合によってはかなり遅くにしようと思ってるんですけど…」と言うと、「テレビで散々混んでるって騒いでるけどさ〜…」と17:00の運転手さんと全く同じ話をされ苦笑。まぁ、金曜日の夜だから山頂ご来光プランはやめるにしても、22時半出発くらいなら混雑は回避できるかな? 更に「富士急行は儲けてるって言われてるけど…」と話が続き、もう笑うしかありません。
一向にお客さんが来ないので暇なのか、私の隣に腰掛けておしゃべりを始めた運転手さん。「これに乗って行かない?」と誘われたので、「五合目は時間つぶせる場所がないんですよね。外は寒いし、どこのお店も19時頃には閉めちゃうし。まぁ、雲上閣は遅くまで開いてますけど…」。「雲上閣もうちの会社だよ。あ、雲上閣で使える飲み物券あったかな?」とバスに戻り、何やらごそごそ探し始めました。「あ〜、ないや。こんなことなら持ってくればよかった!」。 ありがとうございます。お気持ちだけで結構ですよ。
17時半の発車時刻になってもお客さんはゼロ。「どーすんだろ。出ちゃっていいのかな。お客さんゼロじゃカッコつかないよ〜。ねぇ、乗らない?」 「いや…あの…」。そこへ駐車場から登山者が。「乗りまーす!」との声に、「乗る?乗る? あそこでキップ買ってきて。待ってるから!」。運転手さん、すんごい笑顔に(笑)。5枚のきっぷを受け取り「やった、一気に5人になった。」と安心して出発していきました。

その後も30分間隔で発車していくガラガラのシャトルバスを横目に、ひぐらしの鳴き声を聞きながらベンチでまったり。徐々に日が暮れ、遠くに七、八合目の山小屋の明かりが目立ち始めると、俄かに気分が盛り上がってきました。そろそろ行きますか。
身支度を整えていると19:30発のバスが到着。ドアが開くなり「降られちゃったよー」と聞き覚えのある声が。17:30の飲み物券の運転手さんでした。またお会いしましたね(笑)。2順目ご苦労様です。途中で雨に降られたというびしょ濡れのバスに乗り、いざ五合目へ!


◎五合目にて 波乱の予感

20:15五合目に到着。何気なく窓の外に目を向けると、近くの木が大きく揺れているのがわかり、イヤ〜な予感が…。バスを降りると冷たい風のお出迎え。さ、さむいよ…。これまででダントツワースト1の寒さです。
「こんばんはー! フジテレビでーす!」と突然現れたテレビカメラを無視し、取りあえず雲上閣に避難します。去年撤去された1階の休憩スペースが復活していたので、空いていたベンチに座って一息。う〜ん、これからどうしよう。考えていた22時半出発だと大体夜明けは本八合目くらい。持ってきた衣類を全て着込んだとしても、あの寒さをしのぐ自信がありません。雲上閣の閉店までここにいようかな…。あ〜、眠くなってきた。そういえば今朝は3時半起きだっけ…。

「まもなく閉店でーす」。ベンチでウトウトしていた私。この声で我に返りました。時計を見ると22時半を指しています。うそ〜、ホームページには23時までって書いてあったじゃ〜ん(涙)。
心の準備が整わないままの出発となりました。今回の富士登山、一体どうなってしまうんでしょうか??


◎地獄の後半戦開始!

22:30五合目広場は閑散としています。この光景が余計寒々しい。相変わらず風が強いです。
ライトをつけて歩き始めます。真っ暗な登山道に1人っきり、前後に誰もおらず、何でこういう時にかぎって〜と早くも弱腰の私。加えてあくびが止まりません。かなりのバッドコンディションです。
麓の夜景がきれいに見えてますが、「麓は熱帯夜かなぁ、それとも涼しいのかなぁ。みんな寝てるのかなぁ。」などと頭に浮かぶのはこんなことばかり。そういえば飲み物券の運転手さん、もう仕事は終わったんだろか。今頃自宅でくつろいでるのかな…。いいな、いいな…。
え〜い、しっかりしろ私! 富士登山を楽しめないふじ子なんてらしくないぞー!

23:10全く覇気のない歩みでようやく六合目に到着。これまでに何回あくびをしたことか。空を見上げるときれいな星空が広がっています。が、その姿勢のまま意識がぶっ飛び、危うく卒倒するところでした(笑)。
つづら折り1つ歩くたびに休憩。え〜ん、止まると寒いよ〜。すぐに歩き始めるものの、目を開けていることすら厳しくなり、閉じれば一瞬で夢の中。横になりたいよ〜。でも寒くて止まれないよ〜。今から引き返してもバスはないし、お店も閉まってるし…。でも上に行けばもっと寒いよ〜。
ホント、どうしたらいいんでしょ。最悪な状況ですね(爆)。
リングの貞子のごとくフラフラと歩く私。周りの登山者には幽霊のように見えたことでしょう。
『弾丸登山はやめましょう』 連日テレビで聞く言葉がふと頭をよぎりました。あはは、私がやってるのはミサイル登山か? そういえば昨日から登山料を徴収するって言ってたけど、どこにもそんな場所なかったぞ? 夜間は免除? まっ、いいか。頭がおかしくなってます(笑)。

やっとの思いで七合目に到着。花小屋前で休憩。日の出館前で休憩。そしてトモエ館に着いた時にはもう限界になり、持ってきた物を全て身に付けベンチで寝ることに決定。寒さで時々目が覚めるものの、何とか10分程のまとまった睡眠をとることができました。
これが良かったようで、起きたらずいぶんマシな状態に回復していました。よーし、ここから巻き返すぞ!

日付が変わり2:30七合目救護所に到着。ここまで来るのにとんでもない時間を費やしました。ようやく普段のペースを取り戻しつつあり、風もピタリとおさまりいい兆候に。
今回はレース後なのでトレランシューズを履いています。また、いつもお供で持ってくる金剛杖もないので、かなり身軽な状態です。順調に岩稜帯を登り高度を上げます。

3:50八合目太子館前を通過。一時おさまっていた風が再び吹き始めました。標高は3000メートルを超え、一段と寒さが厳しくなり、影をひそめていた睡魔までもが復活。な、なぜ!? 風と睡魔はセットで襲ってくるのか!?
蓬莱館前のベンチで2度目のダウン。今日はホントにしんどい…。富士山を侮るなかれ。

東の空が明るくなってきました。朝日を浴びれば目も覚めるだろうと信じ、残りの体力を振り絞って歩き出します。
4:50待ちに待ったご来光です。残念ながらあまりきれいとは言えない今日のご来光ですが、メッタ打ちにされた私には非常にありがたいものになりました。


◎山頂へ

まだだるさの残る体を引きずって5:50本八合目に到着。ここで大休止します。胸突江戸屋で朝ごはんにしよう。
「すいません。中で食事できますか?」と入り口のお兄ちゃんに尋ねると、「これからツアーの方々が出発するので外でお願いします。」と言われてしまいしょんぼり。仕方ないので、カップヌードル(シーフード味)を注文して外のベンチへ。ザックを降ろすことも忘れ、あったか〜いカップヌードルをひとくち…。あ〜、おいしいですぅ。

今まで自分のコンディションのことでいっぱいいっぱいだったので気が付かなかったんですが、ここまで全く登山道が渋滞していなかったことを思い出しました。富士急バスの運転手さんの言っていた通りだな〜。混雑する時間帯を外せば問題ないようです。
下山道の方を見ると、山頂でご来光を拝んだ人達が一斉に下りてくる最中でした。一方登山道はと言うとガラガラです。五合目の出発をほんの2〜3時間遅らせるだけでこうも違うんですねぇ。では、もうひと頑張りしますか!
本八合目のトイレはすでに下山してきた人達で行列ができていたので、この上八合五勺の御来光館ですませることにして出発です。

日が高くなってきても、風が強いためか寒さが和らぎません。天気は言うことなしの快晴で、雲海が押し寄せ、雄大な景色が広がっています。
九合目の鳥居をくぐり残りのつづら折りを登ると、ようやく頂上の狛犬がお出迎えです。そして7:40、15回目の登頂に喜びを感じながら最後の鳥居をくぐりました。長かった〜。バンザ〜イ!!


◎お鉢めぐり

こんなにいいお天気ならば、お鉢めぐりに行くしかありません。扇屋で2回目の朝ごはん(もちろんカレーです)を食べて出発!
山頂も朝の混雑のピークを過ぎ、落ち着いた雰囲気です。まさに雲上のお散歩です。時計回りで歩き、馬の背を登って日本最高峰へ。あまりに混んでいたら諦めようと思っていた剣ヶ峰での記念写真ですが、こちらも15分程並んだだけで大丈夫でした。残りの半分もの〜んびり歩き、再び河口湖口へ戻ってきました。
本当にいい天気なので、ずっとここにいたい気分ですが、今日の午後は各地で雨の予報が出ていたので、名残惜しいですが下山に取りかかります。10:00下山開始。


◎五合目へ

またまたこちらもピークを過ぎてガラガラの下山道。砂ぼこりも少なめで助かります。あっという間に霧に包まれてしまい、全く景色が見えなくなってしまったので、さっさと下ってしまいましょう。

無心で足を動かし六合目へ。安全指導センターの近くに見慣れない建物が建っていて、そこに人だかりができています。横目に通り過ぎつつ、これが例の登山料を徴収する所かと知りましたが、今更な感じのうえ、戻る元気もなかったのでスルーしてしまいました。ごめんなさい。でも、今年は任意だからいいよね。
何組かのツアー団体とすれ違い、11:55五合目に到着です。昨日の昼間と同じく、広場はものすごい人でごった返しています。屋台の焼きそばでも食べようかと思っていましたが、今年は出店していなかったのでちょっと寂しい気分に。混雑を想定して出さないことにしたんでしょうか。

人ごみをかきわけバス停へ。12:30発の富士山駅行きのバスで五合目を後にしました。
富士山、来年はもっと体調を整えて登りに来るから待っててねー!

今年は混雑回避のため、山頂でのご来光にこだわらないプランにしましたが、結果的に大成功だったと思います。7月最後の週末にもかかわらず、これほどスムーズに歩けたのは自分でも驚きでした。初めて登られる方は、どうしても山頂でご来光を…、と思われるでしょうが、それ以外の方は混む時間帯を外して計画を立てることをお勧めします。
富士山は24時間混んでいるわけじゃないんですね。今更ながらわかりました。
あ、あと体調は万全で臨みましょう(笑)。


◎おまけ

河口湖駅でバスを降り、富士急行線のきっぷ売り場に向かう途中、Tシャツジーパン姿の飲み物券の運転手さんにまたまたばったり会いました。 すごい確率だなと思うと同時に、世の中狭いな〜とも感じましたとさ。
/おしまい


(管理人)
実質的に山麓から山頂までの無泊登山。まさに「ミサイル登山」。「みんなはマネしちゃダメだよ」のパターンです。富士急バスの運転手さんたちが「気さく」で良いですね。山麓の暑さと山中の寒さの対比がすごいです。



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(13/7/31)