■2009年9月22日(火) 富士宮口
51歳男。横浜市在住。8月
(みんなの登山記09-24)に続いて今年2回目、通算10回目の富士登山です。この時期は過去に2回、須走口から大陽館に宿泊し、御来光登山をしたことがあります
(みんなの登山記06-26)と
(みんなの登山記08-51)。
今回は中1の三男がデビュー。"シンデレラの靴"を履けるようになったからです
(みんなの登山記07-40)。歩行距離が最も短い富士宮口を選びました。8月と同じルートになります。3回目のトライとなる中3の次男と3人で登頂を目指しました。
●「新六合目の先は通行止」、でも…
朝5時に起床し、朝食とトイレを済ませて5時40分出発。東名高速は当然スイスイと流れ、6時半に御殿場ICを降りました。自衛隊滝ヶ原駐屯地の手前右にあるセブン・イレブンで、いつものように食糧と水を補給。アクエリアスは1リットルのペットボトルを3本。酸素缶を2本そろえました。新五合目駐車場に到着したのは7時半。空は薄曇りですが、晴れ間がのぞいています。気温は8℃。暑からず寒からずといった絶好の天気でした。朝食はおにぎり。
駐車場は早朝にもかかわらず、上の方はほぼ満車でした。ただし、道を行くのは軽装、リュックなし、運動靴といった人たちばかりです。日本最高峰に挑む姿には見えません。そのナゾは8時40分、登り始めたときに解けました。登山口の階段下に「新六合目の先は通行止」という看板がかかっています。そう、新六合目まで、あるいはそこから宝永火口を目指すハイキング客が大勢いたわけです。
富士宮口の事情がそうなっていることは、恥ずかしながら知りませんでした(このサイトの「9月の富士登山」には明記してあります)。ダメなら宝永火口でもいいや、と新六合目に向けて歩いていると、明らかに疲れているグループとすれ違います。「頂上から?」と尋ねると「はい」との返事。「登山道は通れるんですか?」「登りも下りも普通に歩いていますよ」。心は決まりました。こんなに穏やかな陽気。登らない手はありません。
●登り始めと同じ服装で登頂
新六合目の山小屋を過ぎて左に曲がるところに、通行止の大きな看板。しかし、向こうから降りてくる人も、こちらから登る人も結構います。見上げると、視野に入るのは20〜30人です。多からず少なからず。シーズン中の混雑とは程遠く、心細いと言うこともありません。「自己責任、自己責任」とつぶやきながら、看板を越えて登山道に踏み込みました。いつのまにかに雲が消え、秋の日差しが肌に突き刺さります。急いで日焼け止めを塗りました。
1年ごとに体力をつけてスタスタと登る次男に比べ、デビュー戦の三男はつらそう。新七合目から先は休み休みの登りとなりました。水をたくさん飲ませ、酸素缶も頻繁に使いましたが、気になっていた高山病の症状もなく、15時10分登頂。登りは所要6時間半。先行した次男は九合目で1時間昼寝して合流。さらに山頂にも1時間早く到着し、頂上富士館わきで昼寝していました。実質4時間半は立派。ただし軽い頭痛のため、剣が峰は断念したとのこと。
これまでの富士登山では、だいたい八合目で寒さを感じ、フリースやダウンジャケットを重ね着するのが普通でした。しかし今回、気がつけば登り始めと同じ服装で登頂したのに全然寒くありません。リュックをパンパンに膨らませたスキーウエアの出番はありませんでした。帰宅後、山頂の気温が6.6℃だったことを知りました。過去8月に寒風に吹き晒されて凍えたのがウソのようです。
●ブル道は大砂走りのミニ版
大砂走りファンである次男の要望にこたえ、帰りは御殿場口へ。日没が気になるので15時半に下山開始。登山に難儀した三男は大きな砂礫を踏みしめる下山もぎこちなく、八合目の見晴館跡まで1時間もかかりました。そのすぐ下で合流したのがブル道です。シーズン中は通れませんが、いまなら問題ありません。富士宮口でも多くの人たちが岩場の登下山道を敬遠し、ブル道を下りていたことを思い出しました。ブル道へGO!
快感でした。ブルの轍はふわふわとし、まるで大砂走りのミニ版です。これなら三男も大丈夫。早めにスパッツを装着し、ジグザグ道を駆け下りました。あっという間に大砂走りの分岐点に着き、宝永火口の上から底までザクザクと快調なペースで下ります。途中で日が暮れてしまい、霧も出てきましたが、このルートは1カ月半前に通ったばかりで安心。それぞれがライトを持ち、新六合目を経由して新五合目駐車場に18時半たどり着きました。下りは所要3時間。
食事休憩もろくになく、ほぼひたすら歩き続けたのですが、初心者の三男は思いのほか元気で助かりました。富士宮口のブル道をたどれば2時間で下れたでしょう。アクエリアスは残り200cc。ソイジョイを1人1つずつ食べていました。帰路は東名高速が予想通りの大渋滞。それにしても「大和トンネル先頭で50km」にはあきれました。国道246号をひたすら通って22時に無事帰宅しました。
●山小屋はお彼岸まで営業延長を
振り返ると、汗をほとんどかかず、初秋の雰囲気を味わいながら、きわめて快適な登山を楽しめました。天気が不安定で落雷、突風、土砂降りに見舞われる恐れがある7〜8月の夏山シーズンと比べると、天気が安定な9月のほうが初心者にとっても好適ではないかと思えてきます。気温が夜間に低いのと日が短いのが欠点ですが、十分な防寒具やライト類があれば大丈夫。このところの温暖化傾向は「秋山シーズン」の追い風になっています。
問題は山小屋もトイレも閉まっていることです。8月末で山じまいとはどんな事情で決めたのか分かりませんが、天気が不安定なときには登山客が数珠つなぎになるほど大混雑し、安定になったらシーズン外なので登山するな、は理不尽です。須走口の大陽館は10月まで営業しています。ほかの山小屋も、せめて降雪の心配がないお彼岸まで営業延長したらどうでしょうか。これは富士登山の健全な発展のためにぜひ考えていただきたい課題です。