バスツアーについて
私は富士登山バスツアーには参加したことがないのですが、このHPをご覧下さっている方々の中にはそういう情報を欲している方もいると思いますので、知人の話、送っていただいたメール、ガイドブック、ツアーのパンフレットなどから概略をまとめて書いておこうと思います。
ツアー参加費用ですが、新宿発ですと「1泊2日・下山後の温泉付きツアー」で16000円から19000円あたりが相場のようです。平日と休日では値段が違います。下山後の温泉がなかったり、食事の回数が少ないものはその分安くなっています。最近は、富士宮口から富士宮ルートを登る、あるいはプリンスルートを経由して御殿場ルートを登るツアーもありますが、やはり、ほとんどの登山ツアーが富士スバルライン五合目から吉田ルートを登りますので、それを前提に説明します。
吉田ルートの解説ページも併せてご覧下さい。
ツアーの出発地点で異なりますが、関東圏から来た場合は、富士スバルライン五合目に昼頃から午後に到着し、レストハウスの大食堂で昼食を摂ります。多くの登山ツアーでは、富士急雲上閣を利用します。三階にコインロッカーや更衣所があります。富士山みはらし、五合園レストハウスなど他の施設を使うツアーもあります。
写真の奥が富士急雲上閣。2014年夏にリニューアルされます。
晴れていると気分も高揚しますが、もちろん雨天の場合もあります。そんな時はどうしてもテンションが下がり気味ですが、山頂では晴れることを期待してめげずに登山開始です。悪天候時だけでなく、深夜、早朝の防寒にもなるので、レインウェアはしっかりしたものを。
(左)この広場が集合場所です。(右)登山前に気合いを入れる。
いよいよ、一日目の宿泊場所である七~八合目の山小屋をめざして登り始めます。現役ガイドの方からの情報によると、所要時間は七合目の山小屋なら4時間、八合目なら5時間、本八合目、御来光館だとおおむね6~7時間、とのことです。
良い登山ガイドほど、序盤をゆっくり歩きます。吉田ルートはスタートしてからしばらく水平な道が続き、さらには緩い下りになるので、初心者ほど速く歩いてしまいがちですが、ここでペースを抑えることが高山病の発生を低減し、登頂の可能性を高めるポイントです。運悪く、おバカガイドがついた場合、序盤からハイペースで歩き出すことがあるそうです。「余裕のあるうち速めに負荷をかけて高所順応させる」のだそうですが、とんでもない大間違いです。
吉田ルートは六合目まで森林を通り、七合目まで人工的な落石よけの脇の坂道、七合目からは岩場、と登山道の様相が次々に変化するので飽きません。
山小屋に到着
山小屋に到着したら登山靴は渡された袋に入れて持ちこみます。食事はカレーライスが定番。ほとんどの山小屋ではおかわりはありません。(ハンバーグ定食、御飯のおかわり自由の山小屋もあります)
食事がすんだら就寝。他のお客さんと男女相部屋です。知らない男女が隣り合わせになる可能性も。そんなの嫌だという女性のために、女性専用ツアーを設定している旅行会社もあります。
基本的に混雑時には、一人あたりの幅は45センチしかありません。寝袋を利用する山小屋が増えてきましたが、1枚の布団を二人で使うこともあります。
楽々と寝入り、大きなイビキをかく強者も当然いますが、多くの人が熟睡はできないようです。普段、そんな早くから寝ていませんし、また、夜遅くまで新たに到着した人が部屋に案内されてくるので、そのたびに起こされることもあります。そして、狭いところに大勢の人がいれば、いろいろなノイズ(雑談、子供の泣き声、くしゃみ、寝言、いびき、歯ぎしり、おなら、発電器の音)がありますから、耳栓を持っていくと便利です。イヤーウィスパーとかピップ耳栓などはかなり雑音を減らしてくれます。薬局などで売っています。最近は100円ショップでも売られています。
枕をビニールで包んでいる場合、そのまま使います。ビニールを包装だと勘違いして破らないように。いろいろな人の頭の脂でねっちょりする場合も考えられるので、神経質な方は、枕カバー用のタオルなどを用意しましょう。なによりビニールに直接だと感触が良くないですから。
とにかく睡眠環境としては最悪です。スペースが狭く、となりの客が寝返りでのしかかってきたり、夜間、トイレに行く客に足を踏まれたり、寝袋が体育会系の臭いがしたり、隣人の体臭や口臭がすごかったり、と、一生の思い出になるようなひとときを過ごせます。何があっても、下山後の話のネタになると思って忍耐です。特に趣味でブログを書いている人には絶好のネタ場です。
無理して眠ろうとあせらなくて良いです。身体を横にして休息を取り、山頂で御来光をめざすための時間調整だと割り切って下さい。午前0時頃には起きますから、つらい時間はせいぜい4時間程度です。
寝床のスペースが幅45センチと狭いことに驚かれる人もいるかもしれませんが、これでもかなり良くなったのです。吉田口(富士スバルラインから登るルート)の山小屋は2007年にすし詰め緩和の方針を打ち出すまではかなり劣悪で、混雑時には1畳あたり3人が詰め込まれ(幅30センチ)、頭と足を交互にして眠らされました。この意味わかります?枕の位置が一人ずつ反対に並ぶという意味です。さらに劣悪な状況では横に寝る、つまり背中をつけないようにして寝る事を強いられたこともあったと聞いたことがあります。確かに人間は横から見ると幅が狭いですから。
これが1日目の様子です。続いて2日目の説明です。
深夜0~1時頃にご来光をめざして山小屋を出発します。この時に、お弁当を渡してくれます。
体調不良のため、頂上まで行くのを断念した場合ですが、勝手に下山せず、そのまま山小屋に翌朝まで滞在するように指示されます。そして、翌朝、朝食をすませてから山小屋の人が下山道まで誘導してくれます。八合目の山小屋ならバイパス道を通って通常の下山道へ行けますが、七合目の山小屋に宿泊した場合は、登山道の岩場の近くを通っているブルドーザー道を使って下山することになります。利用予定の山小屋よりも手前でリタイアした場合の宿泊代がどうなるかは、登山前に説明されるはずなので確認しておいて下さい。
最近、富士山の混雑ぶりはすごいです。登山ガイドはツアー参加者に、なんとか山頂で御来光を見てもらおうとしますので、御来光の時間が迫ってくると結構速いペースになることもあるようです。登山道が混みすぎている場合は、ずるずる滑る砂礫の下山道を強引に登ることもあります。また、最悪の場合、ツアーバスの出発時間の都合で「6時までに登頂できない場合はそこから下山して下さい」などと指示されることもあります。山頂を目前にしてのリタイア、それも自分の体調不良ではなく「大渋滞」のせい。なんとも割り切れませんが仕方ありません。
予定通り行けば、山頂で御来光拝観です。
山頂もごった返しています。トイレは混雑時は30分待ちもざらです。もし、もよおしてきたら我慢している余裕は全くないので、すぐに行列に並んで下さい。おみやげなんか買っている場合じゃありません。(参考ページ→富士山は大混雑)
お鉢めぐりはほとんどのツアーではスケジュールに組み込まれていません。お鉢めぐり付きのツアーもありますから希望する方はそれを選んで申し込んで下さい。
下山開始
山頂から八合目の
『吉田ルートと須走ルートの分岐点(重要!!!)』までは、ツアーごとにまとまって下山します。ただ、中には「何時までに各自で五合目まで下山して下さい」と、山頂から自由行動にするツアーもあるようです。下の写真は下山するツアー客で賑わう本八合目付近です。八合目トモエ館、上江戸屋、富士山ホテルに荷物を預けた場合は、ここで受け取りに行きます。
分岐点に注意!
富士スバルライン五合目からのバスツアー参加者が注意しなければならないのは下山道です。吉田ルートの下山道は八合目の山小屋「下江戸屋」の脇をすり抜けるという、ちょっとわかりにくい構造になっています。上の写真は「本八合目(標高3350m)」です。分岐点がある「八合目(標高3270m)」はさらに下った場所です。
※2014年は分岐点が下江戸屋の先に作られましたが、2015年から従来の場所に戻りました。
写真のように、道なりに歩くと右側の須走ルートの方へ進んでしまう可能性が大です。
標識の立っている位置が、下山道かやや離れているので、天気が悪い日はそれを見落とすこともあります。吉田ルートのシンボルカラーは「黄色」です。分岐後に、もし周囲の標識が赤色だけになっていたら間違っています。すぐに周囲の人に確認して、間違っていたら登り返して下さい。須走口五合目から富士スバルライン五合目までタクシーで戻ろうとすると2万円ぐらいかかります。
下山はまだまだ続く
下山の所用時間は約3時間程度。ひたすら坂道が続きます。岩場のような段差の大きい箇所はありません。下山道は一度入ってしまえば、もう五合目までまちがえることはまずありません。六合目の山小屋が営業を止めてしまったので、ゴールの五合目まで飲料を確保できないかもしれませんので、途中で飲むための飲料を買っておくのも忘れずに。
単調で気の遠くなるような長さのつづらおりの道が続きます。半分ほど下りたあたりに避難所、そして最下部にトイレがあります。さらにそこから五合目のゴールまで、まだ約3kmもあります。
なぜ、こんなに横方向が長いのかというと、それは昭和55年に吉田大沢(山小屋群の向かって右側部分)で大落石事故が発生したため、下山道が現在のツバクロ沢に変わったのです。ですから、沢を横切る部分には落石防止用のトンネルが作られています。
ようやく五合目に到着!
多くのバスツアーでは、富士急雲上閣の入り口に、下山者到着確認のボードがありますので、それにチェックを入れます。店の窓に貼っているものもあります。筆記用具はぶら下がっています。バスツアーによっては「富士山みはらし」など他のレストハウスを利用することもあります。
時間が来るまで更衣やおみやげ購入です。やがて、バスが何番の駐車場に停車しているかアナウンスがあります。駐車場に入っている場合はそちらへ。道路沿いの駐車場に停まっているのであれば道路を少し下っていきます。長くても数百メートルです。
道路沿いの駐車場。
さて、無事にバスに乗り込みますと、麓に下りて食事をしてお風呂に入ります。場所はツアー会社が提携している場所で、ホテルだったり遊園地だったりドライブインだったりします。そこで汗を流し、着替えをすれば、もう帰宅時のバスの中では熟睡まちがいなしです。マイカー登山は帰宅時の居眠り運転が心配なのですが、バスツアーならその心配はいりませんね。
バスツアーは、雨でも登山を決行します。ですから雨具は必携です。しかし、天候がかなり悪化した場合は八合目の山小屋でおしまい、ということもあります。以前、知人たちががその羽目にあってしまいました。都内在住で、当時30才前のメンバーでしたから彼らの場合はバスツアーでなかった方が、簡単に富士登山を順延できたし、また八合目で無理矢理寝ているよりは、自分たちのペースでどんどん登っていった方が簡単に登頂できたはずです。やはり平均的な脚力を前提にスケジュールが組まれていますから、ものすごい健脚の人はいらいらするかもしれません。
それより問題なのは、ご年輩で相当時間がかかる人の場合です。2000年の富士登山で、ツアー参加者から、「70才の男性が六合目でリタイア、50才代の女性が七合目でリタイアした」というメールをいただきました。また、かつては、ツアー参加の年輩の女性の方が、オーバーペースのために倒れて亡くなられるという事もありました。富士山という過酷な自然環境では、なおさら年齢間の体力差が顕著になります。そもそも20才代から70才代までが同じグループで登るというのが無茶な話なのです。そういう理由で、高齢者の方には、バスツアーはあまりおすすめはできないのです。もし参加したとしても、ペースについていけそうになかったら早めにリタイアするべきです。
以上、参加したこともないのに知ったかぶりして書いてしまいました。でも、数社のバスツアーのパンフレットを見比べても、だいたいのスケジュールや内容はこんなものだと思います。あとは実際に参加される場合、ツアー会社の人に良く質問しておいてください。「みんなの登山記」には実際にバスツアーに参加された方の登山記もありますので参考にして下さい。
(雑感)
スーパーのレジ袋について
スーパーでもらえるレジ袋は、水に強く頑丈なので重宝しますが、品物を出し入れすると、袋がすれてガサガサと大きな音がします。山小屋に宿泊すると、暗い室内で、なかなか荷物が取り出せず、ごそごそする人が多いのですが、この騒音が周囲に大迷惑です。「うるさい!」と怒鳴られて、きまずい思いをするかもしれません。小分けした荷物は、布袋か柔らかいビニールの袋に入れるのが、音があまりしないので良いと思います。いずれにせよ、山小屋の中は暗いです。手探りでも取り出せるように整理しておくのが肝心です。
ツアーのお弁当
内容は、ご飯に簡単なおかずやふりかけです。私だったら、たとえ数百グラムでも荷物になるから持って行きたくないですねえ。それにご飯は冷えてしまってちっとも美味しくないと思います。山頂にいけば暖かい食事ができるのですから。この弁当をやめて少しでも旅行代金を安くしてくれるとありがたいのですが。でも、山小屋にとってはドル箱みたいなものですから廃止は無理なのでしょう。
雷
富士山では、午後から夕方にかけて雷になることが多いのです。ですから、御来光登山は早朝に下山するので、この雷の心配をあまりしなくてすみます。団体で下山している途中で雷に遭遇したら、避難する場所がないので、めちゃくちゃ大変です。通常のバスツアーのスケジュールはその点、うまくできていると思います。登りの時なら、まだ融通が利きますから。
富士登山バスツアーは多くの会社が開催しています。
Yahoo!やGoogleで「バスツアー 富士登山」で検索するとたくさんヒットします。各社とも、富士登山の装備などの説明に力を入れています。
【参考リンク】
クラブゲッツ 登山情報の他に、雲や焼印の情報が掲載されていて面白い。
トラベルロード 高画質の登山の様子のビデオが紹介されている。
最近は、登山用品をレンタルする店が増えました。バスツアーなら提携しているレンタルショップがあります。あるいは「富士登山 レンタル」で検索すると数店がヒットします。
本ページの写真の一部は
kaburaさんに提供していただきました。